悪役令嬢ハーレム 〜乙女ゲームの負け役"正ヒロイン"に転生した俺は、死なないために悪役令嬢たちを堕としにいく〜   作:椿乃朱華

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ここは結果が定まっているゲームじゃないからね。

 というわけでやって来ました教会本部。

 

 交渉が決裂しても取り分が少し減るだけだから、私はそんなに力がこもっていないけど。

 

 少しでも多くのお金を稼ぎたいリリアナは張り切っている。

 

「絶対、聖女教会といい関係になりますよ! ここで提携できれば、販路が一つ開拓されますから!」

 

 うーん、がめつい。

 そう思ったのは私だけじゃないのか、ミーシャは苦笑いで、サリアは胡散臭い者を見るかのような目だ。

 

 ま、短い付き合いの相手だと思えば、そんなものだろう。

 魔石さえ売り捌けば、この関係は終わりだからな。

 

 ある程度は手伝うけど、想定以上の販路拡大は私たちの役目じゃない。

 

 そりゃあ、リリアナには幸せになって欲しいとは思うけど、それはあくまで不特定多数に対するものと同列の感情だ。

 決して、ミーシャやサリアと同じではない。

 

 所詮は他人と言ったら冷たいけれど。

 ゆきずりの相手にそこまで入れ込めるほどの博愛精神は、持ち合わせていなかった。

 

 ゲームキャラとしては見ていないが、苦楽を共にする仲間としても考えていない。

 

 一時(いっとき)、一緒にいるだけの他人。

 それが今のリリアナとの関係である。

 

 そんな感じだから、浮かれているリリアナを咎めることも、増長させるようなこともしなかった。

 

 別にそこまでする関係ではないから。

 一緒にいる二人も似たような感じだから、何も言わないのだろう。

 

 リリアナはただのお客さん。

 それが皆の認識である。

 まぁ、実際にお客だったのは私たちだったのだけれど。

 この内輪の中で異物感があるのは、リリアナの方だ。

 

 まぁ、この先どういう関係になるかは分からないけどな。

 ビジネスライクな関係が続くかもしれないし、全くの無関係になるかもしれない。あるいは、何かきっかけがあって、二人と同じくらい大切な存在になるかもしれない。

 

 それはもう、今の私に知る由はないのだ。

 ここは結果が定まっているゲームじゃないからね。

 

 なんて、今後に思いを馳せているうちに、案内役の人がやって来た。

 

 色々考えていたのは、単に手持ち無沙汰だったからだ。

 暇は人の思考を膨らませてしまう。良くも悪くも。

 

 ここから先は暇じゃなくなるから、余計なことは考えていられない。

 まぁ、頑張るのはリリアナだけど。

 私はそんなに入れ込んでないからなー。

 

 

 ――なんて、思っていたのが甘かった。

 

 案内人はどんどん奥に進み、内装が厳かになっていく。

 もしかしてかなり偉い人と繋げてくれるのかと思っていたが、そんな生やさしいものではなかった。

 

 たどり着いた先は、清貧ながらも、雰囲気のある部屋。

 そしてそこに居たのは、お年を召した柔和そうな女性。

 

 誰だろう、なんてボケはかませない。

 私より上の立場にある人だから。

 部屋に入るや否や、私は膝を折って、その方に挨拶をした。

 

「聖女様……お久しぶりでございます。聖女候補のレイナでございます。ご健勝なようでなによりです」

 

 会うのはこれで二度目。

 親しい訳ではないけれど、直属の上司みたいなものだ。

 畏まってしまうのも仕方ないというもの。

 

 だけど、聖女様は柔らかく笑って、空気をほぐすような声色で言った。

 

「そんなに硬くならなくてもいいですよ、レイナさん。もっと楽にしてください。祖母の家に遊びに来たような感覚で。ね?」

「いえ……そういう訳には……」

「あら。まだ距離を詰めるのが早かったかしら。歳をとるとせっかちになって嫌ね。残りの時間が少ないからかしら」

 

 笑っていいのか分からない冗談に、顔がひきつるような感覚がした。

 いけない。ここで顔を崩すのは。

 なんとか表情筋を崩さないように力を込めていると、聖女様は続けて問うて来た。

 

「私に用事があるそうですが、何かしら? 何か困りごと? あるいは要望? それとも、学園であったことを教えてくれたりするのかしら? お友達をたくさん連れて来てくれているようですし、最後だと嬉しいわね」

 

 う。圧力に負けそうだけど、せめてリリアナへの顔繋ぎの義理くらいは果たそう。

 別に入れ込んではいないが、目的を果たせないのも悪いから。

 

「申し訳ありません。ご期待には添えないと思われますが……こちらのリリアナさんが、魔道具を販売する際、私の名前を使いたいということでしたので、聖女教会に話を通す運びになりました。あと、できれば教会にも品物を卸したい所存です」

「……そうですか。せっかくですから、その話の前に、お友達を紹介してくださいますか?」

「はい。赤い長髪の()が、ミーシャです。今は私の奴隷という立場になっていますが、以前は高位貴族でした」

 

 私が水を向けると、ミーシャが綺麗なお辞儀をして流れを受け継いだ。

 

「ご紹介にあずかりました、ミーシャです。レイナ様の手助けにより命を救われました。今後も精一杯、彼女の力となれるよう、努めさせていただく所存でございます」

「この()が、初めて魔族から解放されたという娘ですね。とてもそうは見えませんが……それだけレイナさんが手を尽くしたということでもあるのでしょう。対魔族に関して、新たな手法を確立したのは、讃えられるべきことです。立派ですよ、レイナさん」

「恐縮です。私も、救えたことを嬉しく思っています」

「今まで不可能と思われていた魔族からの解放。私たち聖女が殺すしかありませんでしたが、これからは、既存とは違う救済の形となるでしょう。改めて、感謝を申し上げます。ありがとう、救ってくれて。あなたは人類の救世主よ」

 

 そう言って頭を下げるものだから、こちらは慌てるしかなかった。

 

「そんな、頭をあげてください! 私は無我夢中だったものですから、本当に成功したのは奇跡が重なった結果といいますか、私の力だけではこうはなりませんでした。これも全て、サリアさんのおかげです」

「そうなのですね。そのサリアさんと言うのは、残るお二人のどちらかなのかしら?」

「はい。青い短髪の()がサリアさんで、魔道具研究の天才です。魔族に聖女の魔力を流してみればと提案してくれたのは彼女で、今回販売する魔道具のプロトタイプを作った人でもあります」

「お初にお目にかかります。サリア・メイ・ラ・グランツと申します。レイナ様の一番の友人です」

 

 おい。そこでさらっとぶち込むな。ミーシャがちょっとむっとしたぞ。

 さすがに聖女様の前だからか、サリアも口が悪くないけど、強かさは相変わらずだ。

 

 聖女様の手前、口を挟む訳にもいかないのか、ミーシャは何か言いたそうにしながらも黙ったまま。

 

 そして誰も訂正しないものだから、聖女様はサリアの言葉をそのまま信じた。

 

「そうなのですね。仲がよろしいようで何よりだわ。貧民から出た聖女候補ということで交友関係が心配でしたが、こうして高位貴族のお嬢さんと仲良くなれていて安心します。それで、もう一人の方は、どういうご関係なのですか? お二人と同じように、深い関係があるのでしょう?」

 

 う。期待してくれているところ悪いのだけど、リリアナはそんなじゃない。

 ただ成り行きでそうなっただけだ。

 彼女もそれが分かっているからか、顔色が悪い。

 

 嘘をつく訳にはいかないけど、なんとか悪印象を持たせないようにしないと。

 

「実は、リリアナさんはそれほど深い関係にある訳ではないのです」

「そうなのですか?」

「サリアさんが魔道具のために魔石を購入した際に知り合った商人なのですが、お家の事情があまりよろしくないようでして。懸命に立て直そうとする姿に感銘を受け、皆で手伝おうということになったのです」

「……たしか、今回の魔道具販売は、リリアナさんの為でしたね?」

「そうです。初対面に近いですが、事情を知って放っておくのは聖女様の名前に泥を塗ってしまうと思い、お手伝いすることにいたしました」

 

 聖女様はしばらく考え込んだかと思うと、まっすぐこちらを見て告げて来た。

 

「……分かりました。そういうことでしたら、魔道具の販売に、次期聖女レイナの名前を使うことを許可いたします。加えてその魔道具を、聖女教会にも試験的に導入しましょう。ですが、何事も行き過ぎは禁物です。節度を守って行動するのですよ?」

「ありがとうございます。ご助言痛み入ります。過度な言動に注意を払いながら、誠心誠意努めます」

 

 よかった。なんとか聖女様の許諾は取れた。

 あとは実物を作るだけだ。

 

 果たして上手く行くかなぁ。

 もう、やるって聖女様にいっちゃったから、これで物ができなかったら恥ずかしい。

 ミーシャのことは信頼してるけど、少し不安だ。

 

 

 

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