私がこの世界が「捕食者系魔法少女」の世界だと気づいたのはある少女として転生してから6年後、世界各地でインクブスと言われる存在がニュースで取り上げられるようになってからだった。
私はその時初めてこの世界が捕食者系魔法少女の世界だと気づいたのだ。
しかし私はすぐには行動しなかった。
理由は3つあった。
まず1つ目、それは私がまだ5歳という年齢だったことだ。
もし仮に私がこの段階で行動を起こしていたとしても大したことはできなかっただろう。
2つ目は、私の両親は当時離婚調停中であり、迂闊な行動は自分の首を絞めかねなかったからだ。
そして3つ目、私は未だただの無力な少女で、魔法少女ではなかったからだ。
魔法少女は様々な姿のパートナーと契約する事で魔法少女となる。
私がこの世界の真実に気付いた時、私の前には未だパートナーはいなかった。
両親が親権と慰謝料、養育費で揉める中、貴重な時間はどんどん過ぎていく。
ユーラシア全域がインクブスによる侵略に晒され、その他大陸にも続々と奴らの魔手が伸びていく。
各国の軍人達、そして各地に現れたパートナーと契約した事で誕生した魔法少女。
彼・彼女らの必死の抵抗が行われたが、その侵略を僅かに遅らせる事しか出来ず。
アジア圏を中心に数多くの国家が膝を折り、遂にはあの中華すら陥落してしまった。
そして原作でも主人公の母親が行方不明となる重要な事件、沖縄陥落が発生した。してしまった。
私は何も出来なかった。知っていたのに、何一つ。
後悔に浸る間もない。
徐々に足元に這い寄ってくる予感があった。
座して待てば食い物にされる。
こんな悪趣味な世界を作った誰かさんに憎悪を滾らせつつ、私はパートナーを探し続けた。
それが無駄な努力だと何処かで思いながらも、迫りくる運命に抗うための力を求めた。
ようやっと離婚調停が終わり、私が母親に引き取られる事で決着した頃。
漸く、本当にギリギリの所で私の前にもパートナーが来てくれた。
「契約しよう、お嬢さん。共にあの化け物共を退治してくれ。」
「わかった。私の全てを捧げる。だから…」
「な、パートナーだと!?」
今この瞬間まで今世での母親を凌辱していたゴブリンが顔を上げて叫ぶ。
余りにも品性のない、獣欲だけの姿を視界の隅に捉えたまま、私は断固とした意志と共に告げた。
「今度こそ、理不尽を圧し潰すための力を。」
こうして、私はウィッチになった。
もっとも主人公と同じく普通のウィッチとはかけ離れたものだったが。
…………
何とか新米ながらも危機を乗り越えた私は、もう母親とは言えない正気を失った肉袋を近くの交番に預けてから、人としての暮らしを捨てた。
何故なら、その方が私というウィッチの持つ権能を生かしやすかったからだ。
同化
それこそが私の権能だった。
私が触れたものは、私の一部となる。
文字通り、私が触れたインクブスは私の一部となった。
空気や地面に壁、炎や水だって例外ではない。
勿論、オンオフの切り替えも自在だ。
しかも単に物理的なものだけでなく、そいつの記憶に経験や技能、魂とも言えるものすら私の一部となる。
前例に習うとガ〇バーのアプト〇の方が近いと言える。
それでいて捕食した対象の良いとこ取りみたいに肉体を改変する事も、複数体に分かれて展開する事も出来る。
加えて、この能力は一度同化してしまえば(エナがある限りだが)幾らでも分裂し、数を揃える事ができる。
つまり、エナさえあれば私は無尽蔵の軍勢を揃える事が出来るのだ。
そして、生み出された軍勢もまた私なので、私の人格や経験のみならず、権能まで使用できる。
何より大本の私が死のうが、どれか一つ私が生きていればそこから再び増える事が出来る。
この権能を把握した時、私は今世の命の使い方を決めた。
元より2度目の人生、立派な大人に成り損ねた骸が動いているだけなのだから…派手に一花咲かせるつもりだし丁度よいとすら感じた。
そんな私が魔法少女となる事で主人公も原作とはちょっと違う道を歩む事になるのだが、それはまた別の機会としよう。
………
その後の私は、各地を放浪しつつ、着実にインクブスを駆逐していった。
同化を使って駆除と同時に自身を強化し、クリーチャーと化して異形となった化け物共と殺し合った。
最初はゴブリン等の小型種で、徐々に大型種やマジックの得意な個体へと。
例え強固な外皮や膂力を持とうとも、一度触れた時点で同化から逃れる事は接触部位を即座に切除するしかない。
一瞬でも躊躇った時点でそいつの末路は私になる以外は無い。
そうして私を強化し、増やしていく。
増やした先で更に強化し、増えていく。
エナの補給もインクブスへの同化で賄えるが、時に傀儡と化したウィッチと戦闘になる事もあると梃子摺る事も多い。
連中の依存性と媚薬効果のある体液で頭が薬漬けになってる程度ならこっちで「寝取り」すれば救助できるのだが、中身が別物に置き換わっている場合はそうもいかない。
そういった奴は同化し、殺してやるしかない。
もう救いようがないし、それをやったインクブスの情報を得る事も出来るからだ。
そして、狡猾だったり強力だったりするインクブス(時々信捧者の民間人や軍人)を入念に対策してから同化していく。
が、敵も流石と言うべきか、遠距離や上空からの砲爆撃や魔法で耕されたりすると、どうしてもエナの出費が嵩む事が多くなる。
なので、私は更なる進化を目指した。
一部の個体を軍事兵器、戦車や自走砲、戦闘機や爆撃機等の非生物との同化を始めた。
加えて、今まで同化してきたインクブスや傀儡化したウィッチ等の魔法や権能も並行して使用可能。
だが、これらをインクブスを駆逐するだけの物量を揃えて運用するには自前及び略奪したエナだけではとても足りない。
だから、エナを生産するのに特化した個体を用意した。
世界中にある海底の熱水噴出孔。
周辺に独自の生態系があり、現在各国政府が特に利用できてないエネルギー源を吸収する事が目的だ。
そういった場にエナの生産に特化した個体を派遣、周辺の生物を生態系を破壊しない程度に同化しつつエナの生産に従事させる。
この個体は巨大な肉塊であり、生存のためのカロリーは同化によるエネルギーの吸収で補いつつ、エナを生産していく。
生産したエナはエナの貯蓄に特化した個体(半透明な卵状のカプセル)と共に体外へ排出され、周囲の防衛用の個体によって必要な場所へと運搬され、前線の補給物資として配置され、消費されていく。
また、前線で戦闘する個体も順次改良を施していく。
既に十分な性能はあるので、今回は性能を維持したまま外観を弄っていく。
単に性能だけを求めれば、それこそあの「銀の蓮」の彼女と同じ様に蟲等の生物に近い外観でも良い。
しかし、人類と他のまともな魔法少女との軋轢を避けるためにはデザインにも凝らねばならない。
宗教的な問題に発展する可能性もあるが、人ならざる魔を討つ存在として天使をモチーフとした個体で外観を統一する事にした。
これならば人類は攻撃する事を躊躇うし、攻撃した者は仲間から非難される可能性もある。
ま、インクブスが絶滅するまでの措置だし、特に人類勢力と対話しようとも思わんので、攻撃を躊躇われるデザインでさえあればよしとしよう。
こうして出来上がったのが、それぞれの階級に即した天使を模倣した私による軍団だ。
ベースには羽を生やした空戦を得意とする元魔法少女の肉塊を選んだ。
が、人間の素肌の露出は一切なく、まるでロボットかマネキンの様に全身を硬質とも軟質とも付かないプレートで覆っている。
勿論、その強度はエナを用いた物質故に十二分な耐久性を持つ。
これは私の趣味も多分に入っているが、下手に人間に似過ぎると余計なチョッカイをかけようと思う連中が出てくるからこその外観だ。
偽天使軍団(長いので天軍と称する)は「天上位階論」に基づき9つの階級と外観に分けた。
階級毎に性能と製造のためのエナのコストはそれぞれ比例しており、役割毎に明確に区分している。
これら天軍は現在は日本を出て世界中の全方位へと広がっており、日夜インクブスとその信望者との戦いを繰り広げている。
この際、折角凝った外見を損なわない様な戦い方をするようにしている。
具体的には同化で相手を吸収する時は何か神聖っぽいキラキラしたオーラwを出しながら消滅させたように見せかけている。
こうすると勝手に周囲の人間は「浄化されたんだ」と思い込むのだ。
実際は化け物に貪り食われているのと何ら変わらないというのに。
うーん愚か愚かと思いながら、私は、私達は今日もインクブスを駆逐し続けている。
何時の日か奴らが根絶やしになるその時まで。
あの銀蓮が状況を動かしてくれるだろうその時まで。
以下、偽天使軍団について解説
1、天使(エンジェル)
最下級の最も製造コストが低い個体。
数を揃える事を優先しており、金属の蛹に一対の光の翼が生えているだけのシンプルな外観。
このボディに最低限の機能を詰め込んで、更に被弾率を下げるために可能な限り小型・軽量化を目指した。
大きさは約80cm。
翼自体は魔法で発生・維持しており、重さも50kg未満なので動き自体はとても素早く、数秒で音速に達する加速性を持つ「生きた砲弾」。
飛行と同化以外の魔法は使えないが、対象と接触した時点で同化ができるため、近接用の装備どころか四肢すらないので防御という事がほぼ出来ない(翼を使えば出来そうすると飛行できない)。
2、大天使(アークエンジェル)
天使に槍状の両腕が生えた姿をした個体。
天使よりも全性能が僅かながら向上している。
槍の先端から攻撃魔法を発射可能な他、周囲の天使へと強化魔法(筋力or敏捷UP)を撒く事が出来る。
大体天使3体分のコストで製造可能。
3、権天使(プリンシパリティ)
蛹の上半分が人型となり、両腕に盾と剣を持った個体。
剣の先端から攻撃魔法を、盾からはバリア状の防御魔法を展開し、周囲の他の天使へと強化魔法(耐久or筋力or敏捷UP)を撒く事が出来る。
高い耐久性を持ち、オークのこん棒が直撃してもダメージにならない。
天使10体分のコストで製造可能。
4、能天使(パワー)
全身がマネキンと西洋鎧を混ぜた様な人型となり、両手に槍と盾を持った個体。
槍の先端から攻撃魔法を、盾からはバリア状の防御魔法を展開し、周囲の他の天使へと強化魔法(耐久or筋力or敏捷をUP)を撒く事が出来る。
権天使以上の耐久性を持ち、オーガの金棒が直撃してもダメージは少ない。
天使20体分のコストで製造可能。
5、力天使(ヴァーチャー)
4枚2対の羽と大きくなった蛹を持った個体。
周囲の他の天使や魔法少女、友好的人類に対して強化・回復魔法を撒く事が出来る。
大体の洗脳や薬物汚染も解除可能であり、インクブスの毒物や遺体から発生する劇物等も無効化・分解が可能。
しかし自身は戦闘能力はほぼ無く、多少硬いだけ。
前線で使用時は必ず複数の能天使を護衛として伴っている。
天使30体分のコストで製造可能。
6、主天使(ドミニオン)
4枚2対の羽、全身がマネキンと西洋鎧を混ぜた様な人型となり、両手に槍と盾を持った個体。
槍の先端から攻撃魔法を、盾からはバリア状の防御魔法を展開し、周囲の他の天使へと強化魔法(耐久or筋力or敏捷の内二つをUP)を撒く事が出来る。
片言ながらある程度の対話能力を持ち、人類相手の場合は多少は会話をする事も可能なので、避難を促したり、降伏勧告をしたりもする(後者は大体鉛玉で返答されるが)。
権天使以上の耐久性を持ち、オーガの金棒が直撃してもダメージにならない。
天使40体分のコストで製造可能。
7、座天使(ソロネ)。
巨大な車輪に翼の生えた異形の個体。
基本二体で一組が並んで行動する。
その役割は主に補給用の「卵」を各地へ運搬及び物資集積地の防衛である。
背中合わせの二体の間、そこに大量の卵を魔法を用いて格納し、前線へと運ぶ。
戦闘能力は高く、全体からの火炎放射、轢き逃げアタックが使える他、素の耐久力が極めて高い。
天使100体分(一対分なので実質一体につき50体)で製造可能。
8、智天使(ケルブ)
2対4枚の羽、人型の上半身に4本の腕、下半身は4つの座天使から成る個体。
4本の腕にはそれぞれ右下に剣、左下に盾、右上に矢、左上に弓を持つ。
強化魔法等は持たないが、圧倒的個体戦闘能力を有しており、単騎でオーガの群れを一方的に排除可能。
剣からは炎、盾からはバリア、弓矢は超音速で放たれ、インクブス数体分の防御を貫徹する。
車輪は地上を高速で走行可能な他、それぞれが独立して行動可能。
天使300体分で製造可能。
9、熾天使(セラフ)
天使の翼と鎧具足を纏った魔法少女のコピー達。
所謂ウィッチランク100以内のコピーのみで構成されている。
嘗て敗北し、死亡かそれに近い状態となった魔法少女を同化し、天使として作り直した個体群。
人格・記憶も完全に再現されており、オリジナルよりも高い基本性能と魔法を持つ。
天使としての基本機能(攻撃・強化・回復魔法・同化)の他、下位の天使達への命令権を持っている。
撃破されても製造されれば復活可能。
個体差が大きく、天使300~1000体分のコストで製造可能。
10、四天
4体の最上級熾天使から成る戦略級個体。
ミカエル・ガブリエル・ラファエル・ウリエルから成り、それぞれ熾天使とはまた異なる魔法少女のコピーである。
熾天使同様の処置の他、同格未満の天使達への絶対命令権を持つ。
個体差が大きく、天使1000~3000体分のコストで製造可能。
ミカエル…元ウィッチランク一桁の魔法少女。極めて高い指揮能力を持ち、指揮下の天軍は常に最高峰の強化魔法がかかる。炎熱系魔法と剣術を得意とする。
ガブリエル…元ウィッチランキング一桁の魔法少女。未来予知系の魔法を得意とし、ミカエルと共に天軍の戦略指揮を行っている。
ラファエル…元ウィッチランキング一桁の魔法少女。超広域の治療・状態異常解除・蘇生魔法を得意とし、戦闘終了後の土地の復興を担当する。
ウリエル…元ウィッチランキング一桁の魔法少女。核熱魔法による超広域殲滅戦を得意とし、人質や周辺環境への配慮が必要でなく、同化による攻撃では逆汚染の危険がある場合に出撃する。戦術核クラスの魔法の連射によって全てを焼却する。
???…天軍の始まりとなった魔法少女。もう彼女は記憶も肉体も崩れ去り、同化の権能を機能させるための単なるプログラムでしかない。それでも彼女は人としての優しさを捨てず、インクブスを駆逐し続けている。
没理由
一人称ばっか+後半説明文ばかり+銀蓮程の魅力的なキャラじゃない
このまま削除するのもアレなので修正+加筆して出してみました。