学園都市奇妙録   作:イロマス

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ムーン・アンド・サンドその1

 戦闘開始から約5分が経った。

 あたし達カタカタヘルメット団はこのアビドスを奪うべく徒党を組んで攻め入ったのだが、現在まで戦況は拮抗状態を維持している。

 

 原因は決まっている……!

 

「……アイツだ。あの校舎の窓からコッチを撃ってくる男……!アイツがこの状況を作ってやがる!」

 

 あの緑野郎が撃ってくる弾。アレが厄介だ。さっきからあたし達の投げる手榴弾やクレイモアが悉く()()()()()()()無力化されている。

 

「……ただ三つだ……何となく分かった。あの野郎の()()……多分だが、弾丸が当たったものを地面に埋める能力……!そしてその最大数は3!」

 

 分かってきた……奴の地中に埋める能力の弱点が。埋める数は最大で3。それ以上は無いと断言できる。それは視界の端々に見える埋まった爆弾類の数が3つから増えていない事。もし4つ目を埋めようとするなら既に埋まった物が地中から弾かれる様に飛び出していく。

 きっかり3つ。なら3つ以上の攻撃をするだけだ。あたしは他の奴らに手榴弾を投げるよう命令する。

 

「だが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 あの野郎の銃は遠目だがトンプソン・コンテンダー。小型銃の中では遠距離にも対応できる銃だ、そして何故だが野郎の狙いは精密だ。1射で同時に投げた手榴弾を何個か同時に破壊できる程に。だからタイミングをずらす!

 予想通り、流石の精密さの射撃ですら撃ち漏らしたらしく、何個かの手榴弾は目の前のアビドス生徒にぶち当たる。

 明らかに動揺の見えるアビドスの生徒。そろそろアッチの弾も尽きる頃合いだろう。相手はジリ貧を強いられている、勝ちの目はこちらにある!

 

「……このままいけば、あたし達の勝利は確実……!……勝った!」

 

────

 

(……あの女。俺の能力に大方目星がついたか……厄介だな)

 

「………先生。少しこの場を外す」

 

"もしかして、あのリーダーの子が原因"

 

「あぁ、あの女。俺の能力に予想がついたらしい。そして弱点にも」

 

"能力?"

 

「………俺の能力は大雑把に言えば『触れたものを地面に埋める能力』。埋める速度やパワーは自由に操作可能……だが、同時に埋められる数は最大で3……それ以上は無い」

 

 今、あのリーダーの女は俺の地面に埋める能力には目処が立っている。だがあくまで俺の撃った弾丸が当たった物を地面に埋めると思っているだけだ。

 

「楽な仕事じゃあないが……直接叩きに行く!」

 

"直接って、この弾幕の嵐を!?無茶だ!"

 

「無茶は承知……だから先生、指揮を頼みたい。俺がリーダーの所に向かうまでの間、ホシノの援護を……」

 

"……分かった。でも無理はしないで"

 

 無理はしないで、か。正直、キヴォトス人のような頑丈さを持ってない俺からすれば、無理はしないでとは即ち隠れ逃げる事。

 この定城ミツキには何ものにも変え難い『目的』がある。

 それは記憶を取り戻す事。この大海の様なキヴォトスで、砂の一粒の記憶を探す。それこそ正に無理な事だ。だが今、この無理を乗り越えなければ、永遠に俺の目的は遂げられない。

 

 無理とは壁だ。デカい壁……それを乗り越える事こそが、勇気であり、覚悟なのだろう。

 ならば喜んで無理に立ち向かおう。それが俺の覚悟なのだから。

 

─────

 

 

 無理はしないで、そう言うとミツキはこちらを振り返って、サムズアップをする。良かった、私の言葉が届いたと思った次の瞬間。

 

……は!?窓から飛び降りたァ!?

 

"ちょ!初っ端から無理してる!……あれ、居ない"

 

 慌てて窓下を見ても、さっきまで降りたはずのミツキの姿が見当たらない。

 どこに、と辺りを見渡してふと、さっきの会話の内容が脳裏に浮かんできた。

 

"ミツキの能力は……触れたものを地面に埋める能力……もしそれが自分自身にも適用出来たなら、そして自由に移動出来たなら……"

 

 もし予想が当たっているなら。ならば私は私の役割を果たさなければならない。

 

"信じてるからね、ミツキ"

 

 先生たるもの、生徒のピンチに駆けつけずに何が先生か。

 指揮は経験済みだろ、先生!

 

"アロナ。この付近の監視カメラと、不良グループの武器の詳細を送って"

 

【やるんですね!先生!了解です、付近のカメラ映像と武器の情報を送ります】

 

 シッテムの箱。それは私の最大の矛であり盾。()()()を除いてこのキヴォトスに置いて、私が最も信頼している物。

 起動したシッテムの箱から幼い少女の声が聞こえる。それはシッテムの箱に備えられたAI『アロナ』。

 画面の向こうから聞こえる声は幼い少女のように元気ハツラツとしているが、その芯には私の期待に応えようと、自分の責任を果たそうとその力を使う。そんな覚悟を感じられる。

 

 私だけが甘えられるか……皆んなが、シロコ達はこのアビドスを守ろうと覚悟している。

 全力で、覚悟を持って。私も戦おう。

 アロナから送られてくる情報に目を通し、この状況を打開する案を模索する。

 迅速に、けれど慎重に。

 

"やるよ、アロナ。仕事の時間だ!"

 

 さあ、反撃開始だ。

 

 

 

 

 

 

 




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