名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

34 / 83
三十一ページ目「シーフラの水道橋にて」

 

 

 

◆一「水の行き先」

 

 夜の神域では、俺が取れる情報は、おおよそ蒐集できた。

 だがここから行ける場所はないようでな、一度祝福を通じて祖霊の森に戻って探索を続けてみた。

 

 そうしたら、祖霊の森の北東に霊クラゲがたくさん浮遊している場所があってな。

 彼らの縄張りに侵入してみると、また面白い場所を見つけることができた。

 

 

 「シーフラの水道橋」

 そう呼ばれるこの場所は、文字通り水の管理を目的とした施設のようだ。

 

 奥を探索して推察した限り、ここで流れる水は下の平原のようなエリアに流れ落ちている。

 個人的に、そこが水の目的地とは思えないな。

 

 

 本来は、さらにうまいこと水路が繋がっていたんじゃないかと考察している。

 水路の方角的には祖霊の森の「角骸の霊場」に繋がっているように見えるが、その横にある長い通路のような施設も無関係とは思えない。

 

 いずれにしろ、その目的地は「夜の神域」をはじめとした「永遠の都、ノクローン」だろう。

 俺はそのように仮説を立てた。

 

 

 いくつかの建築様式……夜の神域にもあった「落ちる鷹の兵団」を模したような像など……が共通しているのも興味深い。

 勿論俺の推理が間違っていて、初めからこの下のエリアに水を供給する施設だった可能性も捨てきれないがな。

 

 

 

 

◆二「坩堝の騎士」

 

 シーフラの水道橋には、何故か「坩堝の騎士」がいた。

 

 坩堝の騎士は、赤味を帯びた黄金の装備を特徴とする騎士だ。

 彼らは、もともと「最初の王、ゴッドフレイ」に仕えた古い騎士であるという。

 「その姿、そして力は、後に秩序無きものとして蔑まれた」ともいう。

 

 一部、円卓の文献よりここに引用する。

 

 

 

 彼らは狭間の地の、その各地に散らばって徘徊している。

 代表的な例では、俺が遭遇したリムグレイブの封牢の囚人がその一人だ。

 

 彼らは例によって、正気を失っているのかまともに話が通じず襲ってくる。

 敵として相対した彼らの特徴は、とにかく怯まないことだな。

 ロングソードの「構え」で何度も攻撃して、ようやく致命の一撃を食らわせられるかといった具合だな。

 

 

 また、彼らの強力な武具の中に「坩堝の角盾」がある。

 シールドバッシュを前提とした盾で、大きな角があしらわれている。

 

 その角を用いた突進攻撃は脅威で、しかし盾としても強力だ。

 何度俺の突き攻撃を防がれたことか。

 

 同時にこの盾は、装備者にかなりの筋力を求める。

 転じて、坩堝の騎士の高い筋力が伺える。

 

 

 

 それと、彼らは古い聖性を持つらしい。

 現時点では大した情報はないが、これは「独特な祈祷」を使うという意味だと考えている。

 翼を生やして跳躍したり、突然炎を吐いたり、肩に角を生やして突進したり。

 

 いずれも既存の祈祷とは大きく異なる性質で、初見での対応には苦労する。

 とにかく近距離だけでなく、中距離にも攻撃手段があるということは覚えておいてくれ。

 

 

 

 

 俺はそれなりに彼らと相対して、さらにはラダーン祭りを経験したから、なんとか安定して倒せるようになった。

 が、普通ならばとんでもない兵達だ。

 

 

 対処は冷静にな。

 

 

 

◆三「狩人たちの痕跡」

 

 シーフラの水道橋には、坩堝の騎士がいて、そしてノクローンと同様に「落ちる鷹の兵団」がいる。

 そしてどういうわけか「死に生きる者たち」を狩る狩人の痕跡があった。

 

 

 「聖律の治癒」

 黄金律原理主義の祈祷の一つで、これは「死」の蓄積を軽減するもの。

 

 この場合の「死」とは、褪せ人の体に棘が生えてしまう恐ろしい呪いのようなものだ。

 これはバジリスクと呼ばれる化け物が吐く息や、あるいは「死に生きる者たち」にちなんだ術によって引き起こされる。

 

 この祈祷はそれに抗する貴重な手段となる。

 知力を要求するから、俺には扱いづらいのが心苦しい。

 

 

 それ以外の手段となると、俺には「苔薬」ぐらいしか思いつかない。

 肝心の製法書がないから、今の俺には作れないがな。

 

 

 

 ともあれ、彼ら狩人は「死に生きる者たち」と戦う使命を持つ。

 「死に生きる者たち」の術への抵抗手段を持つのは道理だな。

 

 だがなぜこの「シーフラの水道橋」にこの祈祷の知識があるのかが理解できない。

 ここに「死に生きる者たち」の姿はない。

 

 

 

 ……あるいは、この先に「死に生きる者たち」がいるというのか?

 

 

 

◆四「英雄のガーゴイル」

 

 シーフラの水道橋の奥に、恐ろしい化け物がいた。

 それは「英雄のガーゴイル」と呼ばれるもので、ケイリッド最奥の「獣の神殿」にも似た化け物がいた。

 そのことから、獣や黄金律原理主義、転じて死を狩る者たちと何らかの繋がりがあるように思えるが……。

 

 彼らは二体で襲い掛かり、それぞれ二つの武器を同時に持って使い分けてくる。

 そして悍ましいことに、毒のブレスを吐いてくる。

 毒の範囲は広いから、毒の治療手段は必須だ。

 余裕があれば投げナイフやクロスボウのような遠距離手段もあるといいだろう。

 

 

 ……それらがあっても、俺には対抗できなかったがな。

 サインに恵まれなかったのが痛い。

 こればかりは時の運だからな……。

 

 

 噂では、彼らを乗り越えた先には「深き根の底」に繋がる道があるという。

 そこはアルター高原、黄金樹の麓である「王都ローデイル」の地下だという話だ。

 

 ここを乗り越えればそこに至ることができると踏んだんだが、今回は縁がなかったらしい。

 数々の痕跡から「死に生きる者たち」の真実もそこにあるような気がするんだが……まったくもって口惜しい。

 

 

 

 だがまだ手段はある。

 

 リエーニエ北部の「古遺跡断崖」。

 ここからなら、資格がなくともアルター高原に至れる。

 そこから王都ローデイルにもたどり着ける筈。

 

 

 

 ラダーン祭りを経て、ここでもいくつか有用なアイテムを得たんだ。

 今の俺なら、きっと「古遺跡断崖」という難所を乗り越えられる筈だ。

 

 次はそこから情報を探っていこうと思う。

 いよいよ「アルター高原」の景色を見ることができると思うと、感慨深いな。

 

 

 




・導線を意識したとはいえ、そろそろ寄り道が過ぎた感を感じる今日この頃。
 原作的には「霊姿摘みの鈴玉」「黒い砥石刃」「写し身の雫の遺灰」「ノクローンの秘宝」辺りを取れれば大抵の褪せ人は満足して、残りは後回しが選択肢に出てきますし……。
 トニー視点ではラニ様ルートの「エインセル河本流」も通れない想定なので、この辺りで切り上げです。エインセルカワモトリュウ「ッ?!」

・筆者は坩堝の騎士が苦手です。安定して倒せません。ここについてはトニーの方が化け物なだけです。

・聖律の治癒の要求知力は11。これは素性:素寒貧なら、知力1振るだけで使用可能となります。
 ……どんだけ知力に縁ないんですかトニーさん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。