殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

152 / 152
152 夜中の密会

 

 テントの中は真っ暗になり、みんな寝袋の中に入って眠ろうとするが、なかなか眠れない。

 仕方ないのでヒソヒソ声で話をしていたら、またコル●ス先生がテントの中に入って来た。

 

「こらぁあ! お前ら、起きているのは分かっているぞ! ちゃんと寝ろ!」

 

 そんな怒鳴り声を上げられると、寝ている生徒まで起きてしまうよ。

 コル●ス先生の巡回が終わった頃、近くにあるコテージから笑い声が聞こえて来た。

 恐らく仕事を終えた先生たちが、打ち上げを始めたのだろう。

 自分たちだけ、豪華なコテージで食べて寝るとはすごく腹立つな……。

 

 

 優子ちゃんが寝たのを確認して、俺はむくりと起き上がる。

 そして自分のボストンバッグから、あるものを取り出してテントから出た。

 暗い山道をひとりで歩き、夕ご飯を食べた時に使った炊事場へ向かう。

 

 炊事場に着くと、事前に用意していたやかんに水を入れて、ライターを使いかまどに火を点ける。

 あとは、お湯が沸くのを待つだけだ。

 これまた暇つぶし用に持って来たゲームボーイを取り出して、ポケモン集めで時間を潰す。

 お湯が沸いたら、カップラーメンにカレーのルーをひとかけら入れて、三分間待つ。

 これで本格カレーヌードルの出来上がり。

 

「ふ~ ふ~ あ、おいし~! 夜食はやっぱりカップ麺だよねぇ~」

 

 カップ麵を食べ終えたら、フィルム製の袋を開けて、ポテチを片手にゲームボーイで遊ぶ。

 月明かりがちょうどいい感じに、俺を照らしてくれる。

 これでこの林間学校も暇せず、過ごせそうだ……と思っていたら、背後に誰か立っていた。

 

「お前! こんなことろで、何をしているんだ!?」

 

 まだコル●ス先生が巡回しているかと思い、急いでゲームボーイだけは隠しておく。

 

「こんな暗いところで、なにをやっているんだ? 水巻?」

「え?」

 

 よく見たら、ツンツン頭の鬼塚だった。

 鬼塚と分かった俺は安心して、その場でため息をつく。

 

「はぁ……なんだ鬼塚か。先生に見つかったかと思ったよ」

「先生に見つかるぐらいなら、良いだろ!? このキャンプ場には、他校の奴らも来ているんだ。女子のお前は危ないだろ!」

 

 ん? なんか、この感じの鬼塚は怒っているのかな。

 

「なんで危ないの?」

「そりゃ、お前みたいな、か弱い女子が暗い中にいたら、怪しい男が変なことをしてくるに決まってるだろ!」

「そうなのかな……私、さっきからここでカップラーメン食べて、ゲームしていたけど。誰からも声をかけられなかったよ」

「暗くて、水巻の顔がよく見えなかっただけだろ! と、とにかく俺は、お前が食べ終わるまで隣りに座るからな!」

 

 そう言うと、彼は勝手に俺の隣りに座りこむ。

 俺は片手に持っていたポテチの袋を鬼塚に差し出してみた。

 

「い、いらねーよ!」

「ふーん、ところで鬼塚って何しにここまで来たの?」

「そ、それは……トイレを終えて、ちょっと散歩していたら、水巻の後ろ姿が目に入ったから」

「暗い中なのに、よく私だってわかったね」

「まあ、お前とはなんだかんだ言って、長い仲だからな……」

「ところでさ、最近バスケ部には通ってる?」

 

 俺がそう問いかけたところで、鬼塚は黙り込んでしまう。

 

「翔平くんから聞いたけど、今はバスケよりバイトの方が忙しいんでしょ?」

「ま、まあな……実はバスケ部なんだけど。この前、退部届を出してきたんだ」

「ええっ!? バスケ部を辞めたの?」

「うん……水巻に色々と助けてもらって悪いけど。俺にもやりたいことが見つかって……」

「別に責めたりしてないよ。ただ気になったから」

「そっか」

 

 俺たちはその後、しばらく流れる川の中で揺れる月を見つめていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

旅立つ幼馴染を見送ったTS薄細美少女の俺。十年後、スラム街の娼館にて再会を果たす(作者:しゃふ)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

十年前、幼馴染の男が村から旅立って行った。▼TSして女になった俺にとって、唯一の親友と言える存在だった。▼十年後、私が働いている娼館に、そいつが来た。▼しかも、毎週唯一の出勤日にフルコースで指名してくる。▼……ほんと、馬鹿な奴。▼マルチ投稿してます


総合評価:13095/評価:8.99/完結:19話/更新日時:2026年10月23日(金) 22:04 小説情報

胡散臭いTS美少女占い師は今日も路地裏で笑う(作者:高丸)(オリジナル:現代/日常)

転生したら怪異が存在する世界にいた主人公が趣味で占い師をする話▼【挿絵表示】▼


総合評価:5909/評価:8.1/連載:9話/更新日時:2026年07月01日(水) 22:07 小説情報

TS元おじさん薬屋娘、常連の朴念仁騎士を後輩のつもりで餌付けしていたら、騎士団総出で外堀を埋められていた(作者:べ¥)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

※完結しました。▼過労死した営業課長・佐々木健一(42)は、辺境都市の薬屋の看板娘メリル(18)に転生していた。▼前世の癖で、ぼろぼろになって店に来る新米騎士ジークをつい「手のかかる後輩」として世話してしまうメリル。傷薬をおまけし、飯を食わせ、説教をする。ただそれだけの、俺にとってはそれだけの話だったのに。▼――なぜ騎士団の連中は俺を「若様の想い人」として扱…


総合評価:9021/評価:9.01/完結:26話/更新日時:2026年07月17日(金) 12:00 小説情報

TS転生した元男が演奏系配信者として稼ぐ話(作者:深空 秋都)(オリジナル:現代/日常)

前世と類似した世界に転生した男は女の子――天音 在処(あまね ありか)に転生していた。▼前世の経験を活かし、ギター演奏や動画投稿を通じて才能を発揮していくうちに、その実力は周囲の大人たちやネット上で注目され、少しずつ影響力を持ち始める。▼※カクヨムにも掲載しています。


総合評価:6962/評価:8.35/連載:53話/更新日時:2026年09月18日(金) 06:42 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>