名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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九ページ目「啜り泣きの半島西部にて」

 

 

 

◆一「病村」

 

 啜り泣きの半島の探索を続けていると、奇妙な村にたどり着いた。

 

 

 まず地面に黄色い残り火を見つけた。

 それが悍ましいものであることは、すぐに直感で気づいた。

 

 次に、黄色い目をしたネズミに襲われた。

 直感が確信に変わった。

 その黄色い目の成れの果てが、きっと"黄色い残り火"だ。

 

 

 

 その後、大きな焚火を中心とした村の中に入っていったが、そこには同じように黄色い目をした村人が蠢いていた。

 彼らは最初両目を抑えた状態で座り込んでいたり、立ち尽くしていたりする状態で固まっていた。

 それだけでも不気味だが、俺が近づくと突然時が動き出したかのように不自然に痙攣して、それから武器を取り出して俺に襲い掛かってきたんだ。

 そして特徴的なのは、その黄色い目から"黄色い火"が飛び出してきたことだ。

 

 おまけに、奴らの攻撃を食らうと俺の瞳も内側から熱くなっていくんだ。

 それが奴らと同じ"黄色い目"であることは、後になって気づいた。

 幸い、安全を確保してからすぐ応急処置したおかげで、それ以降は何もないがな。

 

 

 

 あの"黄色い目"と"黄色い火"は『狂い火の病』の典型的な症状だそうだ。

 曰く霊すら焼く恐ろしい火が瞳に宿り、そのおどろおどろしい火で焼き溶かして爛れさせてしまうのだそうだ。

 

 その火は命を削り、そして魔術や戦技を行使するための力をも奪う。

 その状態を指して、円卓にある一部の文献は"発狂"と呼ぶそうだ。

 

 

 

 病である特性上、この"狂い火"は伝染する。

 しかも村の教会を探ると、この狂い火にまつわる祈祷の知識すらあった。

 祈祷の術者自身もまた発狂する代わりに、他者にも発狂を齎すものだ。

 

 ……もしかしたら、この狂い火は何らかの意図によってこの村に齎されたのかもしれない。

 あるいは、この啜り泣きの半島で、何かとんでもない陰謀が渦巻いているのだろう。

 

 

 

 また、祈祷の知識曰く発狂とは褪せ人にのみ効果があるそうだ。

 二本指とは別に、褪せ人に何かを求める者がいるということだろう。

 

 

 

◆二「黄金樹の化身」

 

 啜り泣きの半島にも、霧の森で見たような小黄金樹があった。

 幻影の木なんかとは規模が違う大きいもので、でも狭間の地の空を覆うあの大きな黄金樹よりは小さいものだ。

 

 この小黄金樹には、以前にも紹介した霊薬の聖杯瓶の配合に使える"結晶雫"が拾えるものだが、今回は試練が立ちふさがっていた。

 

 

 

 黄金樹の化身。

 そう呼ばれる怪物が小黄金樹の麓にいて、襲い掛かってくるのだ。

 

 たまらず俺は応戦し、円卓で入手したロングソードの力で何とか倒すに至る。

 その過程には様々なドラマがあったが、まぁそれを割愛すると、黄金樹の化身を倒した後にようやく結晶雫を手に入れることができたんだ。

 

 

 

 彼ら黄金樹の化身は、黄金樹の子孫を守る意思であるという。

 が、そのせいで褪せ人の旅の妨げにされているんだからたまらない。

 

 霊薬の聖杯瓶の性質を思うと、奴が守る小黄金樹の結晶雫もまた褪せ人の旅に必要なものだ。

 もし相対することがあれば、容赦なく対応すべきだろう。

 

 

 

 ところで、今回の小黄金樹にはいくつか興味深いものがあった。

 

 まず化身とは別に守り人がいる。

 体に木が生えているようで、当然これらも俺に襲い掛かってきた。

 

 それとは別に、小黄金樹の周りにはいくつもの"壺"があったのが気がかりだ。

 中身はないし、器も壊れたものばかりだ。

 

 

 狭間の地には"壺人"なる者達がいると聞いたことがあるが、この壺と黄金樹にはいったいどんな関係があるのだろうか……?

 

 

 

◆三「聖杯の雫」

 

 褪せ人の宝である聖杯瓶には、強化の余地がある。

 その手段の一つとして、以前"黄金の種子"についてのことを記したが、今回はもう一つについて記したい。

 

 

 聖杯の雫。

 これは狭間の地の各地にある教会跡に遺されているものだ。

 

 すべての教会に遺っているというわけではないが、俺が見つけた限りだと以前紹介したリムグレイブの"第三マリカ教会"に一つあった。

 啜り泣きの半島では、狂い火の病に侵されていた村にある"カルの洗礼教会"や、半島の中心北部にある"巡礼教会"で見つけることができた。

 合計で三つ程度だが、聖杯瓶を強化できる性質を思うと力強いものだ。

 

 繰り返しになるが、聖杯瓶の力に不満があるならこれらの教会を巡っておいた方がいい。

 俺がすでに巡っているといえど、聖杯の雫がないとは限らない。

 狭間の地は時が不安定であるとは、前々から告げている通りだ。 

 

 

 

 この聖杯の雫は、黄金樹の恵みであるらしい。

 円卓の文献では「黄金樹の時代、布教はその要であり、かつてはそこに確かな恵みがあった」と、これについて説明していた。

 詳しい意図は調査中だが、何らかの手掛かりになると判断してここに引用する。

 

 

 

 さて、この聖杯の雫を用いた強化の効果についても軽く紹介しよう。

 

 黄金の種子を用いた強化は、聖杯瓶の使用回数を増やすものであった。

 それに対してこの聖杯の雫は、聖杯瓶の回復量を高めるものだ。

 

 

 つまり一度の使用でより多くの傷を癒せるようになる、ないしはより多くの活力を得られるということだ。

 やはりこちらについても集めておいて損はないし、黄金の種子と並行して強化していくべきだろう。

 

 

 

 狭間の地では、各地の教会は巡っておくこと。

 それが後々の助けとなる。

 

 

 

◆四「霊廟ヶ原」

 

 啜り泣き半島の西部に広がるは霊廟ヶ原。

 何よりも特徴的なのは、大きな鐘の音を鳴らしながら歩き続ける「歩く霊廟」だな。

 

 まず霊廟があって、その下の地面が四足歩行しているという珍妙な怪物だ。

 だが不思議なことに、俺に対して敵意があるわけではなさそうだ。

 

 

 その代わり、歩く霊廟を守護する者達がいる。

 そいつらは首のない肉体をしていて、そして霊の性質を持つ。

 

 何度か鉢会って応戦したが、奴ら時折姿を消しては位置を変えて奇襲を仕掛けてくるんだ。

 こちらの攻撃が空ぶったり、予想外の所から攻撃がやってきたりしたもんだよ。

 

 

 

 歩く霊廟の対処法については、近くの放浪商人が知っていた。

 詳しくは彼を訪ねるのがいいだろう。

 それと、彼の商品に携帯ランタンがあったから、情報のついでに買っておくことを勧めるぜ。

 松明を持たなくても、暗い洞窟を探索できるようになる。松明よりは照らす範囲は狭いが、買っておけば選択肢は広がる。

 

 

 

 余談はさておき、この歩く霊廟についてはもう少しだけ情報がある。

 巡礼教会で得た情報でな、曰く"歩く霊廟は魂無きデミゴッドを抱いて彷徨っているもの"らしい。

 魂無きデミゴッドとは、永遠の女王マリカの醜い落とし子だとも言っていたが……。

 

 

 

 デミゴッドとは、女王マリカの血を受けた子供達のことを指す言葉だ。

 かのストームヴィルの老醜"ゴドリック"もその一人だという。

 つまりは、特別な者達だっていうことだ。

 

 

 歩く霊廟は、そんなデミゴッドのための大きな墓ということだろう。

 首のない兵士達が霊廟を護り、そして霊廟そのものが歩きだしているのは、その眠りを余所者から護るための措置というわけだ。

 

 

 




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