〜前書き〜
ここから【女型の巨人編】が3話続きます。
今回の話は原作沿いで、第25~28話を描いています。
『何も捨てることができない人には、何も変えることはできないだろう』
アルミンの名台詞やエレンの選択などからタイトルを考えました。
↓それでは、本編へどうぞ↓
#24 女型の巨人①:取捨選択
【捕獲作戦】の本筋は単純明解である。
まずは、敵の狙いであるエレンを連れたリヴァイ班が囮となり、捕獲地点まで敵をおびき寄せる。
そして、敵が捕獲圏内に入ったところで、ハンジが開発した『対特定目標拘束兵器』の罠にかけるというものだ。
本作戦における『成功の鍵』は二つ。
特に重要なのは、リヴァイ班が捕獲地点にまで
途中で敵に追いつかれてしまい応戦を要すれば、捕獲地点への自然な誘導は困難を極める。
目標との距離感によって応戦の判断はリヴァイに委ねられているが、少しでも成功率を上げるため、後方部隊には作戦を耳打ちした援護班を配置している。
次に重要なのは、獲物を
捕獲兵器は可動式ではないため、敵に気付かれることなく捕獲地点まで誘い込んで発射するという“急襲”が基本となる。
つまり、この一撃に
**
当初の作戦通り、巨大樹の森に入った『指令班』と『荷馬車班』は森の奥で拘束具の設置を急いだ。
兵士たちはそれぞれの持ち場につき、迎撃の準備に取り掛かっている。
敵を迎え撃つ真正面の木の上には、エルヴィンとカイルの姿があった。
少しでも拘束具の
「目標確認!伝令兵の報告通り、『女型の巨人』です!!」
誰よりも早く敵の姿を捉え叫んだのは、他でもない__カイルだ。
「目標はリヴァイ班のすぐ後ろにいます!距離は……到達までおよそ2分!!」
瞬時に全神経を眼に集中させたカイルは、目標との距離を測ると、さらに『女型の巨人』の体格まで計測し出した。
「体高、14メートル!少し前屈みになって走っています!……膝の高さ、3メートル!腰の高さ、6メートル!肩までは……10メートルです!!」
声を張り上げて数値を伝えるカイル__実は、この日のために、遠くから接近してくる目標の体高や胴・脚の長さなどを目測で見極める訓練を積んでいたのだ。
すると、その数値を聞いたハンジが捕獲部隊に指示を出す。
「聞いたか!? すぐに射出角度を調整しろ!予備の拘束具は訓練通り、急な姿勢変動に対応できるよう、上下1メートルずつズラしておけ!!」
「「 はっ! 」」
捕獲部隊の兵士たちは急いで拘束具の調整にかかった。
その様子を木の上から眺めるエルヴィンは、気を引き締めた表情でカイルに問う。
「リヴァイ班はここまで辿り着けそうか?」
「目標はかなり接近しています……が、援護班が身を挺してくれているおかげで、なんとか引き離せているようです。何より……兵長は
「…そうか」
その時、カイルの視線の先で、また援護班の一人が女型の巨人の手にかかってしまう。
ブチッ……バチャッ!!
ワイヤーを引っこ抜かれそのまま木の幹に押し付けられた兵士は、なんと__第5分隊の班長の一人、セトだった。
「そ…んな…!?」
カイルは思わず目を背けそうになる。
(耐えろ……犠牲は覚悟したはずだ!!)
すると、その後ろからまた一人__今度は、ヘイターが女型の巨人へと向かっていく。
「よくも……よくもセトをやりやがったな!このクソ女型ぁぁ!!」
その表情は憎しみに満ち溢れていた。
「師匠の元へは行かせない!絶対に!!」
ヘイターは女型の目の前を横切って注意を逸らしたり、局所への斬撃でダメージを与えたりして、何とか追跡の手を緩めさせようと奮闘している。
その甲斐あってか、リヴァイ班と女型の距離をまた少し引き離すことができた。
カイルはヘイターの健闘を無駄にしまいと再び目を凝らし、距離を測る。
「到達まで……およそ30秒!!」
「総員、構えろ!敵に悟られないよう、しっかりと身を隠せ!!」
ハンジの号令で捕獲部隊が身構え出した、次の瞬間…
グチャァァッ…!!
いつの間にか女型の手中に収まっていたヘイターが、そのまま巨大樹の幹に叩きつけられてしまったのだ。
「あぁっ…!」
カイルの口から小さな悲鳴がこぼれ落ちる。
地に堕ちていくヘイターの身体は大きく抉れ、見る影もないほどに原型を留めていなかった。
「くっ…(耐えろ……耐えろ!!)」
必死に落ち着きを取り戻そうと四苦八苦していたカイルだったが、その努力は必要なかった。
何故なら…
…ドッ!
女型の巨人が突如として、走る速度を上げたからだ。
「なっ!? 目標、加速します!……ハンジさん!!」
「全拘束具を1メートルずつ下げろ!!」
すかさず指示を出すハンジ__エルヴィンは落ち着いた声色でカイルを促す。
「カイル……
カイルは無言で頷きながら持てるすべての力を眼に集中させた。
女型は猛スピードで此方へ迫って来ている__リヴァイ班は全速力で駆け抜けているが、もはや捕まるか逃げ切れるかの瀬戸際だ。
そして、エレンを捕まえようと女型が手を伸ばした、その時…
「……今です!」
「撃て!!」
エルヴィンの号令を受け、全方位に散りばめられた拘束兵器が一斉に火を吹く。
ドッ…ズドドドドドドドッ!!!
爆発的な速度で飛び出した無数の
女型は罠に気づいた瞬間に
リヴァイが捕獲地点から少し進んだ先で、自分の班にエレンを適切な距離で隠すよう指示を出している頃__ハンジは罠にかかった女型の体めがけて、さらに『関節用固定具』を打ち付けた。
こうして、調査兵団は見事に女型の巨人の“生け捕り”に成功したのだ。
**
一寸たりとも動けなくなった女型の頭上の枝では、エルヴィンとカイルがその様子を見下ろしている。
そこへ、リヴァイが立体機動で駆けつけた。
「動きは止まったようだな」
「まだ油断はできない。しかし、よくこのポイントまで誘導してくれた」
「後列の班が命を賭して戦ってくれたお陰で、時間が稼げた。あれがなければ不可能だった……カイル、これはお前の班の功績だ」
名前を呼ばれたカイルは目元を見られぬよう俯きながら答える。
「いえ、お礼を言うならセトとヘイターに……あの2人は最期に兵長のお役に立てたこと、きっと喜んでいます」
「…あぁ、だといいな」
そう言って顔をしかめたリヴァイは女型を睨みつける。
「彼らのお陰でこいつのうなじの中にいるヤツと会える……中で小便漏らしてねぇといいんだが」
**
しかし、問題はここからだった。
捕らえた女型のうなじから“本体”を取り出そうにも、それが一向に叶わないのだ。
その原因は、女型の特性にある__なんと、女型も鎧の巨人と似通った『硬質な皮膚』を
瞬時に生成される硬質な皮膚に持続性はないようだが、ミケとリヴァイによる渾身の斬撃を防ぐには充分な“盾”の役割を成す。
立体機動の白刃攻撃では太刀打ちできないと見切ったエルヴィンは、爆撃部隊を呼びつけ発破の準備を取らせた。
一度、手首を吹き飛ばそうというのだが、指示を受けた兵士たちが発破の準備に取り掛かろうとした時__女型に
『ぎぃやああぁぁああぁぁああぁ!!』
突然、断末魔のような叫びを吐き散らしたのだ。
突き刺さるような轟音に耳を塞ぐ兵士たち__カイルも突然のことに驚きつつも、怪しい動きがないかと注意深く見張る。
程なくして、女型がパタリと“叫び”を止めると、何かの異変に気づいたミケが青ざめた表情でエルヴィンの元へ駆け寄ってきた。
「エルヴィン、匂うぞ!!……全方位から多数!
その報告にカイルも慌てて辺りを見渡すと、森の四方八方から続々とこちらへ向かってくる巨人たちの姿が目に入った。
「 まさか、こんなことが!? ダメだ、木々が邪魔で
カイルは訴えかけるような目つきでエルヴィンを見る__すると、エルヴィンは女型の“策略”に気づいたのか、全体へ迎撃の指示を出した。
「全員戦闘開始!女型の巨人を
だが、巨人の大群の急襲には手も足も出ず、女型に群がる巨人たちを牽制することは叶わなかった。
仕方なく兵士たちを一時退避させるエルヴィン__呆気に取られた兵士たちはその場に立ち尽くし、女型が他の巨人たちに捕食されていく様をただ眺めることしかできなかった。
敵にはすべてを捨て去る覚悟があった__敗因はそれを見抜けなかったことだろう。
そして、エルヴィンはとうとう『撤退命令』を出す。
「総員撤退!巨人達が女型の巨人の残骸に集中している内に馬に移れ!荷馬車は全てここに置いていく!……巨大樹の森西方向に集結し、陣形を再展開!カラネス区へ帰還せよ!!」
大損害に対して
**
撤退命令を聞いた一同はその事実を受け入れ、苦虫を噛み潰したかのような表情で騎馬に移る。
カイルは受け入れ難い惨状に頭が真っ白になっていた。
(ヘイター、セト、皆……君たちは一体、
眩暈がする__カイルは木の枝に刃を差し込み、ぐらつく体を支えながら目頭を抑えた。
そこにエルヴィンが問いかける。
「カイル、まだ眼は使えそうか?」
カイルは何とか声を絞り出す。
「…はい、問題…ありません」
「死骸の悪臭でミケの鼻が効かなくなった。
「!?」
信じ難いといった具合に目を見開くカイル__恐る恐るエルヴィンの顔を見上げながらその“真意”を確かめる。
「つまり、まだ
「確信は無い。だが、
それを聞いたカイルは反射的に、女型が現れた方角を振り返った__木の幹には儚く散って行った兵士たちの血がこびりつき、まるで道標のように連なっている。
カイルはその光景に顔をしかめつつも、気持ちを入れ替えるように背筋をしゃんと伸ばした。
「わかりました。貴方の判断を信じましょう」
続くエルヴィンの命令で
そうして、2人は急いで『リヴァイ班』を探しに向かったのだった。
***
___その後。
巨大樹の森の中で、ヒュンヒュンと掠れた音を立てながら風を切るように進むリヴァイとカイル。
2人がしばらく進んだところで、突然…
カッ!
木々の隙間から巨大な閃光が瞬くのが見えた。
すぐさまその方角に目を凝らしたカイルは、衝撃的な光景に目を疑う。
なんと、つい先ほど巨人共に
さらには、立体機動の兵士ではなく、
(エレン!? 何で巨人に……リヴァイ班はどこだ!?)
不穏な考えが頭によぎったが、カイルはそれを振り払うように緊迫した表情で叫ぶ。
「兵長!女型です!!また奴が現れました!」
「なんだと!?……方角は!?」
「1時の方角、300m先!エレンが巨人化して応戦しています!!」
「クソ!なんて様だ……俺は先に行く!カイル、お前は戻って増援を呼んで来い!!」
「そんな!兵長お一人ではっ…」
だが、リヴァイはカイルの引き止めなど気にも留めず、急加速で先へと進んで行ってしまったのだ。
カイルは仕方なく増援を呼ぶため引き返すも、気がかりなことが一つ__
『何故、リヴァイ班は敵の接近を許してしまったのか』
嫌な予感がしたカイルは、幹を伝って森の上空へ身を乗り出し、リヴァイ班がいたであろう方角を確認する。
すると、リヴァイ班の『信煙弾』と思われる煙が
「!?……もう一本は女型が撃ち上げたのか?でも、巨人の姿で銃は扱えないはず…」
過った不安と不可解な現実が交わり、カイルの思考は一つの結論に着地する。
「敵は巨人の脚力でリヴァイ班に追いついたんじゃない……
声に出して合点しつつも、この戦いの“終着点”が見えなくなったカイルは焦る。
「
こうして、リヴァイは『女型の巨人』の元へ、カイルは『指令班』の元へとそれぞれ全速力で向かったのだった。
―【 続く 】ー
〜後書き〜
『今回はオノマトペを考えるのに苦戦しました(汗)』
…どうも、著者です(´-ω-`)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
効果音などは基本的に原作を参考にしておりますが、漫画と違って文章の中に入れ込むとなると、音に的確な文字を当てはめる“表現力”がものすごく問われますね…
さて!
【捕獲作戦】におけるカイルの役目は、目標の体格を測定し捕獲部隊へ伝達することでした。
さらに、一発で的確に捕獲するため、拘束具の発射タイミングを見極めるのも重要な役目だったと言えるでしょう。
また、前回の話で作戦会議中にハンジが最後に切り出そうとしていた『推論』をカイルが回収するという形で表現してみました。
(『推論』の内容は、原作【第27話】におけるエルヴィンとハンジの会話シーンをご覧ください)
…という感じで、原作に何とかねじ込ませていただいた次第です(笑)
◼︎次回予告:『#25 女型の巨人②:一進一退』
再び姿を現した女型の巨人。
仲間の命を切り捨ててまで得た悲惨な”結果”に、カイルは何を思うのか__