名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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 ・前回と同じように過去作のキャラを軽くまとめて、その物語を分析してみようのコーナーです。

 ・今回は、漫画「SEKIRO 外伝 死なず半兵衛」の情報を扱います。そのため同作および、SEKIRO本編のネタバレの恐れがあります。ご了承ください。

 ・今話についても「誤情報あり」です。風情などを優先して意図的に誤情報を混ぜたりしてますので、ご注意ください。


高峯について

 

◆「はじめに」

 

 前回俺は、王についていくつかピックアップしてまとめた。

 とりわけ「土地と王」というテーマに沿ってまとめたつもりだが……そのうちの一つとして"葦名"についても調べた。

 

 この"葦名"について新たな情報を得たため、ここに記す。

 

 

 今回取り上げるのは、葦名の国……その一部となる領土を治めた"高峯"という存在だ。

 

 

 

◆一「高峯」

 

 高峯とは、古くより葦名の一部……それも比較的広大な領土……を治めてきた武家の名だ。

 

 葦名一心が国盗りを試み、その末に葦名の国を建国する以前にも治めていたことから、その歴史はかなり古い。

 なんせ葦名の国が二十年程度であるのに対し、高峯は二百年続いた……という情報がある。

 歴史だけなら、葦名の国よりも厚みがある家なのさ。

 

 

 

 治めている領土の強みは、もともと"鉱山"を持っていたという点だ。

 高峯の家は、鉱山から得た富が根拠だったようだ。

 

 だが鉱山が枯れた後は、領土の村が育てる米を管理することでその力を維持してきたという。

 米とは食料であり、強力な通貨でもあることから、それをたくさん生み出す広大な領土は転じて大きな権力へと繋がるのさ。

 

 

 

 もともとの葦名衆は力が弱く、故に広大な領土を持つ高峯は葦名衆に服従を強いることができるほどの力を持っていた。

 葦名一心が国盗りを始めるまで、かなり裕福な生活を送っていたに違いない。

 

 だが葦名一心が葦名衆と共に立ち上がり起こした、"国盗り"の戦においては一心の味方となった。

 

 

 

 国盗りとは、葦名衆を虐げてきた者達を滅ぼすための戦いだ。

 葦名の地を取り戻す、葦名衆による復讐だ。

 当時も葦名の一部を治めていた高峯にとって、他人ごとではない。

 

 だからこそ、葦名衆の味方として立ち回ることでその矛先から逃れる意図があったのだろう。

 

 

 

 間の悪いことに大した武功はあげられなかったようだが、それでも葦名に連なる家として在り続けることは許されたようだ。

 

 

 

 

 だが国盗りの戦で活躍できなかったことで運命の流れが変わったらしく、以降の高峯は衰退の一途をたどることとなる。

 

 高峯の世継ぎは幼い頃から葦名の城へ士官。

 兵も多数登城しており、高峯の家は葦名の傀儡となっていった。

 

 

 

 最終的に、高峯の家は破滅へと向かったと聞く。

 葦名に利用されたままな。

 

 国盗りの戦では、葦名という勝ち馬にこそ乗れたものの、その実「家」としては敗北したも同義の結果。

 それが、破滅へのターニングポイントだったのだろう。

 

 

 

◆二「国盗り」

 

 高峯比良近。

 高峯の盟主というべき人物であり、葦名一心の国盗りに直接参加した者だ。

 

 

 彼は古くより治めてきた広大な領土を、先祖から受け継いで管理してきた。

 だからそれに相応しい力を持っていた。

 

 だが、ある時葦名一心が挙兵。

 国盗りの戦を始めた。

 その際、高峯比良近は葦名一心の味方として立ち回ったのは先述した通りだ。

 

 

 

 実際の戦では、比良近は騎乗し大きな槍を構え、多くの兵を薙ぎ払ったという。

 もとより"槍の高峯"として恐れられていたらしく、故に"槍"には一家言を持っていたのだろう。

 

 

 

 だが、葦名一心の敵方であるとある侍によって、切り伏せられた。

 突いた槍を掴まれ、そのまま左腕を斬られ、落馬したという。

 

 以降高峯比良近は、左腕が使い物にならなくなったという。

 

 

 

 その件がきっかけとなり、高峯は"葦名の槍"……英雄の称号と言うべきものを得ることが叶わなかったようだ。

 武家において見栄は命より重いものであり、英雄の称号を得られなかった事実は、高峯家に暗い影を落とした。

 

 故にこそ、高峯家は葦名の国に徹底的に利用される末路を辿ったのだろう。

 詳しくは後述する。

 

 

 

◆三「赤目」

 

 葦名の国では、赤目というものに対する研究が行われていた。

 

 葦名には"変若水"と呼ばれるものがあり、その水の特に濃く澱んだシロモノを取り込んだ者は強靭な肉体を得るそうだ。

 そういった手合いを「赤目」と呼ぶらしい。

 

 

 

 要するに変若水を取り込んだら、その人はとても強くなれるってわけだ。

 だがその代わり亡者のようになってしまうか、あるいは野心があふれて心を支配されてしまう……といった副作用があるらしい。

 その他、赤目は炎に酷く怯えるといった弱点もある。

 

 その副作用を抑え、ただ人を強くする効能のみを求めて、葦名は変若水と赤目の研究に没頭した。

 

 

 

 その研究所の一つとして選ばれたのが、上述した高峯の家だ。

 武功をあげられず、称号を得られなかった高峰の家は、葦名にとって配慮しなくてもよい都合のいい駒だったのだろう。

 少なくとも葦名の槍として活躍した武家よりは、その扱いは雑だったと思わしい。

 

 高峯比良近の息子、世継ぎは葦名の城へ士官。

 それは体の良い人質であり、高峯は葦名の研究に従うしかなかった。

 

 

 

 実際の赤目の研究としては、領土にいる民を秘密裏に拉致監禁し、そのまま人体実験を試みるようなものだったという。

 大抵は上述したように亡者と化してしまい、人としてはもう使い物にならなくなってしまったそうだ。

 そうした実験の成果や、亡者と化した領民は、高峯家が管理する牢獄に閉じ込めておいたそうだ。

 

 だが個体によっては、強力な力と抑えきれない野心を得た者もいたのだろう。

 そうした個体は、しばしば「事故」を起こす。

 

 

 

 最終的に、高峯家の「実験場」は火災事故によって消えてしまったという。

 その事故で、盟主高峯比良近も死亡。

 

 間の悪いことに、高峯を受け継ぐ世継ぎも火災事故の場に居合わせていたとのことで、彼もまた焼け死んだらしい。

 そうして、高峯は破滅したんだ。

 

 

 

◆四「蟲憑き」

 

 広大な領土で栄えていた高峯の家は、国盗りの戦を機に斜陽化し、ついには破滅した。

 だがそんな高峰のエピソードの影には、何故か「蟲憑き」の気配が漂っている。

 

 

 蟲憑きとは、何度斬られてもすぐ蘇る者達を指す。

 転じて「死なず」ともいうそうだ。

 

 何でも、人を怪物にする"変若水"は蟲に対しても効果があるらしい。

 変若水に適応した蟲に寄生された動物、あるいは人物は、どれほど体が損壊しても蟲が補修してしまう。

 故に死なないんだそうだ。

 

 

 

 そんな蟲憑きになってしまった侍が、高峯が治める村を訪れたらしい。

 

 偶然高峯の村にたどり着いた蟲憑きは、実験体を求める葦名にとって格好の標的だった。

 故に葦名は高峯を使って蟲憑きを捕らえようとあれこれ画策したとのこと。

 

 

 その時期と、高峯の「実験場」が焼け落ちた時期は、どういうわけか重なっているそうなんだ。

 もしかしたら例の「事故」を起こしたのは、暴走した赤目ではなく蟲憑きの方だったのかもな。

 

 

 

 赤目と蟲憑き。

 いずれも葦名に流れる"変若水"を根拠とする存在であるらしい。

 

 であるなら、やはり高峯は"葦名"によって滅んだ家……と結論づけるべきかもしれないな。

 高峯は葦名の"鉱山"から始まり、葦名の"変若水"で終わった。

 皮肉と言うものを感じてしまうな。

 

 

 

 ともあれ、高峯の話はこれで以上だ。

 俺としてもいい気分転換になった。

 

 それに、今回の件でより一層"葦名"について興味がわいてきた。

 機会があれば関係者にインタビューを申し込みたいところだ。

 

 

 

 赤目の方はともかく、蟲憑きは永く生きるものであるらしい。

 なら、その辺りが"葦名"について深く知るヒントになるかもしれない。

 

 今後は、蟲憑きについても調べてみようと思う。

 "葦名"についてまた何か知ることが出来たら、またペンを握る予定だ。

 楽しみにしてくれ。

 

 

 

 『真実の探求者』トニー

 

 

 




 前回にも同じことが言えますが、悪役キャラは「"破滅"という強力な"結末"」が描かれているのが、物語を分析する上では本当に魅力的です。
 転じて、破滅への導線を探る動機となり、物語の輪郭が見えやすい……と個人的に考えています。

 とはいえ、今回扱ったのは「高峯」についてのみ。
 実際のSEKIRO外伝の魅力は他にも半兵衛さん自身を取り巻く奇縁や、高峯とは別のキャラの成長など、いっぱいございます。
 もし原作をお読みでない方が見えられましたら、是非原作漫画もお楽しみいただければ幸いです。
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