名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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五十三ページ目「氷結湖にて」

 

 

 

◆一「凍てつく霜、ボレアリス」

 

 古遺跡の東に広がるは、氷結湖。

 文字通り凍り切った湖という具合で、だから古遺跡の川同様に踏みしめても落ちることはない。

 

 この辺り……というか、巨人たちの山嶺自体にも同じことが言えるが……動物達の霊体がのどかに行き交うのが印象的だった。

 霊クラゲの姿もある。

 ふよふよと浮遊している姿は、どこか癒しを見出せそうだ。

 

 霊といえば、巨人たちの山嶺には実態を持たない青白い木が多数見られる。

 針葉樹のようだが、あいにく植物については明るくないのであまり情報を探れそうにないな。

 

 

 いずれにしろ、この地が特別な場所であることを如実に表す景色であることは違いないだろう。

 

 

 

 さて。

 この湖だが、どうやら強大な竜の縄張りでもあるらしい。

 

 「凍てつく霜、ボレアリス」

 吹雪の中に佇む、強大な竜だ。

 奴は冷気のブレスを操る強敵で、流石に鍛えた俺でも逃げるしかなかった。

 

 そんな怪物であるボレアリスだが、どうやら太古は山嶺の主であったそうだ。

 つまり、この地はもともと竜の土地だったということだろう。

 

 

 

 今は巨人たちに敗れて頂を追われたとのことだが、逆に言えばその"頂"には竜にまつわる何かがあるということだ。

 酷い目にあったが、その甲斐はあったようだ。

 

 

 

◆二「霊喚びの洞窟」

 

 氷結湖に霊体が漂う秘密がわかったかもしれない。

 

 氷結湖のほとりに、洞窟がある。

 「霊喚びの洞窟」だ。

 

 

 内部には霊体を呼ぶ霊喚びつむりがいて、主に狼の霊体を呼び出して侵入者にけしかけてくる。

 この霊体は霊喚びつむりが起点となっているから、そいつを優先して倒せば狼の霊体も連鎖して倒れる。

 この洞窟では霊喚びつむりを見つけることが、攻略する上で重要な事項となる。

 

 

 興味深いこととして、この洞窟の水たまりは神秘的な青白い光を帯びている。

 これが霊体と相性がいいのかもしれないな。

 

 また水たまりというだけあって外よりは暖かく、植物も瑞々しく生い茂っている。

 自然の楽園を洞窟内に閉じ込めたような景色だった。

 

 

 

 さて、話を霊体に戻そうか。

 

 霊喚びつむりが呼び出すのは狼だけじゃない。

 それは葦の地の侍であったり、神肌の使徒たちであったり。

 

 

 前者は、どうやらラダーン祭りでも見た"葦の翁"の弟子であるらしい。

 彼らはイナバ衆といって、自分達を捨てた師匠を追いかけて雪山の地まで来たらしい。

 何でも、翁と尋常に切り結ぶためだそうだ。

 その望みが叶ったのか道半ばで終わったのか、ここで霊体として呼ばれる運命を辿ったようだな。

 

 逆に言えば、件の翁はこの地を本拠地としているということだろうか……?

 

 

 

◆三「神肌の貴種」

 

 これは先ほどの項目の続きだ。

 

 霊喚びの洞窟の霊喚びつむりが呼び出した霊体の内には、何故か神肌の者達もいた。

 

 神肌もこの雪山と何か縁があるということだな。

 聖別雪原にも出入りしていたという情報があるが、それ故だろうか……?

 それとも、この先にあるであろう火の僧兵や滅びの火と何か関連があるかもしれない。

 

 

 

 それはさておき、霊喚びつむりが呼び出した神肌の霊体は二つ。

 

 

 一つ目はドミヌラにもいた「神肌の使徒」だ。

 だがこいつらについては既知なので、今回は省略する。

 

 二つ目は「神肌の貴種」と呼ばれる存在だ。

 今回はこいつが主題だな。

 

 

 

 神肌の貴種。

 こいつは使徒と比べて、横に長い体が特徴だな。

 装いのせいかもしれないが、とにかく太っている印象だ。

 

 重刺剣「神肌縫い」を装備しており、重い武器である筈なのに目にもとまらぬ速度の刺突を繰り出してくる。

 さながら貴族のように優雅な剣術を見ることができるだろう。

 

 また神肌の一員らしく黒炎を投げてきたり、高位の祈祷として「黒炎の儀式」を用いてくるのも特徴だな。

 「黒炎の儀式」は、術者の周囲に黒炎の柱を燃え上がらせる祈祷だ。

 範囲は自身の周り円状に限られるが、弁えて使えば防御手段や置物トラップの要領で効果的に使えるだろう。

 敵にする分には近づけなくて厄介だから、飛び道具を用意するべきだな。

 

 

 それと、神肌の貴種は自身の体をより大きくする術を持つようだ。

 奴を追い詰めると、自身の肉体を使ってごろごろと転がってくる。

 バカみたいな絵面だが、その巨体故にその威力は馬鹿にならない。

 

 

 

 敵としてのこいつはこんなところだな。

 

 それ以外の情報として、貴種とは最も古い使徒たちであるというものがある。

 もしかしたら奴らにも上下関係があり、貴種の方が上かもな。

 

 それから人ならぬ諸相をその身に宿すとか、それは坩堝にも似ているとか、そういった話も仕入れることができた。

 色々と考察が捗りそうだ。

 

 

 

 ちなみに、奴らを倒すと祈祷「黒炎の儀式」の知識を得られた。

 神肌の貴種が使っていたものと同じ術が使えるようになるのは、なかなかありがたい。

 単なる投擲では当たらない相手への搦め手なんかに使えそうだ。

 

 

 

 

◆四「山嶺の鍛石」

 

 氷結湖を南下した先に「第一マリカ教会」がある。

 例によって言霊が宿るらしいが、例によって俺にそれを探る術はないのでここでも省略だ。

 一応聖杯瓶の回復量を高める「聖杯の雫」があったことは記しておく。

 

 ともあれ、こうなってしまうと大した情報はないんだが……。

 しかし、その付近にて別口のお宝に恵まれた。

 

 

 

 喪色掘りの鈴玉。

 つまり巨人たちの山嶺にて、鍛石が掘り出された痕跡だ。

 

 

 ここで見つけた鈴玉は喪色掘り……つまり専用専技を持つような特別な武器を強化する鍛石を売ってくれるものだが、それとは別に普通の武器のための鍛石も見つけた。

 せっかくだから併せて紹介しようか。

 

 巨人たちの山嶺で拾える通常の鍛石は、半ばガラス化したものだ。

 だがその性質は、この雪山の加護故か、黄金樹の麓で手に入る黄金色の鍛石よりも高位となっている。

 このガラス化した鍛石で鍛えれば、より強力な武器に仕上がるってわけだな。

 

 

 巨人たちの山嶺の入り口辺りで、この地から王都へ鍛石が運ばれたかもしれない……と考察したことがある。

 もしかしたら、この地の鍛石も王都軍の精強を支えていたかもしれないな。

 

 また、この手の鍛石は、黄金樹のはじまりたる巨人戦争でも活躍したそうだ。

 その効果は折り紙付きといっていいだろう。 

 

 

 

 しかし、ここまで来て坑道が見つからないのは少し不自然だ。

 「ザミェルの廃墟」と「第一マリカ教会」に鈴玉が眠っていたことから、おそらくこの先で掘ったものを王都へ運んでいる筈だが……。

 一応聖別雪原にそういう坑道があるとは聞いたが、この感じはそれとは別口の坑道があったものと俺は考えている。

 しかし、この先の情報に明るい別時空の褪せ人に聞き込みしても、そういった坑道はないと口を揃えて言っている。

 

 もしかしたら、その坑道は雪によって失われてしまったのかもな。

 あるいは、坑道とは異なる形で産出しているのか……?

 

 

 




 ・余談
 トニー君、坩堝の騎士に対しては終始やたら強気なのに、何故か竜に対しては終始やたら弱気な気がします。
 棍棒やロングソードが届きにくいのが悪さしているのでしょうか……?
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