名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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十五ページ目「結びの教会付近にて」

 

 

 

◆一「祈祷書」

 

 結びの司祭は衝撃的な姿をしていた。

 なにせ巨大なカメが、人の言葉をしゃべっていたのだから。

 

 だがその性格はとても穏やかで、しかし恐ろしいほどに中立だった。

 

 

 それは逆に言えば、異端を排しないともいえる。

 これは俺にとって好都合だった。

 

 

 

 実は狭間の地を旅する上で、俺はいくつかの祈祷書を手に入れていた。

 ストームヴィル城で神肌の祈祷書を。

 リエーニエで竜信仰の祈祷書を。

 

 俺はこの知識をどうしても知りたい。

 狭間の地を旅する力になるし、そして真実を探るための手掛かりになるかもしれないからだ。

 だが円卓の聖職者に渡すには、少し憚られた。

 

 けれども結びの司祭は、本来異端など存在しないという思想を持っていて、だからこれらの祈祷書を読み解いてくれたのだ。

 後者はともかく、前者は火に関する不気味なものだったから、渡りに船だった。

 

 

 

 

 

 まず神肌の祈祷について。

 彼らは黒炎の祈祷を扱う者達のようで、それについての祈祷を知ることができた。

 この黒炎とは重い炎だそうで、つまりただの炎ではない。

 相手の命を、直接削り続ける性質を持つ。

 つまり炎に耐性があるような相手でも、この祈祷なら効く場合があるというわけだ。

 

 また武器に黒炎を纏わせる「黒炎の刃」は、効果時間が短い代わりにほぼ隙なく使用できる。

 取り回しのいい短刀や曲剣なんかに向く祈祷かもな。

 同じくストームヴィル城で見つけたこの「慈悲の短刀」は「クイックステップ」という機動力に優れた戦技を持つから、相性がよさそうだ。

 

 ……しかしなぜこの祈祷書がストームヴィル城にあったんだろうな?

 リムグレイブでは空から降ってきた遺跡を漁るゴドリック兵がいたが、彼らが持ち帰ったのだろうか。

 もしかしたら死の鳥同様、神肌も空の向こうに由来する者達なのかもな。

 

 

 

 

 次に竜信仰の祈祷について。

 これは黄金のゴッドウィンが古竜フォルサクスに打ち勝ち、友としたことではじまった「王都古竜信仰」の祈祷だ。

 つまり古竜戦役の後に広まった騎士たちの業だ。

 ゴッドウィンについては死に生きる者たちとの関連性が記憶に新しいが、こういう輝かしい側面を持つことでも有名だ。

 

 王都古竜信仰の祈祷は雷に関する力のようで、雷の槍を投げたり相手の頭上に雷を落とすことができる。

 その中でも特に「雷の武器」は、黒炎の刃同様に武器に雷を纏わせることができる。

 こっちの特徴は効果時間がかなり長いこと。

 機動力を確保できた時や火に頼りたい時は「黒炎の刃」を用いてもいいが、普段使いならこっちの「雷の武器」の方が使いやすいだろうな。

 

 

 

 いずれにしろ、なかなかにいい力だ。

 この間の火の祈祷ともども、頼りにさせてもらうぜ。

 

 

 

 だが注意点もある。

 こういう武器に力を纏わせるタイプの術は、武器を持ち替えるとその力が途切れてしまう。

 再び効果を得るなら、もう一度祈祷を使用しなければならない。

 複数の武器を使う場合は気を付けることだな。

 

 それと、最初から特別な力を宿す武器には使用できない。

 戦灰で属性付与した武器にも同じことが言えるから、武器との相性も考慮して使用するといい。

 

 

 

◆二「ウルドの王朝遺跡」

 

 結びの教会から北へのぼると、不思議な遺跡に遭遇した。

 どうやら「ウルドの王朝遺跡」というらしい。

 

 この場所には、祖霊の民と呼ばれる者達が住んでいて、そして当然のように褪せ人である俺へ攻撃を仕掛けて来た。

 そのおかげでまともに聞き込みできないもんで、はっきりいってこの遺跡についての情報は多くない。

 

 

 

 数少ない手がかりとして……

 

 遺跡の中には人を模したような像のかけらが見受けられること。

 遺跡そのものが迷路のような構造になっていること。

 それから、祖霊の民の中には遺跡の侵入者を正確に撃ち抜く弓矢を扱う者がいること。

 

 ……が、挙げられる。

 

 

 

 これらのことから、この辺りは城だったのではないかと推測できる。

 城の造りが複雑怪奇なのは、敵の侵入を想定しているからだというのはよく聞く話だ。

 

 

 

 また、付近には啜り泣きの半島でも見た「歩く霊廟」がいる。

 それも二体だ。

 

 つまり、この遺跡は歩く霊廟を護るための施設であり、ここの祖霊の民は墓守なのかもな。

 

 

 

 捕捉として、ここにいる二体の「歩く霊廟」は啜り泣きの半島の個体とは具合が違うようだ。

 啜り泣きの半島の個体はデミゴッドのための墓だったが、ここの個体はデミゴッドではない別の誰かのための墓であるらしい。

 だからなのか、首無しの戦士の姿も見受けられない。

 

 これがこの遺跡の謎を探る大きなヒントではないかと睨んでいるが、情報が少なすぎて考察が捗らない。

 まぁ、情報は記したことだし、気長に考えてみるさ。

 

 

 

◆三「黒き刃の刻印」

 

 ウルドの王朝遺跡周辺には、とかく墓の類が密集している。

 その墓の一つに地下墓があったのだが、そこで不思議なものを発見した。

 

 黒き刃の刻印。

 これは以前紹介した陰謀の夜の、その真実が潜んでいるものだ。

 

 

 さっそく、陰謀の夜について詳しい友人に見せてみた。

 彼と共に痕跡を調べてみると、とんでもない事実が発覚した。

 

 

 陰謀の夜。

 黒き刃のマリケスから盗み出された死のルーンの一部の力は、儀式によって暗殺者の刃に宿った。

 その儀式には、あの"魔女ラニ"が絡んでいるのだというのだ。

 

 

 

 魔女ラニ。

 デミゴッドの一員であり、ラダゴンとレナラの娘だ。

 

 そんな彼女こそが、陰謀の夜の犯人であるかもしれない。

 あの黄金のゴッドウィンを暗殺し、死に生きる者たちを生み出した元凶の可能性があるのだ。

 そうでなくとも、何か情報を持っているという推測は可能だ。

 

 

 

 一度、彼女について探ってみるべきだろう。

 陰謀の夜と、死に生きる者たちの真実があるかもしれないのなら、なおさらだ。

 

 

 

◆四「カーリアの書院」

 

 早速魔女ラニに繋がりそうな施設を見つけたぜ。

 結びの教会から南東へ進んだところに、大きな塔があった。

 

 そこはカーリアの書院と呼ばれ、そして痕跡を探ると王女の罪が隠されているらしいことが判明した。

 この"王女"がラニのことであろうことは、言うまでもないだろう。

 

 

 俺はすぐ全力でカーリアの書院を探った。

 内部はやはり罠が仕掛けられており、魔術師の奇襲を受けたりしたものだが、その程度で俺の情熱は消えたりしない。

 

 ……のだが、今回ばかりは相手が悪かったかもしれない。

 

 

 

 魔術師そのものは、まぁなんとかはなった。

 だがカーリアの書院に隠された秘密を暴くことはできなかった。

 

 

 

 俺が怪しいと思うのは、入り口近くにあった天球儀だ。

 天球儀の前には台座があって、俺の中の啓蒙がそこに何かを置けと囁いていた。

 

 だが、おそらく俺の手持ちに相応しいアイテムはない。

 つまり手詰まりというわけだ。

 

 仕方なく、一度手を引くことにしたわけだ。

 

 

 

 せめての情報として、一点だけ。

 

 このカーリアの書院は、リエーニエの神授塔に繋がっているようだ。

 外からの景色でも推察できるし、地図にも記されている。

 であるならば、ここの謎を暴けるのは大ルーンやデミゴッドに縁がある者に限られるのかもしれないな。

 

 

 

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