名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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 つまり日陰城がメインの回です。


三十五ページ目「丘の北の谷にて」

 

 

 

◆一「旧アルター坑道」

 

 ゲルミア火山から一度「黄金樹を臨む丘」に戻り、キャンプをした。

 黄金樹から降り注ぐ黄金の粒子がとても美しい夜だった。

 

 翌朝、明るくなって黄金色に輝く空と草原を眺めていると、北の方に谷があるのを見つけてな。

 今回はその谷の方を探索してみることにした。

 

 

 早速面白そうな場所を見つけたぜ。

 

 「旧アルター坑道」

 武器を強化する鍛石を採掘する、貴重な坑道の一つだ。

 旧とつくからには、主流となる坑道は別にあって、そっちの方が面白そうな情報がありそうだ。

 が、鍛石を入手する場としてはこの旧坑道も悪くない。

 

 まだまだ鍛石は残っていて、俺もいくつか入手できた。

 

 

 

 ここで採れた鍛石は、リムグレイブやリエーニエの坑道で手に入るものと比べると、黄金を帯びたものとなっている。

 それはより品質の高い証であり、黄金樹の麓の地でよく採掘できるという。

 王都軍の精強を支えたという謳い文句もあるから、その効果は期待して良さそうだ。

 

 

 ローデイルの兵士は、特に護りに強いという。

 その実力はゴドリック兵やレアルカリア兵とは比べ物にならず、熟練の戦士であるラダーン兵に負けず劣らずの精鋭だ。

 坑道内にも彼らの一部はいたが、やはりとんでもない強敵だった。

 

 アルター高原を探索していると、彼らと遭遇する機会は多いだろう。

 そんな彼らと同じ土俵で戦うためにも、アルター高原の坑道もきちんと巡っておいた方がいい。

 

 

 

◆二「日陰城」

 

 旧アルター坑道からさらに北上して谷を進んでいくと、毒に沈んだ城「日陰城」が見えてきた。

 内部はナメクジや悪臭を放つ蛆虫塗れの亡者が蔓延っており、そして壁内もまた毒沼で満ちた不潔な場所だ。

 

 そのせいか「堕落調香師」の姿まである。

 日陰城で採れる毒やそれ由来の植物が目的なのかもな。

 

 当然、探索の際には毒への対処が必要となる。

 気を付けてくれ。

 

 

 

 なおこの城は、かの腐敗のマレニアと縁深いようだ。

 中には彼女の貴腐騎士の姿もあった。

 

 かつての城主であるマレーマレーは、マレニアに心奪われていたという情報もある。

 何ならその証拠として、マレニア由来だと思われる「戦乙女の義手」も大切に保管されていたしな。

 何らかの理由で、彼女はここを拠点の一つとしていたのかもな。

 

 

 

 おそらくはその影響なのだろう。

 城の探索には、毒だけでなく朱い腐敗への対処も必要となる。

 ケイリッドでの心得を思い出す時だ。

 

 

 

◆三「鉄茨のエレメール」

 

 狭間の各地に現れる、鈴玉狩り。

 その関係者と思わしき人物が、日陰城の最奥にいた。

 

 「鉄茨のエレメール」

 奴は城主の広間に陣取り、俺の姿を見るや否や襲い掛かってきた。

 

 

 そいつは「マレー家の執行剣」を得物とし、奴の故郷であるエオヒドの戦技を付与して振るってきた。

 剣に赤い気を宿し、宙に浮かしたまま遠くの敵を切り裂く戦技だ。

 よほど特殊な術を行使しているのか、後に入手したこの剣は"戦技の付け替え"ができない特別なものに仕上がっていた。

 

 対抗策としては、逆に近づいてしまうことだな。

 とにかく近距離戦に持ち込んでしまえば、遠くの敵を切り裂ける利点は機能しなくなる。

 お互い同じ距離、同じ土俵で戦えるわけだ。

 

 

 

 しかし、奴はここで何をしていたんだろうな。

 数々の痕跡を見る限り、エレメールはエオヒドなる異国の者らしい。

 何らかの理由で狭間の地までやってきて、しかし処刑されるような状況になったらしい。

 まぁ鈴玉狩りをしていたようだから、そういう罪で裁かれたのかもな。

 

 日陰城の本来の主であろうマレー家は、処刑人の一族であるという。

 おそらくはそのために日陰城に連行され、しかし処刑場で処刑用の剣を奪ったそうだ。

 その縁で、日陰城を乗っ取ったというのか……?

 

 

 一応エレメール自体は斃したが、それで鈴玉狩りの悪行が終わるとは思えない。

 奴に仲間がいるのか、はたまた時空の歪みが理由か、こいつの生死とは無関係に鈴玉狩りが出没することは考えられる。

 すでに斃されたからと安心して日陰城を探索したら、まだ死んでいない時空からこいつがこの日陰城にやってくるなんてことも考えられるしな。

 

 

 まぁどうせこいつ以外の脅威も少なくない。

 夜の警戒はこれからも怠らない方がいい。

 

 日陰城の探索も同様にな。

 

 

 

◆四「マレーマレー」

 

 日陰城はエレメールに乗っ取られたと思わしい。

 だからか城主は不在であり、そして内部は荒れていた。

 

 だがどうやらマレーマレー当人は逃げ延びていたようでな。

 

 

 なんとなく「黄金樹を臨む丘」へ戻る前に、日陰城西側の平原を探索していたら、そいつと出会うことができたんだ。

 問答無用で襲ってきたもんだから、返り討ちにするしかなかったけどな。

 あそこで何をしていたのか、聞くことはできなかった。

 

 

 奴は朱い腐敗の毒が滴るレイピアを使ってきた。

 その滴りが齎す腐敗は恐ろしいが、しかしエレメールなんかに比べると弱かった。

 

 マレー家の男子は皆病と共に生まれるそうで、つまり健康とは無縁だったのだろう。

 だから体も弱く、エレメールほどの力もなかった。

 

 他方で、奴が被っていた「マレー家の仮面」は、どういう理屈か神秘を高める効果がある。

 神秘とは、出血や毒といった特殊な属性を使う時に真価を発揮するステータスだ。

 もしそういう武器に頼る褪せ人がいるなら、この仮面は有用な装備になるだろう。

 

 

 

 俺が斃したからと言って、この手記を読んでいる君の世界にマレーマレーがいないとは限らない。

 必要なら、一度日陰城西の平原を訪ねてみるといい。

 

 おそらくは問答無用で襲ってくるだろうが、正当防衛さえできればこの仮面が手に入る筈だ。

 

 

 

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