悪役令嬢ハーレム 〜乙女ゲームの負け役"正ヒロイン"に転生した俺は、死なないために悪役令嬢たちを堕としにいく〜   作:椿乃朱華

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"没落令嬢"リリアナの章
『金は時なり』


『時は金なり』という(ことわざ)がある。

 こっちの世界では、『時は財宝なり』と形を変えていたけれど、言わんとすることはあまり変わらない。

 要は『時間は貴重なモノだから、無駄にするな』といった意味なのだけど。

 

 そもそもの話、金がないから時間を使う、というのを分かっていないように思う。

 

 金で解決することは沢山ある。

 学ぶための本や、日々の食事、遠くへ行くための移動手段。

 金さえあれば手に入るのに、金がないから時間を使って代替することになる。

 

 働くための高度な知識がなく、まともな食事も買えず、出稼ぎのための馬車にも乗れない。

 そうなれば、生まれた場所でずっと田畑を耕さねば、生きていけなくなる。

 

 私の母もそうだった。

 昼間は畑仕事をして、夜は酒場で給仕と調理。

 母が適職の儀で得たのは『料理人』だったから、一応仕事はあったのだけれど。

 地元で評判のお店という評価を欲しいがままにする程度が限界だった。

 そうして得たお金も、私を育てるのにすぐに吹き飛ぶ。

 

 大きな街へ出る金があれば、貴族のお抱え料理人にもなれただろうに。

 生まれた場所を出ることすらできないから、その才能を活かせない。

 

 結局、世の中は金なのだ。

 

 金が沢山あったら、何かを得るために働く必要もなくなる。

 金を使って人を雇い、代わりに稼がせて上前をはねれば、自分の時間を使わなくて済む。

 そしてその浮いた時間で、更に金を生み出す事業ができる。

 

 金があるところに金は集まり、ないところでは時間を代用してやり過ごす。

 金さえあれば一瞬で片付くことに時間を使って、庶民は日々を過ごすのだ。

 

 つまり、『金は時なり』。こっち風に言えば、『財宝は時なり』。

 財がなければ時間を浪費し、貴重な人生を無駄にしながら生きることになる。

 

 なんて不公平。なんて無情。

 

 私にとっては過去の話になったけれど、未だに倹約癖は抜けていない。

 いつまた貧乏になるか分からないからだ。

 

 よく、金がなかったやつが金を持つと、生活が荒くなると言うけれど。

 足るを知っていれば過度な贅沢はしないから、生粋の金持ちみたいにはならないだろう。

 

 だけど。

 元から金を持っていたやつが金を失うと、目も当てられない。

 昔の金銭感覚が抜けずに高いものを買いたがり、贅沢な暮らしからは想像できない不便を強いられる。

 そして身体と時間を使って、苦痛に喘ぎながら、なんとか生活しなければならないのだ。

 

 それは想像を絶する辛さだろう。

 持つ者から持たぬ者への転化は、生き地獄と一緒。

 

『地獄の沙汰も金次第』なんて言葉も前世にはあるが。

 私に言わせれば、『金がなければこの世は地獄』だ。

 

 そう痛感させられたのは、学園内でせかせかと物を売るゲーム主人公(ヒロイン)

 没落貴族系の"悪役令嬢"、リリアナ・シュトルンと鉢合わせてしまったからだ。

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