名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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 寄り道回です。
 というかアルター高原編もケイリッド編同様、周りを寄り道してから王都に向かう方針です。


三十四ページ目「黄金樹を臨む丘にて」

 

 

 

◆一「ウィンダムの廃墟」

 

 捨てられた荷車の群を、横道にそれるのではなく正面に向かって抜けていくと、丘に出る。

 「黄金樹を臨む丘」だ。

 

 ここでの景色は素晴らしい。

 あの黄金樹がここまで近くにあると、ここまでの旅が報われるというもんだ。

 

 それに、いよいよ伝説の王都が目に見える位置にあるのもいい。

 城壁の周りには、黄金樹ほどではないものの天を貫きそうな高さの"白い旗"が風に揺られている。

 城壁のでかさも相まって、実に荘厳な景色だ。

 いずれはあそこも探索して、その情報を記したい。

 

 

 

 が、今回はあえてこの丘から横道にそれてみた。

 面白い情報があるかもと思ってな。

 

 

 

 横道の坂を上った先は「ウィンダムの廃墟」があった。

 そこは死に生きる者たちが屯する危険地帯となっていて、そこには以前俺を襲った"船"もいた。

 

 今回は装備や知識が充実していたこともあり、なんとか倒せたけどな。

 

 

 

 彼からは「ディビアの呼び声」という魔術の知識を奪えた。

 死に迷う者たちを三体呼び出し、離れた場所の敵への攻撃を支持するものだ。

 

 何でも「古来、死者は迷いものであり、先導が必要なのだ」そうだ。

 つまりあの"船"は、死者たちのための案内人というわけだな。

 

 

 

 死者の世界と船の関係はよく聞く話だと思うが、例えば極東の例は割りと興味深いな。

 極東には、生者の世界と死者の世界を分かつ場所に「三途の川」があるとされている。

 死者が正しく川を渡るためには、ロクモンセンなるものを渡して船を出してもらわないといけないらしい。

 

 その伝承の元ネタは、こういう"船"だったりするのか……。

 あるいはその伝承から派生して、こちらも"船"の形をとったのか……。

 

 実に興味深い。

 

 

 

※追記

 

 ウィンダムの廃墟の奥底には「真珠竜印のタリスマン」があった。

 これは物理以外のカット率……つまり防御力を高める効果があるタリスマンだ。

 

 これは黄金樹なき先史時代の主たる、古竜の姿が描かれている。

 ウィンダムの廃墟とは、もともと竜に連なる施設、もしくは竜への信仰に関係ある場所だったのかもしれないな。

 

 

 

◆二「煮え立ち川」

 

 ウィンダムの廃墟を通り抜けた先は、ゲルミア火山が広がっていた。

 アルター高原そのものもかなりの標高のようだが、それでもさらに高い山が西に広がっているんだ。

 

 今回はそんなゲルミア火山の、その谷となっている「煮え立ち川」にたどり着けた。

 やはり火山というだけあって地面から熱気が噴き出している。

 触れたら当然やけどを負うから、注意することだ。

 

 その他、先程の死に生きる者たちの影響か、死の煙を吐き散らす怪物達の姿も見かけた。

 奴らに呪われないよう注意してくれ。

 

 

 

 さて、この煮え立ち川には洞窟があるようだ。

 この熱気と湿気がそうさせるのか、内部は毒の温床となっている。

 

 そのせいか、朱い腐敗の関係者の姿もあるようだ。

 あるいは、このアルター高原にも何らかの理由で手を出していたのかもな。

 

 

 

 前述通り、洞窟の探索には毒の対策が必要となる。

 例えば俺の使う祈祷「火の癒しよ」とかな。

 毒などの恐ろしさは、俺の今までの手記を読んできた君達ならよく知っている筈だが、改めて警告させてくれ。

 

 

 

◆三「ライード砦」

 

 煮え立ち川の奥には「ライード砦」があった。

 この辺りは火の監視者の勢力が支配しているようで、中には「司教大炎槌」というバカみたいなハンマーを振るう者もいた。

 何故か頭部の装備から、噴火するかのように火をまき散らしていた。

 火山の在り方を真似たのだろうか?

 

 彼らの目的や、そもそも何の役目でこの場所にいたのかはわからない。

 情報不足だ。

 

 

 だが砦には兵士達の死体が大量に転がっていたことは追記しておく。

 鎧の意匠からおそらくはローデイル兵であるとは思うのだが……火の監視者との戦があったのだろうか?

 

 その他、火山館へと逃げ延びようとした者がいたという痕跡もあった。

 火山館といえば、ゲルミア火山の上の方に建つ城のことだ。

 もともとは、火山館の支配下にある砦だったのかもな。

 

 

 

◆四「亜人達の集落」

 

 ライード砦を横目に奥へ進み、溶岩から飛び出してきた溶岩土竜も何とかしてさらに道を突き進んでいくと「亜人」の姿を見ることができた。

 

 亜人は動物……特に猿……が擬人化したような姿で、しかし高い知能を持つことで知られている。

 文化面においては俺達と少々ギャップはあるが、しかし武器や投擲物を扱うという点から察せられるように侮っていい相手ではない。

 

 そんな彼らが、何故かゲルミア火山の一角で集落を築いていた。

 もしくは、既存の集落に住み着いていたというべきか……?

 

 

 しかもその集落には、知力に富んだ者達の影がちらついている。

 その具体的な姿は見えないが、一方で集落にいる亜人達は何故か魔術師達と行動を共にしていた。

 黄金律原理主義との関係があるかもしれないという情報も掴んだんだが……あるいは彼ら魔術師達がそうなのかもな。

 

 

 彼らはレアルカリアの魔術師達だ。

 魔術師は亜人とも付き合いがあるとどこかで聞いたことがあるが、それは正しいようだ。

 何せ亜人の女王に至っては杖を持ち、魔術を行使してきたからな。

 

 中々興味深いものを見れたぜ。

 

 

 

 魔術師についてだが、彼らについてはアズールの一派……もしくはその後進であると推測している。

 集落の奥に、そのアズール当人と思わしき者がいた。

 

 アズールといえば、レアルカリアの教室の一つの起源とされている。

 そんな人物と出会えたということは、ついに俺にも魔術との縁が少し上向いてきたようだ。

 

 

 詳しい聞き込みはできなかったし、なんならまともに生命活動しているようにも見えなかった。

 肉体が結晶化しているのかもな。

 

 だが「彗星アズール」というとても貴重な魔術の知識を授けてくれた。

 これは「伝説の魔術」の一つで、極大の彗星エネルギーを魔力の限り放ち続ける大魔術だ。

 輝石の故郷とされる遥かな星空の、奔流である彗星そのものを再現し操るものだ。

 その価値は推して知るべしだろう。

 

 

 ただし、それだけに高い知力を要する魔術だ。

 そういう意味では、魔術との縁については据え置きのようだな。

 残念だ。

 

 

 

※追記

 

 ここからさらにゲルミア火山を探索できそうだが、一度この辺りで切り上げようと考えている。

 

 まだまだアルター高原は広いし、あの丘もまだいくつか寄り道できそうなポイントがある。

 次回は一度あの丘に戻って、このゲルミア火山とは別口の横道を探りたいと考えている。

 

 

 ゲルミア火山については、どうやら他にも入り口があると聞いた。

 火山の続きについては、その入り口を見つけてからにする。

 

 

 

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