悪役令嬢ハーレム 〜乙女ゲームの負け役"正ヒロイン"に転生した俺は、死なないために悪役令嬢たちを堕としにいく〜   作:椿乃朱華

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やめろー! その道は私が幸せになれない!

 はぁ。本命のミーシャには嫌われ、私の未来をめちゃくちゃにするサリアと仲良くなる。

 今更どうしようもないけど、なんでこうなったんだろうと思うと、ため息をつきたくなるな。

 気持ちが沈みかけていると、放課後特訓のために一緒にいたサリアが、うかがうように問うてきた。

 

「どうしたの?」

「どうしたの、とは?」

「ため息ばかりついてる」

「あぁ……なんでもないですよ……」

 

 まさかサリアにまで心配されるとは。

 というか、実際にため息出てたのか。自覚なかったな。

 まぁ心根は優しい子だから、やり方さえ教えてやれば、人を気遣えるようにもなる。

 ただ、愛が重すぎて相手に依存しやすいんだけどな。

 それさえなければ安心して側に居られるのに。

 そう思うと、またため息がでてくる。

 それを、サリアは目ざとく見咎めてきた。

 

「そんなにあからさまで、何もないはありえない」

「あなたには相談できないことなんですよ」

 

 他ならぬサリアのことだしね。しかも未来の。

 まさか未来のことを語るわけにもいかないしな。

 ミーシャのことなら喋れるが、サリアに話しても無駄だろう。だって人の機微に疎いんだから。

 なんて思っていたら、彼女は諦めることなく食い下がってきた。

 

「本当に私には何もできない?」

 

 なんでこんなに食いついてくるんだろう。

 人に興味なんてないと思っていたのに。

 ゲームキャラとして見ていた印象が残っているせいだろうか。なんだか、サリアらしくないと思えた。

 これは、いい傾向なのだろうと思う。

 要求に答えにくい、という点を除けばだけど。

 

 ここで拒絶するのは簡単だ。

 でも、珍しくサリアが人を心配している。

 サリアのコミュニケーション能力を改善するという名目なのだから、ここで否定しては意味がない。

 

 ……それはわかってはいるんだけれど。

 今、彼女の抜き身の言葉に耐えられる自信がない。

 

 ど直球な言葉で叩き潰されたら、立ち直れないかも。

 そう思ったら、頼る勇気がでなかった。

 否定されたくない。

 そんな思いが強かったからか、ぽろりと、口から言葉が溢れでた。

 

「…………できることはないですね」

 

 言って、しまった。

 否定されたくないと思ったのは自分なのに、サリアの気遣いを否定してしまっている。

 矛盾を孕んだ行動に嫌気がさすも、出てしまった言葉は戻せない。

 サリアはあからさまに悲しそうな顔をして、呟くように言った。

 

「……わかった。頼りたくなったら言って」

 

 あー。サリアに気を使わせてしまった。

 苦手だし、仲良くしたくはないけど、嫌いではないからな。

 罪悪感がすごい。

 ここで頼れたらよかったんだけど。

 どうしても、ゲームの印象が強くてな。

 相談には向いてないと思ってしまうんだ。

 すまん、サリア。

 その代わり、特訓にはきちんと付き合うから。

 

「ありがとうございます。私のことはいいとして、あなたは課題をクリアできそうですか?」

 

 課題。

 サリアの話下手を改善するため、私はいくつかオーダーしたことがある。

 その一つが、クラスメイトと三分喋ってくること。

 なんでこれにしたかと言えば、たしかゲームの最初のミッションがこれだったから。

 いくらなんでも初歩的すぎる、と思わなくもないが、サリアにとってはこれでも難題なのだ。

 それを証明するかのように――。

 

「無理。知らない人と話すのは疲れる」

 

 あー、やっぱりか。

 ゲームでも、選択肢を適切に選ばないとクリアできなかったからな。

 難易度調整したやつ徹夜してたんじゃないかと思う。

 それを通す方も通す方だよ。

 ……まぁいい。

 

 他人を使った特訓はあまり意味がないとわかった。

 相手はサリアを気遣ってくれないし、サリア自身も気が引けるだろう。

 ゲームはトライアンドエラーができるからこそだ。

 一度きりの現実には、ゲームのミッションは適さない。

 

 となると、やはり私がどうにかするしかなさそうだ。

 正直やりたくはないけど、ミーシャに面と向かって否定されてしまったからな。

 ここで逃げたら弁解の余地もくれないだろう。

 彼女ともう一度話すためにも、やることやってますとアピールできるようにしておかないと。

 

 ……死亡フラグが立たないように、適度にな。

 まずは人となりを知るところだろうか。

 自分の好きなものから話を広げるという手段もあるからな。

 とりあえず、ゲームのプロフィールと同じか確かめてみるか。

 

「サリアさんの好きなことと嫌いことはなんですか?」

「なんでそんなこと聞くの?」

 

 わかる。いきなりこういうの聞かれると警戒したくなるよな。

 でも実際問題、距離を詰めるためかこういう質問が飛んでくることはあるんだよね。

 それに慣れてもらう必要がある。

 

「相手のことを知らないと、会話しづらい人がいるんです。そういう人はこういう質問をよくしてくるので、それの練習ですね。あとは、私がサリアさんの嗜好の傾向を知っておきたかったからです」

「なるほど。それなら、好きなことは魔法の研究。嫌いなことは人と話すこと」

「嫌いなこと、絶対に相手へ言っちゃダメですよ」

「話したくないんだって思われるから?」

「そうです。ちゃんと分かってるじゃないですか」

 

 頭は悪くないんだよな。気を遣えないだけで。

 それも、教えればできそうな感じはあるけど。

 

「……人と話すのってめんどくさい」

 

 でもめんどくさがりなんだよなー。

 しかし人と話すのはめんどくさいのであった。

 さっきのだって、もっと話を広げられるのが普通だし。

 

「こんなの初歩ですよ。さっきの話だって、どんな魔法の研究をしてるのかとか、本当は言っちゃだめですけど、仮に嫌いなことを言った場合は、話すのが嫌な理由とか聞かれたりしますからね」

「……もうレイナとだけ仲良くしていればいい気がしてきた」

 

 やめろー! その道は私が幸せになれない!

 絶対阻止するからな!

 

「ダメですよ。色んな人と話せないと、将来困りますから」

 

 私がな。

 

「……別に困ってもいい」

 

 良くないんだよ。

 

「今はそう思っても、絶対後悔しますよ? サリアさんは頭がいいんだから、パターンを覚えたらいいんじゃないですか?」

「パターン? 会話で? そんな型通りにはならないでしょ」

 

 と、思うだろうけど。

 よほどユニークな相手でもない限り、話の流れからは大きく逸れないんだな。

 

「先ほど私は好きなことを聞きましたが、サリアさんは好きなことにはきちんと好きなことを答えましたよね? 嫌いなことは嫌いなことで別に答えたはず。好きなことを聞かれて、嫌いなことを答えはしなかったでしょう?」

「それは当たり前でしょう?」

「そうです。当たり前なんです。よほど偏屈な相手でもない限り、聞かれたことから逸脱した答えは返さないんですよ。つまり、質問して話をコントロールすれば、返ってくる内容はある程度限定できるんです」

「なるほど……ちょっと魔法と似てるんだ」

 

 魔法と?

 それは初耳。

 この世界の魔法の理論を詳しくは知らないからな。

 ゲームじゃそこまで説明してなかったし。

 

「どういうことですか?」

「魔法は基本的に魔法陣を描く。これは知ってるよね」

 

 知らないが? え、もしかして常識?

 知らないって言ったらやばいのかな?

 ……や、貧民だから知らないってことで通してもいいよね。

 

「いえ……元貧民だったもので知らないです。魔道具は使ったことあるんですが、仕組みは知りません」

「そう。なら簡単に教える。魔道具も魔法も基本は一緒。魔法陣を描いて、呪文を唱える。魔道具は魔法陣をあらかじめ描いてあるだけ」

 

 え。それしか違いがないの?

 

「……それなら最初から描いてある魔道具をたくさん持ち歩いてた方が強いのでは?」

「思考伝達力の鮮度が違う。例えば、お菓子食べたいなって思ったとして、時間が経つとその気持ちは薄れるでしょ。基本的に新しい方が、気持ちが強いのはわかるよね」

「なるほど。でも、基本的に、というのは?」

「最初にお菓子食べたいって思った時から何日も経ってまだ食べられていないとかだと、それは強い思いになる。いわゆる呪物って言われるような魔道具はこれに当たる」

 

 へー。そんなものがあるんだ。

 初めて知るからちょっと楽しい。

 でも、これと会話のになんの関係が?

 

「で、これは会話とどう関係するんですか?」

「……レイナが無知だから遠回りした。魔法も魔道具も、魔法陣を描くときに属性を書き込む。で、そこからどういう風にするか、指定していく。だから、会話と似てると思った」

 

 なるほど。普段あまり喋らないサリアでも、好きなことの話だとよく喋るんだな。

 それなら、今度から魔法に例えて話すといいんだ。

 ……それには、私が魔法の勉強をする必要があるけど。

 どっちにしろ学ばないといけないし、サリアにも魔法を教えて貰おう。

 それくらいの役得がないとやってられない。

 

「それだけ喋れるなら、今度から魔法のことを絡めながら会話の訓練しましょうね」

「……わかった」

 

 ちょっと悩んだようだけど、了承は得られた。

 これなら、特訓の時間も楽しみになりそうだ。

 沈んでた気持ちが、少し上向いた気がした。

 

 

 

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