悪役令嬢ハーレム 〜乙女ゲームの負け役"正ヒロイン"に転生した俺は、死なないために悪役令嬢たちを堕としにいく〜 作:椿乃朱華
本来は授業のある日だが、リリアナの人命の方が大事だ。
犯人にはなんとなく心当たりがあるけれど、それの答え合わせのためにも、会わねばなるまい。
そうして指定の場所に向かえば、思った通りの人物がいた。
「やはりあなただったのですね。ウィリアム様」
「ニールでいいさ。知らない仲ではないだろう?」
「知らないですよ。リリアナさんに酷い事をするあなたなんて」
誘拐したことを皮肉ってやると、ニールは面白がって乗ってきた。
「僕も、君がそこまでリリアナのことを思っているとは知らなかったな」
「茶化さないでください。リリアナさんはどこに居るんですか?」
「先に茶化してきたのは君だろうに。……まぁいい。ここにはいないよ。うちの別邸にいる。殺しはしてないから安心してよ」
殺しはしてない、ね。
言い方が嫌らしい。
「殺してないからといって、酷い事をしていないとは限らないでしょう? 元婚約者をさらって、一体何がしたいんですか?」
「君と話がしたかったんだ。こうすれば、絶対に聞いてくれると思ってね」
私と……?
一体何の話だろう。
「わざわざ回りくどい事を……話がしたいなら、普通に呼び出せば良かったじゃないですか」
「ダメなんだ、この場所じゃ。うちの別邸で話がしたい。ついてきてくれるね?」
この流れでこの誘い。
明らかに罠だけど、ここで拒否しても何も進展しない。
それが分かっているからか、隠れている二人も出てこなかった。
「……断る選択肢なんてないんでしょう?」
「リリアナを見捨てるならば、あるんじゃないかな」
「……最低ですね。彼女のことが好きだったんじゃないんですか?」
「好きさ。それは今でも同じだよ」
「では、なぜこんなことをするのですか?」
「君たちは、もう僕の家が、リリアナの実家に金を貸していることを知ったのだろう? からくりがバレたら、行動に移すのはなにもおかしなことではないと思うけどね」
「……そもそも、なぜリリアナさんから搾取するようなことをしたんですか」
「好きの種類が変わったんだよ。僕のためにと頑張ってくれるところが便利だから、可愛がっている。都合よく動いてくれるから、扱いやすくて好きなんだ」
クソ野郎だな、本当に。
こんなやつを好いていたリリアナが可哀想だ。
「……こんな人だとは思いませんでした」
「そこまで言うほど僕のことを知らないじゃないか。それで? 結局来るのかい? 来ないのかい?」
「行きますよ。行くしかないでしょう」
「なら付いてきたまえ。あぁ、そうだ。お連れさんは付いて来たらダメだよ?」
まさか、サリアの魔法が見破られた?
……いや。魔法を使った様子はない。
ただのカマかけだろう。
そう思って、過剰に反応するのをこらえた。
「そんなものいませんよ。あなたが連れてくるなって言ったのでしょう?」
「あの二人ならついてきかねないからね。僕はいると思っているから――」
突然、ニールの前に魔法陣が現れ、私の身体が炎に包まれた。
けれど、サリアの魔道具をつけていたので無事だった。
とはいえ、いきなり飛んできたものだから、怖いものは怖い。
湧いてきた憤りをぶつけるように、嫌味を言ってやった。
「……話し合いたいとおっしゃったのに、殺す気ですか?」
「君が魔道具をつけているのは知っていたからね。こんなもの挨拶程度にしかならないだろう?」
「……随分なご挨拶ですね。何が目的ですか?」
「こうすれば、君を大事に思うあの子らが黙っていないはずさ。ネズミを炙り出すのには丁度いいんだ」
なるほどね。そういう魂胆か。
ならばこちらも臆せず嘘を通すのみ。
「だから、彼女たちは連れてきていません。いたら、あなたは殺されていますよ?」
「……おかしいな。絶対来ていると思ったんだけど」
本当はそこにいるんだけどな。
きっとミーシャがサリアを必死に抑えてる。
声も聞こえないけど、大音量で騒いでることだろう。
サリアの認識阻害はすごいな。私もニールもさっぱり知覚できない。
ミーシャが必死で引き留めてくれているであろう間に、彼に案内して貰わなければならない。
サリアの我慢が限界を超えたら負けだ。
「さぁ、早くあなたの別邸に連れて行ってください。私も暇じゃないんです」
「そうだね。本来は授業があるものな。彼女たちから見放された君は、学校の授業以下ってことかな?」
「あなたが連れてくるなとおっしゃったのでしょう。いい加減しつこいですよ」
「わかったわかった。そう怒らないでくれよ」
軽い態度のニールを無視し、彼の案内についていく。
向かっているのはどうやら学園の外らしい。
学園の外へ向かう通りに荷馬車が止まっており、ニールはそこに乗り込んだ。
彼が手招きするので、私も後を追う。
中は積荷がいっぱいで、それらの奥に座れるような木箱が二つあった。
どうやらあらかじめ用意されたカモフラージュらしい。
そうだよな。そのまま出たら守衛に見つかるものな。
積荷の間はすごく狭かったし、外からはこちらが見えないだろう。
文句があるとすれば、胸で積荷が落ちそうなくらいの狭い通路だったことか。
座っているここはある程度の空間があるものの、外の景色は見えない。
どこに連れて行かれるかもわからないし、ニールにとっては、守衛からの隠蔽と私の目隠しで、一石二鳥というわけだ。
馬車に乗るけれど、二人はついてこれているのかな?
見えないから不安だが、きっと着いてきてくれると信じながら、荷馬車に揺られるしかなかった。
少し進むと光が差し込み、外から声が聞こえる。
守衛が荷物のチェックをしているのだろう。
ここにいて大丈夫かと思ったが、奥まで見られることはなく、私たちは見逃された。
賄賂でも握らされたか、あるいは普段からこれくらいずさんなのか。
いずれにせよ、そのおかけで私は別邸に行くことができる。
それからどれくらいたったのだろう。
いい加減尻が痛くなってきた頃合いで、再び外の光が差し込んだ。
ニールが積荷を掻き分け降りていくので、私もその後に続く。
外に出て目に入ったのは、立派なお屋敷だった。
これが別邸かよ。金持ちは違うな。
どこか場違いな感想を抱いている間に、ニールは建物へ入っていく。
そのまま着いていくと、調度品がしつらえられた一室へ通された。
なんだか甘い匂いがして、リラックスできる雰囲気がある。
「ここで待っていて欲しい。リリアナを連れてくるから」
「わかりました」
言われた通りにソファに座り、ニールが戻って来るのを待つ。
待っている間、なぜだかあくびが止まらなかった。
なんだろう。荷馬車に乗って疲れてしまったのかな。
早くきてくれないと寝てしまいそうだ。
身体を動かして眠気をさまそうと思い、立ちあがろうとするけれど。
なぜか力が入らなくて、その場にへたり込むことになった。
ダメだ……立ち上がるのもおっくうだ……。
しかも、いようにねむい……。
こんなところでねたら、だめ、なの、に……。