悪役令嬢ハーレム 〜乙女ゲームの負け役"正ヒロイン"に転生した俺は、死なないために悪役令嬢たちを堕としにいく〜   作:椿乃朱華

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短期間連続七話投稿:三話目
八時六分に七話目投稿予定


ここに、私の居場所はない。

 結局、ドレスは見つからなくて。

 時間もなかったので、会場に向かうことになってしまった。

 

 私の隣にはミリアルド。

 気を遣って一緒にいてくれるらしいが……正直離れて欲しかった。

 

 こいつがいると、すごく目立つから。

 会場に入れば、視線が集中するのは分かりきっている。

 このままでは制服姿が注目されてしまう。

 

 ドレス探しを手伝ってくれたのは助かったし、気持ちはありがたいんだけどね……いつもどこか余計な感じがするのだ。

 

 思えば、私に関する災いは、全てミリアルドが中心になって起こっている。

 

 彼が何かしたわけではないけれど、その影響力が計り知れるというものだ。

 

 ……きっとドレスを盗んだのも、ミーシャの取り巻きの誰かがやったのだろうな。

 

 ゲームではこんな展開なかったけれど、そうとしか思えない。

 

 そして、ミーシャは関わっていないと見た。

 

 でなければ、何のために稽古をつけてくれたのか分からないから。

 

 恥をかかせる為なら、手伝う必要はなかったのだ。

 断って、ただ私がうろたえているのを眺めるだけで良かった。

 

 それなのに、毎日遅くまで練習に付き合ってくれて、できるまで根気強く指導してくれていた。

 こんなの、ふつうは嫌いな相手にできない。

 

 練習を通して少しは仲は深まったけれど、それでも知り合いの域は出ていないだろう。

 そんな相手に尽くせる彼女は、やはり気高かった。

 

 それゆえに、残念だとも思う。

 取り巻きを制御できず、いいようにやられているから。

 落胆したのは、ミーシャに、ではない。

 彼女の気持ちを汲まなかった取り巻きに、だ。

 

 好き勝手に暴走して、ミーシャに罪をなすりつける。

 加えて、彼女の努力を無駄にした。

 そんな卑怯な奴らがミーシャの周りにいることが許せなかった。

 きっと彼女にも落ち度はあるだろうが、責める気にはなれない。

 一番悔しいのはミーシャだろうし。

 

 だからか、会場には、顔色の悪そうなミーシャがいた。

 ミリアルドと共に、彼女へ近づく。

 

 周囲は私の姿を見てざわざわとしているが、今はいい。

 ミーシャの方が優先だ。

 近くに寄ると、彼女はいきなり謝ってきた。

 

「申し訳ありません……私には、それしか言えませんわ」

「ミーシャ様が悪いわけではありませんから。全て、盗んだ犯人が悪いのです」

 

 励ましてみたけれど顔色はよくならず、落ち込んだまま。

 推しにこんな顔をさせるなんて許せない。

 一体どこのどいつがやったんだ。

 見つけたらしばき回してやる。

 

「そうだ。レイナの言う通りだ。いくらレイナをやっかんでいたとしても、犯人はやってはならないことをした。必ず見つけて、制裁を加える」

「そう、ですわね。私もそれがいいと思います」

 

 どこか覚悟が決まったような顔をして、ミーシャは賛同していた。

 取り巻きの中から、犯人を見つけ出すこころづもりをしたのだろう。

 きっとその誰かは、ミーシャと仲のいい人かもしれない。

 それでも、探すことを決めた。

 

 やはり彼女は、不正を許さない、確固とした人だ。

 改めて、推しの評価があがる。

 

 こんなことであがるのは、本人も望んでいないだろうけど。

 それでもやはり、彼女は尊敬できる人間だった。

 

 会話が落ち着くと、周りの声がよく聞こえるようになる。

 

 貧民。身の程知らず。権力にたかる卑しい女。

 そんなワードがちらほら聞こえてきた。

 

 自分でも、釣り合わない人たちの隣に立っているとは思う。

 それでも、ミーシャとお近づきになりたかった。

 彼女と仲良くなって、お互い認め合う、そんな存在になれたら、どれだけよかったことか。

 

 それが、どうだ。

 少しは認められているかもしれないが、つい最近まで嫌われていて、私は彼女の邪魔をしてばかり。

 さらに、ダンスの練習に付き合ってくれた彼女の努力を無駄にしてしまっている。

 正直、合わせる顔がない。

 

 誰かが踊ってくれたら、成果は出せたのだけれど。

 そんな気配はなさそうだった。

 

 遠巻きにされて、誰も近づいてくる様子がない。

 ミリアルドたちがいるからというのもあるかもしれないが、彼らが離れても変わりはないだろう。

 

 踊るのは絶望的。

 稽古をつけてくれたミーシャに、謝りたい気持ちでいっぱいになった。

 

「ミーシャ様。せっかく特訓をつけてくれたのに、無駄になってしまいそうです。本当に申し訳ありません……」

 

 ミリアルドが口を開こうとしたのを遮って、ミーシャは言葉を返してきた。

 

「いいえ。これも、全て盗んだ者が悪いのです。あなたが気に病む必要はございません。本当は隣にいて差し上げたいのですが、そろそろダンスが始まってしまいますから。しばらく一人にしてしまうことを許してくださいね」

 

 そう言って、ミリアルドの手を取るミーシャ。

 彼は何か言いたげだったが、表情を切り替えて、言おうとしていたことを飲み込んだようだった。

 かわりに、あたりさわりのない謝罪をされる。

 

「すまない、レイナ。俺はミーシャと踊らなければならないから、しばらく一人にする。本当は踊ってやりたいところだが、この衆人観衆の中では、示しがつかなくなる。だから、手伝ってやることはできない」

「わかっています。ミーシャ様がいらっしゃるのに、私が踊るなんておこがましいですから」

 

 ミリアルドには端から期待していない。

 むしろ、私と踊ろうとしてきたら怒るつもりだった。

 ミーシャがいるのにどういうつもりだ、と。

 

 ミリアルドは最後まで申し訳なさそうだったが、私から離れて、ミーシャと会場の中央へ向かった。

 ただ、彼は私が気になるのか、ちらちらとこちらを見てくる。

 このバカ王子め。

 目の前の相手に集中しろ。

 

 でもまぁ、今のこの雰囲気だと、見たくなる気持ちはわからないでもない。

 周囲は私を遠巻きにするどころか、傷つけに来そうな雰囲気だから。

 

 誰か行って、遊んでやれといったような会話まで聞こえる。

 

 一人になった途端、これか。

 

 せめてサリアと一緒にいれたら良かったのだけれど……彼女は遠くで男性衆に捕まっていた。

 普段の様子を見ると忘れそうになるが、彼女もいいところのお嬢様で、ゲームで主役を張るほどの美貌の持ち主だ。

 

 そんな彼女を放っておく男たちではない。

 むしろ普段は接点がないからこそ、ここぞと言わんばかりに群がるのだ。

 ゲームでも、このダンスパーティーでヒーロー役と急接近していたしな。

 彼女の邪魔をするわけにはいかない。

 

 そうなると、他に知り合いもいない私は、ひとりぼっちになる。

――あぁ。私、ゲームキャラ以外に知り合いがいないんだ。

 なんだか居た堪れなくなって、逃げ出したくなった。

 

 あぁ……それもありかもしれない。

 

 だって、知り合いはそれぞれやることがあって、誰も私と踊らない。

 それどころか、嫌味を言うためだけに、近づこうと企んでいる始末だ。

 一人だけ場違いな制服で、練習の成果も披露できない。

 果たして、ここにいる意味とはなんだろう。

 

 この広い会場で、ひとりぼっち。

 ここに、私の居場所はない。

 

 そう思うと、涙が込み上げてきて。

 こんなところで泣きたくなくて。

 いてもたってもいられず、会場から逃げ出すように外へ向かった。

 

 大きな扉が、音を立てながら開くけれど、ちょうど始まったダンスの音楽にかき消される。

 誰も、私がいなくなることに気がつかない。

 そんな錯覚を……いや。事実、その通りなんだと思う。

 

 私がいなくなったところで、何も変わらない。

 所詮は、乙女ゲームのやられ役ポジションだから。

 最後には、舞台から降ろされる運命なのだ。

 

 それが、早まっただけ。

 この世界に、私の居場所なんてないんだ。

 

 それがたまらなく怖くなって。

 主役が集まる会場から、消えるように逃げ出した。

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