名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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四ページ目「関門の向こうにて」

 

 

 

◆一「封牢」

 

 狭間の地には"封牢"と呼ばれる場所がある。

 そのうちの一つが、嵐の関門を超えた先にあった。

 

 草原の中に石畳みの遺跡があり、周りにはミミズを思わせる造形のゴーレムが何体も佇んでいる。

 

 

 封牢については知識がないから確かなことは言えないが……その名を冠するだけあって、牢の形態の一つではあるのだろう。

 そして周りのゴーレムは、看守役であるとも推察可能だ。

 

 

 

 ただ、何故このような牢が存在するのかはわからない。

 罪を犯し、社会から隔絶した場所に隔離すべき罪人を閉じ込めるなら、城の地下牢にでも放り込めばいい。

 

 にもかかわらずこのような形態をとるのは、ただの罪人ではないからなのだろうか?

 何か特別な事情を抱えている……とも推測できるが、今のところ答えはわからない。

 

 

 

 だがそれ以上に不可解な点がある。

 この封牢、外から中に入ることができるんだ。

 

 石畳みの遺跡の中央部分に触れたら、そのまま封牢の中に入ってしまったんだ。

 おまけに封牢の奥から、囚人と思わしき騎士が現れて、襲い掛かってくる始末だ。

 

 

 一応それなりに鍛えてはいるから、何とかなったが……疑問は増えるばかりだ。

 封牢の中は戦闘に耐えるほどの広さがあったあたり、戦闘を前提としているのかもしれない。

 

 

 

 一方で、朗報もある。

 封牢の囚人を倒すと、祈祷を入手することができた。

 

 封牢が作られた理由はわからずじまいだが、褪せ人にとっては、これは物資や宝を入手できるロケーションとして認識していいだろう。

 苦しい旅の状況を打開するアイテムが欲しければ、一度こういう場所に寄り道するのも手だぜ。

 

 

 

◆二「遺灰」

 

 旅の途中で立ち寄ったボロ家に、遺灰が落ちていた。

 もとは誰かの持ち物だったのだろうか。

 

 周りに遺体などはなかった辺り、別次元からの落とし物という線も考えられる。

 特別な地では、時がよどんでいて、隣に誰かがいたとしてもすぐに"ずれる"程度には不安定……という話を聞いたことがある。

 この狭間の地もまたそういう不安定な場所だったとしてもおかしくない。

 

 

 それはさておき。

 俺が拾ったこの遺灰は、ある種の術に使えるもののようだ。

 

 環魂碑と呼ばれる場所の近くで霊喚びの鈴を鳴らすと、遺灰の主が一時的に復活し、召喚者を助けてくれるそうだ。

 

 

 ただし、遺灰の主たる霊体も好き嫌いというものがある。

 呼べば必ず助けに来てくれるとも限らないから要注意だ。

 

 ま、そもそも俺は"霊喚びの鈴"が手元にないから、試すことすらできないがな。

 きっと、縁がなかったんだろう。

 

 

 機を見て、丁重に弔うことにしとくぜ。

 

 

 

◆三「忌み鬼」

 

 忌み鬼と呼ばれる存在がいる。

 黄金の祝福なくして生まれた者達で、角を生やした体をしているそうだ。

 

 角とは呪いの証で、かの王都ローデイルでは、角を持つ赤子は皆地下に捨ててしまうんだとか。

 

 

 

 だが一方で、地下に捨てられて尚も生きる者は優れた戦士でもあるという。

 一部の者は破砕戦争にて活躍したと、いつかどこかの文献に記されていた。

 

 正直なところ、真偽のほどは定かじゃない話だとは思ってはいたんだが。

 どうやら、これについては正しい情報だったらしい。

 

 

 ストームヴィル城に近づくと、忌み鬼の噂話が聞こえるようになった。

 道中で、おそらくは"別次元"の者であろう褪せ人と情報交換をすることができてな。

 

 ストームヴィル城に近づく者を、悉く殺す忌み鬼がいるのだと。

 すでに何人もの戦士が潰されたとのことで、一部は彼へのリベンジを誓い、状況打開の術を探りに他の地域を巡ると語っていた。

 

 

 

 その話を聞いて、俺も一度ストームヴィル城に向かうのはやめることにした。

 流石にそう何度も強敵との戦闘に耐えられるわけじゃない。

 

 ひとまずのところは、俺も他の地域を巡ってさらなる情報を集めようと思う。

 この手帳に記す情報は、多ければ多いほどいいからな。

 

 

 

◆四「円卓」

 

 以前、俺は別の世界や場所に迷い込むことはよくあることと記した。

 それと同じことがまた起きたから、迷い込んだ先の場所のことを記しておこうと思う。

 

 今回俺が迷い込んだのは"円卓"と呼ばれる場所だ。

 円卓とは、エルデンリングを求める褪せ人達のための拠点でな。

 中には多くの褪せ人がいた。

 

 

 文字通り巨大な円卓と、その上に煌々と輝く巨大な祝福の輝きを中心に、城館のような景色がずっと続いている。

 円卓横の暖炉はずっと火を入れられていて、祝福の輝きも相まって暖かい。

 雨風を凌ぐ場としては最高だろう。

 

 それに、それぞれの褪せ人と情報交換する場としても期待できそうだ。

 曰く、ここは避難所のようでもあるらしいからな。

 

 また、戦いに挑む褪せ人が集うだけあって多くの武具が揃っている。

 彼らに奉仕する役目を持つ鍛冶屋もいるから、ここで一度武器を整え直すの手かもな。

 鍛治台で鍛えるよりも、彼ならより確実で効果的に武器を強化してくれるようだ。

 どのみち鍛石はいるがな。

 

 

 

 あと、特筆すべき点として"本"の存在がある。

 誰かが持ち込んだのか、それとももともと貯蔵されていたのか、大量の本や資料があちらこちらに転がっている。

 これはとても興味深いもので、せっかくだからここで情報収集に徹しようと思う。

 本を読むための椅子やテーブルもたくさんあるし、読書の場としても最適だ。

 

 書斎の主であろう老人の説得には骨が折れそうだが、試す価値はある。

 

 

 




 次回更新は1/2の夕方ごろを予定しています。
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