名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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六ページ目「リムグレイブ北東にて」

 

 

 

◆一「戦学び」

 

 円卓の本を読み続けていても収穫を得られなくなってきた。

 重要な情報はまだまだ残っていそうだが、肝心の書斎の扉は開かない。

 かといって他の本は、情報の精度がない。

 

 これ以上はらちが明かないと判断して、リムグレイブに戻ることにした。

 本や書では得られない情報を得るなら、外回りの方がいい。

 

 

 まずは、遺灰を拾った嵐丘のボロ家から東に向かった。

 

 

 しばらくは強風に耐えながらも傭兵の成れの果てと剣を交え、何とかうまいこと凌ぎつつ歩き続けた。

 その先の森で、祝福の輝きと一軒のボロ家を見つけた。

 

 

 

 ボロ家の中には、一人の男がいた。

 

 立派な金属鎧を身に纏い、巨大な大剣を携えている。

 だが何故か兜を脱いでいる。

 

 

 

 話を聞いてみると、戦技についての話をしてくれた。

 そして、その戦技を学ばせてくれることになったのだ。

 

 曰く、戦技とは英雄譚であるという。

 

 

 

 俺も褪せ人のはしくれ。

 ましてや危険な狭間の地を旅する者。

 戦士としての心得は多いほどいい。

 

 だからいくつかの戦技を学び、その謝礼としていくらかのルーンを渡した。

 

 

 

 さて。

 ここで戦技についてトピックだ。

 

 戦技は武器に付与するものだが、実は盾にも付与できる。 

 盾にも付与できる戦技として興味深いのが"戦技なし"だ。

 

 

 これは盾に宿るパリィなどの戦技を剥奪してしまうもの。

 一見してデメリットばかりだが、実はもう一方の武器の戦技をよりスムーズに扱えるためのものだ。

 つまり、盾を装備したままでも棍棒やロングソードの戦技が使えるというわけだ。

 

 盾を使うパリィは、なかなか扱いが難しい。

 扱いきれないと判断したらその"パリィ"を抜きにして、それ以外の戦術に集中するというのも手だぜ。

 

 

 やたらめたらに手段を増やしても、使いこなせなければ意味はないからな。

 自分には向かないと思ったものは、捨ててしまってもいい。

 

 

 

◆二「血の指」

 

 狼の群れを振り切って北に向かうと、恐ろしい敵と出会った。

 

 一見して、普通の褪せ人のようだ。

 だがそいつは血に染まったかのように赤く黒い闇を身に纏い、有無を言わさず俺に襲い掛かってきた。

 

 巨大な大槌と、マグマを吹き出す戦技を駆使する強敵だった。

 そいつがあの"火山館"の関係者であるだろうとわかったのは、かなり後になってからだな。

 

 

 こういう手合いは"血の指"という。

 もともとこの狭間の地は時が不安定で、お互いの時が重なるのは刹那の間だけ。

 だが、何らかの術でその"ずれ"を渡り歩く者達がいる。

 その一つが"血の指"だそうだ。

 

 血の指は褪せ人を殺すことが目的の、血に狂った殺人鬼だ。

 こちらの命を狙うわけだから、話なんて通じない。

 

 

 出会ったら、殺されないよう逃げてしまうか、いっそ逆に殺してしまうしかない。

 いずれにしろ、迷う暇なんてないぜ。

 

 

 一方で、こういう"侵入"は何らかのうまみを求めて行われることが多い。

 それはルーンであったり、特別なアイテムであったりだ。

 そういう目的があるからこそ、"侵入者"は絶えないものだ。

 

 

 中には本当の意味で血に狂う、闘争そのものが目的の狂人もいるだろうが、そういう手合いにつける薬はない。

 もし話し合いができる機会を得たなら、なんとか"闘技場"へ誘導するようにしてくれ。

 

 

 ちょうど、リムグレイブにも一つあるしな。

 

 

 

◆三「死に生きる者たち」

 

 物騒で風が荒れるリムグレイブだが、今回は一際厄介な奴らと出会っちまったぜ。

 それは巨大な塔を見上げることができる、見晴らしのいい平原にいた。

 

 その平原の一角に小さな墓地があってな、これも何かの縁と考えて立ち寄ったわけだ。

 

 

 だがそれがいけなかったんだろう。

 墓地の地面から次々と骨の化け物が出てきやがったんだ。

 スケルトンって奴だ。

 

 思わず手持ちの棍棒で応戦したが、奴らはなかなか倒れない。

 一度は地面に沈んでも、色のない炎のようなものを纏ってすぐ復活するんだ。

 結局はその場から逃げるしかなかったよ。

 

 

 しかも逃げた先の水没した村には、そんな使者たちを呼び起こす"船"もいた。

 そういう"船"には近づかない方がいいと、円卓の褪せ人の一人にはあきれられたよ。

 

 

 

 一方で、こいつらについての情報を得ることにも成功した。

 わずかだが、今後に備えてここに記しておく。

 

 曰く、奴らは"死に生きる者たち"というそうだ。

 奴らは偉大なる黄金律の理を外れた存在で、エルデンリングの導きを穢すそうだ。

 ずいぶんと奴らに対して攻撃的な内容だが、実際に襲われた身だからか、奴らが恐ろしい存在であることは確信を持って同意できる。

 

 

 だからか、そんな奴らを狩る者が存在する。

 彼らは特別な聖律の力を用い、死に生きる者たちを狩る。

 あの厄介な復活能力を、その力で削ぐそうだ。

 つまり、彼らの聖律の力を借りることができれば復活を繰り返す"死に生きる者たち"への大きな備えとなるわけだ。

 

 

 それと、もう一つだけ奴らの復活を防ぐ方法がある。

 一度地に伏せ、けれども恐ろしい力を纏って復活しようとする"死に生きる者たち"に、もう一度攻撃を加えるんだ。

 そうすれば、奴らの復活を阻害できる。

 

 

 

 以前軽く紹介した"地下墓地"には、こういう厄介な"死に生きる者たち"が潜むものもあるそうだ。

 すずらんが欲しいのなら、上述の備えは頼りになる筈だぜ。

 

 

 

◆四「ケイリッドへの道」

 

 リムグレイブの北東の道を進むと、鼻が曲がりそうな悪臭が漂ってきた。

 草原特有の緑の瑞々しいものではない。

 それは腐敗の臭いだ。

 

 次第に赤い霧のようなものが立ち込めてきて、地面も赤い色を帯びるようになった。

 挙句の果てに空まで赤くなっているのだから相当だ。

 

 

 俺はすぐ引き返した。

 なんせ巫女を騙る侵入者まで現れたからな。

 人を両断できそうな刃を持つ、恐ろしい敵だった。

 

 

 

 この不気味な土地は"ケイリッド"と言う。

 伝説のデミゴッド"ラダーン"がいる地であり、かつては生命溢れる森林地帯であった場所だ。

 

 だがあの腐敗のマレニアがこの地に攻め込み、その身に宿す身の毛がよだつ力を解放したことで、腐敗した地へと変えてしまったらしい。

 腐敗の力を受けたラダーンは亡者のような有り様となり、今もケイリッドのどこかで彷徨っている。

 

 

 

 そんな地で"戦祭り"が行われるという噂も聞いたが、口惜しいものだぜ。

 戦祭りというからには各地から強者が集まる筈で、そんな彼らに話を聞けばいろんな情報を聞けるはず。

 だが今は、逃げ帰るしかない。

 

 

 腐敗への備えを見つけた時に再訪すると誓い、俺はリムグレイブへ戻ることとした。

 

 

 




 お昼に予約投稿のつもりがうっかり投稿してしまいました。
 どのみち本日投稿予定だったとはいえ、うっかり……。

 それはさておき、次回は1/3の夕方頃の予定です。
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