名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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崩れゆくファルム・アズラ編
五十六ページ目「崩れゆく獣墓にて」


 

 

 

◆一「時と嵐の地」

 

 崩れゆくファルム・アズラ。

 

 巨人たちの山嶺にて滅びの火を燃え上がらせた後、たどり着いた地だ。

 放浪騎士の彼の場合は正規ルートとしてこの地に侵入したようだが、俺の場合は不正だ。

 

 以前から何度も言うように、俺には妖精との縁があるもんでな。

 よく資格とは無関係の所に侵入できるんだ。

 これをレアルカリアや深き根の底・聖別雪原の時にも発揮してほしかったんだが、まぁこればかりは時の運だから仕方ない。

 

 

 

 侵入経路の件はさておき、崩れゆくファルム・アズラに侵入した際の第一印象を語ろう。

 

 

 嵐だ。

 目の前に嵐が渦巻いている。

 その嵐が、俺のいる遺跡を削り取っているんだ。

 相当な暴風だろう。

 

 

 一方で、削られた遺跡の瓦礫は地へ落ちていくことはない。

 ふんわりと浮かび上がり、ただただ何か時が来るのを待っているようにも見える。

 遺跡は崩れているのだが、それは今もゆっくりと進んでいるようだ。

 明らかに"時が歪んでいる"。

 

 

 狭間の地では、時空が歪んでいると何度も記述してきた。

 こういう"時空が歪む"現象そのものは狭間以外でも起こりえるらしいが、こと狭間の歪みに限っては、この場所にこそ秘密があるかもしれないな。 

 

 

 

◆二「ファルム・アズラの獣人」

 

 この地には獣人が住んでいる。

 竜塚の時でも軽く記載した「ファルム・アズラの獣人」だ。

 

 

 彼らは大曲剣などを用いる強敵で、山嶺の奴らと同じかそれ以上にタフだ。

 まともに戦えば苦戦を強いられる。

 

 おまけに結構群れているから、数の力にも対応しなければならない。

 祈祷や魔術、クロスボウなどで一体ずつ釣りだして比較的対等な状態で戦い続けるのがよさそうだ。

 

 

 

 群れを成すということは、一定の社会性を持つということ。

 だがどちらかというと、野生の群れというより人間社会の文明にも似た雰囲気を感じさせる。

 

 そもそも彼らがいるこのファルム・アズラは、"墓"がある。

 これだけでも、彼らの高い知性を伺えるな。

 

 

 

 墓と言えば、ちょっとした情報も仕入れることができた。

 この「崩れゆくファルム・アズラ」は、古竜を祀る巨大な霊廟であるそうだ。

 

 彼ら獣人は、竜信仰の持ち主ということだろう。

 どこかローデイルの騎士達にも似ているな。

 

 

 

◆三「竜の地」

 

 崩れゆくファルム・アズラといえば、竜の地だ。

 先の項ではそれを記述し忘れていたので補足しておく。

 

 

 この地では、遺跡を削る嵐の周囲を飛び回る竜の姿が多数ある。

 

 だからなのか、一度屋外に出るとそのうちの一体に襲われた。

 その瞬間はぞっとしたぜ。

 

 

 今回出会った竜は、赤い雷を纏っていた。

 以前記述したヴァイクと同じもので、意外なところだと先の獣人達も選ばれた者なら同じものを用いるそうだな。

 姿形だけなら、アルター高原で見かけたランサクスと全く同じだ。

 あるいは同胞なのか、時空が歪んでいるが故の同一個体なのかもしれない。

 

 

 

 ともあれ、当時の俺はパニックだ。

 一人で倒せる相手じゃない。

 

 たまたまサインに巡り合えて、はじめて倒せるような脅威だった。

 

 

 

 サインで召喚した霊体は、とにかく遠距離攻撃で竜に対峙した。

 それは毒の投げ矢だったり、エオニアの蝶などを壺に詰めた腐敗壺だったり。

 どうやら毒と腐敗が有効なようで、意外に何とかはなるらしい。

 

 俺も彼に習い、ロングソードを振るうのではなく聖印を用いた「黒炎」の投擲に徹することにした。

 遠距離攻撃に徹していると竜の攻撃の回避に集中しやすく、時間こそかかったがついに俺も竜狩りをなしたよ。

 

 

 

 竜は人より強靭な肉体を持ち、どこまでも炎上する炎を吐き、そして空を飛ぶ翼を持つ。

 まともに正面から仕掛けるのは、間違いなく不利だろう。

 

 伝説に語られる竜狩りとは、このような戦いだったのかもしれないな。

 

 

 

◆四「古竜岩の鍛石」

 

 先の竜を倒すと、とんでもない鍛石が手に入った。

 

 古竜岩の鍛石。

 そう呼ばれるこの鍛石は、なんと黄金のさざれ石を磨き上げたものだそうだ。

 

 

 さざれ石とは、かつて古竜に襲われた地などで見つかるもので、大抵はアイテム製作に使える。

 故に古竜のウロコであるという情報があったんだが……。

 

 この鍛石の場合、なんと古竜の王の鱗であるらしい。

 故にファルム・アズラの秘宝なのだという。

 

 

 

 それをあの竜が持っていたということは、秘宝を託されるに値する大物だったのかもしれない。

 ファルム・アズラの侵入者である俺を襲ったのも、あるいは必然だったかもな。

 

 

 

 さて。

 古竜岩の鍛石というだけあって、こいつは武器を鍛える。

 黄金色のこの鍛石は、とくに通常の武器を鍛えるもののようだ。

 鍛石としては最高峰で、この鍛石で鍛えた武器は"神殺し"の名を冠する。

 

 ここから先の戦いは、大罪を抱えて世界を相手にするもの。

 あるいは神なるものと相対することも考えられるから、とても嬉しい拾い物だった。

 

 

 

 他方で、興味深い情報もある。

 この"鍛石"の主である「古竜の王」についてだ。

 

 かの王は、時の狭間に座するという。

 だからなのか、この石はわずかに"時を歪めて"いるという。

 この性質故に神殺しの武器を鍛えるとも、円卓の文献は記述していた。

 

 

 かの王が座するという、時の狭間。

 そこにこそ、ファルム・アズラの時が歪む件の秘密が隠されているかもしれない。

 狭間の時空が歪む理由も、そこに眠っているのだろうか……?

 

 

 




 筆者の第一印象はダークソウル3の「古竜の頂」でした。
 というか割とあらゆる意味で「古竜の頂」しているダンジョンですよねここ。
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