名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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五十七ページ目「崩れゆく獣墓、奥部にて」

 

 

 

◆一「畏怖と信仰」

 

 ファルム・アズラの獣人達は、奇妙な盾を使う。

 

 

 獣人の壺盾。

 縦長の土壺を半分に割って作られた盾だ。

 

 どうやら彼らは盾とするために土壺を焼く文化があるらしい。

 

 

 実に古いやり方だ。

 だが墓の件同様に彼らもまた文明社会を築いている……と推測する材料の一つにはなる。

 

 壺といえば物を貯蔵したりする箱のイメージの道具だが、前述通り彼らはそれを割って盾としている。

 大曲剣などにも同じことが言えるが、彼らは武具を必要とする環境・状況下にあるようだな。

 

 

 

 この壺盾の最大の特徴は、雷属性に対するカット率の高さ。

 要するに彼ら獣人は、雷による攻撃から身を護る必要があったわけだ。

 

 

 この場所で雷というと、やはり竜の存在だな。

 

 俺は、彼ら獣人は竜信仰を持つと推測している。

 だがその信仰の在り方は、どちらかというと畏怖の側面が強いのかもしれない。

 

 

 

 御霊信仰という概念がある。

 読み方は「ごりょうしんこう」らしい。

 

 これは極東におけるやり方らしいのだが、人々や社会を脅かす天災や疫病などを神様の御業として解釈し、その神様を祀ることで災害を沈めてもらおうというものだそうだ。

 あるいは、非業の死を遂げた者の霊という説もある。

 

 

 

 この概念こそ、畏怖の信仰のわかりやすい例なのだろうと俺は思う。

 彼ら獣人は、きっと竜の雷を鎮めてもらうために、竜を信仰しているかもしれない。

 

 機会があれば、是非これを読む君達も俺のこの考えを検証してみてほしい。

 

 

 

◆二「すずらん摘みの鈴玉」

 

 また貴重な宝を手に入れた。

 

 すずらん摘みの鈴玉。

 通常の遺灰を強化する墓すずらんを販売してくれるもので、ファルム・アズラで拾えたこれは、特に高位の強化ができる高品質なものだ。

 この鈴玉の墓すずらんで強化した遺灰なら……そうだな、山嶺の怪物どもや獣人達と互角に渡り合えるほどの力を発揮してくれるだろうな。

 彼らはかなりの強敵だから、それと同格の味方というのはかなり心強い筈だぜ。

 

 

 他方で、この鈴玉は祝福「崩れゆく獣墓、奥部」から少し進んだ先の昇降機を降りた先にある。

 

 所謂下層って感じのエリアで、林があったりちょっとした池があったりする自然豊かな場所だ。

 だがどういういきさつか、アルター高原の豊穣の森にいた「ミミズ頭」達の巣窟と化している。

 探索には注意を要する。

 

 

 そんなミミズ頭だが、彼らもまた何らかの信仰があるようで、上述したこの鈴玉のある建物に祈りを捧げる一幕も見られた。

 墓すずらんとは死者のための花だ。

 彼らもまた、死者を偲んでいたのかもな。

 

 

 

 この鈴玉やこのエリアとは異なる場所の話だが「すずらんの大輪」というアイテムもファルム・アズラで見つかった。

 端的に言えば、遺灰を最大強化できる特別なアイテムだ。

 やがて神話となるように、最も偉大な死に手向けられるというもので、死者への贈り物としても最上級となる代物だ。

 これがこのファルム・アズラにある意味は、きっと先の鈴玉と似ている。

 

 

 ここファルム・アズラは、古竜を祀る霊廟だ。

 こういったものと縁があるのは、必然なのだろう。

 

 

 

◆三「古き竜の祈祷書」

 

 ファルム・アズラの獣人の中には、祈祷を使いこなす者もいる。

 彼らは赤い雷を使いこなすことから、雷を制御しようと試みていたのだろうな。

 

 そのせいか、彼らの近くには「古き竜の祈祷書」が落ちていた。

 せっかくだから拾い上げて、知り合いの祈祷の師を訪ねて書物の祈祷を学んでみた。

 

 

 この祈祷書から得られた祈祷は「古竜の雷槍」と「古竜の雷撃」の二つ。

 いずれも狭間の地には伝わっていない、貴重な知識だ。

 

 

 

 雷槍は、文字通り赤い雷の槍を形成して、上空に突き刺すものだ。

 一方で雷撃は、周囲に赤い落雷を呼び寄せて広範囲を攻撃する技だ。

 

 いずれも上からの攻撃であることが特徴で、頭上という相手の死角を突くような使い方が想定される。

 赤き雷とは古竜が武器としたものだという情報もあるから、もともとは翼を持った竜が上空から奇襲するためのものだったのだろうな。

 

 

 

◆四「この地の鍛石」

 

 竜巻を臨む露台。

 そこにもまた鈴玉があった。

 

 喪色掘りの鈴玉だ。

 専用戦技を持つような、特別な武器を鍛えるための鍛石を販売してくれる鈴玉だ。

 

 

 これがここにあるということは、この地に鍛石があったというわけだな。

 

 勿論ここに坑道があるというような情報はない。

 失われているだけという可能性もあるが……個人的には別の説の可能性を探りたい。

 

 

 以前「古竜岩の鍛石」について記述した。

 当然と言うべきか、これの喪色版というべきアイテムも存在する。

 

 いずれも古竜の王の鱗だって話だから、その下位素材となる鍛石群も似たような代物だと推測するのは無理筋ではないと思う。

 つまり、鍛石とはすべからく竜のウロコだ……という可能性だな。

 

 

 

 思えば狭間の地の各地にも竜の類はいた。

 彼らはきっと古の時代からこの地にいて、通常の地の生命のように死んで、その亡骸は土に還った。

 その地から竜のウロコが出てくるという考え方は、無理ではない筈だ。

 

 

 

 鍛石についての考察はまだまだある。

 が、今回はこの辺りで切り上げる。

 

 後々にまたいくつか鍛石がらみの鈴玉が拾えるから、続きはその辺りに記そうと思う。

 そちらもそちらで興味深い情報があるから、それらの考察もその項でやってみたいと考えている。

 期待して待ってくれ。

 

 

 

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