何とかムラサキウニ鉄球を討伐した俺は、なぜかリスナーに死ぬほどドン引きされていた。
何やら"紙"回避がお気に召さないようだけど、別に回避方法は俺に選択権ねぇし……。
「気を取り直して先に進みたいとこだけどなんか眠いな」
コメント
・こっちはもう夜よ
・BANの復旧に時間をかけすぎたね
・普通はここで仮眠を挟むけど……
・また全自動腹パンマシーンが登場するのか……
・そろそろテント買えよォ!!
テントか……まだ買ってないんだよなぁ……。
いや別に全然買えるだけの金はあるんだけどな??
寝て起きたらレア素材とか落ちてる効率の良さを考えたらさ……別になくても良いんじゃねーかと思い始めたわけよ。
コメント
・なわけねーだろ買えよボケ
・めっちゃこのままで良いんじゃね? って表情してて草
・間抜け面で悩むなw
「心の中を読むなよ」
俺の魂胆見透かされてて草。
リスナー曰く寝ながら腹パンする構図は非常に気持ち悪いらしいけど、生憎と本人は寝てて意識無いんだから気にすることはねーと思うのよ。
まあ、海底神殿とかいう特殊フィールドで、どんな魔物が登場するか未だ全貌が分かってない以上は、不用意な油断は危険……ってことは分かってるけども。
「寝不足で探索を進めるよりはDead or Aliveで寝たほうが良いと思うぜ俺は」
コメント
・どっちも結局デッドオアアライブだろ
・ドロー! リスナーはここで第三の選択肢! テントを買う、を推奨するわよ!!
・まあ、現実的に考えたら一回帰るのも時間かかるし腹パン信じて寝れば良いんじゃない?
「まあそうだよな。よし、寝ます。おやすみ」
俺は適当な壁に背をもたれて目を閉じる。
余程疲れてたのか、すぐさま意識は闇に消え去った。
☆☆☆
夢咲氷織が眠りに就く中、コメント欄は賑わいを見せていた。主に彼に対する罵倒がメインではあるが。
コメント
・睡眠RTAすぎる
・ダンジョンで寝れないって層も一定数いるのに……
・やっぱり強いヤツでどこかネジ外れてるよね
・夢咲のネジガバガバすぎるw
・なんかこうして寝顔見てるとあんなヤベーことしてるとは思えないあどけなさ……
・夢咲に"萌え"とか"尊さ"を感じた瞬間に人間として終わると私は思っているので、定期的に音MADで正気を取り戻してるリスナーです、どうぞ
寝顔鑑賞勢は夢咲のあどけない寝顔に少しだけ心を奪われていた。なにせ顔立ちだけで言えば夢咲は"イケメン"という括りではなくとも、十分人気が出るに値する容姿だからだ。
普段の言動と行動で常にデバフがかかっている人気とはいえ、眠っている夢咲は無害────、
────否、有害であった。
コメント
・あ、魔物来てる
・リザードマン……? 割と強くなかったっけ
・腹パンで倒せなかったら死ぬわね……
・大丈夫か……?
てくてく、と眠っている夢咲に近づく一つの気配。
それは簡素な甲冑に身を包み、鉄の槍を右手に持つトカゲ──リザードマンであった。
中層では比較的に強い魔物とされている。
なぜなら基本的に知能が低く攻撃の読みやすい通常の魔物と違い、リザードマンは【槍術】というスキルを持ち、技術で敵に襲いかかってくる。
普段攻撃一辺倒な魔物と相対している探索者は、急に現れた技術者に敵わず命を落とす──という実例が複数確認されているほどだ。
謂わば中層における探索者の天敵。
それがリザードマンという魔物である。
「むにゃ──【即撃】」
──リザードマンが槍を夢咲の喉に突こうとした刹那、眠っているとは思えない超スピードで顔を傾け攻撃を回避した夢咲は、ふにゃふにゃのパンチをリザードマンの腹に打ちつける。
──グシャッ!!!
攻撃に見合わない威力を放った腹パンは、見事にリザードマンの腹部を貫通し──
「ギャギャっ……」
──屈辱、と言わんばかりの表情で魔物は力尽きた。
残念ながら夢咲に技術云々は通用しない。
なぜなら、どれだけ研鑽された技術であろうと98%の確率で回避されてしまえば、皆等しく腹パンの被害に遭ってしまうからである。
コメント
・むごい……
・今、首すんげぇ角度でひん曲がってなかった?
・起きたら寝違えた……とか言って首さすってそう
・あ、今回も問題ないっすね……
・ソシャゲのSSR当たる確率くらいで攻撃当たるけどね
・ああ……また屍が積み重なって……
・手痛い失敗しないと絶対テント買わないぞコイツ
☆☆☆
「うーん、よく寝た!!! お、めっちゃ魔石とか色々転がってんじゃーん。やっぱ効率良いよなコレ」
コメント
・はい、おはよう(8時間経過)
・仮眠とは……?
・ダンジョンで快眠するやつがいるかァ!!
・効率(運ゲー)
俺は拾える分だけ適当に拾い集めていく。
……なんか首痛いな。寝違えたか?
さてさて、気を取り直して探索するかぁ。
「ほな海底神殿の最深部を目指していこか〜」