SHE'S ALWAYS A WOMAN   作:雪原 美波

1 / 12
1ST BASEMENT “ONE DAY”

●旧艦娘スペシャルインタビュー

旧空母艦娘“イントレピッド”

『世界初 博物館を運営する旧艦娘』

この地で守り抜いてきた想いと覚悟──

10年間、心の内に秘めてきた言葉を、メディア初取材にて語る。

 

・取材/写真:雪原美波(本誌編集部)

 

 


 

 

 

──本日から正式にこの国立博物館の館長に就任となりました。世界で初めて博物館を運営する艦娘として、現在の率直な意見をお聞かせください。

これ以上にない使命感と同時に、大きく重たい責務を感じました。この場所から私たちの生きるこの世界に何を伝えていくのか、それは全て私にかかっているということですから。

 

──イントレピッド館長がおっしゃった『責任感』とは、どのようなものでしょう?

私たち艦娘はこれまで「歴史を作った」存在でした。そらが今日、その善悪の歴史を包み隠さず伝える立場になった。それも、この地で起こった憎悪と悲しみの事件の歴史とともに。私にとって博物館とは、ただただ過去の歴史を飾るだけの場所ではありません。この地で起こされた歴史の全てを、未来の人々が繰り返させないようにするための戒めの場所なのです。それを実現できるのは、この博物館の館長たる私にしかできないと確信しています。それが私の責務です。

 

──この場所に“艦娘祈念館”を併設することに、反対意見も多く挙がりました。

当然だと思います。正直なところ、私も当初はかなり困惑しました。この場所は、あの日、命を落とされた方々と、そのご家族の悲しみを受け止める場所です。その意味が、何よりも優先されるべきだと、私も考えています。反対された方々を私は当然否定できません。大切な人を失った場所に、別の新しい記憶を重ねることへ強い抵抗を抱くのはごく自然な感情です。

 

──それでも艦娘祈念館はこの場所に設けられた。そして、その総合館長に選ばれたのは元艦娘のイントレピッドさんでした。その理由とは何だったのでしょうか。

私たち艦娘はここにかつて存在した2つの双棟の下で、時に対峙し、争い、自由と名誉を得るために様々に闘ってきた。だけれどあの日は違った。閉じ込められた人々を救おうと奔走する人々の姿を前にして、私たち艦娘が艦娘で在り続ける意義を、この地に生きていた人々が示してくれた。その悲劇を二度と繰り返さないために戦った。あの日の艦娘たちの歴史も、同じくしてこの地にあったのです。いずれか一方だけでは、この場所の物語は完成しないのです。この地における艦娘祈念館は、決して艦娘を讃えるために建てられたものではありません。あの日を忘れないためにあるのです。あの日の出来事の全てを忘れれば、失われた命が存在していた意味も、私たちが存在した意味も、どちらも失われてしまいますから。

 

──館長自身もあの日、この事件現場にいましたね。あの日の出来事をどのように記憶していますか。

無数の煙と埃と煤です。鉄が焼き付く臭いがして、一段一段階段を上がるたびに高温になっていく。これまで数々の激しい海戦を乗り越えた私にとって、あの日の経験全てはそれまでの記憶と比較にならないほど恐ろしく悲惨なものでした。残っていた命を救えなかった悔しさも、仲間や多くの人々の喪失も忘れることはありません。

 

──あの日の経験は、艦娘の皆さんにとってどのような意義があったとお考えですか。

消防士や警察官の方々が、何度も建物の中へ戻っていく姿を見ました。逃げることもできたはずの人たちが、他人を助けるために建物の中へ引き返していく姿も。あの日、本当に戦っていたのは消防士であり、警察官であり、医師でした。私たちのような軍人でもない。名前も顔も知らない誰かのために、自分の命を差し出そうとしている人たちが、あの日には大勢いました。人々を護るために存在する。それが、私たちが艦娘であることの意味なのだと。そしてその『艦娘が艦娘たる所以』を思い出させてくれたのは、間違いなく市民の皆さんでした。

 

──艦娘にとって、かつての“ツインタワー”はいったいどのような存在だったのでしょう。

私たちにとっては帰るべき場所を示す、灯台のような場所でしたね。けれども、単にそれだけには過ぎないような不思議な場所でもありました。同じ高さでありながら、ちょっと違う2つのタワーが揃って並んでいる姿。わたしたちはそれを見上げながら、何度も自分たちがどちら側に立っているのかなんてよく考えていたものでした。私たち艦娘はあの日まで、全員が同じ答えを持っていたわけではなかったのですね。

 

──奇しくも艦娘“イントレピッド”の艦番号は、この博物館の名前と同じ11番でしたね。

確かに。私に与えられた艦番号は11番だったわね。そしてこの博物館の名前は国立11博物館。艦娘は運命なんてものを信じたことはないし、私には信仰もないけれど、なんだ不思議な感覚です。11という数字は、艦娘との間に切っても切れない関係性と意味を持っていますから。

 

──切っても切れない関係性、ですか…。

ええ。私たちを生み出した特務組織“ELEVEN PROJECT”は11人の科学研究者によって始まったし、ツインタワーのシルエットも数字の11。そしてあの日が起こったのは2011年の9月11日。多くの人々の人生が変わり、私たち艦娘の歴史もまた、大きく動き始めた日です。私の艦番号が11であることを、私は運命だとは思っていません。ただ偶然が重なっただけに過ぎない。でも、人間という生物は、偶然に意味を見つける生き物でしょう。だったら私は、この11という数字に与えられた意味を、大切にしたいと思っています。11番の艦娘として。そして、ここを訪れる人たちに歴史を伝える者として。過去を振り返るのではなく、未来に何かを残すための数字として。

 

 

 

 

 


 

【出演者情報】

──旧艦娘名“USS Intrepid(CV-11)”

アメリカ合衆国海軍で11番目に建造された空母艦娘。

サンディエゴ艦娘艦隊所属であり、日米共同太平洋掃海作戦や太平洋最終大戦等で活躍した。

現在はナショナル・イレブン・ミュージアム両博物館の館長を務める。

なお、取材情報は2035年11月時点のものである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。