ジョジョの奇妙な冒険IF-オーディナリーワールド- 作:ニャンクル
自分が今まで入院していた部屋の中で目を覚ました徐部流は理解ができず呆然としていた。
「一体何が起きた?たしかに俺は今日退院したはずだ。なのになぜ……?」
毛布をどかしてベッドから降り、ゆっくりとかすかに見える光を頼りに一歩ずつ一歩ずつ唾を飲み込みながら進んでいく。
病室の電気をつけるべくスイッチに手をやりスイッチを入れる。
カチ………
電気がつき明るくなった部屋を見渡し、改めて自分が病室にいることに驚く。一瞬、夢でも見たのかと思った矢先その夢が現実へと変わった。
「こ、これは……!明らかにおかしい!おかしいぞ!」
先程までは暗く周りが見えていなかったが、明るくなった部屋の中で自分の姿に驚きを隠せなくなる。
「今日帰ってきたままの服…俺は今日疲れですぐに寝たから着替えていない。まず病室なのに病服ではないのはおかしすぎる」
深呼吸をして少し気持ちを落ち着かせて思考をしていき、すぐに考えはまとまった。
「これはどう考えてもスタンド…こんなことを起こせるのはスタンドの攻撃しかない!何者かから俺はスタンド攻撃を受けている!」
身構えて周りを見渡すも変わったところは特にない。今日退院した病室に違和感を感じることはなく、様子を確認するために病室のドアをゆっくりと開けていく。少し顔が覗けるほど開けたところで徐部流は顔をのぞかせて外の様子を確認する。
「暗いがあまり変わったところはなさそうだな」
薄暗い病院の廊下は不気味なほど静かで所々照明がつけられておりそれがまたこの不気味さを演出している。
「薄暗い病院はなんか嫌な気分になるな。それになんらかの攻撃を受けている限りゆっくりと行くしかない」
少し開けていた扉を開いて病室を出てみる。既に消灯時間を過ぎているからだろう、電灯は所々ついているだけで薄暗いことに変わりは無い。
先程と同じように変わらず静かな廊下をゆっくりと歩き出す。
一歩ずつ一歩ずつ歩みを進めていく。
「何も起こらないな、一応階段を使うか」
エレベーターの場合逃げ道が限られるため階段の方が良いと判断した徐部流は階段を一段ずつ降りていく。
「5階から降りるのもゆっくりいくと時間がかかるものだな。それにしても何も起こらない。スタンド攻撃を受けたはずなのに何も起こらないなんて…」
スタンドを出して警戒をしつつどんどん階段を降りていき、病院の出口までやってくる。
「やっと着いた、本当に何も起こらなかった。なんだったんだ一体?」
出口は自動ドアと内開きのドアがあったため徐部流は内開きのドアの方へと手をかける。
「流石に零時を過ぎてるから真っ暗だな。家に帰ってまた睡眠をとるとするか」
徐部流はドアを開き、外へ出た直後、強い風が吹いて目を瞑る。ほんの数秒、瞬きほどの時間目を瞑った、そしてまた目を見開き、眼に映る光景に驚倒する。
「な、なにィィィィー!?」
徐部流は戻っていた。先程までいた自分の病室へと。一瞬、ほんの数秒の出来事。徐部流は自らに何が起こったのかさえ分からなくなっていたのだった。
「ここは病室だ、俺がさっきいたはずの。なぜまたここに戻っているんだ!?」
ベッドから飛び起き、何者からの攻撃を警戒しつつゆっくりと歩き、壁にへばりつく。
病室の電気が付いていることから自らが病院の外から病室へと瞬間移動させられたことが分かり、明らかにスタンド攻撃ということが徐部流にはわかった。
「この病院に閉じ込められたのか?それとも閉じ込められてはおらず出る場所によって変わるのか…」
様々な憶測が考えられるため、一つ一つを試して行くことにした徐部流は窓を開けて外に身を乗り出す。5階の高さは高く、夏が近いとは思えないほど寒く、凍えるようだった。普通に降りたならまず無事では済まないだろうし降りられたとしても当たりどころが悪ければ死が待っている。
「思ったよりは高いなぁ。だけど試さない限りはなにも答えはでない!」
5階から飛び降りた場合、地面に着くまで約1秒ほどでたどり着く。これは自由落下での秒数であり、自らの体験する時間では長く感じるものだと言われている。これは主観的なものなので個人差はあるが徐部流にとってその主観の時間がとても必要なものであった。
スタンドを服に触れさせ、能力を発動する。
「オーディナリーワールド!俺の服の動く速さを遅くしてくれ!」
徐部流の背後から現れた人型のスタンド、オーディナリーワールドの能力は発動直後から徐々に鈍化していく能力のため、先に発動する必要があるのだ。
「いくか」
徐部流はなんの迷いもなく5階の高さから飛び降りていく。体感というものはとても大切であり、徐部流にとってこの鈍化になる時間こそが必要なのだ。
徐々に徐々に鈍化していき、十数秒かけて無事に一階へと降りていった。オーディナリーワールドの能力により怪我もなく下に降りられた。
「なんとかなったな」
窓から飛び降り一階に到着しても何も起こらず、静寂が流れる。
「出口が違ったのか?」
そしてまた一歩踏み出した時強い風が吹き、徐部流は目を瞑ってしまう。
「ま、また風が…」
風が収まり、目を開く。
「ち、違ったか…」
徐部流はまたも自分のいた病室へと戻ってきていた。
「やはり閉じ込められたというのが正しいらしい。やはりこの状況を打破するには攻撃してきたスタンド使いを倒すしか方法はない」
ベッドから起き上がり、ベッドから出た時に体の自由を奪われ地面に膝をつく。
「うっ、これは…」
頭を抑えて膝をついた徐部流は大きな欠伸をかく。
「す、睡魔か。とても眠い、さっきまで眠気なんて一切無かったのに」
睡魔に襲われながらも立ち上がり、病室のドアに手をかけ、開き廊下に出る。
「予測だが、スタンド使いはこの病院の中にいるはずだ。この病院に閉じ込めているのならこの中にいる可能性は高い」
廊下を見渡して徐部流は階段の方へと足を進める。
「患者の誰かだった場合人数が多すぎる。一度出入り口に行って病院内の見取り図でどこに何の部屋があるのか確認だな」
徐部流はすぐに階段まで行き、そのままゆっくりと一段一段降りて行く。
四階、三階、二階、一階。
「ついたな」
一階についた徐部流は深呼吸をしたあと出来る限り音を消して、この病院の見取り図探し回る。
「看護師さん達が1人もいないなんて何かおかしい。それよりもまず病院内の見取り図を探さなければ!」
見取り図は思いのほか簡単に見つかり、病院内の位置を確認して行く。
「敵がわからない以上何もできない。歩き回って異常がないか探すか…」
と、その直後だった。
フッ………
「ん?」
一瞬何かが動いたような気配を感じた徐部流はその場所から目線を外せずにいた。
「気のせいか?しかし、この状況だ。何かあるかもしれない!」
その場所はコンクリートの柱だった。
鼓動がだんだんと大きくなっていく。
恐る恐る近づいて、柱に手をかけグッと顔を柱の裏へと向ける。
「何かが一瞬動いてここに来たような気がしたんだが」
勢いよくの柱の裏を覗き込むもそこには何もなく、肩の力が抜けていく。
「な、何もないか。まぁまずは1番近い内科に移動を開始しよう」
そう言って徐部流は来た道を帰り二階へと上がっていった。
徐部流が去ったあと、二足歩行のスタンドが先程の円柱から降りてくる。黒と白の縞模様が特徴的で人型に近いが上半身のみで下半身はなく、脚のように太い二本の腕が生えている。
「危なカッタ。見つカルところダッタ、あの男が上を向いてイタラ見つカッテいた。」
地に着いたスタンドはボソボソと呟く。
「あれ、はクウジョウくんダッタ…」
そう言ってコツコツと音を立てながら階段を上がっていった。