キングと呼ばれる男が■■■■■■■■って話です。
この作品を読んでくれて、ありがとう―――
<<< A市 >>>
「……あれからもう二日かぁ」
「忙しい二日間でしたね、師匠」
そうだよねアハハ〜、な〜んて言いながらジェノスと横並びに歩く俺ことレイタロウ。
「私は意外と楽しかったよ〜?協会の本部に二度も入れるなんてそうないからね〜」
「いや〜ハハハ、その節は悪かったねぇ……」
俺とジェノスの間をゆっくり歩き、膨らんだお腹を優しく撫でながら妻のサキ氏が優しく微笑んでくれる。
ホント、この笑顔を見れただけでメチャクチャ頑張った甲斐があったよ……。
「……サキさん、お腹の具合はどうなんだ?」
「今さっき診てもらったけど、極めて順調に育ってるんだって〜。凄い成長速度とも言ってたよ」
「そうか。……体はできるだけ大事にしろ。師匠の子供なんだからな」
「キュン♡……普段ツンツンしてるジェノス氏のたまに出るデレからでしか得られない栄養素がある!」
「ガーン!浮気?浮気なのか!?俺の目の前でNTRが行われようとしている!……即刻排除せねば……!!」
「……心配した俺が馬鹿だった」
や〜だよジェノス〜、こうやって緊張をほぐすことがお腹の赤ちゃんのためにもなるんだからさぁ〜!
サキ氏とケラケラ笑いながらここ二日間のことを思い起こしていく。……色々大変なこともあったけど、結果から言って上々な出来だったと思う。
『この子はサイコス。……かつて私が所属していた〝異能研究会〟の副会長を務めていたの』
怪人協会を壊滅させた直後に発見された眼鏡の美女。
知的さすら感じさせる彼女の正体はなんと、地獄のフブキの友達サイコスであった!
……うん、ぶっちゃけ知ってた。
原作はキチンと読んでるからね。彼女が怪人協会の真のボスだってこともちゃんと。
冷酷だってことは自覚してる、けれどこっちは危うく妻を怪人にされかけたんだよ?
アジトに潜入した時にたまたま誘拐計画を知って、もうケツカッチンになりかけたけどギリギリで堪えた自分を褒めてあげたいくらいだ。
『フブキ会長……この方達は一体……?』
その一言、醸し出す温和な雰囲気で全てを悟った。
彼女はどうやら
完全に害意がないと分かった時点で俺も自分の殺意を抑えることが出来た。
……自覚がないだけで俺も精神に怪人化の兆候が出てきているのかなぁ?
それでも俺は、自分のことを人間と信じたい。
『キング、この子は〝フブキ組〟が責任をもって保護するわ。それで構わないでしょう?』
俺やヒーロー協会に任せるよりまだマシそうだったため、協会から許可を貰えたならOKとだけは言っといた。
その後のことは知らないッス。
「それにしてもあの子……イサム氏だったっけ?
物凄いモノを発明したんだね〜」
「……あー、そうだね。まさか避難シェルターをミニチュアサイズにしたなんてねぇ……」
サキ氏の言葉に頷く。
これはホントに驚いたことなんだけど、イサム君は宇宙船の材料(俺がゼロから生み出したモノ)を使って斬新なアイテムを発明していたのだ。
『モノやヒトを小さく圧縮して収納できるミニチュアドールハウス式シェルター、名付けて〝ドリームハウス〟を発明できました!』
……ホントに凄い子だよイサム君は。
宇宙船を構成していた物質の中に、体積や重量を縮減させる未知の鉱石が含まれていたらしい。
恐らく膨大な物資や武器で限られた船内のスペースを圧迫しないよう宇宙人達に利用されていたと思われるが、とっくに全滅させてしまったため真実は闇の中だ。
その鉱石を上手いこと活用できないかとイサム君は頭を捻り、結果作り出されたのがドリームハウスと呼ばれるミニチュア世界だ。
協会本部に設置されたソレ、見てくれは桐
怪人テロ発生に際しそこをシェルターとして使わせてもらった次第だ。お得意の瞬間移動で大陸中の一般人を本部まで転送してね。
『ボフォイ博士―――メタルナイトに自分も一枚噛ませろと珍しく迫られまして……。ドリームハウスはシェルターとしての利用だけに留まらなくなりました』
ドリームハウスにはそれだけ光る物があったワケで、聞いた話によると稲作や畜産なんかを実験的にやるらしい。
イサム君の残念そうな表情が今でも思い起こせる。
『……そうだ!この前からずっと渡しそびれていたモノがあるんです!受け取ってください!』
その時イサム君から受け取ったモノ、これも凄すぎた。
「……サキ氏、このウエストポーチは件のイサム君から貰ったものだよぉ。これがまた凄いんだ」
「えっ、そうなの?……もしかして無限にモノが入る魔法のポーチとか?」
「正ッ解!」
これにはサキ氏もジェノスも面食らう。
そうそう、そういう反応が欲しかったんだよ!
「体積や重量を縮減させる鉱石、ドリーム鉱石を綿状に形成してポーチ状に加工した代物だって。内部は大規模工場用地並に広く、時間が流れていないらしいから風化や腐敗の恐れもない。あらかじめ使用者登録を済ませておくことで内部の状況を携帯端末で正確に把握でき、なおかつスムーズにモノの出し入れが出来る!」
ちょうどド○えもんの四次元ポケットみたいにね。
「そ、それは凄いですね」
「加えて、常に『気』で保護することでホコリ一つつかない安全仕様になっている。……まぁ、これは俺にしか出来ないことだけどね」
いや〜、イサム君にはマジ感謝だねぇ!
こ〜んな面白いアイテムを譲ってくれるなんて嬉しいよホント。今度スイーツパフェでも奢るかな。
「オマケに一ヶ月分の食糧も備蓄してくれてるから言うことナシだよぉ」
「それだけ師匠が皆に慕われているということですね」
「うんうんそうだね〜。……見てみなよレイタロウ氏」
「ん?……あぁ」
「キングさん!今回も大活躍でしたね!」
「強すぎてマジ尊敬します〜!」
「キングさん!今回の大規模怪人テロを鎮圧した第一人者としてどうか一言お願いします!」
「サイン、サインくださいキングさん!」
「こらこら、キングの行く手を遮るんじゃない」
「握手してもらえるかなぁ……?」
「隣にいる美女は誰だ!?」
「っぱS級は最強だァ!」
「バ〜カ違うだろ?キングさんが最強なんだよ!」
「好きです……♡」
「「「「 キング!キング!キング!キング! 」」」」
……気付けば人だかりに捕まっちゃった。
おいおいおい、俺が全力で守り抜いた結果がこの人だかりかよ。
流石に笑えねぇ。ハハハ……。
「嬉しそうじゃない、レイタロウ氏?」
「笑うしかないってこんなの……」
「師匠、この光景は決して間違いなんかじゃありません。
……希望の光はしっかりと灯され続けています」
「だといいけどね―――ん?」
あれ?人だかりの外れにいる
「キング!今日こそテメェを狩るぜ!」
「「「「 えっ!!? 」」」」
「奴め、性懲りもなく……!」
「あ、また来たんだ」
「……ガロウ君」
学生服姿のガロウ君登場。やったね良くない。
時計を見る。……午前11時51分、お昼一歩手前か。
「また学校サボったねガロウ君……?」
「はっ、俺にとっちゃ学校も授業も体育もテストも温すぎるんでなァ……!
それにテメェは俺に借りがあるんだぜ!?」
ぇ、借りなんてあったっけ?
「二日前、何故か丸一日休学になったかと思ったらジジィに首根っこ引っ掴まれてC市まで連れてこられて怪人退治のボランティアだコンチクショウ!!」
「……あー、そういう……」
「許せねぇ……俺は〝絶対悪〟になりたいのであってヒーローになりたいワケじゃねえ!!
この屈辱を晴らすためにもキング!テメェを狩らなきゃならねぇ!勝負だ!!」
顔真っ赤にさせながら構えるガロウ君。
もうどうにも止まらないって奴だなこりゃ……。
「おっ、誰かと思ったらガロウじゃん」
「お前知ってんの?」
「いつもいつもキングに勝負を挑んではコテンパンにされてる奴だよ。割と有名人だぜ?」
「A市立高校の学生だろ?授業中に抜け出すとは大した奴だなぁ」
「おぉガロウ坊、今日も精が出るねぇ!」
「ガロウちゃ〜ん、簡単にやられんじゃないわよ〜?」
「がんばれガロウマーン!キングに負けるなー!」
「外野がピーピー騒ぐんじゃねぇ!!黙って見てやがれ!!(//////////)」
……ふっ、すっかり有名人だねガロウ君。
「レイタロウ氏、相手してあげればいいじゃない」
「師匠、今度こそ奴を分からせる必要があります。
命令とあらば俺が焼却しますが?」
サキ氏、ジェノス……。
そんなの、決まってるじゃないか。
「……ガロウ君、くれぐれも周りを巻き込むなよ」
「っ……へっ、俺がそんなヘマをするか!!」
俺は不動の姿勢のまま。ガロウ君は不敵な笑みを浮かべながら隙のない構えを取る。
……今日は凄く気分がいいな。
こういう日はとっても良いことが起こりそうだ。
「しっ!!!」
ガロウ君が一気に距離を詰める。
俺達の戦いは始まったばかりだ……!
約一年間、この小説を読んでいただき誠にありがとうございました。
別の小説を投稿したり削除したりと色々やらかしましたが、拙いながらもこの小説に一区切りを付けることが出来たのは不幸中の幸いでした。
最後に一つ……私のことは嫌いになってもッ!レイタロウ(キング)のことは嫌いにならないでくださいッ!