悪役令嬢ハーレム 〜乙女ゲームの負け役"正ヒロイン"に転生した俺は、死なないために悪役令嬢たちを堕としにいく〜   作:椿乃朱華

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番外編1(前編) え。これ一人用のベッドなんですが?

「料理を教えて欲しい、ですか?」

 

 ミーシャが奴隷になって数日後。

 入眠しようとした直前、彼女は唐突に申し出て来た。

 

「はい。私は料理が下手なようですので。奴隷になった今、少しはできるようになっておかなければ困るかと思いまして」

 

 ……まぁ、学園にいる間は黙っていてもご飯が出るから困らないけど、卒業した後はそうもいかないからな。

 

 事情があって私が作れない時、誰が作るって言ったら、ミーシャしかいないだろうし。

 その時に、あのクッキーみたいなことになったら……体調悪ければ、さらに悪化しそう。

 

 うん。これは今から教えた方が良さそうだ。

 

「そうですね。では簡単な料理から教えます。今日は遅いので、明日から」

「ありがとうございます。明日からよろしくお願い致します」

 

 言うや否や、ミーシャはベッドで寝そべっている私の隣に、すっと入ってきた。

 え。これ一人用のベッドなんですが?

 

「何しているんですか?」

「何とは?」

「いや、だから、なんで私のベッドに入り込んでくるのですか」

「奴隷たるもの、いつでも主人の身代わりになれなくてはいけませんから」

 

 どこで覚えたんだ、その奴隷根性は。

 奴隷になってそんなに日が経ってないぞ?

 ミーシャがめちゃくちゃ強く推してくるから相部屋にして貰ったのに、それ以上のことがあると思わなかった。

 

「……相部屋のお願いをしてくる時も似たようなことを言っていましたが、一体どこでそんなこと覚えて来たのですか」

「蔵書で拝見いたしました」

「蔵書、ですか?」

「えぇ。『禁断なる愛のしもべ。隣国の王子に拾われた聖女の私』という本に書いてありました」

 

 明らかに娯楽本じゃないか!

 ミーシャもそういうの読むのかよ。

 しかも聖女って。

 もしかして、聖女ってこの世界の女の子の憧れだったりするの?

 

「一応聞いておきますが、それは実話ですか?」

「……いえ。娯楽本です」

 

 やっぱり。

 

「ミーシャもそういう本を読むのですね」

「いいではないですか。女の子なら、誰しも聖女に選ばれる妄想はするものですよ」

「私は別にしませんでしたけど?」

 

 英雄になって戦場を駆け回る妄想はしてたけどね。

 

「……聖女になる妄想をしないというのが、聖女に選ばれる条件の一つだったりするのでしょうか?」

 

 なんて言いながら横になって、ミーシャは真剣に悩み始めた。

 ちょいちょーい。なに当然のように寝転んでるのさ。

 

「それは知りませんが、なんで自然な動作で寝ようとしているのですか」

「なぜそこまで嫌がるのですか? 私の自惚れでなければ、命をかけて助けるくらい好いた相手との添い寝ですよ。嫌がる要素はないと思いますが……」

 

 困った。そう言われると拒否する理由がない。

 納得しそうになったその時、サリアの顔が浮かんできて、冷や汗をかいた気がした。

 

 ……うん。二人で寝てるってバレたら、なんかヤバそうな気がする。

 ボロが出ないように、日頃から怪しまれるようなことはしないでおいた方がいいだろう。

 

「……サリアにバレると面倒そうなので、やめておきたいのですが」

「……サリア様ですか。たしかに彼女はご機嫌を損ねそうですが、それで諦めてしまうのですか? 今なら私を好きにできるのですよ?」

 

 一瞬、よこしまな妄想が頭をよぎるも、かぶりを振って追い出した。

 そういうことがしたくて助けたわけじゃない!

 

「ダメです! 私は二人を裏切りたくありませんから!」

「なるほど。添い寝をすると、裏切るようなことをしてしまう、と」

 

 妖しく微笑んだミーシャは、それはもう魅力的で。

 これはヤバいと、彼女の身体を押して、無理矢理ベッドから追い出した。

 

「からかわないでください! とにかく、ダメなものはダメです!」

「わかりました。今日のところは引いておきます。ですが、レイナ様を守れなかった時に後悔するので、ベッドを隣に持ってくるのは許可していただかないと困ります」

 

 やけにあっさり引くと思ったら、先ほどより弱い要求を繰り出して来た。もしや、これが本命だったろ。

 前世でもこういう心理誘導のテクニックはあったなぁ。

 ミーシャに庇って貰うつもりは毛頭ないが、ここで拒否すると、話が振り出しに戻りそうだ。

 ここらへんが落とし所かもしれないな。

 

「……まぁ。それくらいならいいですけど。これ以上はダメですからね?」

「それでは、ベッドを持って来ますね」

 

 分かっているんだかいないんだか定かでない返事をして、ミーシャは別の部屋に移動した。

 数分後、ベッドを片手で持ち上げながら、彼女は部屋にやってきた。

 

 かなりびっくりしたけど、ここは魔法のある世界だ。

 そう言う芸当ができてもおかしくないのだろう。

 

 隣にベッドを置いたミーシャは、何事もなかったように寝床に入り、そのまま寝息を立ててしまった。

 

 え。寝るのはや!

 可愛らしい寝息がうっすら聞こえて来て、同じ部屋で寝ているのだという実感がした。

 

 これくらいなら、とか思ったけど、十分やばい。

 もし一緒に寝てたら、心臓もたなかったよ。

 

 高なりそうな鼓動を無理矢理抑えながら、私も眠りの世界に入ろうとした。

 が、隣にミーシャがいると意識してしまい、なかなか寝付けず。

 

 翌日、寝不足になったのは言うまでもないだろう。

 

 

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