名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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三十八ページ目「ドミヌラ付近にて」

 

 

 

◆一「大橋の北」

 

 森渡の大橋の北側には、いくつか風車が建てられている。

 そのまま辺りを散策してみると、村にたどり着いた。

 

 風車村ドミヌラ。

 高原に相応しく、風の力を頼りとする村だ。

 風車の存在が、その目印となるだろう。

 

 珍しいことに、かつての営みを部分的に垣間見ることができた。

 ドミヌラでは、丁度祭りをやっているようなんでな。

 せっかくだから参加を申し込んでみた。

 

 

 速攻で襲われてしまったがな。

 奇しくも祭りの雰囲気を壊してしまう結果となってしまった。

 

 俺が参加するまでは、村の住民は笑いながら踊っていた。

 実に長閑な景色だったよ。

 

 

 

 他に記すべきこととしては、この村はいくつか牧場を管理しているようだ。

 大橋の付近にある三つの風車が、それらしい。

 

 つまり、この村では畜産が盛んだったのだろうと推測できる。

 個人的には農産もあるとにらんでいるが、その証拠は見つかっていない。

 

 牧場の方も荒れ放題だったからな。

 一つはネズミが繁殖し、一つは混種がやりたい放題。

 残りの一つもお察しだ。

 

 

 

 エルデンリングが砕けた悪影響は、やはり相当なもののようだ。

 

 

 

◆二「祝祭」

 

 ドミヌラの祭りは、祝祭というらしい。

 ニュアンスとしては、収穫などを祝うものだろうか。

 

 俺が垣間見た限りは、笑って踊るものだ。

 つまりポジティブな意味が主題だろう。

 まぁ祭りってのはえてしてそういうもんだ。

 

 黄金色に輝く草木や民家を、色とりどりの花で可憐に飾っている。

 それだけ見ると、本当に長閑だ。

 

 

 

 だがドミヌラの祭りは、後ろ暗いものを抱えたもののようだ。

 

 

 踊り子たちの礼服を入手できたんだが、何故か血汚れがうっすらと見える。

 

 そして彼女らが俺を襲った時、手鎌や鉈、鋤などで襲い掛かってきた。

 本来は農作業とかに使う道具なんだろうが、恐ろしいことに彼女らが振るうそれは人骨を素材としているらしい。

 

 

 ぞっとする話だ。

 なんなら、人の皮を剥ぐといった与太話まで仕入れることができた。

 

 

 どうやらとんでもない村に迷い込んでしまったようだな。

 

 

 

◆三「神肌の使徒」

 

 ドミヌラの奥には「神肌の使徒」がいた。

 俺が使う祈祷「黒炎」の、本来の使い手の一人だな。

 

 このドミヌラが物騒なのは、彼に理由の一端があるのかもしれない。

 神肌の使徒と、ドミヌラの踊り子たちは上下関係のようでな。

 使徒が踊り子を俺にけしかけてくる場面もあった。

 

 

 とても厄介な場面だったが、まぁ何とかはなったよ。

 

 

 

 使徒からは「神肌剥ぎ」という武器を入手できた。

 どうやら特殊な形状の"両刃剣"のようでな、片方は切り裂く鎌の刃、もう片方は穿つ螺旋の針を持つ。

 対称性のない両刃剣は珍しく、使用にはかなりの熟練を要するだろうな。

 

 皮を剥いだり、あるいは縫ったりするための道具だろうか。

 彼ら勢力の名前が「神肌」だからか、そういう邪推をしたくなる。

 

 

 またこの武器には黒炎の力が宿っているようで、戦技「黒炎の渦」という形で彼の術を行使できる。

 こいつの刃に黒炎を乗せて振るうことができるってわけだ。

 

 なかなか面白い使い方が出来そうだが、俺は棍棒やロングソードといったシンプルな方が好みだ。

 こいつは資料としての保管に留めておく。

 

 

※追記

 

 神肌剥ぎ以外にも、使徒は興味深いアイテムを落としていった。

 

 

 祈祷「薙ぎ払う黒炎」

 黒炎で前方を大きく薙ぎ払う祈祷だ。

 

 牽制目的に圧倒したり、あるいは大型の敵を効率的に焼くといった使い方が出来そうだ。

 一方で使用にはそれなりの信仰を要する。

 

 普通の祈祷「黒炎」ほどの射程もなさそうだしな。

 扱いには相応の熟練を要するだろう。

 

 

 

◆四「火の大罪」

 

 ドミヌラでは、最も不吉な預言に由来する祈祷が手に入るらしい。

 俺は見つけることができなかったが、"別の世界"ではそういうこともあるらしい。

 

 うまいことそういう褪せ人から話を聞きだせたので、一度記してみることにした。

 

 

 何でも絵画に由来して入手できる祈祷で、ドミヌラというよりは黄金樹を見上げるロケーションとしての関連性が疑われるとか。

 

 

 

 「火の大罪」

 周囲と共に、自らを激しく焼く。

 術者の炎上はしばらく続き、自身は勿論近づく者全てを焼き続けるという。

 

 これは預言者が見るという未来の、一つの姿だ。

 預言者はしばしば火の祈祷を見出すが、これはその最も真実に近いものだそうだ。

 

 もうすぐ、黄金樹は種火により滅び燃え上がる。

 それは、原初の大罪。

 人の身には決して許されない行いだ。

 

 

 だから、そういう預言をする預言者は人々から迫害されるのだろう。

 

 

 

 ……もう、今更だな。

 俺は、異端者だ。

 

 だから、黄金樹が燃えるという預言に目を背けるつもりはない。

 火の祈祷が時折見いだされ、神肌の黒い炎や、いつかどこかの霊炎……そして個人的に認めたくないが……狂い火といった数々の火の祈祷までも見出されるのは、"これ"が理由だろう。

 

 黄金樹は、きっと永遠じゃない。

 いつかは終わりが訪れる。

 

 

 

 その時は、きっと近い。

 そう確信しているから、俺は神肌の「黒炎」や火の僧兵の「火の癒しよ」を手放せないのかもな。

 

 

 

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