二十ページ目「燻り教会にて」
◆一「腐敗と火の地」
ケイリッドよ、俺は戻って来たぜ。
ケイリッドとはリムグレイブの東部に広がる、腐敗の地だ。
特徴はやはりケイリッドの地そのものが「朱い腐敗」によって蝕まれている点だ。
さっそく馬車の残骸を漁る野犬に襲われたが、奴らもまた「朱い腐敗」に侵されているらしく、攻撃を食らうだけでこちらまで腐敗してしまう。
この朱い腐敗は恐ろしく、短い時間で肉体が腐り命が脅かされるというのに「毒の治癒」などでは対抗できない。
だが対抗策がある。
それは「火」だ。
以前俺は火の僧兵との"交渉"の末に「火の癒しよ」という祈祷を入手した。
この力は確実で、己の内に火をおこすことで毒と朱い腐敗を癒すことができるのだ。
今後ケイリッドの攻略において、この祈祷は必須となるだろう。
火は、腐敗に対して有効なのだ。
この腐敗と火の関係性は、ラダーンに仕えた者達も把握しているらしい。
ツール鞄のアイテム製作に役立つ製法書の一部は、将軍ラダーンに仕えた武具職人のものがある。
その内容は腐敗に対する知識であり、特に火の技が記されている。
彼らは、火を以てケイリッドを蝕む腐敗に抗っているのさ。
その一端として「燻り教会」の例がある。
リムグレイブとケイリッドの境界辺りに建つこの教会は、しかし柱などが燻り火の粉をまき散らしている。
これはきっと地を蝕む朱い腐敗に抗うための、火の技を用いたなんらかの措置だ。
似たような措置は他にもあって、だから朱い腐敗はケイリッド内で留まっているのだろう。
◆二「剣の石碑」
狭間の地各地には、剣の形をした石碑がいくつか残されている。
そのうちの一つが「燻り教会」の近くにもあり、訪ねてみるとちょっとした知識を得ることができた。
剣の石碑に刻まれていたのさ。
かの最初の王、ゴッドフレイ。
その戦の、最後の地がここであるという。
黄金の軍勢は勝ちを繰り返し、しかし祝福は失われて色あせたという。
つまり、かのゴッドフレイ王もまた褪せ人に至ったと記されているわけだ。
このような情報は、もちろん他の剣の石碑にも記されている。
かつてのゴッドフレイの戦や破砕戦争についての知識を得る、貴重な機会だ。
とても貴重な情報源であるといえるな。
……この剣の石碑について、個人的に重要なトピックがある。
実はリムグレイブの、嵐門前の廃墟近くにも同じく剣の石碑があるという情報を得てな。
さっそく訪れてみた。
その石碑には、ゴドリックについて記されていたんだ。
黄金のゴドリックは、ミケラの刃に敗れ、ひれ伏して許しを請うた。
それが石碑の情報だ。
ミケラの刃とは、マレニアのことだ。
特に腐敗の力が有名で、今のケイリッドが朱い腐敗に侵された元凶と目されている。
破砕戦争の、ラダーンとの戦いにおいてな。
もしマレニアの機嫌次第では、リムグレイブも同じ運命をたどったかもしれない。
だがゴドリックはマレニアにひれ伏し、その力の発現を回避したことでリムグレイブを朱い腐敗から救ったという説が存在する。
俺はゴドリックを知っている。
奴は人望も人徳も持たない、接ぎという悍ましい儀式に執着する小物だ。
その力こそ褪せ人の比ではないかもしれないが、しかし王として見るべきところはないというのが俺の考えだ。
正直なところ、当時のマレニアを前にしたゴドリックにリムグレイブを護るという責任感のある考えがあったかどうかは心底疑わしい。
だが、ゴドリックにも"功績"と呼ぶべきものはあるかもしれない。
事実として、リムグレイブは朱い腐敗に侵されていないわけだしな。
俺個人の意見として、上述の働きをゴドリックの誇りある"功績"としてみなすのは反対だ。
命欲しさの保身の結果、たまたまリムグレイブを救ったに過ぎないと考えている。
さらに、さっきは機嫌次第と言ったが、マレニアがゴドリックのような小物相手に腐敗の力を解放するのは、実際のところ現実的とも思えない。
おそらく剣士としての力でも十分な可能性が高く、ゴドリックの態度にかかわらずリムグレイブは無事だっただろう。
だがそれでも、上述の情報と説、そして"そういう見方"が可能であるという点は"真実の探求者"として記すべきであると考えた。
ゴドリックが運がよかっただけの臆病な暗君にすぎないか、危険を察知してリムグレイブを救った名君であるか。
どちらが正しいのかは、これを読んだ君に託す。
◆三「ゲール坑道」
マレニアが発端だと思われるケイリッドの朱い腐敗は凄まじい。
大地は朱く染まり、植物は枯れては白いキノコなどが生えていて、そして獣や鴉の類が肥大化している。
まるで地獄の如き様相だ。
特に肥大化した獣や鴉は驚異的で、付近にいる赤獅子の軍団も手を焼いているほどだ。
他方で、腐敗に抗うその赤獅子の軍団は"そのすべてが手練れである"という。
彼らにも襲われたが、なかなかの強敵だった。
近くには「ゲール坑道」と呼ばれる坑道があり、赤獅子の強さを支える秘訣があるかもと考えて探った。
が、酷い目にあったぜ。
ケイリッド側からの道は、梯子が失われたのか飛び降りる形で一方通行となっている。
自信があったから入ったが、道中で赤獅子の一人がラッパを鳴らした途端袋叩きにあっちまったぜ。
ケイリッド側の出入り口は一方通行だから、坑道から撤退することができないのが苦しい。
籠を背負った炭鉱夫が、黒炎……というか、火の術を喰らうと爆発する性質を持っていたおかげでなんとかなったけどさ。
奴らの持つ「爆発石」が、火の刺激を受けることで自爆するわけだ。
また、そもそもこういう坑道にいる石堀・炭鉱夫は岩のような体を持つ。
だからロングソードのような武器で攻撃すると、その堅さで弾かれてしまう。
棍棒のような打撃武器で殴るか、いっそタメ攻撃やジャンプ攻撃・戦技などで強引に押し切るのがいいだろう。
他方で、坑道内部では「壊れた結晶」や「大きな屑輝石」といった魔術師に絡んだアイテムが見つかる。
坑道奥には「名刀月隠」と呼ばれる、サリアの刀匠に由来する品もあった。
「サリア」とは魔術街という二つ名を持つ街であり、総合的に魔術師との一定のつながりを感じるロケーションでもあった。
※追記
余談だが、このゲール坑道はリムグレイブにも入り口があった。
古遺跡坑道がそうであったように、ここもリムグレイブとケイリッドの両方から採掘されていたかもしれないな。
リムグレイブ側の入り口は、第三マリカ教会やハイト砦の方面へ続く道と繋がることも、ここに記しておく。
ちなみに坂道を上ると呼び水の村にもたどり着く。
◆四「戦祭りの噂」
今更だが、今回のケイリッド探索における目標を記そうと思う。
その目標とは「戦祭り」だ。
ケイリッドの南端には赤獅子城があり、近々戦祭りが開かれるのだという。
以前にも話したな。
このタイミングで戦祭りに向かう理由は二つ。
戦祭りというからには各地の強者が集う筈で、それぞれから話を伺いたいのが一つ。
もう一つは、レアルカリアの調査を助けてくれた"放浪騎士の彼"も戦祭りに向かうのだという。
放浪騎士の彼は、すでに大ルーンを二つ集めた王の器。
本来ならアルター高原の王都ローデイルに向かい、エルデンリングの修復を試みてもよい場面だ。
だがそれとは別件でケイリッドの戦祭りに用事があり、だからそちらへ向かうのだという。
各地の英雄が集う戦祭りそのものにも興味があり、それからアルター高原と王都ローデイルの攻略に備えてさらに力を蓄えたいとも言っていた。
そんな我が友の方針を聞いて、せっかくの機会だとして俺もケイリッドの戦祭りに向かうことを決めたのさ。
ケイリッドは朱い腐敗の脅威が潜む、危険な場所だ。
その道行は過酷なものとなるだろうが、だからこそ得られるものもある筈だ。
そういうわけで、当面は戦祭りを目指しつつ道中で興味深いものがあれば手帳に情報を記していくことにするぜ。
・ようやく剣の石碑について書くことができて余は満足です。
・基本的に小物とされるキャラが、ある一側面においては実は有能であった→転じて能力以上に評価されるという流れ、個人的にロマンがあって好きです。トニー君は割と酷評してますが、個人的にはゴドリックが評価されることもあっていいと思ってます。そういう意味でも、今回の話は前々から書きたいと考えていました。