名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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 気合でめちゃくちゃ巻いた回です。


五十一ページ目「聖別雪原について【2】」

 

 

 

◆一「聖別雪原の川」

 

 聖別雪原の中間部に、大きな凍り付いた川がある。

 

 これは俺が「巨人たちの山嶺」の古遺跡を取材した時に通った川の、下流ということになる。

 まぁつまり古遺跡と聖別雪原は隣り合った位置にあるというわけだが、途中は大きな滝があるように、高低差が激しい。

 やはりここから聖別雪原にアクセスするわけにはいかないようだ。

 

 

 それはさておき、この聖別雪原の南部と北部を分けるようにある川には、色々と情報が眠っているようだ。

 

 

 川の東側に行けば、かつての巨人戦争の成れの果て「大土竜、テオドリックス」の縄張りにたどり着く。

 もとは古いトロルの戦士だそうだが、おそらくは竜餐の力に頼りすぎたようだな。

 

 またその縄張り近くには「寄る辺の洞窟」があるそうだが、入り口はインプ像によって封印されている。

 これ以上の情報はなかったが、どう考えたってとんでもないお宝が眠っていそうだ。

 もし縁があれば、寄ってみるといい。

 

 

 

 他方で、川を北西の方へ進んでいくと「歩く霊廟」に襲撃される。

 この「歩く霊廟」は、「巨人たちの山嶺」からでも遠くに見えるのが印象的だったが、それ以上に青白い炸裂弾を放ってくる危険な存在のようだ。

 おそらくは聖別雪原北西に鎮座する「棄教の廃屋」を護る意図があると推測できる。

 同施設は、しろがね人にとってかなり特別な施設らしい……という情報があるのが根拠だ。

 

 ただし俺では事実の確認ができないため、これについての真実も俺以外の誰かに託すこととなる。

 口惜しい限りだぜ……。

 

 

 

◆二「典礼街オルディナ」

 

 凍り付いた川や古代樹を通り抜けた北部に、かつての街の跡がある。

 

 「典礼街オルディナ」

 典礼とは儀式だとか祭りだとかを指す言葉だが、つまりは信仰の影響力が強い場所ということだろう。

 

 

 一方で、街を訪ねてみても住民の類は殆どいなかったという。

 付近にはしろがね人の姿がいくつもあったというのに、その街にはいないのだという。

 不可思議なこともあったもんだ。

 

 

 他方で。

 この街は、特に「ミケラの聖樹」に続く道が隠されているという、とても重要な場所だ。

 だが、だからこそ試練があるのだという。

 

 その試練がどういったものか……は、すまない。

 聞き込みそのものは試みたが、確実な情報としてまとめることができない。

 

 

 

 ただ、この試練を突破した別時空の褪せ人は、蛇笏のようにしろがね人を嫌っていた。

 この世から消えてしまえばいいとすら吐き捨ててな。

 

 つまり、それほどまでにしろがね人が脅威に思えるような、そんな試練であることだけは推測可能だ。

 例えば、彼らの霊体が番人として立ちはだかる……とかな。

 

 

 

 しろがね人は弓の名手だ。

 弓に対する備えが、試練に対して有効かもしれない。

 

 あるいは、しろがね人の弓から逃れるためなら、隠密に徹するのも手かもな。

 世の中には「暗殺の技法」なる戦技や、他にタリスマンの中に「装備者の立てる音を完全に消す」ものがあったりする。

 以前俺が訪ねた「蜃気楼の魔術師塔」にて眠る、魔術「見えざる姿」も使えるかもしれない。

 

 

 

◆三「腐敗の聖樹」

 

 オルディナに隠された転送門の先に広がるは「ミケラの聖樹」だ。

 

 ここを訪れた褪せ人曰く、最初に感じたのは鼻を酷く刺激する腐敗臭だったそうだ。

 つまりミケラの聖樹は腐敗している。

 それはミケラの妹であるマレニアの影響かもしれない。

 彼女はミケラの聖樹の奥底にて眠っているそうだ。

 

 

 余談だが、聖別雪原にも腐敗の影響があるそうだ。

 オルディナ東にある小黄金樹の化身は腐敗していて、また雪原各地にいる闘士も腐敗に塗れている。

 これはいずれも聖樹にいるマレニアの影響と考えるのが妥当だろう。

 

 

 

 なおそんな有り様でありながら、聖樹にはローデイルにもいた「神託の使者」たちがいたという。

 彼らは「新しい神、あるいは時代の予兆ともされる」そうだが、ここの場合はミケラに呼応して存在しているのか……?

 

 それと聖樹の下部には、白い建材が特徴の街がある。

 腐敗に塗れていてとても住めたものではなさそうだが、逆に言えば腐敗に適した者達にとっては穏やかな楽園のようでもあるらしい。

 例えばそれはキノコが生えた亡者や、その地に適応していると思わしき混種たちなんかがそうだ。

 ミランダフラワーの姿もあったらしい。

 

 

 

 そして、話を聞いているうちで最も興味深いのは、魔術師達もその地にいたという情報だ。

 

 曰く戦を鎮める「ハイマの魔術師」がいて、さらにはカーリアと縁深い騎士とされる「ローレッタ」の姿もあった。

 当然いずれも魔術を用いる戦士であるから、ここの攻略には魔術に対する備えも必要となるだろう。

 

 

 

 レアルカリアやカーリアと縁がある者達まで聖樹にいるのは、ミケラの思惑故か、それともミケラ自身リエーニエに何らかの縁がある故か。

 しろがね村もリエーニエに隠されていて、さらには俺が以前ミケラの力の源泉と疑った「結びの教会」も同じ地にある。

 

 ミケラとリエーニエ。

 もしかしたら、何か大きな繋がりがあるかもな。

 

 

 

◆四「エブレフェール」

 

 ミケラの聖樹の下層は、黄金の都市が聳え立っている。

 その都市の名は「聖樹の支え、エブレフェール」というそうだ。

 

 この都市には聖樹兵と呼ばれる者達が警護にあたっている。

 狂的な忠誠心が特徴で、腐敗した聖樹で主を待ち続ける気概は勿論、雑兵に至っては自爆すら厭わない信仰心を持っている。

 それほどまでに、ミケラは慕われていたそうだな。

 

 

 大樹の麓に、落葉が舞い散る風と黄金の都市。

 さながら王都ローデイルのようだ。

 

 下層こそが兵や騎士が集まる中枢の都市で、上層は難民などのための場所……という構造なのが面白い。

 あるいは、これが「ミケラの王都ローデイル」なのかもな。

 

 

 

 

 だがこの地を訪れた褪せ人に曰く、この地にミケラの姿はないそうだ。

 何やら聖樹に宿ろうとした痕跡があったそうだが、何者かが聖樹を切り開いて幼子を奪ったという。

 

 つまり、ミケラ自身は別の場所にいるということだな。

 その件についてはまだ手がかりが残っている。

 別のページで語ろう。

 

 

 

 さて。

 聖樹最下層には、あのラダーンと相打ったマレニアが眠っていた。

 曰くミケラのことを待っているそうだが……その件については、それ以上の情報はない。

 

 訪ねた褪せ人は問答無用で襲われて、退けてしまうしかなかったそうだからな。

 ……最強のデミゴッドを退ける褪せ人というのは、それはそれでとんでもない存在なんだが、この手記の本懐ではないので割愛する。

 

 余談はさておき、マレニアは倒れた後、朱い花へと姿を変えてしまったそうだ。

 それはマレニア自身を蝕むもので、しかしいずれ彼女を女神へと至る証左であるという。

 

 

 

 腐敗はマレニア自身を苛むもの、という情報もある。

 彼女にとって腐敗とは何を意味するのか……その朱い花は、狭間に隠された真実の一端だろう。

 

 又聞きとはいえ、その情報に触れることができたのは実に幸運だった。

 

 

 

※追記

 

 ミケラとマレニアにとっての本拠地ということもあって、この地にはお宝が眠っている。

 

 

 最下層に眠る「竜印の大盾のタリスマン」なんかがその一つだな。

 物理カット率を、きわめて大きく高めるものだそうで、軽装でも怪物の一撃を耐えられるようになるそうだ。

 

 

 

 それ以外にも、最下層墓地には「霊姿摘みの鈴玉」が眠っている。

 これは名前付きの遺灰を強化する「霊姿の墓すずらん」を多数入手できる代物。

 

 エブレフェールのものは、より高位のすずらんを購入できるようになるから、遺灰に縁があってこの地にも縁がある褪せ人なら必ず寄るといい。

 この鈴玉のすずらんで強化した遺灰なら、もしかしたら並のデミゴッドに準ずるほどの力を発揮してくれるかもな。

 

 

 

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