クソデカスタッフと野蛮な魔法使い   作:ナリキン

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 ホグワーツ・レガシーやってみてぇ~。


ウッディ・マッケンソー13世は野蛮な子

 よう、そこのお前! 待たせたな、おれだ。

 ……うん? おれは誰だって? おいおい、おれを知らねぇのかよ。"あの家系"で有名なおれだぜ? え、マジで知らねぇの? あ、そう……。

 

 まあ良いや、取り敢えず自己紹介といこうじゃあねぇか。

 

 おれの名前は『ウッディ・マッケンソー13世』。今年で11になる幼気な少年だ!

 

 先祖がカウボーイだとか何とかだったそうだが、興味無かったからおれはよく知らん!

 親父もクソ爺もその前代のファッキン野郎共も、全員シニアとかジュニアとかを付けずにウッディを生やしていった阿呆の様でな。おれの本名は全部綴ると『ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・ウッディ・マッケンソー』だ。

 

 何度確認してもクソみてぇな名前だな! 子供が出来たら違う名前付けよ。

 出来たらの話だがな! ガハハハッ!!

 

 うしッ、おれの事はこんなもんで良いだろう。次におれの愉快なファミリーを紹介してやるぜ!

 てなわけで着いたここはボロっちい墓場。おれの家専用墓地らしいぜ? すげぇだろ? ……掃き溜めみたいで。

 

 左上から『ウッディ』『ウッディ』『ウッディ』『ウッディ』。

 下行って『ウッディ』『ウッディ』『ウッディ』『ウッディ』。

 更に下がって『ウッディ』『ウッディ』『ウッディ』『ウッディ』

 そんで一番前に『────』。

 

 『ウッディ』が12人。これで全員だ。分かりやすくて良いだろう!? 因みにだが、ここにウッディしか居ないのは直系の男児以外人間と認めてないからだとさ! ハッハッハッ!! イイ感じにクレイジーだなおい! クソッタレが!

 

 まあ、なんだかんだ言ってはいるが、墓を定期的に手入れする程度には家に感謝しているし恩義もある。今グチグチ言えるのも家中の者全てが命を懸けておれを生かしたからだ。幼児を一人浮世に残して全員玉砕したのは未だに根に持ってるがな! おれでなければ野垂死んでんぞ。

 

 そんな阿呆共が遺した物にろくな物がある訳無ぇ。倒壊寸前の廃屋と腐り始めた家具、周辺の店では使えない金品と禍々しい雰囲気を放つ趣味の悪い指輪、庭には野生化した山羊の群れと何故か鋼鉄化している荒れ狂う樹木の群生、後は墓の管理権位なものだ。

 おれを生かす出す気が微塵も無くて泣けてくるぜ! 最高にハッピーな気分だなおい!

 

 だがなあ、おれはお家で大人しく縮こまっていられる程お利口なガキじゃあねぇ。生きるには金が居るんだ。例えどんな金だろうとなあ!

 クソったれのミソッカスみてえな大人にもおべっかを使える位には社交性のあるおれだ。仕事なんぞ探せば幾らでもある! 仕事に見合った報酬とは限らねぇがな! ワハハッ!

 

 今日もしけた報酬でしけた飯を買い腹を満たして、突撃してくる山羊と鋼鉄の木枝を振りかざす樹木をしばきつつ、おれは馬小屋よりマシと躊躇いながら言える家に帰ってきた。

 そしたらおめぇ、何が居たと思う? 鳥だ! 鳥のカタチをした火が居たんだ! 燃え盛ってんのに熱を感じねえんだ、思わずファンタジィィィィッ!! って叫んじまったぜ。

 

 不思議な生き物が目の前に居たらおめぇどうするよ? とっ捕まえてペットにするに決まってんだよなあ!? 

 しかしだ、おれみてぇな愚かな人間なんぞこの世にはゴミの数程存在している。おれの行動なんぞ織り込み済みだと言わんばかりに、飛びかかった瞬間顔に紙を叩き付けて飛び去っちまった。連れないぜベイベー。

 

 顔から紙を引っ剥がすと、表に何か字が書かれてた。うん、分からん!

 封を開けて中身を吟味する。うん、分からん!

 あ、もう一枚あった。うん、分からん!

 お、切符だ。何処行きだ? うん、分からん!

 

 おれは字が読めねぇ! どうしよ!

 

 

 

***

 

 

 

 しみったれたこの世界だ。金もねぇ、親も居ねぇ、親愛なる隣人さまも居ねぇ、なんならそろそろ家も無くなりそうなおれが学校とかいう高尚な所なんぞ行ける筈もねぇし、薄汚いガキに教育しようだなんて酔狂なイカレポンチも居ねぇ。

 おれはそこらに吐いて捨てる程居る孤児の一人だ。必死こいて稼いだなけなしの金で身形を整えているから、孤児であろうとクソみてぇな仕事でも雇ってもらえる。金が稼げる。

 

 教養が無くったって、人は金さえあれば生きていける。まあ、楽に稼ぐには教養が居るんだがなコレが。おれは持ってねぇから苦労して稼いでいる。その日暮らしのウッディくんってな! ガハハッ!

 だが、それで良い。寧ろコレが良いんだ、おれは。今、この底辺に必死こいてしがみつく生活に満足してんだ。空白の墓石に自分を刻んで埋まっても良いと思える位に満足してたんだ。

 

 しかし、だ。おれは知っちまった。リアリティ溢れる素敵な世界には、クソみてぇなファンタジーが隠れ潜んでいるって事にな。

 ワクワクしてきたぜ。おれが思う以上にこの世界にはキラキラが溢れていやがる。胸の疼きが止まらねぇ! 視界がスパークすんぞ! 堪んねぇなぁ、おい!

 

 おれには手紙の内容は分かんねぇ。だが、"何処に行くべき"かは分かる! 昔紛れ込んだことのあるあの通りだ。白昼夢でも見てんのかと思っていたが、"あそこにこそおれのもとめていたもの"があったのだ!

 

 古ぼけたトランクに価値の有りそうな金品を全部ぶち込んで、おれは家を飛び出した。絡みつく因縁、押し戻そうとする山羊、振るわれる鋼鉄の木枝、全てをぶっ飛ばしておれは駆ける。

 

 うおおおおッ! 待ってろファンタジィィィィッ!!

 

 

 

***

 

 

 

 おれがこの通りに紛れ込んだのは完全に偶然だった。あれは外に出る障害物をぶっ飛ばせる様になった頃、金を得るために後ろ暗い仕事をしていた時の事だった。

 この頃のおれは既に幾つかのスラム街を巡っていて、ヤバい所とヤバい奴の見分けを付ける知識を得ていた。だからここに入ってすぐに理解した。ここはおれの様な薄汚いガキが居て良い場所じゃあねぇ、もっと穢れた存在が息をしている場所だってな。

 

 ドス黒いフードの奥には銀の仮面が見えた。20センチ程の木の棒を持つ腕には悍ましい蛇のタトゥーが蠢いておれに巻き付く感触がした。そんな怪しさ満点、不審者花丸な奴がおれを見ていた。

 ゾクッとしたね、あの時ばかりは。ギョロ目のおっさんがソイツに喧嘩をふっかけなければ、たぶんおれはヤラれていたと思う。

 

 何でそんな危険な場所に行くのかって? ばっかおめぇ、ワクワクした人間がその程度で止まるわけねぇだろうが! 常識だろ常識ィッ!

 

 だからこそ目立つ行動は控えている。こんな序盤も序盤におっ死ぬなんて勿体無さ過ぎるからな! 薄汚いガキらしくコソコソ行くさ。なんだ、何時も通りか。

 

 探索中に耳にした話によると、ここは『ノクターン横丁』と言うらしい。雰囲気から何となく察していたが、闇市の一つのようだ。お隣さんには『ダイアゴン横丁』があるらしく、そこが表通りだろう。

 取り敢えず質屋を見付けたので、遺産を売っ払ってから考える事にする。どうやって見分けたかって? ……金の匂いかな。

 

 一部買い取れない物を返却されて、得たお金は1700と9ガリオンだ。端数は繰り上げてくれたらしい。即金で渡されたからそこまで高価ではないのだろうか。物価が分かんねぇな。

 しっかし、この小袋にデカメの金貨が1700枚も入ってるなんて流石はファンタジー。スケールが違うね。

 

 9枚のガリオン金貨を手の中でチャリチャリしながら、そこらに展示されてるよく分からん品物を眺めていると、銀髪の親子が入店してきた。

 見るからに分かるお貴族様なお高いオーラを放つボンボンだ。詰まる所、この質屋はお貴族様御用達のお店ってぇ事だ。通りで"きにくわねぇばしょ"だと思った訳だ。こんなしけた店さっさとおさらばするに限るぜ。

 

 質屋を出てから適当にぶらついていると、通りに人が増えだし活気も溢れてきた。どうやら『ダイアゴン横丁』に出たらしい。おれと同年代らしき少年少女が親と一緒に色々買い込んでいる。

 時折見覚えのある紙を見ながら店を物色しているあたり、おれがこれから取るべき行動はそれに倣う事だろう。おれの"さえわたるめいせきなずのう"がそう言っている。

 

 狙い目は銀行から出てきた荷物を持っていない親子連れだ。買い物をするには纏まった金が必要だからな。ストーキングして同じ物を買いつつ、気になった物を適当に買えばファンタジーになれるだろ。

 

 買い物をしていくと貨幣の種類が分かってきた。金貨、銀貨、銅貨とありそれぞれを"ガリオン""シックル""クヌート"と言うらしい。

 レートは1ガリオン=17シックル=493クヌートだ。算術に関しては報酬をぼられないように勉強したからこれで合ってるだろう。この複雑な計算を会計時に空で行えるのだから、ここの連中も中々侮れない。

 

 しかし凄まじい光景だ。おれの現実性がガリガリと削れていくのを感じる。勝手に動くメジャー、浮き上がって動く本、喋る銅像、ガラス瓶に入った奇妙な液体、奇天烈な効果のあるお菓子、極めつけはカルト宗教でよく見かける格好がここでは普通である事だ。少しばかり街並みが古臭く感じるが、それがかえってらしい姿となっている。

 これがカルチャーショックってやつかあ……。

 

 何に使うか分からんがペットも買う必要があるらしい。あの燃え盛る鳥をペットにしたいところだが、売られているのは梟に蛇、蛙、鼠、猫と犬が居ない以外街中のペットショップとそう変わらない感じだ。

 見た感じ梟が多く買われているようなので、オーソドックスな茶色の梟を買った。飼育ってどうすれば良いんだろうか……。まあ何とかなるだろ!

 

 休憩がてら親子連れで溢れるパブに入り、名物っぽいバタービールをペロペロしながら周囲の会話を盗み聞きしていると、『ホグワーツ』と言う何たら学校に明後日鉄道で行くらしい。そういや手紙に切符が入ってたな。

 おれはどうやら"がっこうにいかなければならない"らしい。手続きとか何もしてない気がするが、まあなるようになるさ。という訳で二階が宿泊場所らしいこのパブで2日分部屋を取っておき、買い物の続きを始めた。

 

 周囲の親子連れを観察して買い物に漏れがないか確かめながら、最後に買うのは杖だ。あんなちゃっちい木の棒で何を突くのか知らんが、必要とされているのならば手に入れる必要がある。

 一番評判の良さそうな『オリバンダーの店』に入れば、カウンターの向こうから爺さんがヌッと現れた。おれににこやかに話しかけながら、おれの右腕をベタベタと不躾に触ってくる。

 

「ふむ。強靭で、靭やかな筋肉。強力な呪いと加護。血と硝煙の匂いが染み付いている。随分と戦いの中に身を置いていらっしゃる様だ。

 しかし、足元は些か不安定。もう一本足が必要でしょう。よろしい、少しお待ち下され」

 

 一方的に捲し立てた爺さんはさっと奥に引っ込んですぐに戻って来た。何かクソでかい杖を持って。えぇ? それを学校に持ってくの?

 

「こちらをどうぞ。オークの木にドラゴンの心臓の琴線。168センチ。堅固で頑固。手に取って体の支えにしてください」

 

 言われた通りに杖を突いて重心を傾けると、体の中から淀み滞っていたナニカが抜けていく感触がした。撒き散らされていた砂埃、割れたガラスの破片、何かの燃えカス、目についていたありとあらゆるゴミが渦を巻いて一点に集まり、パチンッと音を立てて泡の様に消え去った。

 この白昼夢は寝たら覚めるのだろうか。夢ならさっさと目覚めて欲しい。

 

「こちらの杖は晩年の方向けに私が試作した物でしてね。体を支え、衝動的な魔法行使を抑制し、危険から持ち主を守る事を目的としておりました。まあ、少々大きく作りすぎて使い手がいなかったのですがね。

 焦燥と安堵、不満と満足、絶望と希望。入り混じる相反する感情を持つ者に必要な杖でしょう。この杖はあなたを時に支え、時に守り、時に諭すでしょう。この杖があなたの傍に居ることを、どうかお忘れなきよう」

 

 おれはチャリチャリ鳴らしていた9ガリオンをカウンターに置き、店を出た。この時、おれの現実性は完全に消失したのだろう。どうせ薬物でラリっているだけだと思っていたのだ。こんなファンタジーがリアルであってはいけないだろう。ふざけるんじゃあない。

 

おれの今までは一体なんだったのだ

 

 寝たら覚めるだろうか、この白昼夢。

 




 Tips:ダンブル爺ちゃんからのお手紙
・多分呪われてる。

 マジカル(Magical)とウィザード(Wizard)を知らない無教養の子。孤児ならシカタナイネ!
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