SHE'S ALWAYS A WOMAN   作:雪原 美波

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2ND BACEMENT “SARATOGA”

●艦娘特別インタビュー

Tuberose代表 空母艦娘“サラトガ”

『私たちは、自由になったあとをまだ知らない』

TuberoseとGirasole、二つの思想が歩み寄ったその先で──

自由と日常を求め巡り続ける対話、そして「兵器」と呼ばれ続ける艦娘たちの未来を、己の力のみによって勝ち取ろうとしたかつての艦娘が語る。

 

 


 

 

 

──長きにわたる対深海棲艦世界大戦が終結した当時、ときに艦娘たちは“英雄”と称され、短い間ながらも歓迎されたと聞きます。サラトガさん自身は当時の社会の反応を率直にどのように受け止めていましたか。

もちろん嬉しかったですよ。熾烈な戦いを終えたことの安堵もありました。ただ、それと同時に自分たちの戦いぶりを振り返って、失った犠牲があまりに多すぎたと感じたのも事実です。数々の家族を失いながらも私たちが彩ったあの日の世界の勝利が、時のニュースとして瞬く間に社会から忘れ去られ、称えられる目標はいつしか軍人と政治家たちに向いてしまった。その時抱いた感情を、今日まで忘れたことはありません。

 

──おっしゃる通り、艦娘が軍事上の役割を失っていくにつれて、社会の艦娘に対する姿勢は急速に変化していきました。特に艦娘に対する差別や排斥が目立つようになったのは、なぜだとお考えですか?

無限大の体力と若さと耐久力を兼ね備えた、水陸両用型の人造兵器生体…。自戒を込めて言うならば、思想を持つ人々は自らと似て非なる存在を拒絶の対象と捉えがちです。肌の色、思想、宗教、文化。様々な差異をきっかけに数千年にもわたって争い続けた人類の歴史が、それを証明しているのではないでしょうか。そこに決して悪意がなかったとしても、それが故に差別はなくならないのだと思います。

 

──人類側からすれば、艦娘は戦争を終わらせた英雄であると同時に、強大な武力を持った存在でもあります。艦娘に対する人々の恐怖そのものについては、理解できますか?

今もなおそれは理解しています。だからこそ、私たちも人類が怖がることを理由に、自分たちの要求をすべて正当化してはいけないと思っています。

 

──戦後しばらくして、一部の艦娘が軍施設を占拠したり、人類側の命令に従うことを拒否したり、中には政権転覆を実現するなど、社会を大きく混乱させる行動を取るようになりました。Tuberoseは、こうした行動をどのように評価していますか。

深海棲艦とは一切関係のない国家間紛争にお互いが艦娘を投入して実際に殺し合いをさせたり、武器を持たずに声を上げる艦娘たちに対し、同胞の艦娘の武力をもって鎮圧を図ろうとする国もあった。私利私欲の解消に艦娘を利用する政治家が現れたと思えば、人類に対してなら『非人道的だ』とタブーにされるような実験の試験体に強制されることもあった。少なからず犠牲や損害が出たことは遺憾ですが、それでも私たちは叫ばなくてはならない事態にあったのです。

 

──「人類から尊厳と自由を奪われている以上、抵抗するのは当然だ」という考え方でしょうか。

いいえ。抵抗する権利はあったとしても、だからといって何をやっても許されるということは決してありません。それが肯定されてしまえば、すなわち秩序の崩壊ですから。

 

──では、Tuberoseの活動により軍民に犠牲者が出たことについて、どのようにお考えですか。

当時でも今でも必要な犠牲だったと言うことは決して許されないでしょう。亡くなったすべての人たちにとって、私たちの事情など何の意味もありませんから。その記憶を忘れず、私たちはこの途絶えることのない命がある限り、それを命ある限り償い続けなくてはならないと考えています。

 

──自由過激派のTuberoseと自由穏健派のGirasoleは、もともとは同じ艦娘の権利を求める運動から始まったとされています。それがなぜ、二つの勢力に分かれることになったのでしょうか。

私たちもまた、皆さんと同じように考える頭があって、感情があって、信条と信仰をがある。それによって生まれる思想があるとうことの証明ではないでしょうか。同じ頂にたどり着くため2つ道のをそれぞれ登っていくことも、その経緯の中で生じた争いと対立も、生きている以上は自然なことだと思います。

 

──当時のTuberoseには、「人類が艦娘を理解するまで待っていては、永遠に何も変わらない」という考えがあったのでしょうか。

我々のアプローチからその答えを導き出すのなら、回答は「イエス」となります。ですが、決して人類の理解を我々は諦めたわけではありません。むしろ「艦娘は人類と同じである」ということを、私たちなりに表現して、理解してほしかったのだと思います。私たちにだって眠れない夜はあるし、そんなときには人肌恋しくもなり、温かく包んでくれる毛布が欲しい。それを理解してほしいがために、私たちなりの方法を模索していたのです。

 

 

──もうひとつ。人類の一人として、そして被爆国の人間の一人として、あえて厳しい言葉で問います。戦後、一部の国家や国際組織において艦娘そのものを「脅威」とみなし、大量虐殺に進む動きがあったことは否定できません。ですが“Tuberose”は最終的に核兵器の所持・使用までもを示唆し、地球規模の脅威として世界にその存在を知らしめた。人類側が先に核の脅威を向けたという事情があったとしても、Tuberoseが選択したその道を、あなたは正当化できるのでしょうか。

繰り返しにはなりますが、私たちは私たちがこれまで歩んできた歴史を正当化することはできません。人類が銃口を突き付けてきたからと、私たちまで銃口を簡単に突き付けていい理由にはならないと今も思います。それは、人類を守るために生まれた私たちが人類そのものを脅かす側へ回ってしまったということです。どんな理由があったとしても、その事実から目を背けることはできないでしょう。ですが、人類には私たちを殺す権利があったのでしょうか。私たちは人類共通の敵であった深海棲艦を倒し、人類を護るべくして生まれました。それにもかかわらず、戦争が終わったと同時に私たちは「脅威」という烙印を押され「殺されるべき」対象となった。私たちは最初から、人類を滅ぼしたかったわけではありません。むしろ人々を護り続け、ただただ普通に生きたかっただけなのです。そのことをどうか、忘れないでいてほしいと思います。私たちが歩んでしまった誤った道に、すべての艦娘と人類進まないために。

 

 

 

 

 

──いま振り返ってみて、Tuberoseの強硬路線は正しかったと思いますか。

決して正しかったとは言えません。ですが、「間違っていた」と当時の自分たちを簡単に責めることも私にはできません。その答えの根源を、私たちもIntrepid率いたGirasoleも、いまだ見つようと藻掻いている最中なのかもしれません。

 

 

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