マッドネス・シンドローム-異能感染症- 作:あかつき まりあ
幕張 透
憑かれる男③
《異能侵食》
数刻後……
「きゃあっ!?」
「んわっ!?」
……一度は、彼女を画面に押し込んだものの、彼女はバネの様に飛び出し、こちら側に飛び出して来てしまったのだ
彼女は俺に抱えられる様な飛び出して来た事もあり、俺は後ろにあったベッドに飛び込んだ為、大して怪我をする事は無かった
彼女の身体は冷たく、とても生きている人間の感触ではないものの、質量はあるのか、触れた感触と重さを感じさせる
長い黒髪に、赤い瞳、白いワンピースの下には全体的に細く華奢な身体があるのが分かり、それに見合わないくらいには大きな胸、そこから白い肌が見えた
驚く事に、顔色そのものは至って健康的とも言える程に綺麗で、顔立ちも整っている、一般的に言われる美女と言っても差し支えは無い
「うぅ……す、すみません……」
声は見た目に反してやや幼いと言った所か、それにしてもここまで平静を保てている自分を疑う
「いや……早く退いてくれ」
俺がそう言うと、彼女は慌てて退き、重力を無視する様にふわりとその場に浮き上がった、彼女の服は無重力空間にある様な、不思議な揺らめきを見せる
それを見て改めて俺は、彼女が人間では無い異形の者である事を理解する
俺はそれをまじまじと見ながら、ベッドの上に座り、今、自分の身に起きている事を考え直す
まず、原因としてはあのSDカード、そして、それの中に入っていた動画のデータだ、それを開いた事で彼女がこちらに飛び出して来た……
正直な話、訳が分からないのが本音だ
ここで疑わしくなってくるのは、このSDカードを渡して来た土田部長、彼にそれを渡した社長だろう
何故これを俺に手渡したのか、何の為にそうする必要があったのか……
「あ、あのぅ……そんなに見詰めないで欲しいです……」
……彼女は頬を赤らめ、ふわふわと浮かんだまま顔を隠している
「別に他意があって見ている訳じゃない、俺が理解出来る範囲を越える状況が立て続けに起きてるせいで、思考が追い付かないだけだ
そもそも、お前は何者だ?
画面から人が飛び出てくるなんてあるかよ、普通じゃない」
「……そうでしょうね、確かに普通の者ではないです
私は佐倉 香苗(さくら かなえ)、おおよそ一般的に言われるモノの中の名詞で表すのなら、亡霊、と、呼ばれるモノと言って良いんじゃないでしょうか?」
「妙な言い回しだな」
「そうもなりますよー、私だってはっきりと理解している訳じゃ無いんです、話せば長くなりますが
……お聞きになります?」
彼女は薄く笑みを浮かべ、指を立てると、俺が転んだ際に一緒に倒れた椅子を起き上がらせ、それに座った
今まで、ふわふわと揺れていた服も素直に重力に従い、揺らめきを無くし、椅子のクッションの凹みが見える、彼女に質量……重さがある事を表しているのだろうか
気味の悪さを通り越して、もはや興味深い