名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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五十二ページ目「聖別雪原について【3】」

 

 

 

◆一「モーグウィン王朝」

 

 ミケラの聖樹とは別に、聖別雪原から至れる地がある。

 それはあの"血の君主"モーグの本拠地であるという。

 

 聖別雪原西部。

 「イエロ・アニスの廃墟」と、「棄教の廃屋」の間ぐらいにある古代樹の森。

 そこからさらに西の崖際に隠された転送門が、モーグの地へ至る道だ。

 

 

 モーグウィン王朝。

 星空が浮かぶ地底世界、古い文明の墓場を改造したと思わしきモーグの朝廟。

 そこが血の君主の隠れ潜む地にして、血の指達の一派の王国だ。

 

 

 ここの特徴は血にまみれた地形だな。

 とにかく血の匂いが酷く、その源泉たる血の池はどこまでも広いそうだ。

 出血に対する備えが必要……なのは今更だな。

 

 

 

 他方で、この地にもしろがね人の姿はあるという。

 ここはオルディナにいたような手合いとは色々と様子が違うようだが、ただしろがね人の縋る場所の一つという意味ではどこか聖樹と似ている。

 

 聖別雪原から至れる地ということもあってか、ここでもしろがね人との縁があるようだ。

 

 

 

◆二「白面」

 

 白面。

 それは戦場の介錯者たる従軍医師たちの装束として有名であるらしい。

 

 ストームヴィル城で入手してからずっと致命攻撃用に愛用している「慈悲の短剣」があるんだが、もともとは彼らの武器のようだな。

 この場合の医療とは慈悲であり、戦場における慈悲とは介錯を意味する。

 

 言ってしまえば、従来の白面は安楽死のプロフェッショナルということだろう。

 

 

 

 だが彼らの一派は、血の君主に攫われたのだそうだ。

 故に、今日での白面とは血の君主の尖兵を意味する。

 

 血の王朝でも彼らの姿はあったようで、出血を伴う祈祷「蝿たかり」を使用する。

 血の沼の汚物から湧く蝿を飛ばすという、悍ましい祈祷だそうで、無数の蝿に噛まれることで出血してしまうそうだ。

 

 また先述通り彼らは「慈悲の短剣」を武器とするが、王朝の彼らは出血の属性や戦技を付与して振るってくるそうだ。

 あの手この手で出血させようとする気概を感じさせるな。

 

 

 

 ところで、出血とは神秘のステータスにかかわる状態異常だ。

 先述の祈祷「蝿たかり」も、祈祷でありながら神秘のステータスも要求する珍しいもの。

 

 逆に言えば、出血効果は神秘ステータスと一定のつながりがあるということでもある。

 

 

 他に神秘がかかわるのは、毒が代表的だな。

 それ以外にも睡眠や発狂にも影響するそうだな。

 

 これらと縁がある神秘。

 これは、一体何を意味する概念なのだろうな?

 

 

 

◆三「血の君主モーグ」

 

 血の君主モーグ。

 ミケラやマレニアなどと同じく、円卓が居場所を把握していない、だからこそその場所を追っている謎のデミゴッドの一員。

 そいつは、やはりモーグウィン王朝の奥地にて鎮座していた。

 

 モーグの配下達がそうであるように、モーグ自身もまた出血を操る戦士だそうだ。

 だが実際に対峙した褪せ人曰く、彼の出血は炎を伴うものであったという。

 即ち、"血炎"だ。

 

 

 

 また、より特徴的な行動として、リーチの長い槍を突き上げて「数え上げる呪い」を繰り出すことだな。

 この呪いは回避不可であり、三つ数えられた後に、血の儀式による莫大なダメージを喰らってしまう。

 

 これの唯一の回避手段は、以前アルター高原であったエレオノーラから得た「浄血の結晶雫」を霊薬に配合して飲むことだけ。

 逆に言えばエレオノーラの「浄血の結晶雫」とは、この呪いに対する備えであったというわけだな。

 

 

 

 地味なところだと、リーチの長い槍による攻撃が馬鹿にならないこと。

 それから先述の数え上げる呪いの後は、何故か翼を生やして跳躍力を獲得し、また槍の斬撃にも血炎を纏うようになるところも戦士としての特徴だな。

 

 

 

 一方でデミゴッドとしての情報は、あまり多くない。

 

 王朝を開くという目的を有していること。

 そして、王朝の最奥にミケラを眠らせていたことぐらいか。

 

 

 

◆四「ミケラ」

 

 ミケラは、モーグウィン王朝の最奥にいた。

 ただし、マレニアやモーグなどと異なり行動不能の状態のようであるらしい。

 

 王朝の最奥にある祭壇で、繭の状態でずっと眠っているらしい。

 現地に赴いた褪せ人が見ることができたのは、枯れた腕だけだったという。

 

 

 

 曰く、聖樹に宿ろうとしたところを、モーグによって攫われた。

 これがこの経緯だと思われるが、これ以上確かな情報は多くない。

 

 

 ミケラには「愛するを強いる」力がある。

 ミケラを待つマレニアや、ミケラを攫ったモーグに対して、この力を一切使っていないという保証はない。

 

 もしかしたらモーグに攫われることすらミケラの計画のうちかもしれないんだ。

 

 

 

 それから「ゴッドウィン」と「死に生きる者たち」の件もある。

 これらとミケラは繋がっているという真実まで掴めたのは記憶に新しいが、それがこの聖別雪原での情報とうまく噛み合わないようにも思える。

 正直なところ、肝心な情報が抜け落ちているという感覚を否定できない。

 

 

 

 だがまぁ、これ以上は嘆いていても仕方ない。

 ミケラの居場所は判明し、そして奴が行動を起こさないところまでは情報として得られた。

 それだけでも、真実に近づけていると喜ぶべきだろう。

 

 

 

 

 さて。

 ミケラと聖別雪原についての情報は以上となる。

 思った以上の寄り道になってしまったな。

 

 情報源となる褪せ人とももう別れてしまったから、次からは従来通り俺の旅路を記していくこととなる。

 

 

 つまり、次回は「巨人たちの山嶺」の氷結湖からだ。

 楽しみにしていてくれ。

 

 

 

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