名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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本日(1/1)の更新はここまでです。


三ページ目「嵐の関門にて」

 

 

 

◆一「廃墟」

 

 森を通り抜けた先には、巨大な石の門が聳え立っていた。

 その門が"嵐の関門"と呼ばれていることを知ったのは、もう少し後で情報を集めてからのことだった。

 

 そんな巨人でも通りそうな門の前には、廃墟が広がっている。

 おそらくはストームヴィルの者であろう兵士達が占領していて、野営地の一つとして運用しているようだった。

 

 

 彼らもまた亡者。

 話が通じないどころか襲ってくるもんだから、真正面から近づくのはやめておいた。

 

 

 

 ただし、こういう廃墟には"地下室"が付き物だ。

 そして地下室には、先の洞窟同様にたいていお宝が眠っている。

 

 だからうまいこと奴らの警備の隙を突いて、地下室に忍び込んでお宝をくすねてやった。

 

 

 勝てない相手には逃げることも大事だが、身を潜めて出し抜くのも選択肢だ。

 茂みかなんかに隠れてしまえばだいたい見つからないもんだし、運が良ければ背後をとって奇襲を仕掛けられるかもしれない。

 

 ただし見つかったら身を潜めても意味はない。

 諦めて正面から応戦するか、そのまま尻尾をまいて逃げた方がいい。

 

 

 

◆二「砥石の小刀」

 

 砥石の小刀。

 例の廃墟からくすねたお宝だ。

 

 秘文字が刻まれている砥石を、小刀に加工したもののようだ。

 

 

 

 これは戦灰と呼ばれるものを材料に、武器に新しい力を付与するもの。

 ……という話を聞いたことがある。

 

 戦灰の質によっては、武器に火や雷の属性を付与できるかもしれない。

 そうすれば火や雷がよく効く相手への備えになるだろうな。

 

 それ以外にも、戦灰は優れた戦士達の動きを習得するのに役立つものだ。

 そういったものは"戦技"と呼ばれ、ものによっては武器に宿るようだ。

 その宿る先を制御する技術が戦灰で、この砥石の小刀……ということだろう。

 

 貴重なもののようだが、入手できるならそれに越したことはないだろう。

 少なくとも俺は、自衛のためにこのまま持っていって役立てていこうと考えている。

 

 

 

 しかし。

 これを地下室に納めていたということは、廃墟の奴らはこれを使って自分の武具を強化していたのだろうか。

 それとも、廃墟に眠っていたものを放置していたのだろうか。

 

 奴らに話は通じないから、真相はわからないな。

 

 

 

 

◆三「地図」

 

 廃墟に忍び込んだ時、妙に存在感のある石碑を見つけた。

 うまいこと見つからないように近づいたら、地図を手に入れた。

 

 安全な場所まで撤退してから確認したが、これはどうやらこの地の一部を記した地図のようだ。

 どうにも、石碑を調べるとこういう地図を得られるようになっているらしい。

 精度も悪くないし、この石碑と地図を探すこともまた旅の目標として掲げてもいいかもしれない。

 

 

 

 地図からもいくつか情報を得られた。

 

 

 地図に曰く、この地の名はリムグレイブ。

 狭間の地においては南に位置する地方だ。

 

 祝福が導くストームヴィル城は北西に位置しており、大雑把な距離感と地形はつかめた。

 これがあるのとないのとでは、大違いだ。

 

 

 

 古来より地図とは国の統治に欠かせないもので、多くの為政者は正確な地図を必要とした。

 特に戦争では自国・他国の地形把握が重要であるから、当然の話ではある。

 

 石碑と地図が、亡者の兵士達が占領する廃墟のど真ん中にあったのは、自軍以外に地図と言う重要情報を渡さないためだろう。

 なかなかによく考えられた施設だぜ。

 

 

 

◆四「鳥の遠見」

 

 廃墟から東へ向かったところに、不思議な望遠鏡が設置されていた。

 鳥の遠見……というらしい。

 

 覗き込むと視点が鳥のものとなり、辺りの地形を空から見下ろすことができた。

 

 

 さっきの廃墟も上から見下ろせた。

 次に潜入する際のルートもなんとなく見えたぜ。

 ストームヴィル城に向かうなら、もう一度廃墟を通らなければならないからな。

 

 一方で反対側には湖が広がっているのが見えた。

 橋を越えた先で侵入できそうで、地図を見る限り湖に坑道があるようだから後で鍛石を採掘しに行っても良さそうだ。

 後、橋を越えた向こうは手持ちの地図には書いてない地域だから、よりさらなる情報が得たければこのまま東に向かうのもいいかもしれない。

 

 

 

 しかし、なんでこんなものが廃墟の外にあるんだろうな?

 空から地形を正確に見下ろせるものの価値なんて推して知るべしである。

 にもかかわらずここは一切マークしていない辺り、兵士といえど所詮は亡者でしかないのだろうな。

 

 平時の時なら、確実にここで周囲を監視する者がいただろう。

 遠くのものを直接見ることができる、というのは地図にはない利点だからだ。

 

 

 

 まぁ、今はその杜撰な在り方に感謝しておこう。

 とにもかくにも情報が不足している今の俺にとっては幸運だ。

 

 

 

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