テントの中は真っ暗になり、みんな寝袋の中に入って眠ろうとするが、なかなか眠れない。
仕方ないのでヒソヒソ声で話をしていたら、またコル●ス先生がテントの中に入って来た。
「こらぁあ! お前ら、起きているのは分かっているぞ! ちゃんと寝ろ!」
そんな怒鳴り声を上げられると、寝ている生徒まで起きてしまうよ。
コル●ス先生の巡回が終わった頃、近くにあるコテージから笑い声が聞こえて来た。
恐らく仕事を終えた先生たちが、打ち上げを始めたのだろう。
自分たちだけ、豪華なコテージで食べて寝るとはすごく腹立つな……。
優子ちゃんが寝たのを確認して、俺はむくりと起き上がる。
そして自分のボストンバッグから、あるものを取り出してテントから出た。
暗い山道をひとりで歩き、夕ご飯を食べた時に使った炊事場へ向かう。
炊事場に着くと、事前に用意していたやかんに水を入れて、ライターを使いかまどに火を点ける。
あとは、お湯が沸くのを待つだけだ。
これまた暇つぶし用に持って来たゲームボーイを取り出して、ポケモン集めで時間を潰す。
お湯が沸いたら、カップラーメンにカレーのルーをひとかけら入れて、三分間待つ。
これで本格カレーヌードルの出来上がり。
「ふ~ ふ~ あ、おいし~! 夜食はやっぱりカップ麺だよねぇ~」
カップ麵を食べ終えたら、フィルム製の袋を開けて、ポテチを片手にゲームボーイで遊ぶ。
月明かりがちょうどいい感じに、俺を照らしてくれる。
これでこの林間学校も暇せず、過ごせそうだ……と思っていたら、背後に誰か立っていた。
「お前! こんなことろで、何をしているんだ!?」
まだコル●ス先生が巡回しているかと思い、急いでゲームボーイだけは隠しておく。
「こんな暗いところで、なにをやっているんだ? 水巻?」
「え?」
よく見たら、ツンツン頭の鬼塚だった。
鬼塚と分かった俺は安心して、その場でため息をつく。
「はぁ……なんだ鬼塚か。先生に見つかったかと思ったよ」
「先生に見つかるぐらいなら、良いだろ!? このキャンプ場には、他校の奴らも来ているんだ。女子のお前は危ないだろ!」
ん? なんか、この感じの鬼塚は怒っているのかな。
「なんで危ないの?」
「そりゃ、お前みたいな、か弱い女子が暗い中にいたら、怪しい男が変なことをしてくるに決まってるだろ!」
「そうなのかな……私、さっきからここでカップラーメン食べて、ゲームしていたけど。誰からも声をかけられなかったよ」
「暗くて、水巻の顔がよく見えなかっただけだろ! と、とにかく俺は、お前が食べ終わるまで隣りに座るからな!」
そう言うと、彼は勝手に俺の隣りに座りこむ。
俺は片手に持っていたポテチの袋を鬼塚に差し出してみた。
「い、いらねーよ!」
「ふーん、ところで鬼塚って何しにここまで来たの?」
「そ、それは……トイレを終えて、ちょっと散歩していたら、水巻の後ろ姿が目に入ったから」
「暗い中なのに、よく私だってわかったね」
「まあ、お前とはなんだかんだ言って、長い仲だからな……」
「ところでさ、最近バスケ部には通ってる?」
俺がそう問いかけたところで、鬼塚は黙り込んでしまう。
「翔平くんから聞いたけど、今はバスケよりバイトの方が忙しいんでしょ?」
「ま、まあな……実はバスケ部なんだけど。この前、退部届を出してきたんだ」
「ええっ!? バスケ部を辞めたの?」
「うん……水巻に色々と助けてもらって悪いけど。俺にもやりたいことが見つかって……」
「別に責めたりしてないよ。ただ気になったから」
「そっか」
俺たちはその後、しばらく流れる川の中で揺れる月を見つめていた。