進撃の巨人~もう一人の選択~   作:赤道さとり

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〜前書き〜

◎タイトル:『W・M』=『ウォール・マリア 』

今回は、オリ主の活躍を設けるため、原作の改変・加筆を多少行っております。
予めご了承ください。

↓それでは、本編へどうぞ↓



#39 W・M奪還作戦②:救出

 

 

「クッ……やられた」

 

 

歯痒そうにつぶやくエルヴィンの視線の先__シガンシナ区の上空では、剛球の如く投げ込まれた樽が風切り音を上げながら落下軌道に入っていた。

 

エルヴィンの横にいたカイルは一度樽から目を離し、シガンシナ区内でハンジ班が交戦していた鎧の巨人の状態を確認する。

 

すると、鎧の巨人は地面に膝をついた状態でうなだれている上、うなじからはライナーの体が飛び出していた。

 

さらには、雷槍の爆発によるものなのか、ライナーの頭部が半分以上吹き飛んでいたのだ。

 

 

(!?……ハンジさんたちがやったんだ!あの状態で超大型の爆発を受ければ、いくら鎧でも…)

 

 

希望を見出したカイルは拳に力を入れながらエルヴィンに報告する。

 

 

「まだです!鎧のうなじからライナーが剥き出しになっています!…となれば、ベルトルトはおそらくっ…」

 

 

その時…

 

 

ガコッ!

 

「ライナァァァァァ!!」

 

 

仲間の名前を叫びながら、立体機動装置を身に纏ったベルトルトが樽から姿を現した。

 

空中に飛び出したベルトルトは立体機動で鎧の巨人の肩へ飛び乗ると、ライナーの状態を確認する。

 

読み通り、ベルトルトはライナーを巻き込む可能性を恐れ、爆発を起こさなかったのだ。

 

一先ず、危機は遠のいた__安堵したカイルは、エルヴィンへ加勢の許可を求める。

 

 

「ライナーがあの状態ならベルトルトはすぐには爆発しないでしょう。俺もこちら側へ加勢します!」

 

「待て、カイル。君は戦闘には加わるな」

 

「!?……何故ですか?」

 

「超大型の爆発は脅威だ。しかし、巨人化してしまえば持久戦に持ち込める。そのためにも、爆発によるこちら側の被害は最小限に抑えたい。君は()()()()()()()からベルトルトの動きを観察してくれ。巨人化の予兆を察知したらすぐに合図を送るんだ」

 

 

いつものように戦術眼を研ぎ澄ませた瞳で淡々と告げるエルヴィンの物言いに、カイルは粛然とその指示を受け入れることができた。

 

 

「わかりました……ご武運を!」

 

バッ…

 

 

壁上から飛び降りるカイルと、その背中を見送るエルヴィン。

 

 

「カイル……()()()()

 

 

そう言ってエルヴィンは左胸のポケットにチラッと視線を落としたのち、壁を挟む2つの戦局へ順に顔を向ける。

 

_ライナーとベルトルトを相手取るシガンシナ区側。

 

_巨人の群れを率いた獣の巨人と対峙する内地側。

 

 

ここから、2つの戦局は互いに大きく動き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___【シガンシナ区側】にて。

 

 

「ベルトルト!!話をしよう!!」

 

 

鎧の巨人へ止めを刺さんと向かうハンジ班の元へカイルが追いついた頃、アルミンが一人、ベルトルトの前に躍り出た。

 

 

「話をしたら!!全員死んでくれるか!?」

 

 

聞く耳を持とうとしないベルトルト__しかし、それでもアルミンは何かを必死に訴え続けている。

 

カイルはその様子を横目に、ハンジの隣を並走する。

 

 

「ハンジさん!俺もこっちへ!!」

 

「カイルか!エルヴィンはなんと…!?」

 

「俺が少し離れた位置からベルトルトを注視します!怪しい動きがあればすぐに音響弾で知らせるので、その際はどんな状況であっても即座にその場から退避して下さい!!」

 

「わかった!!」

 

 

ハンジの返事を受け、カイルは思い切りガスを蒸かす。

 

他の兵士たちから少し進路をズラし、カイルが向かった先はシガンシナ区内に残存していた兵団施設*1の屋上だった。

 

 

(ここからなら全体が見渡せる。それにしても、アルミンは一体何を……この期に及んで敵が和解に応じるとでも? 何にせよ、時間稼ぎにはなってくれているが…)

 

 

移動中も観察を続けていたカイルだったが、噂に聞く内気な性格とは裏腹に、話し合いを求めるアルミンへどんどん詰め寄るベルトルトに違和感を抱いていた。

 

 

(ベルトルトが何故アルミンの話に乗ったのかわからないが……これは、チャンスだ。2人が話し合っている隙に()()()…)

 

 

そう考えながらチラチラと周囲へ目を向けると、ミカサがこっそりとベルトルトの背後に回っているのが見えた。

 

 

(よし、いいぞ!そのまま…)

 

 

だが、次の瞬間…

 

 

キン!!

 

 

ミカサが振りかざした刃は、見事に受け止めてられてしまったのだ。

 

 

「!?」

 

 

カイルは内心驚いた__何故なら、ベルトルトが()()ミカサの攻撃を防いだからだ。

 

先の内乱発生後、リヴァイの姓がアッカーマンだと判明し、ミカサも同じく何らかの理由で王政に迫害されていたアッカーマン一族であると想定された。

 

迫害理由は不明のままにしろ、リヴァイやリヴァイの叔父であるケニーらに匹敵する実力をミカサも持ち得ている。

 

それにも関わらず、ベルトルトはミカサを押し負かし、ついにはその場から脱したのだ。

 

 

(ん? ベルトルトはどこへ……またライナーの元へ戻るのか?)

 

 

ベルトルトの進路を不思議に思ったカイルは、鎧の巨人へ目を向ける。

 

その姿に、背筋が凍った__鎧の巨人はいつの間にか、()()()になっていたのだ。

 

 

(うなじが見えない……これは罠だ!ライナーを助けに行くと見せかけて俺たちの油断を誘い、ここを吹き飛ばす気か!?)

 

 

そう考えたカイルは、瞬時に手に持っていた銃を空へ掲げ、引き金を引く。

 

 

キー――ン!

 

 

しかし、ちょうど音響弾の発砲と同時に、ベルトルトは一気に上空へと飛び上がったのだ。

 

その近くに、ハンジたちはいた。

 

 

「カイルから合図があった!ベルトルトが飛び上がったぞ……まさか!」

 

「しかし(ライナー)はすぐ近くですよ!?」

 

「っ……一旦、離れろ!!」

 

 

だが、その判断は一歩遅かった__

 

 

ピカッ……ッドォォォォオオオオオンン!!!

 

 

目の前が巨大な閃光に包まれ、瞬きする間もなくカイルのいる屋上まで爆風が襲い掛かる。

 

 

「クッ…」

 

 

カイルは体が吹き飛ばされないよう、屋上のへりにしがみついた。

 

そうして爆風が去ったのち、再び立ち上がったカイルの瞳に映った景色は__()()()()()()()()()()街並みだった。

 

 

「そ……んな…」

 

 

絶句するカイルの目の前で、超大型巨人はただ静かに佇んでいる。

 

 

「読みが甘かった…」

 

(いや、そもそも……俺が()()()()()()()()()間に合う状況だったのか?

 

 

そんな思考に至った瞬間、カイルの心臓がぎゅっと縮こまる。

 

 

(団長の判断を疑うわけじゃないが、もしあの時……ミカサと一緒に奇襲していれば、()()()()…)

 

 

後悔の念に押し潰されそうになったカイルは、その邪念を振り払うように(かぶり)を振った。

 

 

(違う、まだ諦めるな!!生存者を探す!誰か……例え、一人だけでもっ…)

 

 

この時、真っ先に脳裏に浮かんだのはハンジの姿だった。

 

カイルは一度街から目を離しその場にしゃがみ込むと、両手をこめかみに当て目を閉じた。

 

直前に見た光景の()()()辿()()__カイルの“特殊能力”の一つだ。

 

だが、その目に映ったのは、仲間たちが次々と爆発に飲み込まれていく何ともおぞましい光景だった。

 

 

(!……ベッツさんに、ルドルフさんまでっ…)

 

 

眉間に皺が寄る__カイルは目頭にぐっと力を入れ、震える唇を噛みながら続ける。

 

 

(ダメだ。逃れた兵士は一人も……ん? あれは、モブリットさんだ。ハンジさんを()()()()()()()()()()、押した…?)

 

 

眼の記憶の中で、モブリットの取った行動が引っかかった。

 

反射的に行動に出たのなら、ハンジを後ろへ引っ張り自分が前に出ることで盾になろうとするところを、モブリットはハンジの背中をドンと押して()()()()()()()()のだ。

 

 

(…まさか!?)

 

 

何かに気づいたのか、カイルは瞼を上げると、ハンジたちがいた付近へ目を凝らした。

 

 

「間違いない。あの形状は……()()()!!

 

 

爆発によってほとんどの建物が吹き飛び地面もかなり崩れているが、部分的に残っている地中に埋まった石組からカイルはそう判断した。

 

つまり、モブリットはハンジを助けるため、井戸に押し入れたのだ。

 

 

「ハンジさんはきっと生きてる!モブリットさんが繋いでくれた!!」

 

 

そう、希望の声を漏らした途端…

 

 

ヒュ~~……ドドドド!!

 

 

超大型巨人が動き出した__シガンシナ区の内門へと歩を進めたその道中、なんと、手で救い上げた家屋を街中に投げ飛ばし始めたのだ。

 

その威力は絶大で、まるで転がった石が地面に跡をつけるように、いとも簡単に街が破壊されていく。

 

さらには超大型巨人の体から発せられる熱風によって、投げ飛ばされる家屋は燃え上がっている。

 

それ故に、街のあちこちで火が上がってしまっているのだ。

 

 

「まずい、その進路はっ…!?」

 

 

ハンジがいるかもしれない井戸は、超大型巨人の進路上に位置していた。

 

『このままでは踏み潰されてしまう』__焦ったカイルが周辺を見渡すと、家屋の影に隠れるエレン巨人の姿が目に入った。

 

その肩や手の上には104期の面々、アルミン、ミカサ、ジャン、サシャ、コニーの姿もあった。

 

 

「エレン!良かった、数名だが生存者はいた…」

 

(位置的には彼らの方が井戸に近いが、ここからではそんな細かい指示を出す術はない!俺は雷槍も持ち合わせていないし、どうすればっ…)

 

 

カイルが決断できずにいると…

 

 

 ―“『カ……ネさ……いま…す……う………てくだ……い』”―

 

 

「なんだ、これは!?」

 

 

突然、目の前にぼんやりとした影が現れた。

 

その容姿はエレンのように見えなくもない。

 

 

 ―“『ハ……ジさ……まだ……ひつ……うで…す』”―

 

 

(エレン……なのか? よく聞き取れない……これも眼の記憶?)

 

 

状況を理解できずうろたえていると、エレンらしき影は宙に溶け込むようにフッと消えてしまった。

 

すると、何故か急に心が軽くなり、カイルはスッと背筋を伸ばす。

 

 

「そうだ。俺にはこの眼がある……あの攻撃を見切れるのは、()()()()()()!!

 

 

そう意気込むカイルの瞳には、もう迷いなど残されてはいなかった。

 

 

バッ…

 

 

こうして、カイルは“何か”に背中を強く押されるように、屋上を飛び出していったのだった。

 

 

 

**

 

 

 

超大型巨人へ近づくほどに、周辺の火が強まっていく。

 

降り注ぐ燃えた家屋の雨も次第に間隔が狭くなり、避けるのが困難になる。

 

だが、進まなければならない__『ハンジさんは必ず生きている』それがカイルの原動力だった。

 

_超大型巨人が持ち上げた家屋の物量。

 

_放り投げる際の腕のしなり。

 

_投下されるタイミング。

 

_周囲の建物の状況。

 

それらすべての“視覚情報”を頼りに、瞬時に回避ルートを模索し、攻撃の隙を掻い潜って進む。

 

しかし、超大型巨人の攻撃は凄まじく、胴体視力に秀でたカイルでこそかなりの苦戦を強いられていた。

 

 

ガン!

 

「ぐぁッ…」

 

 

その時、馬の頭ほどの大きさがある壁の破片が、カイルの額を直撃した。

 

脳を揺らされ一瞬気を失いかけながらも、奥歯をギリっと噛んで耐え忍び、再び前方を睨みつける。

 

額から流れ出る血が眼球を覆っても、カイルは目を閉じようとはしなかった。

 

井戸まであと少し__超大型巨人ももうすぐそこまで迫って来ている。

 

 

(絶対に間に合って見せる!ハンジさんは()()()()なんだ!!)

 

 

そこら中に立ち昇る炎のせいで、空気が薄い__一刻も早くこの場から脱しなければ、酸欠で共倒れになってしまう。

 

 

「…っぁあ!!」

 

 

カイルは最後の力を振り絞り、井戸に向かって急降下する。

 

そして…

 

 

「ハンジさん!!」

 

「…カ……イル…」

 

 

無事、ハンジを井戸から救出することに、成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___一方で。

 

 

街に流れる川の近くに潜んでいたエレンたち104期の面々は、超大型巨人の侵攻を止めるべく、打開策を話し合っていた。

 

その最中、超大型巨人の足元へ突っ込んでいく兵士の姿を、ジャンが捉えた。

 

 

「お…オイ!今の……カイル分隊長じゃねぇか!?」

 

「えっ…どこ!?」

 

 

ジャンが指差す方角に目を凝らすアルミン__その横で、コニーが声を震わせる。

 

 

「けどよ、何で一人で突っ込んでいくんだ!?」

 

「私たちに気づいてないのでしょうか…」

 

「あの人が何の意図もなく、やみくもに突っ込んでいくわけがないよ。もしかして…」

 

「だが、アルミン。()()()()()…」

 

「あ、見えなくなった…」

 

 

ジャンの言葉に被されたミカサの一言に、その場にいた全員がバッと同じ方角を見つめる。

 

頼みの綱である人物を逃し、言葉を失う104期たち__しばらく互いの唾を呑み込む音だけが聞こえたが、最初に口を開いたのはジャンだった。

 

 

「と、とにかく……今は俺たちだけで何とかするしかねぇわな」

 

「…そうだね」

 

「最終的にはお前に頼るからな、アルミン」

 

「う、うん…」

 

 

自信無さげに俯くアルミン__ジャンは前を向き、エレンに指示を出す。

 

 

「叫べエレン!!もうこれ以上、超大型巨人(ベルトルト)を壁に近づけさせるな!!」

 

ウオオオオオォォォォ!!

 

 

エレン巨人が叫ぶ__この作戦は、以前一度だけエレンが巨人を操ったかもしれないという可能性からのダメ元だった。

 

超大型巨人は声のする方へチラッと目を向け、エレンたちの存在に気づくも、構うことなく内門へと向かって行く。

 

 

「なっ…」

 

 

焦る104期たち__これまでの戦いから、超大型巨人は蒸気の熱風という障壁(バリア)を持つため、立体機動で近づけないことは分かっている。

 

だがそれでも、何かしら手を打つ必要がある状況に変わりはない。

 

104期たちに今できることは、超大型巨人の弱点を探るため、とにかく何でも試すこと。

 

エレンが正面から突進していき、他の兵士たちは均等に雷槍を装填して隙を狙う。

 

状況を読むことは出来ても画期的な打開案は浮かばない__そう主張するジャンが思いつける作戦は、このくらいしかなかったのだ。

 

 

ガガガガガガッ…

 

 

超大型巨人の右足にしがみつき、そのまま勢いよく押し込んでいくエレン巨人。

 

 

(きっと何か……手はあるハズだ)

 

 

エレン巨人の背中を眺めるジャンが、そう考えた瞬間…

 

 

ブラン…

 

「…あれ?」

 

 

ッドォオン!!

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___【内地側】にて。

 

 

「オイ……あれは、エレンか?」

 

 

内門扉の上部の壁を見上げながら、隣にいたエルヴィンにそう問いかけるリヴァイ。

 

どうやら、先ほど超大型巨人の足にしがみついていたエレン巨人は、そのまま壁上まで蹴り飛ばされてしまったらしい。

 

エレン巨人が伸びている場所は、元々エルヴィンがいた場所だが、回避できたのには理由(わけ)がある。

 

実は、樽に入ったベルトルトがシガンシナ区側へ投げ込まれた直後、内地側でも大きく動きがあったのだ。

 

それは…

 

 

獣の巨人による『投石攻撃』の開始である。

 

 

街の前方で小型の巨人たちを相手取っていた兵士の大半は最初の数手で散っていき、内地側はディルクやクラース、マレーネを含む主要戦闘兵を失った。

 

残るはリヴァイと馬を移動させていた新兵たち、そして、緊急事態で現場に駆けつけたエルヴィンだけとなった。

 

 

ドドドドドド!!

 

 

獣の巨人による投石は、街の家屋を吹き飛ばし、更地へと変えていく。

 

その波がどんどん近づいてきている__リヴァイたちが身を潜めている場所がハチの巣となるのも、時間の問題だ。

 

 

「エルヴィン……敗走の準備をするぞ」

 

 

大敗北__既にそういう状況にあると、リヴァイは判断した。

 

しかし…

 

 

「あぁ、反撃の手立てが()()()()()()な…」

 

 

エルヴィンの答えは、『反撃の手立てはある』だった。

 

何故、それをすぐに言わないのか__リヴァイの問いに対し、エルヴィンはただ静かにこう語る。

 

 

「この作戦が上手くいけば、お前は獣を仕留めることができるかもしれない……ここにいる新兵と、()()()()捧げればな

 

 

そして、エルヴィンはため息を吐きながら、木箱の上にそっと腰を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___【シガンシナ区側】にて。

 

 

「カイル、目を覚ましてくれ!……カイル!!」

 

 

井戸から少し離れた位置にある屋根の上で、寝そべるカイルの肩をハンジが揺らしていた。

 

 

「ハ……ンジ…さん」

 

「良かった、気が付いた!」

 

「ここは……あの世ですか?」

 

「何を言ってるんだ!君が私を助け出してくれたんじゃないか!!」

 

「あ…」

 

 

ここに辿り着くまでの経緯を思い出したカイルは、ズキズキと痛む額の傷に手を当てる。

 

 

(そうだった。井戸からハンジさんを引き上げた時、超大型の足が頭上に見えて…)

 

 

井戸まで何とか到着したはいいものの、まさしく超大型巨人に踏み潰される一歩手前だったため、ハンジを抱え超大型巨人の足元をすり抜けるようにしてここまで逃げ延びたのだ。

 

その後、カイルは酸欠によって気を失い、今に至る。

 

 

「起きたてのところ悪いんだが……あっちの戦況が知りたい。君の眼でどうなってるか見てくれないか!?」

 

「はい、もちろん…」

 

 

返事をしながら体を起こすカイル__しかし、戦場へ目を向けるよりも先に、ハンジの顔の傷に目が留まった。

 

 

「!?……ハンジさん、左目が!!」

 

「あぁ、やられたよ……とは言え、あの状況で負傷箇所がこれだけだったのは幸運だった」

 

「っ……処置を!」

 

「今は戦況の確認が先だ。カイル、君の額も後で診るよ」

 

「…わかりました」

 

 

渋々承諾したカイルは、内門付近で展開されている戦場に目を向けた。

 

 

「まず、鎧が復活しています。そのため、アルミンたちは二手に分かれて応戦しているようです。ミカサ、ジャン、コニー、サシャの4名で(ライナー)を。おそらく、超大型(ベルトルト)はそれ以外のアルミンとエレンで…」

 

「2人だけで超大型(ベルトルト)を…?」

 

「それが、今は2人とも姿が見えないんです。先ほど、超大型(ベルトルト)が勢いよく熱風を放出し始めて…」

 

「!?……もしかして、超大型(ベルトルト)は全然動いてなかったりする?」

 

「はい、微動だにしません」

 

 

カイルの答えを聞いたハンジは、少し目を見開く。

 

 

「…ならそれは、()()()()()()()だ」

 

「え…」

 

「とにかく、私たちは鎧の方へ加勢する!……行くぞ!!

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___【対:鎧の巨人戦場】にて。

 

 

「1本……外した」

 

 

鎧の巨人の正面にある家屋の屋根の上で、右腕に1本の雷槍を構えたミカサが嘆く。

 

鎧の巨人を食い止めるべく、4人に残された雷槍は3本のみ。

 

そこで、ジャンが囮になり、コニーとサシャの2人で両側から雷槍を放ち、鎧の巨人の顎が外れたところでミカサが口の中へ最後の雷槍を撃ち込む作戦を立てた。

 

しかし、鎧の巨人の抵抗によってサシャが負傷し、片方の顎しか外すことができなかったのだ。

 

ミカサの頬に汗が流れた、その時…

 

 

「よくやった!!」

 

 

サシャを抱えるコニーの背後から颯爽と現れたのは、雷槍を構えたハンジだった。

 

 

ヒュッ……ドオォォン!!

 

「今だ!ミカサ!!」

 

 

ハンジが叫び、ミカサが飛び出す。

 

そして…

 

 

「ライナー……出て」

 

 

………

 

 

 

 

**

 

 

 

鎧の巨人からライナーを引きずり出したと同時に、もう一方の戦場でも決着がついていた。

 

 

ズウウゥゥゥゥゥン…

 

 

物凄い騒音を立てながら超大型巨人の体が崩れていく__そう、アルミンとエレンが勝ったのだ。

 

巨大な死骸の山から立ち昇る蒸気を眺めながら、ハンジの頭に包帯を巻いていたカイルが口を開く。

 

 

「ハンジさん、超大型(あちら)も片がついたようですね」

 

「私の勘が当たってれば、おそらく陽動作戦だろう…」

 

「まさか、本当に倒してしまうとは……アルミンとエレンの状況も気になりますが、その…」

 

内地側(あっち)が気になるかい?」

 

「……コクッ」

 

 

カイルが無言で頷くと、ハンジは自分の腰辺りに目を向ける。

 

 

「君のガスはほとんど切れていただろ? 私のを使ってくれ」

 

「!?……いいんですか?」

 

「あぁ、こっちの状況をエルヴィンたちに伝えてほしい。頼んだよ、カイル」

 

「…はい!」

 

 

包帯を巻き終えたカイルは、ハンジのガスボンベと自身のを交換すると、すぐにその場から飛び出していった。

 

ハンジはカイルの背中を右目だけで見送ったのち、くるっと身軽に振り返る。

 

 

「さてと。此方も()()()()()()かな…」

 

 

そう言って目を向けた先では、両手足を切断され拘束状態にあるライナーが壁に寄りかかっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___それからすぐに。

 

 

「!?」

 

 

内門より少し東の壁上に到着したカイルは、その先に広がる光景に固唾を呑んだ。

 

街を取り囲むように並んでいた巨人はすべてなぎ倒されていて、さらには獣の巨人までズタズタに刻まれている。

 

そんな芸当ができるのは、一人しか思いつかない__リヴァイだ。

 

しかし、当のリヴァイは見当たらず、それどころか兵士自体一人たりともその姿を捉えることができないでいたのだ。

 

 

「一体、何が………っ!?

 

 

その時、内門付近の壁上に人の気配を感じたカイルは、バッと体を横に向ける。

 

 

「エル……ヴィン……さん?」

 

 

カイルの目線の先にいたのは__

 

 

()()()()()エルヴィンを背負った、新兵のフロックだった。

 

 

 

 

 

 

―【 続く 】ー

 

*1
後にイェーガー派が占拠する建物のこと





〜後書き〜

『コニーの情緒、だいじょぶそ?』

…どうも、著者です(´-ω-`)

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


今回の話は、原作の第78話~第83話辺りまでの内容を含んでいます。

その中でコニーの名ギャグ「エレンの家ぇぇがぁぁぁぁぁ!!」がありますが、初めてそこを読んだとき、こいつは救えない馬鹿なんだなと思いました(笑) ※褒めてます。
諌山先生のシュールな笑い、ほんとに好きです・・・

さて、次回はいよいよ『あの回』が!!

大好きなエルヴィンの生き様に、更なる意味(付加価値)を与えられるよう、頑張ります!


◼︎次回予告:『#40 W・M奪還作戦③:百夜』
※タイトルには原作にちなんだ意味が込められていて、それは次話の前書きにて説明します。

■おまけ
◎原作との相違
原作では井戸に落ちたハンジは、超大型巨人が通り過ぎたのち、自分の力で這い出てきています。
そこをカイルが眼の特殊能力を駆使して助けに行く、という流れに改変させていただきました。
※正直、そこ以外オリ主を組み込める場所がなく、相当捻り出した結果がこれです(汗)
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