〜前書き〜
◎タイトル:『W・M』=『ウォール・マリア 』
【ウォール・マリア奪還作戦編】スタートです。
例によって基本は原作ベースで、信煙弾の色などはアニメを参考にしています。
今回はオリ主の活躍が少なく、原作の流れをオリ主目線でお届けする回となっております。
↓それでは、本編へどうぞ↓
#38 W・M奪還作戦①:投石
___翌日、日没直前。
本日がウォール・マリア奪還作戦の決行日となる。
作戦開始にあたってザックレー総統やピクシス司令、ナイル師団長など、兵団上層部の錚々たる面々がトロスト区へ集結した。
調査兵団は彼らへ決戦に赴く意思表明を残したのち、
そして、いよいよ出発の時__駆け付けたトロスト区の住民の声援を背に、エルヴィンの号令が響く。
「ウォール・マリア最終奪還作戦……開始!!」
こうして調査兵団は、ウォール・マリアを奪還すべく、シガンシナ区を目指して駆け出したのだった。
***
___翌朝。
巨人たちの活動が鈍る真夜中に光る鉱石で道を照らし、行軍を進めていた調査兵団がついに、ウォール・マリアを目前に捉える。
そして、日が昇り始めた頃__山の麓から平地へと、一斉に駆け出したのだ。
内門手前の街を全速力で駆け抜け、馬の警護を任されたクラース班を除くすべての兵士が立体機動に移った。
壁を登り切った先で見下ろした景色は、
エレンの瞳に、この光景がどう映っただろう?
だが、そんなことを考える間もなく、兵士たちはすぐさま次の行動に移る。
巨人たちの侵入口である穴を封鎖するため、外門へ向かうのだ。
しかし、この動きはおそらく敵にとっても想定内のこと__ライナーやベルトルトには、数か月前の新兵勧誘式の際に『調査兵団の最終目的地がエレンの生家の地下室である』という情報を渡してしまっているからだ。
敵は調査兵団が
そこでエルヴィンが思いついた対策は、エレンも含め外門を目指す総勢100名の兵士が全員『フードで顔を隠す』というものだった。
一か八かの賭けのようにも思えるが、敵の狙いがエレンだと見積もれば、やみくもに攻撃されるのを回避できる画期的な策と言えるだろう。
**
今回、カイルはというと、班には属さず単独で動いていた。
主に敵の接近にいち早く気づくための見張りの役割を持ち、臨機応変に動くようエルヴィンに指示されていたのだ。
外門へ一早く到着したカイルは、エレンの到着までに周囲の安全確認に努める。
外側の開けた平地は他の兵士たちに任せ、特に集中して確認したのは外門付近にある家屋の群れ。
一度の瞬きも許さないほどに目を凝らし続けたカイルは、そこである“違和感”を覚える。
すると、その後ろでハンジも同じ違和感を抱いていた。
「何で!?……周りに
それを聞いたカイルは家屋に目を向けたまま、背中でハンジに報告する。
「巨人もそうですが、敵の姿も見当たりません。少なくとも、俺の眼で手前一帯を見渡した限りでは、その気配すら感じ取れませんでした」
そこへさらに、リヴァイも便乗する。
「ここは敵の懐の中ってわけだ。だが…」
「…やるしかない」
ハンジはそう言うと、意を決した表情で『作戦続行』を知らせる緑の信煙弾を撃ち上げた。
パシュッ……パシュパシュッ!
すると、ハンジの煙弾に続いて地上からさらに2本の煙弾が撃ち上がる。
計3本の煙が立ち昇り、外門より少し手前で待機していたエレンの元へ、『硬質化で穴を塞げ』の合図が送られたのだ。
勢いよく外門へ飛び出すエレン__その間も、カイルは街の家屋を注視し続けている。
そして、次の瞬間…
ピカッ……ビキビキビキビキィ!!
シガンシナ区に雷鳴が轟き、外門付近に大きな稲光が瞬いた。
うごめく岩のように硬質化した皮膚が広がっていき、大きく開いていた穴を見事に塞いでいく。
空気の通りを断絶された街が静寂に包まれた。
エレンは無事、外門を塞ぐことに成功したのだ。
しかし、まだ気は抜けない__エレンが
ミカサがエレンを抱え壁上に戻ってくると、ハンジがすぐさまエレンの状態を確認する。
「調子は!?」
「問題ありません。訓練通り次も行けます!」
見ると、立体機動装置は無事のようだが、マントは巨人化を解除した際に持っていかれたようだ。
ミカサがエレンにマントを貸すと、ハンジが号令を出す。
「では、内門へ向かう!」
こうして一同は再び、フードを被った状態で移動を開始したのだった。
***
___同時刻。
外門封鎖班が移動を始めた一方で、内門側の壁上に待機していた指令班はその場である調査を行っていた。
「調べてきました!地面には
エルヴィンに向かってそう報告するのはアルミンだ。
ここへ到着した際、壁上の隅に焚火の跡を発見したアルミンは、その真下の地面に降りて蹴落とされた“何か”を確認していたのだ。
アルミンの報告の中で、気になる点は“2つ”あった。
まず一つは、『飲み物の容器が3つ落ちていた』こと。
容器が3つということは、少なくとも敵の人数は
次に、『鉄製のポッドが冷めきっていた』ことだ。
仮に敵がこの距離から調査兵団の接近に気づき慌てて野営具を落としたのなら、ポッドが冷めきっているのはおかしい。
使用直後の鉄製ポッドが冷めきるには、通常5分以上の時間を要する__しかし、調査兵団が麓から一斉に駆け出してから壁上到達までにかかった時間は、およそ2分程度。
そこから危惧されるのは、壁上にいた3名の他に、調査兵団の接近を知らせるための
以上のことから、もはや敵は大勢いると想定するのが妥当だ。
とは言え、第一に特定すべきは敵の人数よりもその“潜伏箇所”__そう考えたエルヴィンは、アルミンの柔軟な発想力に期待し、潜伏箇所特定の指揮を任せたのだった。
***
___その頃。
エルヴィンたちが潜伏する敵を捜索し始めた一方で、内門を目指していた外門封鎖班は、シガンシナ区手前の街角に差し掛かろうとしていた。
その中でも街の家屋を警戒し壁の内側を沿うように進んでいたカイルは、眼に神経を集中させ見張りを続けながらも、敵の動向について思考を巡らせていた。
(敵にとっては、穴を塞いだ直後の巨人化解除の瞬間が一番の狙い目だったろうに……敵は俺たちの強襲に対応できていないのか?
嫌な予感でもしたのか、内門にいる指令班の不穏な空気を察したのか、カイルはふと前方に目を向ける。
ちょうどその時…
パシュッ…
内門の壁上付近で『作戦中止』を意味する赤い信煙弾が撃ち上げられた。
「!?」
それを受け、ハンジがすかさず指示を出す。
「総員、壁の上に散らばって待機だ!!」
指示通り壁上へ集まった兵士たちは、ある程度の間隔を保って前後左右を見張りながら、少しずつウォール・マリアの壁上まで移動した。
見ると、立体機動でぶら下がった指令班たちが、壁にブレードをカンカンと叩きつけながら上部から順に壁面を下っている。
これは、敵が
敵はいつ何時でも対応が可能なよう、安全に状況を見渡せる位置に潜伏しているはず。
しかし、そう簡単に見つかってしまっては元も子もないため、巧妙に死角を作っていることだろう。
『常識の範疇に留まっていては、到底敵を上回ることはできない』__そう考えた時、アルミンの頭に浮かんだのは壁の中から姿を現した大型巨人の顔だった。
そして、アルミンの勘は的中する。
カン!…カン!…カン!…
「!?」
アルミンの左横で壁を叩いていた兵士が、音の変化に気づく。
急いで音響弾を撃ち鳴らすも、一足遅かった。
ガコッ……ドス!!
潜伏箇所を特定したその兵士は、
その光景を見た瞬間__いや、音響弾が鳴り響いた時から、
ヒュンッ……シャ!!
ライナーの喉元に一本のブレードが貫かれる。
それを突き刺したのは、いつの間にか壁を飛び降りていたリヴァイだ。
リヴァイはすぐさま、もう一本のブレードをライナーの心臓へ思い切り突き刺す。
ドッ!
しかし、これも
地面に落下したライナーは稲光を放ちながら鎧の巨人へと変身し、苦々しい顔で壁にぶら下がるリヴァイの体を照らす。
その光景を見た兵士たちが唖然と立ち尽くす中、手綱を締めるように警戒を促したのはエルヴィンだった。
「周囲を見渡せ!!他の敵を捕捉しっ…」
だが虚しくも、その声はウォール・マリア内側から突如として聞こえてきた轟音に掻き消されてしまう。
ピカッ……ドドドドドドォォ!!
突如として、何十体もの巨人が内地側の街を取り囲むように姿を現したのだ。
街の両端の壁側から半円を描くように立ち並ぶ巨人たちのほとんどは通常種と見受けられるが、その中央には体高がずば抜けて高い
その風貌から、ウォール・ローゼ内に巨人が出現した際に目撃情報のあった『獣の巨人』だと伺える。
原理は不明だが、獣の巨人がいるということはウォール・ローゼ内に巨人を出現させたのも今回と同じ手口なのだろう。
しかし、敵は考察する暇さえ与えてはくれない。
ブォッ……ドォォォン!
なんと、数百メートルは離れているであろうその場から、獣の巨人が巨大な岩を
遅れてやってきた風圧を防ぐように腕で顔を覆いながら下を確認すると、着弾時に砕けた岩で内門が塞がれてしまっている。
上部に隙間が空いてはいるものの、人間は通れても馬は通れないだろう。
この状況に、誰もが瞬時に理解した。
敵の目的はエレンの奪取のみならず、ここで我々を
もちろん、カイルも__
(内門を塞いだのは、俺たちを完全に包囲するため……それから『馬を狙い、退路を断つ』というわけか)
そう考えながら内門のある中央の壁上へ目を向けると、そこにはいつにも増して鋭い眼光を放つエルヴィンがいた。
カイルはその姿に安堵を覚えつつも、これから始まる死闘を前に、身を引き締め直すのだった。
***
___内門が塞がれた直後。
ガッ!……ガッ!
背後のシガンシナ区側から聞こえる妙な音に目を向けると、鎧の巨人が壁を登っているのが見えた。
壁上で調査兵たちを襲うつもりなのか、はたまた壁を飛び越えて馬を狙うつもりなのか__鎧の巨人は一歩ずつ確実に近づいて来ている。
しかし、エルヴィンはすぐには動かない__登ってくる鎧の巨人には目もくれず、獣の巨人を睨み続けていた。
そうこうしていると、内地側で再び動きがあった。
突然、獣の巨人が強烈な
すると、まるで号令を受けたように、立ち並ぶ巨人の群れから2~3m級の小ぶりな巨人が一斉に走り出した。
(!?……報告にあった
カイルは巨人たちの動きに反応しつつ、
(体高の高い巨人を檻の役目としてその場に残し、馬の位置を炙り出すため小ぶりの巨人を寄越したのか……確かに馬を失えばこちらに勝機はない。かなり苦しい状況だ…)
クラース班の様子を眺めながら、馬を失った場合に行き着くであろう
ちょうどその時、エルヴィンが深く息を吸い込んだ。
「ディルク班並びにマレーネ班は、内門のクラース班と共に馬を死守せよ!リヴァイ班並びにハンジ班は、『鎧の巨人』を仕留めよ!!」
それを聞いたカイルは近くにいたベッツやルドルフ*3を目配りで見送ると、中央に向かって駆け出した。
ようやく、調査兵団も動く時が来たのだ。
**
エルヴィンの元では、リヴァイとアルミンが個別に指示を受けていた。
指示を聞き終え、内地側とシガンシナ区側にそれぞれ分かれて飛び出して行く2人と入れ替わるように、カイルがその場へ駆けつける。
「団長!」
「カイルか。ちょうど君にも頼みたいことがあった」
「…ベルトルトの捜索でしょうか?」
「そうだ。以前、エレンが彼らに奪われた際、超大型巨人の爆発でかなりの足止めを喰らった。敵に隠し駒を出される前に先手を打ちたい……君は
「わかりました。敵の最初の狙いは馬でしょうか…?」
カイルがすかさず切り返すと、エルヴィンは目線だけをチラッと鎧の巨人へ向けながら答える。
「鎧が壁を登ってきているのは、挟み撃ちで確実に馬を仕留めるためだろう……だが、
「先ほど、アルミンに何か伝えていましたね」
「あぁ。戦局を2つに分け、敵の戦力を分散させるための策だ」
ちょうどその時…
ガッ!
壁上に鎧の手がかかった。
瞬時に反応したカイルは、抜剣しながらエルヴィンの前に立ち塞がる。
しかし、エルヴィンはそれを引き下がらせた。
「心配ない。彼に
確信の込められた物言いからすでに策が動いていることを察したカイルは、何も言わずに引き下がり、内地側へ視力を集中させた。
そして、壁上に上がった鎧の巨人が内地側の街中に潜む馬の位置を確認している最中…
カッ!!
シガンシナ区側に雷鳴が轟いた。
巨人化したのはエレン__エルヴィンの言っていた“策”とはこのことで、自ら姿を現したのは鎧の巨人の目標を馬から引き離すため。
つまり、エレンを
鎧の巨人は少しの間エルヴィンと睨み合ったのち、せっかく登ってきた壁を逆戻りするように降りて行った。
エルヴィンはその背中を見送ると、内地側に目を向け直し、カイルに問いかける。
「どうだ。何かわかったか?」
「…まず、先ほど動き出した巨人たちに怪しい点はありませんでした。ベルトルトを背負ったりなどはしていません」
「そうか。であれば、他にも我々を追い詰める策を用意していそうだ」
「そうですね。てっきり、鎧がしくじった場合に備えて超大型の爆発と
「…他には?」
「獣の隣にいる四足歩行の巨人です。あれもライナーたちと同じく、元は人間と思われます」
「同意見だ。おそらくあれが敵の斥候だろう。背負っている荷物の鞍が
「となれば、戦力の分布としてベルトルトをシガンシナ区側に配置している可能性もありますね…」
そう言って今度はシガンシナ区を見下ろすカイルとエルヴィン__街の中央では、エレン巨人と鎧の巨人による激しい攻防戦が繰り広げられていた。
この戦いに向け、巨人の姿での格闘術を磨き上げてきたエレンは、蓄積した怨念をぶつけるように鎧の巨人へと向かって行く。
2体の巨人が撃ち合う中、ハンジ率いる調査兵たちは隙を伺うため、周囲を取り囲むように飛び回っている。
そして、鎧の巨人がエレンの極め技から脱出するように距離を取った瞬間…
「今だ!!」
ハンジの号令を皮切りに、雷槍を構えた兵士たちが一斉に動き出す。
しかし、その直前__鎧の巨人の口が
(鎧が一瞬、何かを発声しかけた。まさか、あれは……合図!? ベルトルトを呼ぼうとしたのか!?)
そう考えたカイルは、瞬時に付近の家屋や壁に注意深く目を見張るも、それらしき人影は一切見受けられない。
焦るカイルの首筋に一筋の汗が流れ落ちる。
(クソッ!どこだ!? この戦いにおいて超大型の爆発は敵の殲滅時に重宝されるだろう。だが、強力な武器故に扱う方も工夫がいる……爆発といえば、駐屯兵団が使うような榴弾もそうだ。あの弾は砲台から飛ばされる……まるで、巨人の群れへ
「!?」
バッ…
突然、後ろを振り返るカイル__その只ならぬ様子に、エルヴィンも反応する。
「どうした」
「…ベルトルトは云わば『爆弾』です。その武器の基本的な扱い方は、遠方から
「『投げる』……『獣の巨人』……なるほど、四足歩行の巨人が担いでいる荷物か」
「えぇ、積み上げられた木箱の手前に樽が2つあります。そして……その内の一つに、
「!?……中が見えるか?」
「すみません。暗くてそこまでは……ですが!もはや、あそこにベルトルトがいるとしかっ…」
その時…
オォォオオォオォォオオ!!
背後からけたたましい咆哮が聞こえてきた。
カイルは思わず後ろを振り返るも、何が起こったのか瞬時に理解し、すぐにまた四足歩行の巨人へ顔を向け直す。
だが、
ブンッ!
細長い腕から放たれた樽は大きく軌道を描き、物凄い速さでカイルたちの頭上を飛び越えて行く。
その樽の着地点は、
カイルたちはただそれを、黙って見送ることしかできなかったのだ__
―【 続く 】ー
〜後書き〜
『介入する隙もくれねぇってわけですか……ったく、団長。せっかく始めたってのによぉ…』
…どうも、著者です(´-ω-`)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
壁上でライナーがエルヴィンに向かって苦笑いしながら捨て台詞を吐くシーン、良いですよね。
ウォール・マリア奪還作戦は、原作の展開があまりにも完成され過ぎていて、正直オリ主を入れ込む隙がなくて泡吹いています・・・
しかし!次回は戦闘時におけるカイルの活躍がちょこーっとだけあるのと、それ以降は本作のあらすじの最後にある展開で重大な情報が明らかになるなどの見所があります。
果たして、著者はあらすじを上手く回収できるのでしょうか__!?
◼︎次回予告:『#39 W・M奪還作戦②:救出』
■おまけ
◎原作との相違
原作ではライナーが巨人化して内門の壁を登った時、壁上にはエルヴィンしかいませんでしたが、そこにカイル君を置いてみました。
カイルとの会話でベルトルトの居場所を推測してしまうというのも独自展開となりますが、『ギリギリのところで気づいたが、対処する間もなく放り込まれた』としているため、原作の流れには影響していない認識です。