名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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四十一ページ目「火山館付近にて」

 

 

 

◆一「火山館について」

 

 降る星の成獣がいた一帯から、大きな建物を見下ろすことができた。

 ここが噂の「火山館」だ。

 

 

 火山館は、ゲルミア火山を本拠とする狭間の一大勢力だ。

 ライカードを主とし、「黄金樹へ弓引く」として褪せ人狩りを生業とする者達だ。

 

 狭間の各地で褪せ人を襲う侵入者の一部は、火山館からの刺客であるという。

 

 

 かつては王都ローデイルとも大きな戦があり、その結果はかなり凄惨な形での相打ちのような終わり方だったという。

 故に火山館もローデイルも、かなり疲弊しているのが現状だろう。

 

 そのためか、火山館は褪せ人を招き入れている。

 彼らを「黄金樹へ弓引く」目的へと誘い、血の指として褪せ人狩りに送り出しているというわけだ。

 

 うまく立ち回れば、火山館の主であるライカードの大ルーンを手に入れるチャンスが巡ってくるかもしれない。

 案外潜入調査として、火山館の一員になるのも手かもな。

 

 

 

 

 だが、俺はここの調査については断念した。

 

 まず第一に、火山館には「狂い火」とかかわりがある疑いがある。

 火山館近くの戦場跡は、狂い火の病に罹患した者達が彷徨っている。

 その近くの亜人に狂い火とのかかわりが見られなかったことから、その次に近い火山館が関与していると疑うのは妥当だと思っている。

 俺は狂い火に対する姿勢を改めようと考えているからな……すまない。

 

 

 

 第二に、潜入調査の過程で「褪せ人狩り」を強要されるパターンが想定できるためだ。

 俺は同胞である褪せ人を、積極的に殺したくはない。

 

 異端者が綺麗ごとを言っても仕方ないが……しかし、俺の情報集めは結構な比率で他の褪せ人からの助けで成り立っている側面がある。

 彼らとは、これからも仲良くしておきたいからな。

 正当防衛ならまだしも、俺個人の目的のために他者を害するようでは、彼らからの信頼を失ってしまうだろう。

 

 

 だから、俺はここまでだ。

 

 

 

◆二「ゲルミア火山の地図」

 

 ゲルミア火山の地図がある石碑は、火山館から降りて行った道の途中にある。

 大量の死体が山となり、そして多くが吊るされている冒涜的な街道のど真ん中にあった。

 

 

 つまりリムグレイブほどの警備の痕跡が見られないことを意味する。

 

 ……のだが、この道は道中に大量のバリゲードが築かれている。

 また道を下りた先は、麓でも見た崩れた橋に繋がっている。

 

 

 火山館側も、奴らなりにこの地図をうまく防衛しようとした痕跡が見受けられているというわけだな。

 

 おそらく平時では罪人を連行するための道だったこともあり、地図の管理は適切であったと考えるのが自然だ。

 警備の痕跡がリムグレイブの地図より少ないのは、単に破砕戦争の爪痕とエルデンリングが砕けたことによる影響とみるべきかもしれないな。

 

 ……ああ、そういえば俺はこの辺りでも地形変動を疑ったな。

 あるいはそれも理由の一つかもな。

 

 

 

◆三「爛れた樹霊」

 

 エルデンリングが砕けた影響は、むしろ黄金樹に近い地ほど強いのかもしれない。

 

 ゲルミア火山にもある小黄金樹は、しかし正常な「黄金樹の化身」はいなかった。

 代わりにいたのは「爛れた樹霊」なる怪物だ。

 

 ケイリッドにいた「腐敗した化身」とも異なる、まさしく焼け爛れたような肉体を持つ化け物だ。

 

 

 

 あるいはゲルミア火山の各地に積み上がる死体が、小黄金樹を蝕んだのかもしれない。

 火山館のライカードは冒涜に耽っているという噂話もある。

 これの影響もあるかもしれない。

 

 いずれにしろここの化身はまともな状態ではなく、故に竜とか蛇にも似た長い体躯を特徴とする。

 その体躯を活かした攻撃のリーチは侮れないぜ。

 

 だが奴には、俺の「黒炎」がよく効いた。

 炎属性の攻撃が奴の弱点となる筈だ。

 

 

 

 ちなみに。

 ゲルミア火山の爛れた樹霊を倒すと「鉛色の硬雫」と「青色の秘雫」を落としていった。

 

 それぞれ「一時的に強靭度を高める」「ごく短時間のみ、すべてのFP消費がゼロになる」効果だ。

 

 特に後者は、魔術使いならとても嬉しい効果だろう。

 特定の魔術は負担が大きいから、その魔術を使う時にこの雫の力を借りればかなり余裕ができるだろう。

 

 遺灰を呼び出せる褪せ人なら、遺灰を呼ぶときだけに使ってFP消費の負担を和らげる……というような使い方もできるだろうな。

 遺灰の霊体の召喚も、ものによっては大きくFPを消費してしまうだろうから、これはいい選択肢になる筈だぜ。

 

 

 

◆四「ウィンダムの地下墓」

 

 ゲルミア火山については、俺が記載できる情報はおおよそ記載できた筈だ。

 爛れた樹霊がいる小黄金樹の広場を降りれば、前述の崩れた橋に至る。

 

 その橋を飛び降りた先は、以前にも訪れたゲルミア火山の入り口だからな。

 もう十分探索出来た筈だ。

 

 

 

 だがゲルミア火山を去る前に、一つ見落としがあったのでその件に触れたい。

 

 

 

 俺の見落としは以前紹介した「ウィンダムの廃墟」のすぐ北西にある。

 「黄金樹を臨む丘」と、ゲルミア火山下層の「煮え立ち川」の境界線ぐらいの位置だな。

 

 

 「ウィンダムの地下墓」だ。

 名称的にウィンダムの廃墟との関連を窺い知れる。

 

 中は一般的な地下墓で、遺灰を強化できる墓すずらんを入手できる。

 大がかりなギロチンや、雷属性のトラップが特徴となるだろう。

 水浸しの地面と、インプが投げる雷壺の組み合わせもよくない。

 雷に対する対策があれば持っていくといい。

 雷カット率を高める「雷竜印のタリスマン」なんかが手頃でおすすめだ。

 

 

 そんなウィンダムの地下墓の最奥には「すずらん摘みの鈴玉」が眠っていた。

 円卓の双子に渡すことで、遺灰を強化できる「墓すずらん」を湯水のように買えるようになるアイテムだ。

 

 これは名前のないタイプの遺灰を強化できるすずらんを販売してくれるもので、そういった遺灰との付き合いがある褪せ人には有用な代物となるだろう。

 この鈴玉は比較的低位のすずらんを販売するものだが、高位の強化を施すためには低位の強化も済ませなければならないから、とても役に立つはずだ。

 

 

 

 俺とは無縁の遺灰絡みとはいえ、こんなお宝が眠る場所を見落としてしまったなんて……。

 他の褪せ人達との情報交換がなければ、気づけなかったことにすら気づけなかったことだろう。

 

 こういうことがあるから、縁というものは大切にしておかないと……と気づかせてくれる。

 これを読んでる君も、友は大切にした方がいいぜ。

 

 

 




 次回配信日は4/4予定です。
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