私がアビドスに来てから3日経った。
先の不良の襲撃があってからというもの、私達は不良の拠点を見つけ出してはそこを襲撃、潰し回っていた。
砂漠に行ったり、工場地帯に行ったり、私も皆んなも目に見えて疲れが溜まっていた。
そして今日ようやく近場の拠点を潰し終えて、アビドスへと戻って来た。
疲労した体を引きずって教室に戻って来た私達は一旦腰を下ろして休息を取る。
「っは〜!ようやく終わったわねー!それにしても、ミツキ先輩はどうしたのよ」
「なんか、予感がするっていって住宅街の方へ向かっていった」
「ミツキ先輩の予感は当たりますからね。でも心配は無いと思います」
ただ、ミツキは何か気になる事があったのか、一人別行動をとっており今は不在だ。
3日前の襲撃があってからというもの、ミツキは何処か変だ。具体的には分からないけれど、単独行動が増えたような気がする。
そういえば、リーダーの不良(
「そうね!それに、やっと本腰入れて例の問題に取り組めるわよ!」
そう言うと、セリカ含めた四人の表情もやる気に満ち溢れた表情になっていく。そういえば、支援要請を受けてここに来たとはいえ、まだ私はこのアビドスを完全に知り尽くしていない。それに、例の問題とは?
首を傾げながら会話に耳を傾けていると、気になるワードが出て来た。
"ちょっと待って。借金って、何?"
口を滑らせたと言わんばかりに口を押さえたセリカ。
アヤネは言ってしまったら仕方ないといった様子で、私に話し始める。
事の発端は過去の生徒会にある。どうやら元はアビドスはキヴォトス有数のマンモス校で、ゲヘナやトリニティとも数えられる程の力のある学校であった。
しかし、突如発生した砂嵐によってアビドスは大打撃を負い、立て直しを図ろうと多方面に借金をして復興しようと力を尽くしても、度重なる砂嵐によってなす術なく撃沈。街の大半は砂に埋もれ、残った借金は残された生徒では到底返せる額ではなくなった。
「そして、今私達の元にある借金額は約9億と少しです」
9億。その言葉を聞いた瞬間、私の後頭部をハンマーで叩かれたような衝撃が襲った。
空いた口が塞がらないとはこう言うのだろう。余りにも、余りにも大きすぎる言葉に、尻込みしそうになる。だが直ぐにそんな弱気は無くなり、逆にそこまで追い詰めた企業と、何もしてやらなかった大人達に対しての怒りが湧いてきた。
"………分かった。皆んなの事情と背負っているものが。だから、私も手伝うッ……!"
私は先生だ。たとえ新参者で、ヒヨッコでも背負うべき責任と覚悟は理解できる。
シロコ達も、私の熱意が伝わったのか、表情を明るくして喜んでくれた。
ただ、その時だった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
セリカはまるで、私の言った事が理解不能といった様子で割り込んでくる。
その瞳は揺れ、声は明らかに拒絶の意思を感じられた。
「確かに!先生には色々とお世話になったし、指揮とか……人柄とかは信頼できる……けどそれとこれとは別じゃない!そもそも、アビドスの借金問題は今まで私達だけでやって来た筈ッ!今更大人の手助けだなんて……都合が良すぎるんじゃないの!?」
"………私は、それでも助けたいよ。私は………例え偽善とか、要らないお世話とか言われたとしても……それでもやらなければいけない。私は先生だッ………責任と、覚悟があるッ"
確固たる信念を持って言い放つ。彼女達は大人の被害者だ。搾取され、奪われ続けた者たちだ。だがッ!それでも尚諦めず、困難に立ち向かう覚悟と勇気があった。
私は、そんな子達の光を絶やしたくはない。星は常に輝き続けるべきだ。不当な理由で踏み躙られる、そんな事があってたまるかッ。
"私には、私の思う
「………ぅうっ……でも、今更大人の力を借りるだなんて……私、私は絶対に認めない!」
吐き捨てる様に叫んだセリカは逃げるように教室を出ていく。心配に思ったノノミも直ぐにセリカを追って教室を出ていき、あとには後味の悪い沈黙が残った。
「───振られちゃったねー。でも怒らないであげて、セリカちゃんは……私達を思って言ったの。今まで苦労して来たから」
その声には彼女達の過ごした日々がどこまで過酷だったかを強く物語っている。
私は、私の力不足がとても腹立たしい。こんな時セリカも皆んなも納得できる答えを出せず、こうして立っているだけの自分が。
"いや、こんな所でウジウジしてるのが無駄なんだ………ごめん、アヤネ!定例会議はまた後で良いかな?ちょっとセリカ探してくる!"
私はこと大人の歴に関しては成り立ても成り立て。福祉や心理学に精通している訳でもない。人の心を理解して寄り添う、そんなこともまだ満足に出来やしない。
けれど、心のせめぎ合いに挟まれて不安定なセリカをみすみす放っておく程、私は先生としての仕事を安く見ていないし、見たくない。
私はアヤネに断りを入れて、セリカを追って教室を出ていった。
評価、感想お待ちしております!