暫く機動六課に滞在する事を決めた一光は夜の食堂にいた。基本二十四時間勤務の六課の食堂もオール営業。
深夜は軽食に限られるが開放されている。自販の缶コーヒーを片手に相棒と談議しているとフェイトが現れた。
「こんなところに居たんだ。」
「・・・・フェイトは今上がりか?」
「うん。資料とか纏めてたらこんな時間になっちゃた」
そう答えて微笑むフェイト、本当は疲れているだろうに。
「話したい事、いっぱいあるんだ!カズの話も聞きたいし・・・・ダメ、かな?」
男性の皆に問う!フェイトほどの美女に上目使いで尋ねられて断れるか?
一光とて否。断じて否!とだけ言っておこう。
「ふぅ、明日に影響しない程度にね。」
やはり、敵わないなぁと思いながらも一光は頷いた。
「カズはあの後、何処にいたの?」
当然といえば当然の質問だ。
「理屈は知らないけど、“元の世界”に戻れた。」
「元の世界に?」
「ああ、それで机の上にアインスと戦った傷を再現したようなスカルハートのプラモがあった。」
ソレはもう酷い損傷だったと記憶を掘り返しながら話す。
「家族と再会、そんで五年間かけてスカルハートを修理してって言ってもまだ未完なんだけど。」
「そっか、カズは家族と離れてたんだ・・・・・」
「正直、心配ではあったんだ。闇の書の闇・・・・アインスの構築を無限書庫で調べたけどあの通りで良かったのか?とか自問してたし、なのはやフェイトも心配だった。」
「そうなの?」
「ああ、可愛い妹分が物騒な世界に身をいてるからな?でも、驚いた。」
と一光はコーヒーを一口。
「皆無事に、こんな美人になってるんだから。ミッドに戻れてよかったと単純に思えたよ」
フェイトの顔が急に赤くなり、俯いた。
「そう、なんだ。そうだ!今度、エリオとキャロもちゃんと紹介しないとね」
フェイトは嬉しそうにはにかんだ後、思い出したように手を合わせた。
「もしかして、あの新人でチビッ子たちか?」
思い当たるのは槍を持った少年となにやら使い魔だろう白い鳥を肩に停めていた少女。
「うん、書類上では私が母親。保護責任者なんだ。」
「十年で・・・・子持ち・・・だと!?」
再開後、一光はトンでもないことを聞いた気がした。
「あ、いや!そうじゃくて任務で保護したの。行く当てもない子達だったから」
フェイトは優しい性格だ。それだけではないだろうというのは一光も感づいたが、言及はしなかった。
「そっか。」
「今度はカズの番。家族の事とか聞かせて欲しいな。」
「・・・・つまんないぞ?」
淡々と話し始める一光に聞き耳を立てるフェイト。
(もしも会えるなら、会ってみたいな)
この時、フェイトは密かにそう思った。近い未来、現実になるとも知らずに。
そうして、ただ静かに夜は更けていく。
機動六課:応接室
「本当に生きていたのか!?」
「まぁ、多分死んだってのは間違いないだろうけどな。言ったろ?奇跡を起してやると」
フェイトとの話が落ち着いて早数時間、はやてに呼ばれて言って見るとハラオウン親子がいた。
「貴方には、先ず謝らないといけないわね。ごめんなさい!」
頭を下げるリンディに一光は苦笑する。
「何を謝る必要がありますかね?リンディさんは仕事をこなしただけだ。それに俺は“生きて”いる。別に次元歪めるトンデモ砲撃たれたくらいじゃ恨みませんよ」
リンディは少なくとも仕事上とはいえ、一光を見殺しにする決断を一度はした。だから、一光がどう思っていようが受け止める覚悟をしてきたのだ。
「・・・・・キミはそういう奴だったな。」
クロノが肩を竦めた。
「・・・・そうね、フェイトが「リンディさんストーップ!!」あら、そうね。コレは本人から聞いたほうが良いかしら?」
フェイトがと言いかけたところではやてが全力のツッコミ、ソレを聞いてリンディもなにやら悪戯笑顔。
何?どういうこと??
「で、クロノとリンディさんが来たという事は・・・・・世間話じゃないよな?」
とりあえず、フェイトがどうのは置いといてはやてに尋ねる。
「そや、前置きは「いらんわ」ほな六課に入隊せえへん?」
はやてがあっけからんと切り出した。と言っても前置きを省いた一光としては単刀直入で助かる。
「良いのか?俺記録上死んでるし・・・・・「其処で私達の出番なのよ」またですかリンディさん!」
そう、十年前に初めて出会った時もこんなノリで民間協力者の席を手にしたような記憶が。
「いや、今回は僕から正式にはやてに辞令を出した。六課にキミが加わってくれれば正直心強い」
「このスカウトを受けてくれれば、一光君はクロノの直轄の部下で一等陸尉の席が用意される。」
『破格の待遇ですね。行き成り尉官ですか』
スカルハートの言う通り、コレは破格を通り過ぎて異常だ。
「んー・・・・なんか裏がありそうだな。」
唸り、結論を口にするとクロノはため息を吐いて、
「相変わらず、感の鋭い奴だな。キミは未来視のレアスキルでも持ってるんじゃないか?」
と言ってきた。
「ンな分けあるか。弱いからこそ知恵を磨く、戦闘場では機転を利かせ、あらゆる事態を考慮して先手を打つんだ。」
「それが、あの保管プログラムだったのね?あれには感心したわ。あの時に帰還できていたなら間違
いなくスカウトしていたもの」
「十年越しのスカウトですか?まぁ、良いですけどね。」
「受けてくれるんか!?」
ぱぁっと明るい表情になるはやて、部隊長としても戦力増強はありがたいだろう。
「ああ、ただし条件がある。」
「条件?」
首を傾げるはやてを他所に一光はクロノに対して、
「破格の待遇に隠れた“裏”を時が着たらで良い。話してくれ」
そう言ってスカウトを受けた。
機動六課:食堂
「あ、なのはちゃん。今お昼なん?」
「あ、はやてちゃん。そうな・・・・ってカズ君その格好!」
「いや、其処まで驚く事か?」
はやてと現れたのは一光。なのはは振り向くや昨夜の会議の議題を思い出し、ソレを受けてくれたこ
とに驚いていた。
「「「「部隊長、お疲れ様です!」」」」
フォワード一同がビシッと敬礼、この辺はやはり上下関係だろう。幾ら歳が近いとは言え、やはりここは上司と部下。
区別はしっかりとしている。
「一様、スカウトとやらを受けたんだ。」
ガシガシと頭をかいて答える一光に困惑気味のフォワード一同。
「えっと、つまり紬さんは六課に入隊した?」
スバルが恐る恐る呟くと一光は「おう」と答える。
「そや、なのはちゃん。午後の訓練にカズ君参加してもええよね?」
「んー、そうだね。ちょっと早いけど皆も魔法だけじゃない戦術も見ておく必要があるし」
はやてが何か思いついたようになのはに尋ねるとなのはは少しだけ考えてそう答えた。
「ホントですか!?」
「それは、あの・・・・どういう意味なんでしょうか?」
驚くスバルに、疑問を持ったティアナ。
「変わってなければカズ君の魔力ランクは総合F、有って無いようなモンや。」
「えっと冗談ですよね?八神部隊長」
「あの、リイン曹長から聞いたんですがヴィータ副隊長やアインスさんと互角以上だと」
「うん、そうだよ。」
「ならなんで部隊長はそんな言い方を?」
はやてが言うとスバルが「まさかぁ~」と言いたげな表情で問い、エリオがミニリインから聞いた事
を尋ねる。
「早い話、俺は魔法を殆ど使えない・・・・・才能が無い凡人なんだよ」
「「「「えぇ!?」」」」
「何故驚く!?」
一光のカミングアウトが、訓練でも苦労しているガジェットを全て破壊した人間の言葉とは思えな
かったフォワード一同だった。
「皆、どうしたの?」
そこにフェイトが登場、一光の姿を見るや悟ったように何も言わずに微笑んだ。
「カズ君もごごの訓練参加するって話や」
「え?スカルハートの修理・・・・・」
「そうなの?」
「そうなんだ、フェイトちゃん。それでね?お願いがあるんだけど」
「あれ?俺の話は??」
殆ど聞かれないまま、軽い自己紹介を終えて一同は二つのテーブルに分かれて座る。
分けはなのは、スバル、ティアナ、はやて。傍ら、フェイトと一光、エリオとキャロの四人ずつである。
それぞれランチを持ってきたところで一言つっ込みたい。
「スバルとエリオ、そんなに食いきれんのか!?」
普通、スパゲッティって座った人を隠すほど量があるだろうか?
「え?いつもですよ」
キョトンと答えるエリオ。
「一光さんこそ小食なんですか?」
むしろすくないのではと言いたげなスバル。
「いやいやいや!皆さん、少しは驚かないんですか!?」
同意を求めようとなのは達に振ると、
「もう見慣れてしまって」
とティアナ。
「エリオ君良く食べますよね」
と苦笑のキャロ。
「それであの体系・・・・」「羨ましい限りや」「うん・・・・」
なのはを始めにはやてとフェイトが小声で呟いた辺り、体系維持には気を使っているのだろうか?使ってんだろうなぁ。
因みに一光は二人前のマグロドンである。何でもあるのね、管理局の食堂。
機動六課:訓練シュミレータ
「皆、一つ連絡事項。もう、会ってるけど、今日から一人仲間が増えます!」
「あのなのはさん・・・・それって?」
「紬さんですか?」
スバルはまさかと言うような口調でなのはに尋ね、エリオは確認を取る。
「そうだよ。」
「自己紹介はさっきしたから割合な、何分ブランクあるから足引っ張らないように頑張るのでどうぞよろしく」
「ガジェットを一人で殲滅した人が言っても・・・・・」
「説得力が無いような・・・・」
苦笑のティアナとキャロ。
「大丈夫だ。経験を詰めばキミ等も出来るようになる、今は原石なんだ。焦る事は無い。」
あっさり言ってのける一光。
「あれ?結界が強化されてる・・・・」
いち早く異変に気がついたのはキャロ。流石はフルバック、支援担当と言うべきか。
「これから模擬戦があるの。皆は見学だよ」
なのはが説明する。しかし、フォワードが模擬戦をするなら結界の強化は必要なのだが、
「あの一体誰が戦うんですか?」
尋ねるティアナ。そこに訓練着姿で走ってくるフェイトとヴィータが目に留まる。
「ワリィ、遅れた。」
「ごめん、なのは!」
「ううん、今概要を説明したところだよ」
「概要なのか?アレ」
なのはにツッコム一光。
「戦うのはフェイト隊長とカズ君だよ」
「待て待て待て!スカルハート本調子じゃないんだけど?」
「そう言う事態も含めて見せるためや。」
「「「「八神部隊長!?」」」」
行き成り現れたはやてに驚くフェイワード一同。
「図ったな!」
「何度でも好きに言いや、昔から詰めが甘いで!」
「はやてちゃん、そろそろ。カズ君、フェイトちゃん。位置について、ね?」
なにやらじゃれているように見える光景に唖然とするフォワード、なのはが急かすと「こうなったら
てこでも動かないよなぁ」とぼやきつつ、一光はフェイトと並んで開始位置まで。
なのはとフォワード四人、ヴィータは結界の外、シュミレータを一望できる所まで移動。一方、一光とフェイトは共に歩本でいたりする。
「十年ぶりだね、こうして向き合うの」
「ああ、幾らコイツが本調子じゃくなても負けるつもりは無いぞ?」
「私もかな?」
「そんじゃそろそろ。スカルハート」
「バルデッシュ!」
「「セットアップ!!」」