名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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六十ページ目「最奥にて」

 

 

 

◆一「ライカードの影」

 

 火山館の主、ライカード。

 奴の手先が、このファルム・アズラに潜んでいた。

 

 奴は表向き、リムグレイブにて戦技を学ばせてくれる旅の恩人だ。

 だがその本性は、ライカードに忠を尽くすものだったようだ。

 

 

 意外と身近なところにライカードの影があり、そしてその影響力はこのファルム・アズラにまで伸びてきていた。

 ぞっとする話だぜ。

 

 

 ライカードの手先たる褪せ人が、ここで何をしようとしていたかは不明だ。

 問答無用で襲われ、遮二無二に戦って、気が付いたら死んでいたからな。

 

 だが奴の所持品である程度は探れる。

 

 

 「冒涜の爪」というアイテムがある。

 奴が落としていったもので、つまりライカードの品だ。

 

 こいつは、ラニからの謝礼として貰い受けたものらしい。

 おそらくは陰謀の夜に絡んで、ライカードはラニと何らかの協力関係にあったのだろう。

 意外なところで真実の一片が見つかった。

 

 

 その効果は、黒き剣のマリケスの力を逸らすもの。

 陰謀の夜にて盗み出された「死のルーン」の片鱗が刻まれているのが理由だろう。

 要領として盾でパリィするようなものだな。

 

 

 

 それを持ってこの地に来たということは、つまりデミゴッドの死を意味するマリケスを打倒しにきたということだろう。

 それこそが、ライカードの野望に必要なことなのだろうか……?

 

 

 一方で、だ。

 逆説的に、この地には「黒き剣のマリケス」がいるかもしれないということになる。

 

 この俺の推測は、この後すぐ正しかったと証明されることとなった。

 あの「死のルーン」が、ここにあったというわけだ。

 

 

 

◆二「獣の司祭」

 

 ケイリッド最北端。

 グレイオールの竜塚にある獣の神殿。

 

 そこに佇む「獣の司祭」が、ファルム・アズラの最奥にいた。

 

 

 

 獣の司祭。

 奴がここにいるのは、やはり運命の死……死のルーンがここにあるから。

 やはり、当時俺が睨んだ通りその関係者だったというわけだな。

 まったくの同一人物なのか、竜塚とは別時空の存在かまでは特定出来なかったがな。

 

 

 獣の司祭は侵入者である俺に対して、攻撃を仕掛けた。

 その目的は、ここにある死のルーンの防衛だ。

 彼の直前に「竜のツリーガード」がいたのも、きっと無関係ではない。

 その本質的な目的は、死のルーンから黄金樹を護ることだろう。

 

 

 俺としてはぜひともその秘密を暴きたい。

 それに、後々わかったことだが、それこそが放浪騎士の彼が求めるべき"火"でもあるのだ。

 奴を倒して、それを手に入れなければ話が進まない。

 

 正面衝突となったのは言うまでもない。

 

 

 

 敵としての獣の司祭の特徴は、やはり「獣の祈祷」だな。

 祈祷でありながら物理属性を持つのが特徴で、物理カット率が高い盾が比較的有効だ。

 獣だからかその動きも素早いから、奴の隙を確実に伺うことも重要となるだろう。

 

 

 

◆三「黒き剣のマリケス」

 

 竜塚にいた獣の司祭、グラング。

 奴はマリケスの関係者である。

 

 この俺の考察は、もしかしたら間違っていたかもしれない。

 

 

 獣の司祭は、自身の不利を悟るや否や、己の内に封じた「死のルーン」を解放して一振りの剣を形成した。

 当時はすぐには気づけなかったが、後々から情報を整理するうちに、奴こそが"そう"だという確信を得た。

 

 黒き剣のマリケス。

 少なくともファルム・アズラの「獣の司祭」の、その正体だ。

 

 

 

 奴はデミゴッドの死を意味するだけあって、とんでもない強敵だ。

 奴の振るう剣には、赤黒い"火"の形をした「死のルーン」が宿っていて、その力を浴びると生命力を削られてしまう。

 ただ傷つくというだけではなく、生きる力そのものを蝕まれているような、そんな悍ましい力だ。

 

 そんな力を、獣特有の俊敏性と、赤黒い光波を"飛ばす"術を織り交ぜて振るってくるのだ。

 今まで会ったどのデミゴッドよりも恐ろしい獣だった。

 

 

 

 だが、最終的には倒せたよ。

 先の「冒涜の爪」の件もあるし、放浪騎士の彼と合流できたことで"助け"も得られたというのも大きい。

 

 いや。

 これは、次代のエルデの王の戦いだ。

 俺は"放浪騎士の彼"を、ちょっとだけ助けることができたというだけさ。

 

 

 

◆四「死のルーン」

 

 永遠の女王マリカが、黒き剣のマリケスに命じて封印した運命の死。

 しかして、陰謀の夜にて盗み出され、ゴッドウィンを殺したという恐ろしい力。

 

 それが死のルーンだ。

 

 

 マリケスが倒れた後、死のルーンは"赤黒い火"の形をとって、黄金樹をより致命的に燃やした。

 あれこそが、"滅びの火"だったというわけだ。

 

 それだけじゃない。

 死のルーンが"火"の形をとったのは、単に黄金樹を燃やすためのキー以上の意味があると俺は見ている。

 

 

 

 例えば、死に生きる者たちが振るう"霊炎"。

 例えば、神肌が振るう"黒炎"。

 

 これらもまた、ファルム・アズラにて痕跡があった炎達だ。

 こいつらの源泉に、死のルーンという赤黒い"炎"が関係しているという考察は、決して突飛な妄想ではない筈。

 ゴッドウィンが"死に生きる者たち"の源泉・標榜に至ったのも、死のルーンで焼かれたからなのかもしれない。

 神肌の力の源泉たる「神狩りの剣」がグラングの近くに封印されていたことや、奴らの一派がこの地にいたのも、封じられた死のルーンが関係しているかもしれない。

 

 

 まぁ断言まではしない。

 流石に証拠までは得られなかった。

 けど、これを読む君達の考察の助けぐらいにはなると思うぜ。

 

 

 

 ともあれだ。

 死のルーンが、黄金樹に仇名す存在であることは確実だ。

 だからこそファルム・アズラなる異空間に封じられ、火の巨人・竜のツリーガード・マリケスというマリカの息がかかった者達による防衛が行われていたのだろう。

 

 それは"火"という概念に連なるものであり、だからこそ黄金樹の絶対を燃やすに至った。

 放浪騎士の彼を阻む"拒絶の棘"は、今度こそ焼失するだろう。

 

 

 つまり、いよいよ世界が変わる時が近づいている!

 

 

 

 次回は、王都ローデイルに戻ることとなる。

 そこで、次代のエルデの王が誕生するまでを記述する予定だ。

 

 ここまで来たら、是非とも最後まで突っ走りたいところだ。

 よければ、君達も付き合ってくれ。 

 

 

 




 エインセルカワモトリュウ、実は深き根の底からでもいけるって割と最近になってはじめて気づいた筆者です……まじすか……。
 まだ味がすることに対する驚きと、なんでこんなことに気づいていなかったんだという自身に対する呆れを隠せません……。

 それはさておき、これにてファルム・アズラ編も一区切り。
 次回はいよいよ灰都ローデイル編となります。

 例によって不定期更新の予定ですが、よろしければどうかお付き合いいただけると幸いです。





 ……余談ですが、マリケスのこと「マリスケ」と書きたい・呼びたい衝動あんの筆者だけでしょうか。
 なんかすっげーこっちの方が色々な意味で書きやすい・呼びやすいです……。
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