「彼女たち」の言い分は、どこからどう見ても薄っぺらく感じますね。
同一HNでpixivにも投稿済みです。

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第1話

日曜日の昼、N駅近くの電気街。

道行く人で賑わうその通りで、僕は彼女の姿を認めた。

僕は彼女の姿を認めると、迷わず彼女に向かって歩を進めた。

彼女に手が届く所まで、あと十歩ほどの所で、僕は…上着のポケットからカッターナイフを取り出した。

 

あと二、三歩で彼女に手が届く所まで来た。

そのとき、僕の右手側を、黄土色のチェスターコートを着た女が通った。

そしてその女は、カッターナイフを持った僕の右手を掴んだ。

 

こんな所で!

焦った僕は女の手を振り解こうとした。

…でも、どう足掻いても、僕はその手を振り解くことが出来なかった。

僕の手を掴んだ手は女の手だったが、手の力は女の力とは思えなかった。

 

「あらあら、ごめんなさい。」

「でも、こんな所でそんなものを出されるのって」

「…私的には、とってもNGなのよね。」

 

僕の右手を掴んだ女は人間じゃなくて…艦娘・戦艦陸奥だった。

艦娘は人間よりも力が強い。

艦娘に手を掴まれてしまったら、僕が手を振り解くなんてほぼ不可能だ…!

 

…こんな所で!…よりによって、艦娘に手を掴まれてしまうなんて…!

 

 

僕が陸奥の手を振り解こうとしていたら、二、三歩先に居た彼女と、目が合ってしまった…。

僕と目が合った彼女は、陸奥に手を掴まれた僕に歩み寄ってきた。

…傍に居た男に肩を抱かれながら、余裕を見せつけるように。

 

「誰かと思えば…キミじゃない…。」

僕の前に立って、彼女は口を開いた。

「どうしたの…カッターナイフなんて取り出しちゃって…。」

 

…………。

僕は答えなかった。

 

「ふうん…。」

「それにしてもホント、キミって男として、全くダメだよねぇ…。」

「オチンチンもお粗末だし、セックスだって全然ダメ。」

「ちっとも私を満たしてくれなかったよねぇ…。」

「そのくせ、今カッターナイフなんか持って、私の前に出てきてる…。」

「…男として、オスとしてダメだと、心も狭いし、器も小さいんだねぇ…。」

「ホント…キミって、哀れだよねぇ…。」

 

そこで彼女は男に抱き寄せられ、かなり強くキスをされた。

強引なキスだったけれど、彼女は男の体に抱きつき、しがみ付いて、そのキスを受け入れた。

 

「…ぷはぁ…。」

彼女は男から唇を離すと、すっかり蕩けきった目を僕に向けた。

「ふふふ…この(ひと)…キミとは大違い。」

「キスだってこんなに上手いし」

「オチンチンだって凄いし、セックスだって…もの凄い。」

「キミと違って、私をちゃん満たしてくれる。」

「…この(ひと)こそ、私の運命だったんだよ…。」

「キミと…キミなんかと付き合って…カラダまで許しちゃったのは…」

「酷い気の迷いだったなぁ…。」

 

僕は何も言い返すことが出来なかった。

 

僕は、悔しさに震えながら黙っていた。

すると、僕の右手を掴んでいた陸奥が、急に話し出した…。

「あー…えーっと…。」

「この人はあなたの元カレで…。」

「…あなたはこの人の元カノってことで、いいのかしら?」

 

「そうだよ…」

「…まあ、元カレっていうより、偽カレって言う方が良いけど…。」

 

「…それであなたは、この人を捨ててそちらの男性とお付き合いを始めたのね?」

 

「そうだよ…」

「この(ひと)と、偽カレくんを比べてみて…?」

「あなたも女のカラダを持った存在なら、わかるでしょ?」

「偽カレくんなんかよりこの(ひと)の方が、ずっと素敵だって。」

 

「それであなたが、この人を捨てて、その人を選んだ理由は」

「この人はあなたを満たしてくれなかったけど、その人はあなたを満たしてくれたから。」

「…要するに、そういうことなのね?」

 

「そうだよ…。」

「女として、メスとしては当たり前でしょう?」

 

「それで、私が手を掴んでるこの人は…」

「…あなたの仕打ちを恨んで、カッターナイフであなたを切りつけようとしていたと…。」

 

「そういうことになるね…」

「気持ち悪いよねぇ…?」

「自分が男として、オスとしてダメなのを棚に上げて」

「女として、メスとして、ごく当たり前に振舞っただけの私に切りつけようとするなんてさぁ?」

「ホーント…気持ち悪いよねぇ…?」

 

陸奥は少し考えるそぶりを見せてから…。

「…そうね…。」

「あなたみたいな人に執着するって、それは確かに気持ち悪い話だわ。」

 

彼女は、陸奥が自分に同調したと思ったのか、厭らしい笑みを浮かべていた。

字面だけ見れば、確かに陸奥も僕のことを「気持ち悪い」と言っていた。

…でも「気持ち悪い」と言った時、陸奥は「あなたみたいな人」という箇所を強調していた。

 

陸奥は続けて言った。

「ところで気づいているかしら?」

「あなた…この人のことを…」

「オチンチンが粗末だとか、セックスがダメだとか」

「自分を満たしてくれないとか…そんな風に言っていたけど。」

「これって…ブーメラン、って言うのかしらね?」

「あなたの言葉、全部あなた自身に返ってきてるんじゃない?」

 

僕は十秒ぐらい経ってから、話の風向きが変わり始めたことを理解した。

 

「ブーメラン?」

「私が…私が、そこの偽カレくんと同類だって言いたいの?」

「何それ、意味わかんない。」

「あなた、頭悪いの?」

「艦娘って、人間よりちょっとだけ頭は良いって聞いてたんだけど?」

 

彼女の言葉を受けて、陸奥は言葉の意味を説明し始めた。

彼女の「頭悪いの?」という台詞は、無視された。

 

「あなた、この人のオチンチンを粗末だって言ってたわね。」

 

「ええ、実際粗末だし、それだけでも男として、オスとしてダメだよ?」

「何か間違ってる?」

 

「…この人のオチンチンは粗末で、あなたを満足させない。」

「対して、()()()()男性のオチンチンはとても立派で、あなたを満足させている。」

 

「そうだよ?」

「やっぱり男は、オスは、女を、メスを満足させてくれないとダメだよ。」

 

「じゃあ聞くけど。」

「粗末で女を満足させられないオチンチンがダメなら」

「凄いオチンチンでなくちゃ満足出来ないあなたのオ…肉体はどうなのかしら?」

 

「?」

「な、なんで私のカラダのことなんて聞くの?」

「粗末なオチンチンじゃ、女は満たされない!」

「そんなの常識じゃない!」

 

 

「そうかしら?」

「私もね?セックスは結構好きで、そりゃあ毎日のように励んでるのよ。」

「私の伴侶…()()()()()()()()()()()()()()けど。」

「私の肉体は、長門の情欲と情愛を受け止めて」

「毎夜毎夜、気が狂いそうなほどの悦びを感じているわ。」

 

ここで彼女は、陸奥に…陸奥さんに対して何か言い返そうとした。

けど、陸奥さんは彼女を制して話を続けた。

「あと、私の同僚にね?」

「親しくなった相手とは、誰とでも躊躇なくセックスする艦娘(おんな)がいるんだけど」

「その艦娘(かのじょ)は…本当に、誰が相手でもイケるのよね。」

「どんな男でも、どんな女でも、どんな艦娘でも、ね。」

「これって、オチンチンが凄くても粗末でも」

「それどころか、有っても無くてもイケるし、セックスを楽しめてるってことよね。」

 

「と言うことは、女がセックスで満たされるために」

「オチンチンが凄いか粗末かなんてことは、あまり関係無いってことになるわね。」

「あなたは、あなたを満たしてくれない粗末なオチンチンはダメだ、なんて言ってたけど。」

「凄いオチンチンじゃなきゃイケないあなたの肉体だって、ダメなんじゃないかしら?」

 

さらに陸奥さんは、続けた。

「あなた、この人のセックスもダメだって言ってたわね。」

「それじゃ、この人のセックスにダメ出しをするあなたのセックスはどうなの?」

「あなたとこの人が付き合って、セックスもしていた時」

「あなたはこの人を悦ばせるために、どんなことをしてたのかしら?」

 

「…な、なんで私が…」

 

「…じゃあ、あなた…ただ挿入()れさせてただけだったのね?」

 

「………。」

 

「それで?今のお相手とは…そちらの男性(かた)とはどうなのかしら?」

「そちらの男性(かた)、あなたとのセックスに満足してるかしら?」

 

「し、してるよ!してるに決まってるじゃない!」

 

「どうしてそう言いきれるのかしら?」

 

「だって、だって、この(ひと)、いつも私の中で…気持ち良く出してくれて…!」

 

「いつも中で出してくれって、って言うのはちょっと気になるけど」

「それじゃあ、あなた…そちらの男性(かた)としているときも、特に何もしてないわけね?」

 

「でも…でも…だって…」

 

「少なくとも私が知る限り、セックスってのは二人ですることよ。」

「男の人も出すもの出したら、それは気持ち良いでしょうけど」

挿入()れて、出して、気持ち良くなるだけだったら、それは一人でしてるのと変わらないわ。」

 

「…………。」

 

「この人としていたときも、そちらの男性(かた)としているときも」

「あなたは相手のために、何もしていない。」

「ただ挿入()れさせて、出させていただけ。」

「そんなあなたが、この人のセックスにダメ出しをするのは」

「…不当と言わざるを得ないわね。」

 

陸奥さんは、ここで一息置いた。

そして、彼女が何も言ってこないのを受けて、陸奥さんは話を再開した。

「あなた…そちらの男性(かた)にベッタリくっついているけれど」

「そちらの男性(かた)は、本当にあなたを大切に思っているのかしらね?」

 

「な、何を…言ってるの?」

 

「…いや、あなた、この人としていたときも、そちらの男性(かた)としているときも」

「相手を悦ばせるために、特に何もしていない。」

「ただ挿入()れさせて、中に出させているだけ。」

「ただ使われているだけ…性欲処理の道具としてね。」

 

「何勝手なこと言ってるの!」

「ね、ねえ!ちがうでしょ!そんなことないよね!?こんな艦娘の言うことなんて、デタラメだよね!?」

彼女に縋られて、男は何か言おうとしたみたいだけど…。

 

「口先だけなら何とでも言えるわ。」

男は、陸奥さんの一言で黙らされた。

 

「それにこの場合、セックスもしてるからって言うのは、何の証明にもならない。」

「そちらの男性(かた)は、ただ挿入()れて出しているだけ」

「あなたは挿入()れさせて、出されているだけ、なんだから。」

 

「ちょっと周りを見てご覧なさい?」

 

陸奥さんに促されて、彼女と男は周りを見回した。

「あなた…なかなか綺麗で可愛いけれど」

「こうして周りを見れば、あなたぐらいに綺麗で可愛い()は、何人も居るわ。」

「まあ皆が皆、体を許してくれるわけじゃないでしょうけど」

「セックスが好きで、セックスの楽しみ方をちゃんと理解してる()だって、何人も居ることでしょうね。」

「だとしたら」

「ただ挿入()れさせて、出させているだけのあなたは」

「一体いつまでそちらの男性(かた)に重宝してもらえるのかしら」

「…性欲処理の道具として、ね?」

 

「さ、行きましょうか。」

この言葉が僕に向けられた言葉だと理解するのに、一瞬だけ時間を要した。

僕は陸奥さんに手を掴まれたまま、その場を離れることになった。

 

その場を離れる時、陸奥さんは、彼女にこう言った。

「ああそうそう…。」

「確かにあなたの言う通り、あなたみたいな人に執着してるこの人も気持ち悪いけど…。」

「…人を裏切り、切り捨てておいて、新しい男に媚びて、純愛物語のヒロイン面してるあなたも」

「私から見れば充分気持ち悪いわよ。」

 

僕はそのまま、陸奥さんに手を引かれて、その場を離れた。

 

 

 

N駅の入り口まで来た所で、陸奥さんは僕から手を離した。

「えーっと…何だか変なご縁ができちゃったみたいだけど…。」

「このままどこかで90分から180分ほど、目眩く素敵な一時を過ごすのが自然な流れ…なのかしら?」

 

陸奥さんの言葉の意味を理解するのに、僕はまた一瞬の時間を要した。

一瞬遅れて言葉の意味を理解した僕は、陸奥さんに反発した。

陸奥さんのこの言葉は、何だか僕のことをあの二人と―――彼女と、傍に居たあの男と、同類と見ているように思えたからだ。

 

 

僕はあの二人みたいに、そのことばかり考えてるようなヤツじゃありません。

…バカにしないでください。

 

「あら、そう?」

「それはちょっと安心したような…残念なような。」

 

安心したような…。

…僕みたいな気持ち悪いヤツとセックスせずに済んで安心、というわけですか?

 

「あなたは確かに気持ち悪いけど、安心したのはそんな理由じゃないわ。」

「さっき、私には長門という伴侶が居ると言ったでしょう?」

「だから安心したって言ったのは、浮気せずに済んだからよ。」

 

残念なような、とも言いましたよね。

…これはどういう意味なんです?

 

「これもさっき言ったけど、私だってセックス自体は好きよ?」

「浮気せずに済んだのは安心だけど、あなたとセックス出来ないのはちょっと残念。」

「それだけのことよ。」

 

???

陸奥さんには長門さんという伴侶が居て、浮気するのは避けたいと思っていて…でも、僕とセックス出来ないこと、浮気出来ないことを残念にも思っていて…?

わからない…この陸奥さんの倫理観は、心の中は、どうなっているのか…わからない…。

 

…どちらか、で言ったら、どっちなんです?

安心してるんですか?残念に思ってるんですか?

 

「どっちかで言うと、残念に思ってるわ。」

 

残念に思ってるって…あ、あなたには長門さんという伴侶が居るんでしょう?

 

「ここであなたとセックスしたぐらいで、私と長門の絆は途切れたりしないわ。」

 

……!

 

「うちの鎮守府で、セックスは艦娘と艦娘、人間と艦娘を『結ぶ』営みなの。」

「あくまでも『結ぶ』営みであって、『縛る』営みじゃないのよ。」

「…まして、絆を『断ち切る』営みなんかでは、断じてあり得ない。」

「まあ、理解してくれとは言わないけど。」

「これがウチの鎮守府での、セックスに対する考え方、というわけよ。」

 

「あ、でもあなたと浮気して全くペナルティがないかって言うと、そうでもなくてね?」

「もし私があなたと浮気セックスして、鎮守府に帰ったとしたら」

「私は、伴侶である長門から…」

「お前は私の妻だろう…なーんて言われて」

「それこそ一晩中、長門に責め立てられて、イかされまくるでしょうね。」

 

「ウチの鎮守府には "Faites l'amour pas la guerre." っていう…掟みたいなものがあってね?」

「戦争ではなく恋をしよう、って言う意味なんだけど。」

「ウチでは揉めるぐらいならセックスをしよう、っていう風に解釈されてる。」

「だから私が浮気をしたら、私は伴侶の長門に、セックスでぶちのめされるというわけよ。」

 

「ああ、こんな話をしてたら、あなたと『浮気』出来ないのが、ますます残念に思えてきちゃったわ。」

 

 

…すると陸奥さんは、伴侶以外の相手とセックスすることを、それほど悪いことだとは思ってないんですね。

それじゃあ、どうして陸奥さんは彼女を…言葉で叩きのめしたんですか?

彼女だって、僕ではない、伴侶ではない相手とのセックスに溺れてる女なのに。

ある意味、陸奥さんとは同類であるように見えるのに。

 

「それはちょっと心外ね。」

「あの(ひと)は、別の男とのセックスに溺れて、あなたを裏切り、切り捨てたんでしょう?」

「さっきも言ったけど、セックスってのは人と人を結ぶ営みであって、人と人を引き裂く営みじゃないわ。」

「私の目には、あの(ひと)のしたことが、セックスという営みに対する冒涜に見えた。」

「だからつい、カッとなっちゃったのよね。」

 

「あのとき、もしあの(ひと)が」

「この(ひと)も、あなたも好きッ!どっちか一方なんて選べないっ!」

「二人で私を、メチャクチャにしてッ!襤褸切れになるまで輪姦(まわ)してっ!」

「私をメチャクチャにして!襤褸屑にして!どこかに捨ててちょうだいッ!」

「…とでも言っていれば、私もあの(ひと)を擁護する気になってたかもしれないけどねぇ。」

 

そう…ですか…。

 

…………。

そう言えば陸奥さん、あなたは僕のこと、気持ち悪いって思ってるんですよね。

彼女と話を始めた時もそう言ってましたし。

ついさっきも「あなたは確かに気持ち悪いけど」と言ってましたよね。

 

「ええ、そう言ったし、そう思ってもいるわ。」

 

僕が…初対面のあなたに、何でそんな風に思われなければならないんですか?

…何でそんな風に言われなければならないんですか?

 

「…ふ、ふふ…。」

 

 

「それ、とても良い質問よ。」

「聞いてくれないかなーって思ってた質問だわ。」

 

ど…どういう意味です?

 

「確かに『あなたは気持ち悪い』なんて、初対面の人に、面と向かって言うことじゃないわ。」

「でも私はあなたに、面と向かって『気持ち悪い』と言った。」

「それはね…。」

「あなたの気持ち悪さが、あなた自身を滅ぼそうとしていたからよ。」

 

僕…自身を…?

 

「今ならわかるでしょう?」

「もしあのとき、カッターナイフであの(ひと)を本当に切りつけていたら、どうなっていたか?」

「その時点で、あなたの人生は終了してたかもしれないのよ。」

 

「あなたは、自身の気持ち悪さを自覚して、その気持ち悪さを取り除かなければならない。」

「だから敢えて、私は面と向かって『あなたは気持ち悪い』と言い放ったというわけよ。」

 

そう…だったんですか…。

 

「そして幸いと言うか何と言うか」

「あなたが『気持ち悪い』原因・理由は、明らかだわ。」

「あなたが気持ち悪いのは…あんな(ひと)に執着しているから。」

「執着するに値しない(ひと)に執着しているからよ。」

 

「だとすれば、あなたから気持ち悪さを取り除くことは簡単だわ。」

「少なくとも、その方針は単純明快よ。」

 

「あんな(ひと)のことはキレイさっぱり忘れて」

「仕事なり勉学なり、趣味なりに打ち込む事ね。」

「でもやっぱり、一番良いのは…」

「…新しく、良い(ひと)を見つけることかしらね。」

 

……新しく、良いひと、を…。

 

「どうしたの?」

 

いえ…良いひとって、言われても…僕には…。

 

「え?でも今のあなたはフリーなんだから…」

「…いや…今のあなたは、女を、人を、信じられない…のね?」

 

…………。

 

「ごめんなさい。」

「私も、ちょっと考えが浅かったわ…。」

「その感情は確かに…私と90分から180分ほどステキな一時を過ごしたぐらいでは、解けそうにないわね…。」

 

「それじゃあ…」

「これからお休みの日には、N駅地下のA書店か、少し離れたJ書店に行くようになさい。」

「何なら、今からでも行ってきなさい。」

「そこで私の同僚、黒鉄武蔵に会うと良いわ。」

「彼女、休みの日は大体そこに居るから。」

 

武蔵…さんに?どうしてですか?

って言うか、その黒鉄武蔵さんって、どういう艦娘(ひと)なんですか?

 

「彼女…黒鉄武蔵は、さっき話に出て来た『誰とでも寝る』艦娘よ。」

 

!ぼ、僕は…そんなこと…望んでません!

 

「確かに武蔵は『誰とでも寝る』艦娘だけど、それだけの艦娘じゃないわよ。」

「とにかく一度武蔵に会って、話をすることだけでも奨めておくわ。」

「それで話をして、話の流れで()()ことになったら…まあ、その時は流れに身を委ねなさい。」

「今のあなたには」

「男としての自信を取り戻すこと」

「女というものの良さを思い出すこと」

「そして何より、人と交わり、人を信じること必要だわ。」

 

陸奥さんは、僕が武蔵さんに会うことを強く強く奨めてきた。

 

…そして僕は陸奥さんに押し切られる形で、先ずはA書店に足を向けた…。


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