「仮初の身体を抱いて」の後日談になります。一応、単体でも読めるように仕上げてみました。前作もぜひ読んでみてください。

1 / 1
虚ろな心は何処へ

人間になって数ヶ月が経った。今はトレセン学園の近くで弁当屋を切り盛りしている。あの非営利組織は僕に新しいパスポートを与えただけでなく人間としての身分まで用意してくれた。住民票、戸籍謄本、出生証明書、運転免許証まであった。これが非合法なものであることは容易に想像がついた。しかし、本当に人間として認められるためなら手段を選ぶつもりは無かった。唯一気に入らない点は年齢が26歳になっている事だ。本当は14歳なのに・・・弁当屋の方は立地のせいかトレセン学園の男性トレーナーが来ることが多かった。ウマ娘だけに現を抜かしていればいいのに・・・下心が透けて見えてて気持ち悪かった。「お母さん!ただいま!」と娘が幼稚園から帰ってきた。本当の娘では無い。シリアから引き上げる時に保護した孤児だ。変に懐いてしまった。これのせいで僕は「子持ちの未亡人」ということになってしまった。娘はウマ娘だった。これがトレーナー達を引きつける要因でもあるのだろう。何度かプロポーズも受けた。その度に「トレーナー辞めて一生弁当屋手伝ってくれるならいいよ!」というと去っていった。トレセン学園の生徒にトレーナーの気を引きたいから料理を教えて欲しいと言われた時も「月謝払ってくれるならいいよ!それかうちの弁当買って」といい突っぱねていた。これで客が減ったとしても知ったことではない。それはさておき、娘には自由に生きて欲しかった。「私もお母さんみたいになりたい」と言われた時は嬉しかったが「僕のように耳と尻尾を切り落として釜茹でにするような事はして欲しくないな」と思っていた。夜になるとホープフルステークスの夢を見る。2着のウマ娘に殴られながら両親にまくし立てられる夢だ。「才能があるのになぜ誇らない?」・・・黙れ「お前は走るために生まれてきたんだ!」黙れ「貴方は何も考えず親の言うことを聞いてればいいんだ!」黙れ!自分の寝言で目が覚めた。少し頭を冷やそう。厨房で水を汲んで飲み干した。気がつけば娘の部屋の前にいた。手には包丁が握られている。我に返り包丁を投げ捨てた。何をしようとしていた?娘の耳と尻尾を切り落とそうとしたのか?僕が?「違う・・・違う!僕は父さんや母さんとは違う!娘も人間だったらなんて・・・そんなの両親と同じじゃないか!」自分と同じ軌跡は辿って欲しくないと思いつつ娘を同じ道に引きずり込もうとする。これが本当に人間か?僕は一体何なんだ・・・


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。