名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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 今回で「巨人たちの山嶺」編は一区切りです。


五十五ページ目「火の頂にて」

 

 

◆一「巨人戦争の英雄墓」

 

 巨人墓標の辺りは神域かもしれないと以前記述した。

 これは火の監視者にとって禁足の地であるという意味のつもりだが、あるいは誤りだったかもしれない。

 

 「巨人戦争の英雄墓」がある。

 巨人墓標に入ってすぐ西側に進み続けると、ちょっとした崖を挟んだ先にその英雄墓があった。

 ここに至るためにはどうしても巨人墓標を通る必要があるが、英雄墓の内部には火の僧兵達がいた。

 他に道がない限り、火の僧兵はこの道を通ってこの英雄墓を管理しているのだろう。

 

 

 

 他方で面白い情報も手に入れた。

 

 

 「火の護りよ」という祈祷の知識が、英雄墓内にあった。

 火の僧兵たちの祈祷の一つで、自らの内に火をおこして炎カット率を高めるものだ。

 

 これはかつて巨人戦争で用いられ、黄金樹の英雄たちを護ったという。

 火の僧兵がこの英雄墓を管理する理由かもな。

 

 

 それはともかく、つまりかつての黄金樹の敵である巨人は、火を使ったというわけだ。

 これは以前俺が得た情報と合致する。

 巨人は火を操るんだ。

 

 

 それと同英雄墓内には、ザミェルの古英雄の姿や、トロル達の石造もあったりした。

 だからこの場所は、巨人戦争の、特に黄金樹側の英雄達を祀るものなのだろうな。

 

 かつては、ザミェルの者やトロル達、そして黄金樹の英雄が肩を揃えるような一幕もあったかもな。

 

 

 

◆二「安息教会」

 

 巨人墓標には「安息教会」がある。

 文字通り、巨人戦争で戦死した者達のための場所だろう。

 

 先の英雄墓と異なる場所にあることから巨人のための場所と推測できるし、こちらも火の僧兵が建築・管理しているとも推測できる。

 同教会に大した情報がないため「巨人戦争に関連しているだろう」以上のことは断言しづらい。

 

 

 だが、恐ろしい者の拠点にはなっているのは確かなようだ。

 

 教会に近づくと侵入者に襲われた。

 ラダーン祭りでも共闘した"葦の翁"だ。

 

 

 

 奴は修羅だ。

 その血の刃を持つ長い呪刀を振るい、刀のリーチを超える相手すら切り刻む戦技で多くを斬り殺してきたのだろう。

 

 その戦技のリーチはかなり厄介だ。

 俺は祈祷「黒炎の儀式」を用いた搦め手で何とかできたが、普通に相手をしていたらあっさり斬り殺されてしまっただろうな。

 

 

 それから、その力は出血を強いるものだ。

 だからなのか、どうにも奴は血の君主と関係があるという情報も得た。

 

 

 

 血の君主の影響力は、こんなところにまで伸びているようだ。

 だがその意図が読めないのが口惜しい。

 

 血の君主なりに滅びの火を監視して、黄金樹を護っているということだろうか……?

 

 

 

◆三「火の巨人」

 

 巨人墓標からさらに鎖の橋を渡り、何もない雪原を歩いていくと、いよいよ遠くに見えた巨大な釜が近い。

 ここまで来たら直感でもわかるし、色々と情報も仕入れたからそこからで推測できる。

 

 巨大な釜と滅びの火は、関連性がある。

 滅びの火を目指すなら、まずあの巨大な釜に近づかないとな。

 

 

 だが、そこに至る何もない雪原には「火の巨人」がいた。

 火の監視者たちに力を齎し、そしてあの巨人戦争の生き残りでもある、赤髪の怪物だ。

 

 かつては黄金樹の敵側である筈だが、現在は火の監視者などと同じ立場のようだ。

 即ち黄金樹側……滅びの火を護る大きな番人だ。

 

 

 

 

 敵としての火の巨人は、とにかく体躯がでかいのが特徴だ。

 その体躯を活かした拳や巨体の押しつぶしはとても重い。

 

 それから意外とローリングを駆使する奴なんだが、その巨体故にローリングの距離も馬鹿にならない。

 当然体躯に比例してタフだから、長期戦は免れない。

 

 

 

 

 他方で、当然のように火の力を用いてくる。

 最も印象的なのは、己の足を捧げることでその身に"単眼"を宿したことだな。

 

 件の単眼は、巨人たちが祀った悪神であるという。

 監視者の長が、それを象った盾を持っていたのはこの件に由来するかもしれない。

 

 

 その単眼を発現した火の巨人は厄介だ。

 次から次へと火柱が舞い上がり、あるいは噴火する火山のように火の弾を降り注いだ。

 前提の体躯が体躯だから、とかく範囲が広いのが厄介だ。

 

 

 

 

 

 だが、その時の俺には人脈があった。

 放浪騎士の彼という、助けがあった。

 

 運のいいことに、また戦友と時空が重なってな。

 今度の彼は友人であるという火に強い壺人を連れて、火の巨人に挑んだ。

 そこに俺も参戦させてもらったというわけだ。

 

 

 

 放浪騎士の彼は、霊馬の友の力をも借りて、そして火の巨人を打ち倒した。

 伝説は、まだまだ続くようだ。

 

 

 

◆四「種火の少女」

 

 火の巨人を乗り越えた先、巨大な鎖の橋の先に巨大な釜がある。

 そここそが"滅びの火"だ。

 

 その釜の火は不滅であり、だから女王マリカは何らかの術で火の巨人に火守りを強いたのだろう。

 

 

 だが不滅であって、それは燻っている。

 燃やすには"種火"がいる。

 

 

 放浪騎士の彼が連れている、黒き刃メリナがそうであるという。

 彼女が、火の幻視を宿す贄なのだという。

 

 

 

 思うことは色々あったが、俺は二人の選択を見届けることにした。

 

 彼も、彼女も、覚悟を決めていた。

 その覚悟を、つまらない綺麗ごとで穢すことはしたくなかった。

 

 

 異端者風情が綺麗ごとを言っても仕方ないってのもあるがな。

 俺も俺で、十分悪人側だよ。

 

 

 

 こうして釜の火は燃え上がり、黄金樹にも火は移った。

 俺の見た真実が、現実になる瞬間だった。

 

 

 これで大罪は成ったが、しかしまだ例の拒絶の棘を焼くには至らない。

 彼がエルデの王になるには、もう一段階儀式が必要だ。

 

 そのために、放浪騎士の彼はまた姿を消していった。

 

 

 

 残された俺にできるのは、彼が事を為すことを待つだけだ。

 

 

 

 ……なのだが。

 俺は以前、妖精の気まぐれと縁があると記述した。

 具体的に言うと、突然知らない異世界に迷い込んでしまうことがある体質だってことだ。

 

 

 今回も、その事象に遭遇した。

 幸運なことに、迷い込んだ先はあの「崩れゆくファルム・アズラ」……放浪騎士の彼が向かった先だ。

 

 次回からは、そこを探索して得た情報を記していく。

 

 

 




 ファルムアズラは、ポジション的に「"巨人たちの山嶺"のメインレガシーダンジョン」のような印象があります。アルター高原における王都ローデイル的な。

 ですが、原作のシナリオは"火の頂"でそこそこ大きく動くこと、山嶺とファルムアズラの世界観はそれぞれ大きく異なること。
 以上を理由に、本作では「巨人たちの山嶺」と「崩れゆくファルム・アズラ」は別々に分けます。

 というわけで、改めて今回で一区切りです。
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