〜前書き〜
今回から【天と地の戦い編】に突入し、
ストーリー展開としては劇場版のThe LAST ATTACKに該当します。
話数は(今回含め)4話構成の予定です。
その後、最終章として【エピローグ】が2話控えています。
ここ最近、更新が遅れておりますが、
最後まで楽しんでいただけるよう精一杯頑張りますので、
引き続きご愛読の程よろしくお願いいたします。
↓それでは、本編へどうぞ↓
最後に交わしたのは、誉れ高き兵(戦)士の名__
カチッ……ドォォオオォオォオオオン!!!
真っ二つに引き裂かれた船体が、否応なしに海底へと引きずり込まれていく。
その一方で、拳のように突き上げられた黒煙が、彼らの“教え子”と“部下”たちに
………
…
=====
『それじゃあ、君は…』
そこは、まだ
胸元の閉じられたジャケットと目にかかるほどの長い前髪が、懐かしき日々を思い起こす。
“カイネ”が“カイル”だった時代__少なくともこの記憶は、その当時のものだろう。
『あの時も、私に
カイネはそう言いながら横へ向き直ると、ゆっくりとその人物の名を口にする。
『…エレン』
=====
___パラディ島出港より数時間後。
___【オディハへ向かう海上】にて。
「ん…」
狭い船室のベッドの上で目を覚ましたカイネは、しばらく天井を眺めたのち、波打つ感覚にそこが船の中だと理解した。
「あれ? ついさっきまで、
胃の不快感に襲われながらも、船の揺れに逆らうように体を起こし、壁にはめ込まれていた丸い小さな窓から外の様子を覗く。
辺りはすっかり暗くなっていた。
窓ガラスに血色の悪い顔が映し出される__そして、己と目が合った途端、カイネはここに至る経緯を思い出す。
「そうだ。船に乗ってすぐ、気を失って…」
手元を見ると、服が新しくなっていた。
どうやらハンジが着せ替えてくれたらしい。
「はは…ハンジさんってば、ボタンを掛け違うクセは直らないな」
そう言いながら目を細めたカイネは、まだ感覚の鈍い指先でボタンを掛け直すと、慎重にベッドを降りた。
込み上がる吐き気を抑え込むように胸元を摩りながら、彼女が向かった先は__
***
___1時間後。
___【船の一室】にて。
「…目を覚まされましたか、兵長」
カイネはリヴァイが眠る部屋へと移動していた。
声をかけられたリヴァイは体を横にしたまま、顔だけをカイネの方へ向ける。
目があったのは
「…すまない」
「何故、兵長が謝るのですか?」
「奴を…髭面野郎を逃した……部下も…死んだ。一人、残らず…」
顔に巻かれた包帯のせいで表情は読み取れずとも、言葉の一音一音に込められたリヴァイの無念が、カイネの胸を締め付ける。
リヴァイは続けて、事の経緯を話した。
_ジークの叫びで、見張りの部下30名が巨人化したこと。
_巨人化した部下を全員、その手で葬り去ったこと。
_ジークを追い詰め捕獲したが、不意を突いて自爆されてしまったこと。
「…そして、俺はまんまと…
そう言ってリヴァイは布団の中から右手だけを出し、カイネに見せる。
「!?」
その手は痛々しくも、人差し指と中指が失われていたのだ。
カイネは言葉を失い、眉を顰める__しかし、リヴァイの手から顔を背けることはなかった。
至近距離での雷槍の被爆は、外傷以上に内蔵がダメージを受ける。
普通の人間であれば即死のところ、リヴァイがこうして息をしているのはアッカーマンの血が関係しているのだろう。
(兵長がこうしてボロボロになりながら戦っている間に、私は…)
檻の中から祈ることしかできなかった__それどころか、一度はその命さえ賭けに出す始末。
カイネは己の不甲斐なさに拳を固く握りながら、言葉を絞り出す。
「…同じです」
「同じ…?」
「はい。私は港で地下牢に捕らえられ、成す術もなく仲間を撃ち殺されました。一人…残らず…」
そこには、直接自分の手で下したのか、他の力によって奪われたのかという違いがある。
これが“同じ”であるはずがない__カイネはそれを承知の上で、責められるべきは自分の方だと示したのだ。
しかし、リヴァイはそれを拒むように、視線を反らす。
「…そうか」
しばらく、沈黙が続く。
リヴァイは黙ったまま天井を見つめ、カイネは視線を落として今までのことを思い返していた。
(今のこの状況……まるで、
それはマーレへの潜入調査中にあった出来事。
移民族キャンプの地で宴に混ざった翌朝のこと*1だった。
(『立場が逆』か……兄さんとも、そんなことがあったっけ…)*2
カイネは瞳の中の記憶に鼻の奥をツンとさせながらも、区切りをつけるように立ち上がった。
「…水、そこに置いておきました。オディハまではまだかかります。少しでも体を休めてください」
「そういうお前こそ休め。顔色が悪いぞ」
「え…」
思わぬ返しに、カイネは少し動揺を見せる。
「す、少し船に酔いまして…」
「…お前は
「はは、おっしゃる通りで……ゲホ!ゴホ!」
「!?」
リヴァイのお得意ジョークに気を抜いたのか、カイネは大きくむせ込んでしまった。
口元を押さえた指の隙間から染み出る血に、リヴァイは目を見開く。
「オイ、そりゃあ…」
「ちょっと、失礼します…!」
こうして、カイネは逃げるように、リヴァイの部屋を出て行ったのだった。
**
「うっ…!」
口元を押さえながら廊下を走るカイネ__すると、角を曲がったところでハンジとすれ違ってしまう。
「わっと!…って、カイネか!」
「すみ…ませ……ゲホ!ゴホ!」
「え!なになに!だ、大丈夫!?」
心配そうに手を差し伸べようとするハンジ__しかし、カイネはそれを振り切り、再び走り出す。
ダッ…
「あっ、ちょっと…!」
その場に残されたハンジはポカンと口を開いたまま、カイネの後ろ姿を見送った。
そして、振り返ろうとした瞬間__ふと、足元の“染み”に目が留まる。
「これ、は…?」
………
…
***
___数分後。
___【船内のトイレ】にて。
ジャーーーッ
「…ふぅ」
蛇口を勢いよく捻り、手洗い場に吐き溜めた血を洗い流す。
その時、鏡の中の青ざめた顔と睨めっこしていたカイネの背後に、ゆらりと動く影が一つ。
「覗きの趣味はないのですが……あなたのその症状、明らかに危険だと思います」
「!?」
振り返ると、そこにはウェーブの効いた黒髪が特徴の女性が一人立っていた。
兵団のコートに身を包んでいるが、その顔に見覚えはない。
しかし、どこか
彼女の、名前は__
「初めまして、ピーク・フィンガーです。『車力の巨人』……と言えば伝わりますか?」
「いえ、イェレナから名前は聞いていますので…」
「…そう、
まったりと落ち着いた喋りをするが隙がない__油断すると何でも見透かされてしまいそうな、そんな瞳をしている。
―“『車力の巨人の正体であるピーク・フィンガーは、要注意人物です。彼女は……とにかく察しが良い』”―
イェレナから事前に忠告を聞いていなかったとしても、彼女の醸し出す
そうやってカイネが一歩足を引くと、ピークはすかさず話を切り出した。
「まぁ、警戒するのも無理ないでしょう。信頼しろとは言いませんが、今のあなたには手助けが必要かと…」
読めない__いや、此方の思考が読まれていると言うべきだろう。
毒の後遺症で思考が上手く纏まらずにいたカイネは、一先ずその言葉の真意を確かめることにした。
「それは、共闘関係にあるが故の“義務感”が、貴方をそうさせているのですか?」
「いえ……ですが、探しているのかもしれません。
「…?」
的を射ない返答にカイネが困惑していると、ピークがとうとう痺れを切らす。
「とにかく、私の部屋に来てください。話はそれからで…」
「あ、ちょっと…!」
そうして、無理やり手を引かれたカイネは、そのままピークの部屋まで連れて行かれるのだった。
**
「症状から察するに、『トリカブト』の毒ですね。“これ”を……少しは楽になるでしょう」
そう言ってピークは船室に置いてあった救急箱をまさぐると、いくつもある薬品の小瓶から一つを取り出してカイネに手渡した。
受け取った瓶を眺め首を傾げるカイネ__すると、ピークが説明を付け加える。
「『ヒガンバナ』のエキスです。まぁ、完全に毒を消し去ることはできないんだけど……症状を和らげる効果があります」
「詳しいですね。医療に精通していたのですか?」
「…私はたった一人の家族である父親に、まともな医療を受けさせるため戦士になった。子どもの頃、そういった文献を漁っていた名残です」
少し物寂しそうな表情で答えるピーク__その返答を受け、カイネは黙って小瓶を飲み干した。
空になった小瓶を受け取ったピークは、それを棚の空き箱にしまいながら話を続ける。
「協力関係にある以上、過去の遺恨は敢えて触れずに話を進めますが……よろしいですか?」
「…はい」
カイネは少し間を置いてから返事をした。
すると、ピークが真剣な表情で振り返る。
「あなたは今、非常に危険な状態にあります。服毒後、解毒剤をすぐに投与したとはいえ、摂取した毒の量がそれを上回っている」
「…それは、つまり…」
「つまり……あなたの命は、
「……」
残り数日の命__だが、聞く者によっては絶句するであろう残酷な現実に、カイネは驚かなかった。
その反応が予想外だったのか、ピークは声を低めて事の重大さを訴える。
「それも、持てば奇跡ぐらいのもの。おそらく、早ければ今日にでも…」
「ピーク、それ以上の説明は無用です。自分でもわかっていましたから…」
「!……わかった上で、闘いに赴くと…?」
「体が毒に蝕まれていることは、世界の命運を賭けた戦いを辞退する理由にはなりません」
淡々と答えるカイネ__それに反し、ピークは少し納得がいかないような表情で口調を強める。
「では言い換えましょう。足手纏いになる、と…」
「勿論、そうならないための努力はするつもりです。それでも足を引っ張ることがあれば容赦なく見捨てればいい。4年前、
「……」
痛い所を突かれたピークはしばらく黙り込んだのち、溜息とともに両手を少し上に挙げてみせた。
「…降参。あなたとは初対面だし、引き留める理由も見当たらないしね」
「ありがとう、ピーク」
カイネは軽く礼を述べると、スッと立ち上がった。
「どちらへ?」
「イェレナの部屋へ。私は、彼女と話さなければならない」
「…そう」
視線を流し部屋の隅を見つめるピークを横目に、カイネは部屋を出て行こうとする。
途中、救急箱の中から、
そして、ドアノブの前まで歩み寄ったところで、伝えそびれていたことを思い出し振り返る。
「あ。それと、もう一つ“頼み”が…」
………
…
***
___1時間後。
___【船の一室】にて。
「…随分とうなされていましたよ」
カイネはイェレナが眠る部屋へと移動していた。
声をかけられたイェレナは体を横にしたまま、顔だけをカイネの方へ向ける。
「何を、したのですか…?」
顔中に汗を浮かべながら、か細い声で問いかけるイェレナ__カイネはその答えを予め用意していたかの如く、近くのテーブルに置いた
「“解熱剤”が少し効いてきたみたいですね。これはピークからお借りしました」
「へぇ…彼女が…」
何か思うところがありそうな反応を見せるイェレナに、カイネは視線を戻した。
すると、イェレナはその視線から逃れるように窓の外へ顔を向けた。
そして、あることに気づく。
「停まってる……もうオディハに着いたのですか?」
「はい、数十分前ほどに。今はアズマビトとアルミンたちが飛行艇を格納庫に移動させています」
「…
それは嫌味か、はたまた、率直な感想か__窓の外を見つめるイェレナの横顔は、その光景に何かを重ね見ているようにも思えた。
カイネが黙ったままでいると、イェレナはゆっくりと体を起こす。
「それで、私に何の用ですか? エレンに裏切られ、一度は処刑されそうになった私を嘲笑いにでも?」
「まさか……その逆です。私は貴方に同情している」
「同情…?」
怪訝そうに眉を顰めるイェレナを他所に、カイネは立ち上がって窓の近くまで歩み寄った。
そして、外の様子を確認しながら話を続ける。
「イェレナ、あなたの言う通りでした。……私とあなたは似ている」
「!……覚えていてくれたのですね。あの日*3、交わした言葉を…」
「えぇ。貴方が話していた『エルディア人救済の大義』とやらは、ついぞ実現されなかったようですが……偉業の影につきまとう犠牲こそ、まさに今現在、突きつけられているこの“惨状”なのでしょう」
「…皮肉なことに、私もその犠牲の一人だったというわけです。それを哀れんでくださると?」
「いいえ。私が同情しているのは“これから”のことです」
「これから……それは、どういう意味ですか?」
「この船に乗った直後、ジャンから聞きました。貴方はフロックによる公開処刑の場で最期の言葉を求められた際、早く撃つように促した…と」
「……」
少し罰が悪そうに黙り込むイェレナ__カイネは構わず続ける。
「少し話を変えましょう。私たちは共に、厚い信頼を寄せる“存在”がいました。その人が信じる道を信じ、その過程で多くの犠牲を伴うも厭わなかった。果てに……膨れ上がった責任を放棄し、一度はその命さえ
「まさかカイネ、あなたも…?」
イェレナが驚きを声にのせると、カイネは窓の外に顔を向けたまま静かに首を縦に動かした。
そして、悠然と振り返りながら、次のように告げる。
「けれどこうして、再び生を得た……私たちは、その“十字架”を背負わなければなりません」
凛と伸ばされた背筋が、その言葉に誠実さを纏わせる。
鋭く研ぎ澄まされた眼光が“鷹の目”を彷彿とさせ、その体に流れる血が決意と共に“信念”をも映し出す__
イェレナはその瞳に既視感を覚えた。
それは【鉄道開通祝賀会】の夜、切望していた会合で目にした、何かを悟ったような“狩人”の眼。
(
思考を捨て、目を瞑るイェレナ__そして、次に彼女の口から洩れたのは、降参の兆しだった。
「…私に、どうしろと?」
「貴方なら知っている筈……『エレンの行き先』を」
カイネの要望を耳にしたイェレナは、「やはり」と言わんばかりに大きく溜息をつく。
「はぁ…私の負けです。カイネ、あなたはとても頑固だ」
「よく言われます」
「『エレンの行き先』に思い当たる節はある。けれど……条件を一つ聞いていただけますか?」
「何ですか?」
「ハンジさんや兵長も集めてください。
「…いいでしょう」
ガタッ…
この時、船室の扉の裏で密かに耳をそば立てて、二人の会話を聞いている者がいた。
その人物はこの会話から何か目的を得たのか、
そんなこともつゆ知らず、イェレナとカイネは未だ船室内で向き合っていた。
しばらく沈黙が続いたのち__条件を飲むことを約束してくれたカイネへ、イェレナが最後の質問をする。
「最後に一つだけ、聞かせて欲しい……カイネ、あなたは“
実に単純で率直な問いだ。
しかし、誰かの道筋に己の生き方を委ねていた二人からすれば、その答えは体を支える背骨とも言える根幹的真理なのだろう。
カイネはゆっくり口を開くと、慎重に息を吐いた。
「昔の自分だったら『いいえ』と答えていたかもいれません。ですが、今の私には自分勝手に死ねない“理由”があります」
「理由…?」
「はい。私が勝手に死ねば……
そう話すカイネの脳裏に浮かんでいたのは、数年前、エルヴィンの墓石の前で跪くリヴァイの背中だった。*4
―“『俺はこの場で、新たな“誓い”を立てる』”―
あの日、体の節々にまで熱を送るように高鳴った心臓の音は、今でもカイネの耳に残っている。
その心温まる言葉に、優しさに包まれた姿に、どれほど励まされたことだろう。
それなのに、自分という人間はなんて恩知らずなんだ__と、カイネは自責の念に駆られていた。
だが、過ぎたことを悔いている時間はない。
今はただ、地鳴らしを止めることだけを考え、全力を出し切るのみ。
その命が、尽き果てるまで__
「けれどその人の覚悟さえ、私は踏みにじろうとした……その罪が、私にとっての“十字架”なのです」
そう言い切ったのち、扉に向かって迷いなく歩き出す。
こうして、イェレナとの対話を終えたカイネは、潔く船室を後にしたのだった。
…バタン。
***
___それからすぐに。
イェレナの部屋を出たカイネは、廊下を進み階段を下りる。
すると、階段下でリヴァイを抱えたアルミンとバッタリ遭遇した。
その後ろには、ハンジとピークもついてきている。
「アルミン!何故、兵長が外にっ…」
「そ、それが……イェレナが目を覚ましたって、皆を呼びに来てくださって…」
「え…」
カイネが困惑した瞳を向けると、リヴァイは静かに答えた。
「…お前と奴の話し声が聞こえた。一部、だがな」
「そ、そうでしたか」
ホッと胸を撫で下ろすカイネ__すると今度は、ハンジが礼を言う。
「カイネ、君が説得してくれたんだってね? ありがとう……彼女は君をかなり気に入っていた。だから、後で頼もうと思っていたところだったんだ」
「お役に立てて何よりです」
そう答えながらふとピークに目をやると、彼女の視線は
「
「えぇ、もちろん」
カイネは頷きながら、手に持っていた注射器を胸ポケットにしまう。
そして最後に、リヴァイが痺れを切らすように告げたのだった。
「とっとと吐かせるぞ。エレンの行き先を…!」
**
「おそらくそこが……エレンの
【スラトア要塞】__それは、マーレ大陸南の山脈に砦を築いた、飛行船の研究基地だ。
エレンと密会した際、パラディ島制圧のために世界連合艦隊が集結する【カリファ軍港】の次に懸念される脅威だと助言したらしい。
…といった内容を、イェレナは文句の一つも言わず従順に答えた。
その開き直ったような態度にリヴァイが難色を示すと、イェレナは満を持して話を切り出した。
「皆さんに、頼みがあります」
イェレナからの“頼み”__それは、『ジークは正しかった』と
地鳴らしの進行速度から察するに、今こうしている間にも、大勢の人間が踏み潰されている。
ジークはパラディ島のエルディア人が犠牲になる道を選び、対するエレンは、パラディ島以外の人類すべてが犠牲になる道を選んだ。
世界規模で問題解決への道を選ぶとすれば、どちらの理想が尊いか。
二千年にも及ぶエルディア人問題の解決策は、ジークが打ち出した『安楽死計画』しかなかった。
それが、イェレナが最後まで信じた“道”、なのだった__
………
…
**
…バタン。
話を終えた一同は、イェレナの部屋を後にした。
アルミンはリヴァイを部屋まで送ると言って、肩を貸しながら歩いて行く。
そんな二人の背中を心配そうに眺めていたカイネは、ふと思い出したようにハンジに話しかける。
「そう言えば。港での戦いの最中、敵の増援の機関車が途中で爆破されましたが……その付近で、キース団長の姿を捉えました」
「!?……そっか、あの人が…」
「はい…」
きゅっと唇を結んだハンジが神妙な面持ちで顔を俯かると、カイネもつられるように視線を下げた。
すると今度は、ハンジが何かを思い出したようにバッと顔を上げる。
「あ!あの…さ……カイネ、君もしかしてっ…」
「…何ですか?」
柄にもなく言葉を詰まらせるハンジ__カイネが首を傾げながら聞き返すも、ハンジは何やら後ろにいるピークをチラチラと気にしているようだ。
「…イヤ。やっぱり何でもない」
そう早口で断りを入れると、ハンジはそそくさとその場から離れて行ってしまった。
カイネは少し戸惑いながらも、ハンジと同じ方向へ歩き出す。
その場に一人残されたピークは、遠ざかって行くカイネの背中を目で追いながら船室での会話を思い返していた。
―“『あ。それと、もう一つ“頼み”が……ハンジさんと兵長には、このことは内密に』”―
「…
そうして、独り言をぽつりと吐き捨てたピークもまた、目的のために動き出すのだった。
=====
地鳴らしを止めるべくパラディ島を発った一行は、オディハへ到着し、次なる“目的地”をも得た。
アズマビト、マーレの戦士、調査兵団__国の異なる者同士が力を合わせる掛け声が、夜通し港に響く。
飛行艇の準備は順調に進んでいると思われた。
この数時間後…
ドンドンドドン!
彼らの命運を左右する“障壁”が、立ちはだかるまでは__
―【 続く 】―
〜後書き〜
『何となく、ピークちゃんとカイネは少し相性が悪い気が…(ピークちゃんがまともすぎて)』
…どうも、著者です(´-ω-`)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回の話は嵐の前の静けさと言いますか、『天と地の戦い』というクライマックスに向けてのクッション回となります。
[主な目的]
・ピークちゃんとカイネを絡ませたかった
・イェレナとカイネの関係性にピリオドを打ちたかった
・カイネが“きっかけ”を与えることで、原作で『エレンの行き先』を従順に答えたイェレナの心変わりに根拠を植え付けたかった
今回は原作で少ししか描かれていない船の移動シーンを引き延ばし、著者の妄想交じりの願望を色濃く繰り広げた回となってしまい、退屈させてしまったかもしれません(;'∀')スミマセン
次回からはちゃんと原作の『天と地の戦い』になぞっていきますので、お楽しみに!
◼︎次回予告:『#51 離陸』 ※完結まで、残り5話!
■おまけ
◎冒頭の夢シーンについて
お察しの方もいらっしゃるでしょうが、原作でいうところの……アレです(笑)
ここでどのような会話が繰り広げられたのかは、原作と同じタイミングで描きます。