名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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十七ページ目「湖の北部にて」

 

 

 

◆一「古遺跡断崖」

 

 湖の北部は、深く暗い谷底となっている。

 夜のように暗いその場所を進み続けると、村の痕跡を確認できた。

 

 おそらくは炭鉱夫の村だろう。

 村の一部には、上の坑道へ続く梯子があった。

 

 

 古遺跡断崖。

 そう呼ばれる坑道は、狭間の地で最も巨大な坑道の一つだ。

 つまり武器をさらに強化するチャンスなのだが、それ以上に重要な情報がある。

 

 この坑道は、リエーニエとアルター高原、両方から採掘されたというものだ。

 

 

 つまりこの坑道は、あの黄金樹の麓があるアルター高原への道となっているのだ。

 

 

 

 アルター高原は、王都ローデイルがある地だ。

 故にその地へと至る道は少なく、そしてその有力な道の一つは動きを止めて久しいという。

 ならば、この古遺跡断崖はとても重要な場所となるだろう。

 

 

 ただし、そういう場所なだけあって内部は危険だ。

 下層は小さな卑兵が仕掛ける毒の罠が仕掛けられていて、毒への備えが必要だ。

 俺が愛用する「火の癒しよ」や、円卓の聖職者が教えてくれる「毒の治癒」といった祈祷が有効だ。

 もしくはツール鞄を用いて「毒の苔薬」を製作するのも手だ。

 

 一方で上層は人面蝙蝠の巣となっているから、今度は上空に対する備えが必要となる。

 俺は祈祷の「火投げ」や「黒炎」「雷の槍」などが真っ先に思いつくが、それ以外にも投げ矢や弓矢・クロスボウ・魔術なども対抗策として考えられる。

 

 そしてアルター高原にたどり着く直前では、溶岩を吐く怪物が襲い掛かってくるそうだ。

 「炎防護」や「抗炎の干し肝」を用いて炎属性への耐性を底上げすることなどが対策となるだろうが、それ以上に協力者を得られるかどうかの人徳の方が重要だろう。

 

 

 

 総じて、総合的な対応能力が求められる難所だ。

 指読みの老婆の一人は「名誉なき道行」と言っていたが、俺はここを突破できる戦士はそれだけで誇っていいと思う。

 

 厳しいと思ったら、一度引き返して力を蓄えるといい。

 

 

 

◆二「べイルム街道」

 

 アルター高原へ進む道は見つけたが、俺はさらなる情報を求め、古遺跡断崖麓の村から一度南下してみた。

 すると谷の上へと続く道を見つけ、ついには教会を通じて「べイルム街道」にたどり着けた。

 

 べイルム街道とは、魔術学院レアルカリアの北にある街道だ。

 街道を南下すると封印された魔術学院の門の東口にたどり着ける。

 一方街道を北上すると、その先にはアルター高原への道がある。

 

 

 

 だから正規の手段でアルター高原へ向かう場合は、この道を使うこととなるのだろう。

 あるいは放浪騎士の彼のように輝石鍵を使用できる場合も、同じくだ。

 

 

 他方、街道途中の教会に谷への階段があったことから、谷底にある古遺跡断崖と行き来するための場所でもあったに違いない。

 古遺跡断崖は巨大な坑道であり、レアルカリアもその恩恵に与っていただろうことは想像に難くない。

 

 

 ただ、そのための道が部外者に使用されることは、その性質上想定していない筈だ。

 だから上述の教会の道は、本来は隠されていたのだろう。

 

 

 

◆三「デクタスの大昇降機」

 

 やけに警備が厳しいべイルム街道を北上すると、一対の「ツリーガード」の像が出迎えてくれた。

 その間にある大きな階段の道を登れば、そこが「デクタスの大昇降機」だ。

 

 この場所はリエーニエとアルター高原をつなぐ機能を持っていて、平時はここを通じてアルター高原、ひいては王都ローデイルへ至ることができた。

 だが今やこの場所は動きを止めて久しく、俺が訪れてもうんともすんとも言いやしない。

 

 

 

 これを動かすためには特別な品が必要なようで、それは二つの半月であるという。

 

 一つは、リムグレイブのどこかに。

 もう一つは、はるか東のケイリッドのどこかに。

 

 

 

 俺が集めた情報はこれ限りだ。

 

 だがその性質的に、どちらもどこか重要な施設の中に納められているとは思う。

 例えば、砦とかな。

 

 

 だが正直なところ、手持ちの情報だけだとこちらからアルター高原へアプローチするのは厳しいだろう。

 素直に鍛え直して、古遺跡断崖の方へ挑ませてもらった方がよさそうだ。

 

 

 

◆四「狂い火村」

 

 "火"という概念は、俺にとっては一定の縁があると考えている。

 

 不吉な預言に由来する火の祈祷や、火の僧兵が扱う火。

 それから、神肌なる者達が扱うという黒炎もそうだ。

 

 

 だが、同じ火でも黄色い火「狂い火」との縁は遠慮したいところだ。

 

 

 

 

 べイルム街道をそれたところを調べてみると、狂い火を灯す灯台の脅威に襲われた。

 灯台の上に狂い火がともされ、その灯りを浴びると目の奥が熱くなっていくんだ。

 

 

 

 身を隠しながらその灯台をなんとかすると、今度は不気味な村にたどり着く。

 

 

 そこは一部の褪せ人から「狂い火村」と呼ばれている場所だ。

 周囲を城壁で護られていることから、村と言うよりは街や城に近い場所だったと思われる。

 街や城は、基本的に城壁を築いて外敵に備えるものだ。

 

 また、崩れた城壁から中へ侵入すると、狂い火にこそ侵されているものの、レアルカリア兵までいたのだ。

 間違いなく、単なる村というわけではないだろう。

 

 

 

 この村……というより街を調べてみると、驚きの事実がわかった。

 

 狂い火の病には、起源がある。

 それはシャブリリと呼ばれる男で、讒言の罰で瞳を潰され、そこに狂い火の病を宿したという。

 狂い火の病が目を溶かすのは、そこに由来するのかもしれないな。

 

 他方でシャブリリという男はかなり憎悪されていたようで、彼に由来する祈祷やタリスマンは他者からの憎悪を買うものとなっている。

 知識としては蒐集したが、扱いたいとは思えないな。

 

 

 

 それから、街の外れにある教会に近づくと侵入者に襲われた。

 案の定狂い火に関係ある者だったが、驚くべきことにその侵入者は「円卓の騎士、ヴァイク」と呼ばれる男だった。

 

 ヴァイクと言えば、エルデの王に最も近づいた褪せ人の一人として有名だ。

 だがそんな彼が狂い火村の近くに現れ、狂い火に由来する祈祷や技を使ってくるのだ。

 彼もまた、狂い火に侵されているということだろう。

 

 

 ……彼ほどの英雄が狂い火に侵されるからには、きっと相応の理由がある筈だ。

 どうにも、狂い火もまた複雑な謎が隠されていそうだ。

 

 

 

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