名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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四十五ページ目「王都ローデイルにて【3】」

 

 

 

◆一「王都の円卓」

 

 竜の遺体にとりつくことでようやっと登ることできた「王都西城壁」。

 

 この城壁は、外敵から都市を守るためのものではない。

 西にある巨大な城館を、市勢から隔離するための城壁なのだろう。

 

 

 つまり、ここから西にある城館が「王都ローデイルの城」なんだろう。

 

 

 城館内部は、驚くべきことに見覚えのある景色が広がっていた。

 

 あの、褪せ人達の拠点となっている"円卓"と全く同じ構造になっているんだ。

 同じ構造ではあっても同じ場所ではないようで、内部に鍛冶屋や仲間の褪せ人の姿はない。

 

 

 俺の推論なんだが、あの円卓はこのローデイルの城館をモデルに作られた祝福の空間なのだろうな。

 もしくはあの場所をモデルに、ローデイルの城館が建てられたのかもしれない。

 流石に、どちらが真実かはわからない。

 

 いずれにしろ、時空の歪みゆえかこの場所にかつての円卓の痕跡が見受けられる。

 それは武器に聖属性の力を込めて強化する「聖なる砥石刃」であったり、鍛冶屋の振るうハンマーであったり。

 あるいはかつての円卓の戦士達の痕跡……とかな。

 

 

 余裕があれば、一度訪ねてみるのもいいだろう。

 

 

 

◆二「城館の中庭」

 

 城館一階の扉の一つから、中庭に出ることができる。

 俺が訪れた時は何故か鉄人形が警備していて、気が抜けない危険地帯となっていた。

 

 だが平時は、王達に癒しを提供する花園だっただろうな。

 

 城館の壁と回廊に囲まれる、光差す庭園。

 荘厳ながらも美しい、いい景色だった。

 

 

 

 一方で、その花園には特別な意味も込められている。

 

 中庭の南西側に昇降機があり、その先に行くと神授塔への入り口があった。

 といっても、ローデイルの敷地内にあの巨大な塔があるわけじゃない。

 

 

 それは転送門を通じて行ける「孤絶した神授塔」への道だ。

 生憎扉は閉ざされていたから、これ以上の情報はないがな。

 

 

 平時において神授塔がどのような役割を果たし、どのような機能を有していたかは未だ調査中だ。

 だがかなり仰々しい、儀式的な意味合いが込められているのは想像に難くない。

 

 あの中庭は、そのための場所でもあったのだろう。

 

 

 

◆三「王都の闘技場」

 

 リムグレイブやケイリッドにもあった闘技場が、王都にもあった。

 それは王都西城壁から伸びる道でのぼっていける、坂道の上に聳え立つ。

 

 

 ここはかつて、最初の王ゴッドフレイによる時代に栄えたもの。

 立地からして、王都の闘技場は娯楽としての側面より儀式的な側面の方が強く感じる。

 

 なんせ城館を脇にする道を通らなければ闘技場にいけないからな。

 

 

 それとも、俺が見つけてないだけで市民用の道があるかもしれない。

 だとすれば、俺の考察は外れていて"そういう側面"もあったかもしれないな。

 

 

 

 ただ、いずれにしろゴッドフレイからラダゴンへと時代が移行すると同時に、闘技場の文化は廃れてしまった。

 今となっては、時空の歪みとずれの狭間で褪せ人達が鎬を削るのみだ。

 あるいは、今こそが闘技場としての本領を発揮しているかもな。

 

 

 

◆四「最初の王、ゴッドフレイ」

 

 噂をすればなんとやら。

 

 黄金樹そのものへ近づこうと、地面から伸びに伸びる大樹の道を使い「黄金樹の大聖堂」にアクセスした。

 するとそこで「最初の王、ゴッドフレイ」に襲われた。

 巨大な斧を振るう、筋力に優れた巨漢の戦士だ。

 

 

 まぁ、何とかはしたよ。

 どうやら俺も、ラダーン祭りを経たことで強くなったようだ。

 その力は、かの戦士に値するものだったようだ。

 

 ……なんてな。

 流石にそれは己を過信しすぎだってことはわかる。

 

 

 それに今回襲ってきた最初の王は、幻影だ。

 何らかの祈祷か術で召喚され、大聖堂の番人に仕立てられていただけの、ただの防御機構でしかない。

 その力は、その祈祷か術の限界程度までしか発揮できず、故に本来の王の力はもっと強大なものだっただろう。

 

 気を引き締めていかないとな。

 

 

 

 さて。

 黄金樹の大聖堂は、黄金樹の眼前に築かれた宗教的もしくは儀式的な建物だろう。

 

 黄金樹の絶対性や、信仰の痕跡から、政もここで行われていたかもしれないな。

 政治と宗教が必ずしも別であるとは限らないし、どうやら古い時代では信仰が戦いと共にあったらしいしな。

 

 

 「黄金律原論」という、黄金律原理主義の祈祷書もここに眠っていた。

 知力を必要とする祈祷の書物だから俺には扱えないが、それでも信仰も要する祈祷書でもあるから、黄金律への信仰と密接に繋がる証拠には違いないだろう。

 

 

 

 それにしても。

 この場所、下からはどのように繋がっていたんだろうな?

 

 下へと続く昇降機はあったが、その先の住宅街は下の街と出入りできる道はなかった。

 それとも、エルデンリングと王都が壊れたから失われただけだろうか?

 

 

 




 これにて「一日二話更新」は以上となります。
 ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

 それはそれとして王都ローデイル編はもうちっとだけ続きます。



 次回は「王都ローデイルにて【4】」、アルター高原編最終話となります。
 4/6の朝にて配信予定です。



◆◆4/6追記


 ※後々から気づいた情報
 王都の円卓には「二本指の祈祷書」があります。
 これは祈祷の師に渡すことで「王たる回復」「王たる癒し」を学べます。

 「王たる回復」は、「回復」や「大回復」の上位互換。
 信仰20と比較的低い信仰値で使用可能なのに、「大回復」より効果的に回復可能なのがうまみ。やや燃費が悪いのはご愛敬。
 トニーもまた信仰キャラなので触れておくべきかと考えましたが……執筆当時思いっきり見逃していました。

 他方で「王たる癒し」は毒状態を癒し、それ以外にも出血や睡眠の蓄積も軽減します。
 ただしここまで来ても朱い腐敗を癒せない辺り、如何に黄金樹が腐敗に対して無力なのかがよくわかります。
 ミケラが黄金樹を見限ったのも、この性質が大きいのではと疑っています。
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