~前書き~
いよいよ、850年!
エレン・ミカサ・アルミン、原作におけるキーメンバーの登場です。
↓それでは、本編へどうぞ↓
#22 出会い④:エレン・イェーガー
___850年。
エルヴィン暗殺事件からは3年の月日が流れたが、この間、特段大きな事件は起こらなかった。
ウォール・マリア陥落以降、調査兵団では4年で20回以上もの壁外調査を行い、行路の開拓は残り3割のところまできていた。
ウォール・マリア奪還まで、あと一歩__そんな人類復興の兆しが見えかけたところで、再び悪夢のような“大事件”が巻き起こる。
***
___【第56回壁外調査】
いつものようにトロスト区から出発し、しばらく進んだところにある街跡へ向かった調査兵団は、
「エルヴィン!何かおかしい!!……いつもならこの拠点で足止めは喰らわない!何で巨人がこんなにも…!?」
ハンジの叫びを聞いたエルヴィンは、ある考えが脳裏に浮かんだ。
(建物が入り組んでいてわかりづらいが、ほとんどの巨人が
「退却だ!!これより、トロスト区へ帰還する!巨人たちが一斉に北上を始めた!5年前と同様、壁が破壊された可能性がある!!」
その言葉に顔を青ざめる兵士たち__エルヴィンは立て続けに指示を出す。
「この拠点は放棄し、街の手前で陣形を組み直す!……総員、直ちに撤退せよ!!」
エルヴィンの声から発せられる緊迫感は瞬く間に広がっていき、兵士たちは足元に火がついたように次々とその場を飛び立って行ったのだった。
**
巨人たちの後を追うように、トロスト区へと猛突進する調査兵団。
だが、やっとのことでウォール・ローゼの壁を捉えたときには、
「…そ、そんな!?」
トロスト区の外門に目を凝らしたカイルが叫ぶ。
「団長!!読み通り、本当にトロスト区の外門が
「!? やはりか……カイル、外門の穴から中の様子は見えるか?」
「内門までは見通せませんが……立体機動で巨人と
「あぁ。兵士がトロスト区の
「了解だ!……ミケ!カイル!お前らの班もついてこい!!」
「「 了解!! 」」
リヴァイに続き、ミケとカイルの班が先頭の陣から飛び抜けていく。
**
先遣隊がトロスト区の外門を目前に迎えた辺りで、カイルがまた叫ぶ。
「兵長!巨人がさらに4体、中へ入りました!!」
「あぁ、見えてた。壁をくぐったら即戦闘だろうな……ミケ班は、壁の外で穴に近づく巨人どもの相手だ!後続の兵士たちが壁をくぐるための道を確保しろ!!……カイル班は俺の班と壁を抜ける!内側の穴付近は任せたぞ!!」
「「 了解!! 」」
リヴァイの指示通りにミケ班が外壁に広がりかけ、カイル班が後ろについた時…
…ズシン……ズシン…
穴の向こう側から大きな足音が聞こえて来た。
よく見るとそこには、大きな
「兵長!巨人が一体、こちらへ向かって来ています!!あれは……岩!?」
次の瞬間__
ドオォォォオォオォ!……ビシッ!!
突然、目の前の穴が岩で塞がれた。
一同は足止めを喰らう。
「チッ…どうなってやがる!? 全員、立体機動に移れ!壁を登って中に入る!!」
リヴァイ班とカイル班が急いで壁を駆け上がった、ちょうどその時…
パシュッ…!
目の前に
その出元を見下ろすと、壁の穴付近に近寄る2体の巨人が__カイルがそれに気づいた時には、既にリヴァイがもの凄い速さで降下していた。
そして…
ヒュンッ……ドッ!……ズバッ!!
討ち取った巨人の上に着地したリヴァイが振り返ると、そこには訓練兵と思しき若い兵士が数名と駐屯兵が一人__さらにその奥には、
リヴァイが尋ねる。
「オイ、ガキ共……これは……どういう状況だ?」
***
___『トロスト区襲撃事件』
今回の出来事は、のちにそう呼ばれるようになった。
ピクシス司令に話を聞くと、調査兵団がトロスト区へ駆けつけた時にはすでに、事件は片が付いていたとのこと。
その大きな要因として挙げられるのが__
驚くべき点は3つある。
まず一つは、『巨人を喰らう巨人』の正体が、
前回と同様、突如出現した超大型巨人によって再び壁が破られ、トロスト区内には大量の巨人が押し寄せた。
現場に偶然居合わせた104期訓練兵を含め、トロスト区駐屯兵団の工兵部隊を中心に構成した臨時軍隊で迎撃していたところ、人間を味方する巨人が現れたというのだ。
その巨人のうなじから出てきたのが104期訓練兵の一人、“エレン・イェーガー”なのである。
次に、エレンが有する巨人の力を利用して外門の穴を塞ぐという『トロスト区奪還作戦』の立案に関わったのが、同じく104期訓練兵の“アルミン・アルレルト”だという点も驚愕だ。
トロスト区には元々、数メートルにも及ぶ巨大な岩が存在した。
『超大型巨人出現時』の対策として、破壊された壁をその岩で塞いで栓をするという案があったが、そもそも人の力では半分が地中に埋まっている岩を掘り返すこともできないでいた。
では、
そこに着目したアルミンは、巨人化したエレンに
そして、それらの作戦を遂行するために必要な『住民の避難誘導』、『本部からのガス補給作業』、『エレン巨人に群がる巨人の掃討』など補助的な工程のほとんどに、104期訓練兵の首席“ミカサ・アッカーマン”の存在が大きく作用した点が3つ目である。
ベテラン顔負けのミカサの活躍ぶりには誰もが目を引いたが、カイルが驚いたのは
しかし、何よりも驚くべきは、やはり『人間が
“人間”が先か、“巨人”が先か__議論されるべき点はいくつかあるが、非常事態の最中ではそう表現するしかなかった。
また、何故『巨人化の力を有しているのか』について、エレン自身も
だが、当の本人は先の作戦により昏睡状態にあったため、それ以上の情報の引き出しはお預けとなった。
その後、兵団上層部に回収されたエレンの身柄は、ウォール・シーナに存在する兵団所有の『審議所』へ運ばれた。
そこでエレンは、地下牢に幽閉されることになったのだ。
***
___3日後。
エルヴィンはリヴァイとカイルの2人を引き連れ、ウォール・シーナの審議所を訪れた。
エレンの身柄を預けてからというもの、トロスト区の“後始末”を余儀なくされた調査兵団は、駐屯兵団と協力して閉じ込めた巨人の掃討戦に従事していた。
壁上固定砲は絶えず火を噴き続け、取りこぼした巨人は調査兵が立体機動で斬撃を浴びせる__そうして、殲滅までには丸一日の労力が費やされたのだ。
その際、巨人2体の生け捕りに成功し、その管理はハンジに任せることになった。
そして、エレンが昏睡状態から目覚めたことにより、ようやく接触を許可されたのだ。
**
地下牢の檻の前に到着すると、まずエルヴィンが口を開いた。
「私は調査兵団で団長を務めている、エルヴィン・スミスだ。こちらは兵士長のリヴァイ。それから分隊長のカイル・シャルマンだ」
「ど、どうも…」
檻の中では両手をベッドの脇に鎖で繋がれた状態のエレンが、上体を起こしてこちらを見ている。
この時、カイルはエレンと一瞬だけ目が合った。
(この子が巨人化の力を有する『エレン・イェーガー』……外見だけで見ると、ごく
カイルから目を逸らしたエレンは、再び怪訝そうな瞳でエルヴィンを見つめる。
エルヴィンはこの3日間に起こった出来事を説明し終えると、
それは、エレンの同期である2名の訓練兵、アルミン・アルレルトとミカサ・アッカーマンを事情聴取した際に得た情報であった。
エレンの“記憶”では、巨人化に関係のありそうな事柄は二つ。
一つ、父親であるグリシャ・イェーガー医師によって、何やら体に
二つ、同じく父親から『必ず地下室へ行くように』と“鍵”を託されたこと。
エルヴィンはこの情報から、グリシャ氏の言う『地下室』に人類の未来が託されていると踏んだのだ。
だが、エレンの生家があるのはシガンシナ区__そう、
4年かけて積み上げてきた行路を台無しにされた今、重要な秘密が隠されているであろう『地下室』に辿り着くためには、やはりエレンの巨人の力が必要不可欠と言える。
エルヴィンはそう語ると、エレン自身の意志を確認した。
「君の意志が“鍵”だ。……この絶望から人類を救い出す“鍵”なんだ」
「お…俺が…」
エレンは俯く__無理もない。人類存亡の命運が年端もいかない少年に託されたのだから。
しかし、リヴァイは容赦なく答えを急かす。
「オイ…さっさと答えろ、グズ野郎。お前がしたいことは何だ?」
その問いに、体を小刻みに震わせながら顔を上げるエレン__この時、同情心を抱きかけていたカイルの内心では、手のひらを返すように警戒心が顔を覗かせた。
ギラついたエレンの瞳はまるで、憎しみと高揚が入り混じった複雑な感情が渦巻いているようだった。
さらにその出で立ちからは、異様なまでの“信念”が浮き彫りになっている。
カイルが少し身構えていると、エレンは凄みがかった声で一言だけ発した。
「俺は、調査兵団に入って……とにかく巨人を
***
___その後。
エレンが放った『剝き出しの覚悟』を認めたリヴァイが“管理”を受け持つことを了承したことで、エルヴィンも兵団上層部へ持ち掛ける案が浮かんだ。
地下牢に幽閉されたままのエレンには『もうしばらく辛抱してくれ』とだけ言い残し、3人はその場を後にしたのだ。
そして、調査兵団本部へ戻るための馬車を準備していた時のこと。
物資をわんさかと乗せた荷車がカイルたちの横を通りすがったかと思うと、そこに乗っていた商人の一人が此方へ駆け寄ってきたのだ。
「エル…ヴィン?………エルヴィンじゃないか!偶然だなぁ!!」
「!?……ロナウか、久しぶりだな。何故ここに?」
「何故って、お前……
(え!? エルヴィンさんの故郷!?……確か、オイータ地方の…)
2人の会話が気になったカイルは、
「武器が必要とされるほど俺たちの商売は繁盛するってんだ、皮肉なもんだよな。俺たちの街ほど“平和”から煙たがられる街はないさ」
「あぁ、そうだったな」
「…まだ、
「すまない。最近は特に忙しいものでな」
「そう言えば聞いたぞ!お前、団長やってるんだってな!? しばらく手紙の一つも寄こさないで、何してるかと思った…ら……」
エルヴィンに“ロナウ”と呼ばれた男は、それまで興奮気味に話をしていたが、何故か突然口を閉じた。
その視線はエルヴィンではなく、馬車の御者席に腰掛けるカイルに向いていたのだ。
かなり驚いた様子のロナウは、口元を手で押さえながら声を漏らす。
「き、君は…まさか!?……
自身の名前を呼ばれた気がしたカイルは、2人に顔を向ける__だが、エルヴィンの
(?……気のせいか)
また馬に目を向け直したカイルが手綱をたぐり寄せていると、エルヴィンが声をかけてきた。
「すまないが、少し用事ができた。本部へは先に戻っていてくれ」
カイルはまた横を確認してみたが、ロナウという男の姿はすでになく、どうやら荷車に戻ったようだ。
「…ご友人でしょうか?」
「あぁ、そんなところだ」
「そうでしたか。こちらに構わず、ごゆっくりなさってください」
そう言ってカイルはエルヴィンに小さく敬礼すると、リヴァイを乗せた馬車を発車させたのだった。
**
しばらく馬車を進めたところで、カイルは身を乗り出すようにして後ろを振り返る。
(エルヴィンさんのご友人って、どんな方なんだろう? ここからなら
ロナウという人物のことがどうしても気になっていたのだ。
だが、エレンの印象について尋ねてきたリヴァイによって、それは妨げられてしまう。
「カイル。お前はどう感じた? ……あの巨人のガキだ」
「あ、えっと……そうですね。恥ずかしながら、少し
「同感だ。あの眼を見たとき、泥を被ったお前を思い出した。まさか、
「ご冗談を……と言いたいところですが、俺の生い立ちでは完全に否定もできませんね」
「だが、あいつの眼はお前と違って“化け物”のソレだ。俺にはわかる……あのガキの面倒には手を焼きそうだ」
「ははっ、兵長の勘はよく当たりますからね。……
「候補はいる。お前の班からもいくらか借りたい…」
「オルオとペトラでしょうか?」
「…そうだ」
「わかりました。本部に戻ったら2人に話しておきます」
「あぁ、助かる」
そうして、会話が一区切りつく頃には、審議所に停まっていた荷車はどこかへ消えてしまっていたのだった。
***
___数日後。
審議所にて、『巨人化の力を有する少年』エレン・イェーガーの処遇に関する兵法会議が開かれた。
身柄の引き受けに手を挙げたのは【憲兵団】と【調査兵団】である。
まず、【憲兵団】の師団長ナイル・ドークからの提案はこうだ。
『エレンの人体を徹底的に調べ上げたのち、速やかに処分すべき』
その結論に至った主な要因としては、『巨人化できる人間』という存在が壁内世界を政治的に分断するほどの影響力を持つためだ。
_今回の襲撃を受けても尚、壁外への不干渉を貫く中央の有力者たち。
_今回の襲撃を受け、エレンを英雄視するウォール・ローゼの民や商会たち。
今や壁内世界は、この2つの派閥によって領土を巡る内乱が起きかねない状況だというのがナイルの見解である。
これらの実害の大きさを考慮した結果、せめてできる限りの情報を引き出したのち、エレンには我々人類の英霊となってもらおうというのだ。
次に、【調査兵団】第13代団長エルヴィン・スミスからの提案はこうだ。
『エレンを正式な団員として迎え入れ、巨人の力を利用してウォール・マリアを奪還する』
……以上。
両者の意見は拮抗する。
そんな中、ウォール教と呼ばれる
弱気で逃げ腰な意見しか並べない保守派の小心者共に、苛立ち始めるエレン__ついには、声を張り上げて異議を唱えてしまう。
「この、
すると突然、張りつめた空気を切り裂くような鈍い音が響く。
バキッ!!
その音の正体は、身動きの取れないエレンを蹴りつけるリヴァイの足技だった。
両手を後ろで縛りつけられているエレンは、リヴァイの持論である“躾”をただ受け続けるしかなかった。
その瞳には、次第に
エレンの狂気的な一面を敢えて前面に引き出すことによって、『腰抜け共』には手に負えないことを目で見てわからせようというのだ。
そして、エルヴィンはここぞとばかりに決定打となる“切り札”を切る。
「我々は次の壁外調査で、エレンが人類にとって
議論は尽くされた__こうして、エレンの身柄は無事、調査兵団へ委ねられることとなったのだ。
**
兵法会議が終わり、ようやくエレンの拘束具が外された。
安心した様子のエレンだったが、目眩でも起こったのか、立ち上がった拍子に体がよろけてしまう。
それに気づいたカイルが、咄嗟にエレンの体を支えた時…
バチッ…!
「え…?」
(な、なんだ? 今の感覚は……目の前がチカッと
カイルは少し驚きながらエレンの顔を覗き込む__すると、エレンもまた、不思議そうな顔で此方を見ていたのだ。
近くで目が合った瞬間、カイルは
「君はもしや……あの時の子どもか!? 5年前の事件の日、シガンシナ区に帰還した調査兵団を
「木箱?……あ、そういえば……よく、覚えてますね」
「あぁ、俺は目が良いんだ」
「目が…?」
2人は少しの間見つめ合う__その間、カイルはエレンの目元を特にじっくり観察していた。
(…近くで見ると、案外
黙ったままジロジロと目を見つめてくるカイルに、エレンは少し戸惑った。
「あ、あの……何か?」
「あぁ、すまない。少し考え事を………エレン。君には兄弟がいたりするか?」
「いえ、俺は一人っ子ですが……血のつながっていない
「あ、そうだ!俺はその子に用があったんだ!」
そう言ってカイルはエレンの話を遮ると、周りを見渡し始める。
そして、床に落ちている“何か”を拾おうとしていたハンジに声をかけたのだ。
「ハンジさん!すみませんが、エレンを頼みます!」
「へ?……うわっと!? 急に何なんだ……ってカイル、どこ行くの!? 君はまたそうやって…」
だが、無理やりエレンを託したカイルはハンジの制止を聞くことなく、駆け足で審議所の部屋を出て行ってしまったのだ。
すると、その後ろ姿を目で追っていたエレンがぽつりとつぶやく。
「……
**
審議所を出て目の前の廊下をひた走っていたカイルは、階段の下でアルミンと一緒に歩くミカサの姿を捉えた。
「アッカーマン訓練兵!」
ミカサは突然の呼び声に肩をびくっとさせて振り返る。
「…はい。何でしょう?」
「急に呼び止めてしまってすまない。君に一つ、聞きたいことがあるんだ」
「えっと、貴方は…?」
「カイル・シャルマンだ。調査兵団で分隊長を務めている」
「…どうも」
「俺が聞きたいのは、君の姓『アッカーマン』に関することなんだが…」
期待の眼差しを向けたカイルは、少し興奮気味に質問を投げかける。
「『ジェイク・アッカーマン』という人物を知らないか?」
「ジェイク……さぁ、存じ上げません」
「それなら『本屋のジャック』*1は!?」
カイルの必死さに、ミカサも少しは考える素振りを見せたが、答えはハズレだった。
「私の家族は人里離れた山奥で暮らしていました……ので、知り合いはほとんどいません。それに、父の一族『アッカーマン』は
「!?…やはりそうか……俺が探してる人も、それが理由で行方がわからないんだ。まさか、君のお父さんが亡くなった理由も…」
「どうでしょう……当時のことは、その……よく覚えていません」
「あ……すまない、辛いことを思い出させてしまって」
「…いえ。それより、エレンはっ……エレン・イェーガーは無事でしょうか!?」
今度はミカサの方が切羽詰まった表情でカイルに詰め寄った。
「心配ない。あの後すぐに調査兵団へ引き渡されたよ。今頃、控え室で団長たちと今後の話をしているだろう……エレンは晴れて、俺たちの仲間だ。彼は初めて会った時から調査兵団への入団を希望してくれていたが、以前から彼は…」
「仲間だったら、何をしても許されるとお考えでしょうか? 先程の兵法会議では、一方的に痛ぶって
カイルの話を遮って意見を述べるミカサ__すると、隣にいたアルミンがそれを窘める。
「ミカサ!上官に向かって、その口の聞き方はっ…」
「だって!あの
それを聞いたカイルは思わず吹き出してしまう。
「チ……ははっ、君は怖いもの知らずだな」
「わ、笑い事ではっ…」
ミカサが反論しかけると、カイルは勢いよく首を垂れた。
「許してくれとは言わない。けど、
「か、顔を上げてください!僕たちも勿論、“意図”は理解しています!……だよね? ミカサ」
慌てた様子のアルミンの隣では、ミカサがマフラーをぎゅっと握りしめている。
「意図は理解…しています。ですが、それでもあのチ…兵士長の演出は、行き過ぎていたと思います」
「ミカサ…!」
ミカサの声色から家族を案ずるひたむきな想いを感じ取ったカイルは、真剣な表情で顔を上げる。
「君がそう思う気持ちもわかるよ。確かに兵長は小柄で粗暴かもしれない。一見すると、人の心を持たない鬼だって思う人もいるだろう。でも、実際は違う……リヴァイ兵士長は、誰よりも強く、そして、誰よりも“寛大な心”を持つ方なんだ。まぁ、あんな姿を披露した後では、説得力の欠片もないだろうけど……あれを行き過ぎていたと捉えるか、
「っ……」
ミカサはまだ納得のいかない表情をしていたが、それ以上意見を述べることはなかった。
すると、今度はアルミンが不安げな瞳でカイルに問う。
「あの、カイル分隊長……エレンはこれからどうなるのでしょうか?」
「エレンは兵長の班に配属されることになっている。我々調査兵団は、次の壁外調査で何かしらの“成果”を残さないといけない……正直、出たとこ勝負だ。その結果次第で、エレンの生死を分けるだろう」
カイルの言葉で2人は顔を曇らせる__その反応に、カイルはなるべく声を和らげて続けた。
「だけど、信じてほしい・・・…エルヴィン団長はとにかく“賭け”に強い。どんな絶壁の淵に立たされようと、目の前に立ちはだかる壁をものともしないようなお方だ。『安全』とまでは言い切れないが、団長の元にいれば『エレンが
「!?…ぼ、僕たちはまだ、配属兵科の希望を問われていませんが…」
「目を見ればわかる……2人とも、彼を守りたいんだろ?」
2人は図星だと言わんばかりに目を見開いていたが、顔を見合わせると、声に力を込めて答えた。
「「 はい! 」」
「うん、良い表情だ。2人とも、また会えるのを楽しみにしてるよ。それじゃあ…」
そう言ってカイルは2人に軽く手を振ると、エルヴィンたちのいる控室へと小走りで向かったのだった。
=====
それから数日後に、また『新たな事件』が発生する。
だが、それが
=====
***
___エレンを調査兵団へ迎え入れた日の晩。
「…うぅ………くっ……」
寝床についたカイルは、酷い“悪夢”にうなされていた。
小屋のような建物の中で、血まみれになった小太りの男の上に馬乗りの状態__右下に目をやると、小さなその手にはナイフが握られていた。
(こ…れは?……俺が、殺したのか!?……それにこの男、どこかで
ふと、人の気配に目を向けると、小屋の淵に放心状態で横たわっている少女が一人。
(誰だろう……面影がある。ついさっき見たような気が…)
ブンッ…
突然、場面が切り替わった。
胃が押し上げられるようなふわっとした浮遊感__まるで、だだっ広い空間に浮かんでいるような感覚だ。
その時、カイルの顔の横を何かが通り過ぎた。
(鳥!?……俺は、空にいるのか…?)
咄嗟に真下を見るも、蒸気のような
微かに隙間から覗いた景色は、
(これは、何だ?……俺が見たものじゃない……違う!!)
その光景に只ならぬ恐怖を感じた瞬間、ようやく目が覚める。
…ガバッ!
ベッドから飛び起きると、酷い頭痛に見舞われているのがわかった。
カイルはこめかみを押さえながら、息も絶え絶えにつぶやく。
「ハァ…ハァ……これは、一体…」
…
―【 続く 】ー
〜後書き〜
『審議所でハンジが何を拾っていたかは、皆まで言うまい…』
…どうも、著者です(´-ω-`)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
原作の第5巻辺りまで話が進みました。
この物語はカイルの視点で話が進みますので、トロスト区襲撃事件の内容は飛ばすことに…(T ^ T)
本当は書きたかった……ミカサの咆哮『何としてでも生きる!』や、アルミンの決死の覚悟『戦術価値を説きます!』や、ピクシス司令の大演説『ここで死んでくれ!』……これらのシーンめちゃくちゃ好きですッ!!
しかし、何とか幼馴染3人組は初回で登場させられたので、著者としては安心しています。
さて!
今回はエレンとカイルに共通点があることや接触時の出来事から“何か”を匂わせてあります。
そして、見ちゃいましたね……『夢』。
(前回の後書きで出したヒントをこれでもかと乱用する暴挙)
エレンとカイルの間にはどんなつながりがあるのか…
今後の話をお楽しみください!
◼︎次回予告:『#23 君には何が見えるか』
【第57回壁外調査】へ向けた前段階の話です!
原作にはない『作戦会議』の様子を入れ込んでいます(´-ω-`)
~おまけ~
エルヴィンの出身地(設定)に関する紹介記事を載せておきます。
https://note.com/singeki_satory/n/n6ac115f96919
◎記事:オイータ地方ヒタッシ山脈