名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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六十二ページ目「黄金樹の麓にて」

 

 

 

◆一「束の間の豊穣」

 

 黄金樹の回復。

 灰に塗れてなお形が残っていた「女王の閨」にあった祈祷の知識だ。

 

 これは古い黄金樹の祈祷のひとつだ。

 周囲の味方を含めて、生命力を膨大に回復する。

 

 回復量はかなりのものだが、それだけに高い信仰を要する。

 "イカサマ"を用いる俺にはぴったりだ。

 ぜひとも放浪騎士の彼のために使わせてもらおう。

 

 ただしそれ相応にFPを消費するのが難点だ。

 使う時にはFPについても余裕を持たせておくべきだろう。

 

 

 

 この祈祷の知識には、興味深いものがある。

 

 かつて、黄金樹は豊穣であった。

 そして、それは束の間であった。

 すべての生命と同じように。

 

 

 黄金樹を完全とみなす者達にとっては噴飯ものの情報だな。

 だがそれが真実であることは、燃える黄金樹の景色が証明している。

 

 

 

 生命とは、限りあるものだ。

 だからこそ世代交代というものが必要なんだ。

 

 次代の王を応援する理由がまた増えたな。

 

 

 

◆二「嵐の勇者」

 

 放浪騎士の彼に味方する褪せ人は、他にもいる。

 

 ネフェリ・ルー。

 彼女もまた円卓の戦士で、そしてあのギデオンの娘であるらしい。

 血のつながりがあるわけではないらしいがな。

 

 

 彼女はもともと父であるギデオンを王にするために戦っていたそうだが、ギデオンの悪行を知ったことで袂を別ったらしい。

 だが彼女にとってそれは大きな苦痛が伴う選択だったようで、その際に放浪騎士の彼に色々助けてもらったそうだ。

 

 その結果、ゴドリックなきストームヴィル城の新たな城主となったという。

 放浪騎士の彼が王となった時、忠誠を誓うという約束付きでな。

 

 

 それが、ネフェリが放浪騎士の彼の味方である理由だ。

 

 

 

 ところで。

 詳しく詮索したわけではないが、ネフェリは蛮地を故郷とする勇者だと思われる。

 であれば、あの伝説の「ホーラ・ルー」に連なる存在であると考えるのが妥当だ。

 

 俺のこの考えが正しければ。

 この後、彼女にとって大きな試練が降りかかった。

 "放浪騎士の彼"の味方であることを選んだ彼女にとって、とても大きな試練だ。

 

 

 その試練を、彼女は最終的に乗り越えることとなる。

 それはいわば神話の一幕というべき、とてもドラマティックなものなのだろう。

 

 が、詳細は割愛させてもらう。

 ただし、その試練の内容については後でまた記述する。

 

 

 

※追記

 

 ギデオンとネフェリについて補足がある。

 

 ギデオンは己の悪行を知られた際、ネフェリを捨てた。

 それはネフェリが、ギデオンの悪事についていけないためだ。

 

 もとよりそのためにネフェリを拾ったそうだからな。

 だが、それで情の全てを捨てたわけではないらしい。

 

 

 ギデオンもギデオンなりに、娘への何らかの思い入れがあったそうだ。

 少なくとも、両者のもめごとに立ち会った放浪騎士の彼はそう言っていた。

 ……彼がネフェリを助け導いた際、ギデオンはそのことに対して感謝していたそうだからな。

 

 

 

 ネフェリは、放浪騎士の彼とギデオンの戦いに参加しなかった。

 だが、ギデオンを討った彼の味方であるというスタンスは崩さず、次の試練に立ち向かう彼の助力を願い出た。

 

 それはある種、父を超えた娘の物語のように見えた。

 彼女もまた、物語の主人公だったってわけさ。

 

 

 

◆三「最初の王、ゴッドフレイ」

 

 いよいよ本題だ。

 燃える黄金樹の麓には、既に褪せ人の姿があった。

 

 それは褪せ人と言うにはあまりにも大きな巨躯を誇っていた。

 背中には霊体の獣を背負っており、そして消えかけのデミゴッド「モーゴット」との久しい語り合いをしていたようだった。

 

 

 最初の王、ゴッドフレイ。

 かつて狭間の地を統治した、女王マリカの最初の伴侶にして、最強の名を冠する力ある王。

 巨人戦争をはじめとする戦で斧を振るい、黄金の時代を築き上げた英雄。

 

 だがある時祝福を奪われ、褪せ人として同じ者たちを連れて狭間の地を離れた。

 

 

 その行く末は俺の知る限り文献に記されていなかったが、その伝説はまだ終わっていなかった。

 彼はエルデンリングを修復するために、この地に舞い戻っていた。

 

 

 

 彼の目的は、黄金樹の中に囚われているであろう女王マリカとの再会。

 そして世界の修復だ。

 

 であれば、王にならんとする我が友"放浪騎士の彼"は、いわば商売敵のようなものだ。

 故にこそ、彼はデミゴッドを超える最大の敵として立ちふさがった。

 

 

 

 力こそ王の故。

 どちらが王に相応しいかを、決めるために。

 

 

 

◆四「ゴッドフレイの正体」

 

 ゴッドフレイは優れた力の持ち主だ。

 王斧を振るえば地を割き、足で地を踏めば衝撃波が狭間を揺らす。

 まさしく英雄に相応しい武力だ。

 

 

 だが放浪騎士の彼は、それに匹敵する力の持ち主だ。

 単純な力こそ敵わないかもしれない。

 けれども人徳という点においては、まぎれもなく最優だ。

 

 俺の「黄金樹の回復」や「黒炎」などによる助けは勿論、持ち前の遺灰の助力もあり、そして先述したネフェリという縁にも恵まれている。

 彼はまぎれもなく、ゴッドフレイに匹敵する戦士だった。

 

 

 

 だからだろう、ゴッドフレイは途中から本気を出した。

 ゴッドフレイの背負う霊体の獣……宰相セローシュは、その実ゴッドフレイの力を抑える枷だ。

 ゴッドフレイを王とするために、セローシュは存在していた。

 女王マリカを助ける、マリケスのようにな。

 

 だがゴッドフレイは自らセローシュを殺した。

 己の本領を発揮するためにその血を浴びて、只の戦士に戻ったのだ。

 

 

 

 戦士としての名は「ホーラ・ルー」。

 伝説の褪せ人にして、蛮地の王。

 それが、ゴッドフレイの正体だった。

 

 本性を現したホーラ・ルーは、斧を捨てた。

 その鍛え抜かれた肉体一つで、竜をも殺す力を備えていた。

 

 

 特に厄介なのはその俊敏性で、さながら獣の如き素早さだった。

 

 

 

 だがそれでも、放浪騎士の彼の方が上手だった。

 己の身一つで地を割れる伝説を、放浪騎士の彼は制してしまったのだ。

 我が友ながら、実に誇らしい。

 

 

 

 最初の王ゴッドフレイが、その実蛮地の王ホーラ・ルーだった。

 そして、それを抑え隠していたのが獣の宰相セローシュ。

 

 この驚くべき真実は、実に検証に値するものだ。

 

 

 

 考察しようと思えば、いくらでもできそうだ。

 だが、状況が状況だ。

 この件に関しては別の機会に考えるとして、この手帳の上では、ただ勝利を祝いたいと思う。

 

 まだ記すべき真実は、黄金樹の中にもあるしな。

 

 

 




 「黒炎」「黒炎の儀式」「黄金樹の回復」などを積載した"写し身遺灰"と"ネフェリ"を連れて、自身は「構えロンソ」を携えて一週目ゴッドフレイに挑みました。
 面白いぐらいに簡単に倒すことができました。そのデータでは初見()突破となります。

 一週目個体とはいえ、如何に事前準備が大切なのかがよくわかる一戦でした。
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