ブラック・ブレッドが再開!?
な、なんなのだ!? この二週間でいったい何が起きているというのだ!?
薄暗い至聖所の中で月明かりに照らされたベアトリーチェ。その姿は前に会った時と変わらず、イヤな雰囲気を纏いながら傲慢な笑みを浮かべていた。
その笑みを見るだけで先生は過去に受けた仕打ちがフラッシュバックし、心の底から恐怖がにじみ出してくる。けれどそれを抑え込み、先生は毅然とした態度でベアトリーチェに語りかける。
「――どうして何もしてこなかったの?」
本編ではアリウス自治区に侵入した先生たちに接触を図ったはずのベアトリーチェ。けれどこの世界でベアトリーチェは接触をしてこなかった。
それどころかアリウス生徒たちをトリニティに向かわせた。その目的は何なのか。
「私たちがアリウス自治区に侵入したことはわかっていたはず。なのになんで襲ってこなかったの? それにどうしてこのタイミングでトリニティに襲撃を?」
「時間稼ぎのつもりでしょうか? ……それともシッテムの箱の所在を探ろうとでも?」
「――っ!?」
「ですがいいでしょう。こちらとしても好都合ですし、なによりこの言葉の交わし合いもこれで最後になるのですから」
先生としてもベアトリーチェと対峙するのは今回で最後にしたいと思っている。
確かに本編ではこれ以降登場はしていなかったが、死んだわけではなく生きてゴルコンダに回収されていった。もしかしたら新しいメインストーリーの更新で現れていてもおかしくはない。
とはいえ知らないメインストーリーについて考えても答えが出ることはない。
先生としてやるべきことはここでベアトリーチェを倒し、アツコを助ける。ただそれだけだ。
「結論から申し上げればアナタと同じですよ。先生」
「……同じ?」
「えぇ、未来を変えようと必死に足掻いたアナタと同じ」
「――なっ!?」
ベアトリーチェのその言葉に先生は目を大きく見開いた。
「私はアナタに敗れ、敗者になる。そんな未来を知ったからには変えようと準備するのは当然でしょう?」
ベアトリーチェのその瞳は同類を見るように輝いていた。実際先生はその言葉になにも言うことが出来ない。なにしろ先生自身も同じことをしているのだから。とはいえ問題なのはそこではなく……。
「……どうしてそんなことを知っているの?」
「未来を見たから。これ以外の答えがあるとでも?」
「そんなことはわかってる。私が聞いたのはどんな方法を使ったのかについてだよ」
ベアトリーチェに未来を知る力はないはずだ。本編でもそうだったし、この世界でも最初に遭った時の会話から確かなはずだ。だというのになぜ……?
「簡単な話です。自身にその力がないのならその力を持っているモノを利用すればいいだけの事」
「――まさか」
にやりと醜悪な笑顔を浮かべ、おぞましく嗤う。
「ベアトリーチェ……っ!」
先生の全身に力が入る。拳は握りしめられ、歯はギリッと音をたて、足の先から頭のてっぺんまで怒りで震える。
「おかしいと思っていたんだ。どうしてセイアちゃんが意識不明になったのか……っ」
ゲマトリアと接触しないように注意したセイアちゃんが勝手な行動を起こすとは思えなかった。何かがあった。そう先生は考えてた。
「セイアちゃんに――手を出したな」
「予言の大天使の力は想像以上のモノでした。彼女はこれからも利用させてもらいますよ」
くすくすと嗤うベアトリーチェの顔面にこの拳を叩き込んでやりたい。その煩わしい口を無理矢理にでも閉ざしてやりたい。すべてを下に見るその目を潰してやりたい。
口の中で反響する言葉が喉を傷つける。目頭が熱くなり、ベアトリーチェ以外の景色がぼやけていく。脳はしびれ、神経をつたい全身を怒りで満たしていくのがわかる。
全身を震わせるこの衝動に身を任せてしまいそうになる。
「――っ!」
けれど、そんなことをしたって何の意味もない。いやむしろ状況を悪化させるだけだと先生を思い直し、深く息を吐き感情を押さえつける。
「…………どんな未来を見たの?」
「それをわざわざ語るとでも?」
当然だ。わざわざ自身が負ける原因をしゃべるような相手じゃない。
「……といったものの、もうすでに対策済みですし話しても問題はないでしょうが」
ずいぶんと余裕そうにしゃべるベアトリーチェ。
「私が敗北した原因、それは聖園ミカを放置してしまったこと」
「ミカちゃん? ……あぁ、そういうこと」
おそらくベアトリーチェは本編の未来を知ったのだろう。
「気付いたようですね。そう、私が今この瞬間トリニティに襲撃を仕掛けたのは聖園ミカをこの場に来させないため」
本編ではミカがミメシスの増援を食い止めてくれたからこそベアトリーチェに勝てた。
けれどこの世界ではミカがアリウス自治区に来ることはなく、その代わりというかのようにミネがいる。
それに道中の戦闘もアリウス自治区に侵入する一回のみ。本編と違いずいぶんと余力は残っている。だがそれは相手も同じ。ミカの襲撃に人員を割いているとはいえまさかベアトリーチェ一人で戦うつもりなんてないだろう。
「彼女は私に新たなミューズをもたらしてくれる存在ではありますが、だからこそ彼女の行動は予測できず、そんなものに頼ってしまったことこそ敗因なのでしょう。ですがああして封じてさえしまえばもう負ける要因はありません。それと……」
「……?」
「もう十分話しました。これ以上の時間稼ぎなど不要です」
そういうとベアトリーチェの背後、闇夜に隠されていた至聖所の最奥が月明かりに照らされあらわになる。そこには十字架に磔にされたアツコの姿があった。全身にとげの生えたツタが巻きつき血を流し、露出した肌のあちこちに痛々しいあざが出来ていた。
「――アツコ!!」
サオリが悲痛な叫びをあげ駆け出そうとした。けれどその時、サオリの足元に銃弾が撃ち込まれその足を止められてしまう。
「! リーダー!」
月明かりに照らされた至聖所内部。目を凝らしてよく見てみれば瓦礫や柱の後ろといった物陰に数人の人影があった。
「言ったでしょう。準備して待っていたと」
「く――っ!」
相手の人数は少ないとはいえ囲まれてしまている。
「準備ってこれだけ? いくら何でも私たちを相手するのにこの数は少なすぎでしょ」
「くくくっ」
ミサキが煽るように言うがベアトリーチェはおかしそうに笑うだけだった。
「まさかこれですべてだとでも?」
バチンっとベアトリーチェが指を鳴らした瞬間、通ってきた暗闇の通路から無数の足音が響き始める。
「な!? なんですかいったい!?」
暗闇から姿を現したのは青白く光る体を持ったミメシスだった。その数は数えることが出来ないほどの多数。
そしてミメシスを引き連れ歩いてきた先頭には他のミメシスとは明らかに一線を画す者がいた。二つの巨大な重火器を携え、全身をラバースーツで覆い、顔をガスマスクで隠し、悠然と近づいてくる存在。
「バルバラ……っ」
「流石にアンブロシウスは量産出来ませんでしたが、このミメシスの集団とバルバラさえいればあなたたちごときを消すことなんてたやすいものです」
バルバラの持っていた重火器の銃身がゆっくりと回り始め、どんどん加速していく。
「っ! 先生!」
やがてその銃身から銃弾が飛び出し、私の前に飛び出してきたミネが盾を構えすべてを受け止める。
「――ぐっ!」
バルバラの攻撃はほんの数秒の事だった。だが、ミネの後ろで守られている先生にとってその数秒は数分にも等しく感じるほど恐怖してしまう。
なにしろたった一発銃弾がかすっただけでも今の先生にとっては致命傷になりえるのだから。
「先生、あなたに引導を渡して差し上げましょう」
忙しかったとはいえ二週間書けなかったのはマジできつい。
今話書くだけでもかなり時間かかった。
いくら何でも鈍りすぎだろ。
だからリハビリとしてこのシルバーウィークで後二話更新するぜ。
……多分。
…………きっと。
………………メイビー。
いや、絶対更新するぜ!!