〜前書き〜
打倒王政⑤では、『ロッド巨人討伐』~『ヒストリア女王即位』の流れを描きます。
※今回話の中でリヴァイの活躍について説明があります。
↓それでは、本編へどうぞ↓
「エルヴィン団長!リヴァイ班です!」
カイルたちが超巨大な奇行種の周りを警戒して回っていると、先に礼拝堂へ向かったと報告を受けていたリヴァイ班とハンジを発見した。
そこには、エレンとヒストリアの姿も__どうやら無事に2人を取り戻すことができたようだ。
リヴァイ曰く、這いつくばっている巨人の正体はヒストリアの実父ロッド・レイスで、礼拝堂の地下空洞でエレンたちを取り返した際に巨人化して這い出てきたらしい。
ロッドが巨人化した経緯など数点確認したいことはあったが、カイルはまず戦闘時に右肩を負傷したというハンジの安否を心配した。
「ハンジさん!怪我の具合は!?」
「あはは、ヘマしちゃったよ〜……大丈夫、骨が折れたりはしてないと思う。傷はそのうち塞がるさ」
ハンジはヘラヘラと笑っていたが、その傷の大きさと肩に巻かれた包帯から滲む血にカイルは顔をしかめる。
「っ……とにかく、大事に至らなくて良かったです。エレンとヒストリアだけでなく、他の皆さんも無事で…!」
「不幸中の幸いだね、敵は手強かった。何より、こっちは
「数……そういえば、カティ班を見ませんでしたか? レイス領地への潜入捜査後、念のためカティたちにはここに残ってもらい、礼拝堂を監視するよう頼んでいました。もしかしたら合流してるかもと…」
「……」
黙って俯くハンジ__カイルは首を傾げながら覗き込む。
「ハンジさん…?」
「…あぁ、カティたちには会ったよ。礼拝堂へ踏み込む直前にね。彼女らには周辺住民への避難勧告をお願いしたんだ。だけど、あの巨人が地下から這い上がってきたときの地崩れに
ハンジの話は結論まで至らなかったが、その先の言葉は聞かずとも、声色や表情から容易に想像できた。
(そうか……カティは、死んだ。調査兵団に俺の同期はもういない……みんな、死んでしまったんだ…)
かつて同じ訓練所で共に汗を流し、技術を極めんと切磋琢磨した仲間が次々と倒れていく__凄惨な現実に無力さ感じたカイルは、手綱を握る手から力が抜ける。
「カイル…」
「すみません……しかし、カティは長年ハンジさんの隊で班長を務めていました。ハンジさんこそお辛いでしょう」
「あぁ、まったくだ。自分の不甲斐なさが嫌になるよ……カティたちの無念を晴らすためにも、あのバカデカい巨人の暴走を絶対に食い止めるぞ!」
「はい…!」
そうして、カイルたちは這いつくばる巨人の横を通過し、周辺住民へ避難勧告を敷きながらオルブド区を目指したのだった。
***
___約1時間後。
夜中のうちにオルブド区へ到着した調査兵団一同は、駐屯兵団の支部へ向かい、巨人発生の緊急事態を知らせた。
そこで、エルヴィンが即席で考案した『ロッド巨人討伐作戦』を提示すると、駐屯兵団の司令官は怒りを露わにしたのだ。
「住民を避難させず、
そう、この迎撃作戦ではオルブド区内に住民が残ることが“絶対条件”なのだ。
ロッド巨人はいくら兵士が周りをうろつこうと、小規模の集落を横切ろうと見向きもしせず、ただひたすらにオルブド区へ歩を進めている。
その習性から推察するに、人がより多い場所へと引き寄せられる“奇行種”なのだろう。
オルブド区の住民をウォール・シーナ内へ避難させてしまうと、ロッド巨人がウォール・シーナの壁を破壊しかねない__それ故の苦肉の策だ。
しかし、ロッド巨人の放つ煙を住民たちが目にすれば、街中がパニックに陥るだろう。
そこで、巨人襲撃時の緊急事態を想定した抜き打ちの『避難訓練』を実施することにした。
煙は避難訓練における
エルヴィンがそこまで話すと、駐屯兵団の司令官もようやく状況を理解したのか、額に汗を浮かべながら強く頷いたのだった。
「…やるしか、ないようだな」
***
___夜が明け、朝日が昇った頃。
ロッド巨人はオルブド区の目前にまで迫っていた。
駐屯兵団の協力の下、壁の上と外壁から少し離れた平地に大砲を設置し、区内では避難訓練を実施した。
そして、ロッド巨人が射程範囲に入った途端…
ドドドドドーーーーン!
横並びになった大砲が一斉に火を吹いた。
しかし、大砲の雨を降らせてもロッド巨人の歩みは止まらない__すると、エルヴィンが最終作戦への移行を指示する。
「総員!直ちに配置につけ!!まもなくロッド巨人が顔を出す!発射の指示を待て!!」
最終作戦とは、『ロッド巨人のうなじを
まず前提として、ロッド巨人は顔を伏せながら地面を這いずっていることから、顔が削れ口が開かれている状態だと仮定した。
さらに動きとしては、オルブド区へ侵入するために壁に手を掛け上体を起こすと想定される。
そこで、大量の火薬を詰めた樽をいくつも用意し、それらを網で包んだ巨大な“火薬弾”を拵えた。
その火薬弾を巨人化したエレンが担ぎ、ロッド巨人の口の中に放り込もうというのだ。
そして、その作戦は見事に成功…
ドガンッ!!
巨人の熱風が樽に引火し、ロッド巨人は顔の内側から破裂した。
そこに畳みかけるようにして、水を被った状態で待機していた調査兵たちが四方八方に弾け飛ぶ肉片を追い、壁から一斉に飛び出す。
うなじを破壊できたとしても、
カイルも必死になって肉片を切り刻んでいく。
そして…
ザシュッ!!
カイルの少し先でヒストリアが肉片を切り裂いた瞬間、
ッシュウゥゥゥゥ…
ロッド巨人の体が煙を上げながら崩壊し始めた。
「!?……まさか、
そう、ヒストリアが斬った肉片こそがまさにロッドの本体だったのだ。
ヒストリアは新体制において次期女王を担う重要人物でありながらも、エルヴィンやリヴァイの反対を押し切って自らの意志で此度の戦闘に加わっていた。
曰く、その勇姿を民間人の目に焼き付けることで、“求心力”になろうというのだ。
そして、有言実行__見事にヒストリア本人が留めを刺す結果となった。
自らの手で父親との因縁にけじめをつけた安堵からか、脱力したヒストリアが落下し始める。
それに気づいたカイルは加速し、空中でヒストリアの体を受け止めてみせた。
エルヴィンはこうなることを予測していたのだろうか__ヒストリアの意志を尊重しつつも、護衛のためにカイルを側につけさせていたのだ。
「無事か!? ヒストリア!」
カイルが呼びかけると、腕の中のヒストリアがゆっくりと瞼を上げる。
「…フリ…ダ……お姉…ちゃ…?」
「!?……ヒストリア、俺はカイルだ。わかるか?」
少し腕を揺さぶると、ヒストリアはさらに数回瞬きをした。
「ん……あれ? カイル…分隊長?」
「よかった……まさか、本当に君が仕留めてしまうとはな」
「!……これで、ようやく終わったのですね」
「あぁ……だが、すまない。君にはまだ“任務”がある。
そう言ってカイルはヒストリアを抱えたまま、街中にふわっと舞い降りた。
すると、2人の周囲にぞろぞろと群がってきた住民たちがひっきりなしに問いかける。
「君があの巨人に留めを刺したのか!?」
「この街は救われたんだな!?」
「兵服がないようだが、兵科は?……所属は!?」
期待の眼差しを向けられ困惑したヒストリアは、助けを求めるように振り返る。
目が合ったカイルが背中を押すように頷いて見せると、ヒストリアも迷いを一切捨てきったように頷き返した。
そして、民衆へと顔を向け直し、凛々しい声で応えたのだった。
「私は、ヒストリア・レイス。この壁の“真の王”です…!」
***
___翌日。
「ヒストリア女王、万歳!!」
騒動が収まって早々に、総統局の広場で『戴冠式』が執り行われた。
式典には新体制の兵団組織や兵団を支持する貴族階級の者たち、それから王都の民たちが出席し、新たな王の周囲を歓喜の拍手で取り囲んでいた。
こうして、ヒストリアは無事に女王へと即位したのだった。
式典が終わり、総統局内部でヒストリアとピクシスたちが書面的な手続きを踏んでいる頃。
調査兵団の幹部たちは別室で、今回の騒動を振り返っていた。
「今回、エレンとヒストリアを一時的に奪われていたことで、結果として我々は重要な情報を得ることができた。ハンジ、礼拝堂からの脱出後にエレンから聞いたというロッド・レイスとの会話内容を聞かせてくれ」
「あぁ、わかった…」
ハンジはエルヴィンに向かって頷くと、その場にいた全員の顔を順に見ながら説明を始める。
「結論から言うと、私たちの目指すべき場所はこれまでと同様『エレンの生家にある地下室』であることに変わりはない。だが、ロッド・レイスとの会話から得た、エレンが有する巨人に関する“秘密”は重大だ!これが、かなり興味深いものでね……~~~~」
まず、今エレンの中にある巨人の力は、レイス家の血縁内で代々引き継がれてきた初代王の巨人__『始祖の巨人』とでも言っておこう。
その始祖の巨人がエレンの中に宿った経緯は、ウォール・マリア陥落事件があった数日後に礼拝堂を訪れたエレンの父グリシャが関係している。
当時、始祖の巨人はレイス家の長女フリーダが有していたが、
つまり、カイルが調査していた【レイス一家襲撃事件】の犯人はグリシャだったのだ。
その後、グリシャはエレンに巨人化の注射薬を打ち、自分を捕食させることで始祖の巨人をエレンに継承させたのだという。
『始祖の巨人』とは、すべての巨人の頂点に立つ存在で、
その力はレイス家の血を引く者がを有することで初めて真価を発揮するらしい。
しかし、ここで問題がある__レイス家が始祖の巨人を手にしても、初代王の思想に支配され、人類を救うために壁の外に蔓延る巨人を排除することは叶わないというのだ。
初代王が何故その思想に至ったか不明だが、ロッドの話によれば、初代王は人類が巨人に支配される世界を望んだらしい。
それが、
「…以上をまとめると、我々に残された選択肢は1つだ。レイス家と血縁関係にない者……つまり、エレンが『始祖の巨人』を有している今の状態で、その
「それを掴むためにも、やはりグリシャ氏がエレンに託した地下室に賭ける他ないという結論か」
「そういうことだ、エルヴィン」
「なら
そう言って話に割り込んだリヴァイは、懐から取り出した黒い箱をセンターテーブルの上に置いた。
コトッ…
「…リヴァイ、それは?」
エルヴィンが尋ねると、リヴァイは腕を組みながら答える。
「こいつは……今回の騒動における“戦利品”だ」
その箱の中身は、ロッド・レイスが所持していたとされる『
それをリヴァイが手にしたのは、昨日のロッド巨人討伐後__崩れたレイス領地付近を捜索した際、絶命寸前の敵残党より受け取ったのだという。
本来、リヴァイたちはエルヴィンが逮捕前に立てた作戦によってリーヴス商会と結託し、中央憲兵を尾行するはずだった。
エレンとヒストリアの身柄をわざと中央憲兵に引き渡し、『終着点 = ロッド・レイス』を目指そうとしていたのだ。
しかし、その計画を狂わせたのは、尾行作戦の実行よりも先に何者かによってエレンとヒストリアを誘拐されてしまったことだ。
その際、ディモ・リーブスも殺害されており、リヴァイたちは一時的に誘拐された2人の行方を見失ってしまっていた。
その後、リヴァイの機転によってストヘス区で誘拐された2人の居場所を突き止めるも、そこで
それが、中央第一憲兵で構成された『対人立体機動部隊』だ。
『対人立体機動部隊』とは、中央第一憲兵の精鋭たちで構成された暗殺部隊のことで、調査兵団に対抗する組織として設立されたそうだ。
彼らは通常の立体機動のように宙を舞いながら、散弾銃で対象を吹き飛ばす恐ろしい連中だ。
そんな部隊が秘密裏に組織されていたことにも目が飛び出たが、もっと驚いたのはその部隊で隊長を務めるケニー・アッカーマンという男の“素性”だった。
ケニーはかつて、憲兵殺しで巷を騒がせた大量殺人鬼の『切り裂きケニー』本人であり、さらにリヴァイの
つまり、リヴァイの姓も『アッカーマン』ということになる。
リヴァイたちは対人立体機動部隊の襲撃から何とか逃れることができたが、エレンとヒストリアの救出のために向かったレイス卿礼拝堂の地下で再び対峙する羽目に。
ちょうどその頃、地下空洞の奥でロッド・レイスがエレンから始祖の巨人を取り返すためにヒストリアを巨人化させようと画策していた。
だが、ヒストリアはそれを拒否し、後がなくなったロッド・レイスが地面に撒かれた注射薬を
その際、地崩れが起こり、対人立体機動部隊の大半がそれに飲み込まれていったのだという__
「…昨日の捜索時に瀕死状態のケニーを見つけた。この注射はその時に奴から受け取ったものだ」
「そうか。他に何か聞き出せたか?」
すかさず問い正すエルヴィンに、リヴァイも食い気味に答える。
「イヤ、特に情報らしいものは何も。初代王が何故人類の復興を望まないのか、アッカーマン一族とは何か……それも地下室で明らかになるといいんだが」
「あぁ。まずはその注射薬の取り扱いを含め、今後の方針をピクシス司令やザックレー総統とも話し合あう必要があるな」
「そのようだ…」
リヴァイは静かに返事をすると、視線をエルヴィンからカイルに移した。
カイルはその視線に気づきながらも、黙ったまま反応を示さない。
すると、リヴァイはまたエルヴィンに視線を戻した。
「そいや、エルヴィン……ピクシスじいさんが戴冠式の後に用があるって言ってたが、そろそろ時間じゃねぇか?」
「…あぁ、そうだったな。ディルク、一緒に来てくれ」
「わかった」
そう言ってディルクを引き連れたエルヴィンは、通りすがりざまにハンジに
「!……そ、そういえば、ベルク社のロイたちに呼ばれてるんだった!私たちも行くぞ、モブリット!」
「え? ハンジさん、そんな予定は…」
「(小声で) いいから話を合わせろ…!」
「(小声で) は、はぁ…」
モブリットは怪訝そうに返事をしながらも、ハンジに続いて部屋を出て行った。
こうして部屋には、リヴァイとカイル、それからベッツの3名のみが残されたのだった。
***
___しばらく沈黙が続いたのち。
初めに話を切り出したのは、リヴァイだった。
「…あの眼鏡もたまには空気を読めるらしいな」
すると、カイルが砕けたように笑う。
「ははっ、おかげで完全に逃げ場を失いました。いえ、むしろ場を繕ってくださってありがとうございます」
「お前は
「2点あります……が、ベッツさんは同席しても?」
そう言ってカイルが隣に座るベッツに顔を向けると、ベッツはバツの悪い顔でガタっと立ち上がった。
だが、リヴァイは掌を前に出しながらそれを引き留める。
「待て、ベッツ。俺はどちらかと言えばお前に用がある」
「お、俺に!? 何すか、一体…」
「そいつは後だ。先にカイルの話を聞く」
「は、はぁ…」
ベッツが再び座り込むと、カイルはようやく本題に入った。
「まず、兵長の姓『アッカーマン』について……俺も獄中で中央憲兵の口から偶然その名を耳にしました。それで気になって、昨日ケニー・アッカーマンという人物の戸籍を詳しく調べてみたんです」
「…ほぅ。それで、俺の叔父だってのは確かだったか?」
「えぇ、驚きました。ケニー・アッカーマンは兵長のお母様クシェルさんの実兄。それは間違いありません……しかし、
「…何?」
「その2人の父親に当たる人物の名が、ジェイク・アッカーマン……前にストヘス区で命を落とした俺の恩人、ジェイクさんだったんです」
「!?……そうか、あの爺さんが…」
「はい。つまり、ジェイクさんは兵長の祖父に当たるお方……面影が重なる
「その爺さんは俺を見て、母さんの影を重ねたと…」
「……コクッ」
カイルは小さく頷くと、背中を丸めながら話を続けた。
「改めて、あの日ジェイクさんを守り切れなかったことが悔やまれます。兵長のご親戚だったなんて……もっと早くにその事実を知っていれば、逃亡生活から保護することだってできたかもしれないのに…」
「…今更嘆いたところで、過去は変えられん。それに、アッカーマン一族が王政と対立した理由はまだ明らかになってねぇ……どの道、望みは薄かったかもな」
「ですが、俺はっ…」
「カイル、考えるべきは
「今、できること…?」
「…墓の場所を教えてくれ。せめて骨くらいは家族の元に埋めてやれるだろ」
「!?……はい。きっと、ジェイクさんも喜びます…!」
そう言って嬉しそうに答えたカイルは、机の端に置かれていた紙とペンを手に取り、墓地の名前と住所をサラサラと綴ったのだった。
**
リヴァイは受け取った紙切れにさっと目を通すと、それを折りたたみながら再びカイルに目を向けた。
「それで、用は2つと言っていたな」
「えぇ、2点目をお話しする前にまずは…」
そう言って唐突に立ち上がったカイルは、リヴァイに向かって勢いよく頭を下げる。
「兵長、俺を……
「…は?」
「ちょっ、カイル!? お前、兵長に何言って…」
困惑するリヴァイとベッツに構うことなく、カイルは頭を下げたまま乞い続ける。
「俺は任務のためとは言え、兵長やハンジさんを批判するような言葉を何度も発しました。上官を侮辱するなどあってはならないこと……だから、俺は罰を受けなければならないんです」
すると、ベッツがテーブルに手をつきソファから腰を上げる勢いで2人の間に割り入ってきた。
「待ってくだせぇ、兵長!違うんです!それは団長の指示でして、カイルは俺たちを守るためにわざと憎まれ口をっ…」
「あぁ、わかってる」
「へ…」
リヴァイが真顔で即答すると、ベッツは縮こまったようにまたソファへまた腰を戻した。
カイルはまだ頭を下げ続けている__それを見かねたリヴァイは、少し呆れた口調で説得にかかった。
「…カイル。すまんが、俺は人に頼まれて『はい、喜んで』と殴りつけるような趣味は持ち合わせちゃいねぇ。それに、
「!?……何故、それをっ…」
図星だと言わんばかりの表情でカイルが顔を上げると、リヴァイは状況から連想した出来事を飲み込むように膝の上で手を組んだ。
「昨日エルヴィンに冤罪が晴れるまでの経緯を尋ねたんだが、奴は詳細をはぐらかしやがった。捕らえられてた調査兵たちの大半がピンピンしてんのに、奴だけはボロ雑巾のような始末。そして、カイル……お前の口元にも殴られた跡があった」
それを聞いたベッツは、手を叩くように納得する。
「なるほど、それで俺に聞こうと…!」
「そうだ。結果的にお前に聞くまでもなかったがな」
リヴァイの勘の鋭さに圧倒されたカイルは、観念したようにソファに腰掛ける。
「さすが兵長、すべてお見通しとは……殴ってくれというのは
「俺はてっきり、クソが漏れそうなのを我慢してるのかと思っていた」
「ははっ、相変わらずですね」
「前にも言ったが、何が正しいかはその時々の状況によって変化する。俺からすりゃ、お前のその判断は正しかったように思える。だから、俺がお前を
「…はい、やはり兵長には適いません」
そう言ってカイルが柔らかく笑って見せると、リヴァイもふっと鼻を小さく鳴らす。
2人のやり取りを受け、ベッツが安心したように「うんうん」と頷いていると、その不意を突くようにリヴァイが話しかけてきた。
「ところで、ベッツ。こいつはどんな風に俺たちを侮辱したんだ?」
「え゛!…そ、それはっ…」
突然の振りに、ベッツは絵に描いたように目を泳がせた。
カイルも動揺を隠せず、声を上ずらせる。
「へ、兵長…!」
「…冗談だ。それじゃ、俺もちょっと出てくる」
そう言ってスッと席を立つリヴァイ__カイルはほっと胸を撫で下ろしながら尋ねる。
「先ほど、ヒストリア女王に呼び出されていた件ですか?」
「そうだ。俺は数日前、あのガキの胸ぐらを掴んで女王になれと命令した。その件でとやかく言われるかもな」
「『ガキ』はダメですよ、兵長。相手は女王なんですから…」
「チッ…役職呼びは性に合わん」
「直に慣れますよ」
リヴァイはカイルに背を向け、右手をふわっと肩まで挙げて「はいはい」という返事をすると、出口へ向かって歩き出した。
だが、取っ手に手を掛けたところで、ふと何かを思い出したように振り返る。
「おっと、忘れてた…」
その声に、カイルとベッツも視線を向ける。
すると、リヴァイはほんの少しだけニコリと顔を綻ばせながら、
「お前ら……ありがとうな」
―【 続く 】ー
〜後書き〜
『このあと、兵長はヒストリアに肩パンされます』
…どうも、著者です(´-ω-`)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
リヴァイの笑顔は貴重なので、原作とは違う形でそのシーンを取り入れてみました。
また、ジェイクがリヴァイの祖父だと判明しましたね。
原作ではケニーのおじいさんは出てきていましたが、お父さんが出てきていなかったので、そこにオリジナルキャラを当てはめたというわけです。
◼︎次回予告:『#37 夢と願い』
■おまけ
◎本日は神(諌山創 大先生)のお誕生日です。
二千年...若しくは...二万年後の来世まで、ついていきます!
◎原作との相違
ヒストリアがロッドを討ち取ったあと、原作では一人で街中に落下しますが、そこにカイル君を介入させてみました。
◎ハンジには謝罪したのか?
はい、ハンジにはロッド巨人討伐後すぐに謝罪しました。
カイルはその際「変態眼鏡」と侮辱したことを素直に白状したらしいです。