〜前書き〜
今回の話で本作の目的の二つ目が果たされます。
ようやく来たって感じですね…(ハンジ風)
↓それでは、本編へどうぞ↓
___数時間後。
ドンドンドドン!
それは、あまりに突然の出来事だった。
着港から約半日が経過し、飛行艇の整備も最終段階へ突入したところに、“災厄”は訪れた。
「ヒュー……ヒュー…」
揺れる瞳に、かさついた呼吸。
徐々に輪を広げる血の池の中心にいたのは__
「フロック!?……まさか、
駆け寄ったハンジの眼鏡のレンズに、蒼白いフロックの顔が映し出された。
その髪は根元から濡れていて、海から上がったばかりだと伺える。
彼がそこに姿を現した時、戦地へ赴く一同は格納庫の外で立体機動装置の最終点検を行っていた。
ガビとファルコはピークの判断で船室に閉じ込めていたためその場には居合わせず、アズマビトの整備士たちは飛行艇に付きっきりだった。
つまり、完全無防備な瞬間を狙われたというわけだ。
瞬時に反応したミカサが立体機動装置のアンカーをフロックの首元へ射出していなければ、事態はより深刻化していただろう。
幸い、死者は出なかったものの__
「ハンジさん!
致命的な足止めを喰らわされた一同は、揃って顔を青くした。
燃料がなければ飛行艇を飛ばすことは不可能__しかし、襲撃によって肩を負傷した整備士の一人は諦めていなかった。
「溶接の準備を!!」
突貫工事ではあるが、ブリキで塞ぐ補修であれば1時間で作業できると言うのだ。
希望は潰えていないと思われた、その矢先__
カタカタカタ…
…ドォォォオオオォオォオオオオ!!
全身の毛が逆立つほどの、けたたましい轟音。
その音を聞いた誰しもが身体を強張らせ、事の重大さに息を詰まらせた。
おぼつかない足取りで外の様子を見に駆け出したライナーに続いて、カイネも倉庫から出る。
そうして目に入ってきたのは、とても信じ難い光景だった。
「あれ、が…!?」
港を取り囲む山脈のてっぺんから、何十体、何百体もの巨大な赤い影が横並びになって降りてくる。
凄まじい蒸気を上げながら進撃する地鳴らし巨人の大群は、この世のものとは思えないほどの禍々しさを纏っていた。
その姿を目にした途端、カイネの胃はふわっと持ち上げられたような感覚を覚える。
―“『これは、一体……誰の記憶だ?』”―
ズキン!
それは、エレンと初めて会った日のこと*1__いつか見た夢の断片が、頭の隅をつつく。
カイネは山を覆いつくす靄に
(間違いない……あれはやはり、エレンの記憶…!)
夢で見た光景を思い出すと、その残虐さに胃腸がざわつく。
カイネは震える指先で口元を覆いながらも、詰まる息を押し出すように言葉を吐いた。
「…燃えるように、赤い、地面…」
しかし、そのか細い声は、ライナーが発した大声によって掻き消されてしまうのだった。
「地ならしが……来た!!」
**
あと、どれほどの時間が残されているか__それを計算する時間も、他の策を講じる余裕もなかった。
アズマビトたちはとにかく補修を急いだ__エレンの元へ行くには、飛行艇が必須だからだ。
間に合わなかった場合、
「もう、これしかない。僕が残って足止めをっ…」
迫り来る地鳴らしの波を桟橋から眺めるアルミンが、自暴自棄にそう呟いた。
すると、真っ先に止めに入ったライナーが、『アルミンはエレンを止める切り札』であることを理由に、代わりを買って出る。
しかし、彼すらも引き留める人物が“もう一人”いた__
「ダメに決まってるだろ!巨人の力はもう、一切消耗させるわけにはいかない!!」
カイネはそれを少し離れたところで聞いていた。
覚悟を決めた背中が醸す哀愁と、波風に柔らかく揺れる毛先が、カイネの思考を奪う。
その人物の視線がアルミンへ向けられた時点で、何を話しているのか見当がついた。
しかし、__いや、だからこそ。カイネはその場から動けなかったのだ。
「…君以上の適任はいない。みんなを頼んだよ」
(……嫌だ)
「というわけだ。じゃあね、みんな」
(………嫌だ嫌だ嫌だ)
「あー…リヴァイは君の下っ端だから。コキ使ってやってく…」
「ハンジさん!!」
カイネは思わず叫んでいた。
ハンジは104期たちに別れを告げるように振り返ると、カイネの元へ向かってゆっくりと歩き出した。
『ようやく“けじめ”をつける
「皆を指揮するのは貴方の役目です。アルミンには、まだっ…」
「彼なら大丈夫さ。わかるんだよ、こう…長年団長をやってるとね」
「でも!足止めなら私がやります!」
「ダメだ。君の視力は役に立つ。ここで失わせるはずないだろ?」
「しかし!私は……私は、
カイネの心は揺れていた。
身体はすでにボロボロで、いつ尽き果てるかわからない。
だからこそ、最後くらい役に立ちたい__その一心で死に場所をここに決めたのだ。
しかし、それを伝えたところでハンジが引き下がるとも思えなかった。
(なら、いっそのこと……強引にでも、自分が…!)
そう決心したカイネは、ハンジの腕に装着された雷装へちらりと目をやる。
するとそれを察してか、ハンジはカイネの視線から逃れるように再び歩を進めた。
そして、フッと優しい笑みをこぼしながら、カイネの肩に手を伸ばす。
「
「!?」
ハッと息を呑むように目を見開くカイネと、きゅっと眼光を研ぎ澄ませるハンジ。
「だが、それでもだ……私が行く」
「ハンジさ…」
「ありがとう、君は私の親友だったよ。
そう言い残したハンジが、カイネの横を通り過ぎた瞬間…
キン…
クロスした雷槍がぶつかり合う金属音に、再び思考を奪われる。
―“『カ……ネさ……いま…す……う………てくだ……い』”―
「!?」
ぼやける視界の中から、誰かの声が聞こえた気がした。
瞬きする度、目の前の光景が交互に切り替わっていく。
途切れ途切れに映し出される景色は、
(この、“記憶”は…?)
―“『ハ……ジさ……まだ……ひつ……うで…す』”―
「あ…」
バッ!
何かに引っ張られるように、振り向くカイネ。
しかし、ちょうどその時__すでにリヴァイとの別れも済ませたハンジは、アンカーを斜め上に向かって射出したのだった。
「待っ…!」
ガシ…
走り出そうとするカイネの左肩を、リヴァイが
その手は微かに震えている気がした。
「行かせてやれ。あいつの
そう言ってリヴァイは、掴んでいた左手をギュッと握ってみせた。
左肩から心臓に__その熱が、じんわり届く。
「っ……」
唇が、指先が、胸が、震える。
今にも崩れそうな膝に杭を刺すように、カイネは背筋を伸ばした。
そして、ハンジの背中を眺めながら、ぽつりと呟く__
「ハンジさん、貴方はやっぱり”変“です。
その視線の先で。
勢いよく空へと飛び立ったハンジは、地鳴らしを目前に頬を染め上げた。
そして、雷槍を構え直すと同時に、感嘆の声を漏らすのだった。
「あぁ……やっぱり巨人って、素晴らしいな…!」
………
…
=====
Auf dem zertretenen Land
踏み荒らされた大地の上に
Die aufgestapelten Gefühle sind heruntergefallen
積み上げた想い(イシ)が転げ落ちた
Die Sorgen werden schließlich zu Sand
憂いはやがて砂となり
und werden seinen Körper bedecken und verbergen
その身を覆い隠すだろう
Tränen verdichten die Erde und bauen mit Worten eine Brücke
涙が地を固め、言葉が橋を架ける
Ein nach Wissen gierender Dämon ist jetzt hier
知に飢えた悪魔が、今ここに
Die nächste Ära gestalten mit Ein Herz, das andere respektiert
他を尊ぶ心で次の時代(カベ)を創る
Es ist wie das Spiel mit Bauklötzen__
まるで、積み木遊びのように__
=====
『ハンジ、お前は役目を果たした』
『まったく……団長になんか指名されたせいで、大変だったよ。エレンのバカがさぁ…』
………
…
こうして、飛行艇は無事__“離陸”した。
***
___数分後。
地鳴らしを寸でのところで躱した飛行艇は、まだ死の霧に飲み込まれていない空を滑空していた。
結局、飛行艇の燃料は半分しか入れられなかったが、目的地であるスラトア要塞までは何とかもたせられるだろう。
さらに、最後まで奮闘したアズマビトの整備士たちや戦闘を離脱したアニやガビとファルコを乗せた巡洋艦も、無事にヒィズルへと出発している。
しかし、澄んだ青空とは裏腹に、機内の空気は濁り切っていて重苦しい。
アルミンにミカサ、ジャンやコニー、オニャンコポンまでもが、先に逝ったハンジを悼むように目元を赤く腫らしていたからだ。
そんな中、リヴァイの隣に座っていたカイネの目元には、涙の跡は見られなかった。
「ハンジさんは……兄さんらに会えたでしょうか?」
「…奴のことだ。今頃、皆を引き連れて出迎えてるかもな」
「そう、だといいですね…」
カイネはリヴァイの返しにコクリと頷いたのち、飛行艇の窓から
地鳴らしが過ぎ去ったあとの大地は原型を留めず、荒れ地と化してしまっていた。
カイネの眼を以ってしても、ハンジがどこに眠っているのか見当もつかないほどに__
(私も、
心の中でそう唱えた途端、薄っすらと緑の羽織がいくつも靡いたように見えた。
その幻影に、カイネがきゅっと目を細めていると…
「じゃあ、作戦を話し合おう」
アルミンが身を引き締めるようにそう切り出したのだった。
**
実際にエレンが変貌した『始祖の巨人』を目撃したのは、リヴァイとピークの二人。
彼ら曰く、始祖の巨人の大部分は骨でできているらしい。
胴の中心から肋骨のような骨が虫の足のように連なっていて、そこから上に尖った骨も生えている。
全長は50m、100mの比ではない__1000mは優に超えているだろう。
さらにエレンは戦鎚の巨人も取り込んでいるため、必ずしもうなじに本体がいるとは限らない。
巨大な骨の山の中からエレンを探し出すのは至難の業だが、アルミンが持つ超大型巨人の爆発であればまとめて吹き飛ばせるというのがピークの案だった。
また、エレンがジークをも取り込んでいることから、ジークを先に仕留めることが地鳴らしを止める鍵だというのがリヴァイの見解だ。
それらを踏まえ、アルミンは超大型巨人の爆発はエレンとの対話を尽くしたあとの最終手段とした上で、とある“疑問”を口にする。
それは__
今現在も、自分たちが
始祖の巨人となったエレンには、すべてのエルディア人と巨人に影響を与える力が宿っている。
その力を以てして、危険分子である筈の彼らを野放しにしているのだ。
まるで、彼らがどう出るのかを試すように__
しかし、その謎はすぐに解かれることになる。
キーーン…!
「!?」
耳鳴りと共に、瞬間的な浮遊感に襲われたカイネの身体は、一呼吸置く間に砂地へと降り立っていた。
そう__エレンが再び、彼らを“道”へと招き入れたのだ。
「エレン!聞いてくれ!!~~~~…!」
アルミンを筆頭に、104期の面々が話し合いを求め叫ぶ。
しかし、その願いも虚しく、エレンは断固として『進み続ける意志』を示した。
それと同時に、光る大樹の根元にエレンらしき影が現れる。
「エレン!!」
誰よりも先にミカサが走り出し、その後ろにアルミンたちが続く。
リヴァイと共にその場に残ったカイネは、必死に砂を蹴る彼らの背中に、ハンジがフロックにかけていた言葉を思い出した。
―“『諦められないんだ。今日がダメでも、いつの日か……って』”―
これまでエレンは何度も、調査兵団の元を離れた。
一度や二度の話ではない__攫われ、失踪し、そして今は世界へ復讐すべく進撃しているのだ。
その身を粉にしてエレンを守ってきた調査兵団が、今はその彼を止めるべく戦いに赴いている。
こんな皮肉があるだろうか__?
(いつの日か…と、ハンジさんは言っていた。だけど、多分違う……エレンにとってはもう、
そう考えながら思い返したのは、審議所の地下牢で初めてエレンを目にしたあの日。*3
―“『俺は、調査兵団に入って……とにかく巨人をぶっ殺したいです…!!』”―
エレンにとっての『自由の翼』は、とっくの昔に羽ばたいていたのだろう。
それは、彼自身でさえ止めることができない怒りとなって、世界を破滅へと導く。
『オレたちがやることはただ一つ…』
__“戦え”。
交渉の望みは潰えた。
エレンが皆をここへ呼んだのは、話し合いは必要ないと伝える__ただ、それだけのためだった。
***
___一方、その頃。
「やっぱりだ!じゃあ…」
「じゃあ、もしかしたら…何とかなるかも!」
「うるさいガキ共!石炭でも運んでな!!」
ヒィズルへと向かう巡洋艦の甲板の上で、アニは苛立ちを隠せないでいた。
ファルコとガビの二人が何かに気づいたのか、興奮気味に騒ぎ立てていたからだ。
しかし、「
ファルコは『顎の巨人』を継承しているが、巨人化のきっかけはジークの脊髄液__あり得ない話ではない。
一番、よく見る記憶は…
「雲の上を飛んでいた記憶です。そして、『それが僕にもできる』……そんな感じがするんです。
僕たち、行ってきます__その提案を聞いたアニは、逆上して怒鳴り散らした。
_船が巨人化に耐えられなければ、ここで皆死ぬだけだ。
_巨人の力を制御できなかった癖に、何故できると思うのか。
_失ったものは取り戻せない。もう、遅いのだ__と。
果たして、最後の言葉は誰に向けられたものだろうか?
勢いよく吐き出された後悔に一番胸を痛めていたのは、アニ自身だったのかもしれない。
まだあどけなさの残る子供たちを目の前に、大人気なくも取り乱すアニ__そんな彼女を引き留めたのは、涙の跡で頬を濡らしたキヨミだった。
「船が沈んでも構いません。これ以上、後悔を増やすことになるくらいなら…」
………
…
**
___またその一方で。
スラトア要塞が聳え立つ崖の麓では、一本の機関車が黒い煙を吐いていた。
「本当に、飛行船を奪って逃げられると思っているのか……お前ら、
操縦者の男は、向けられた銃口を睨みつけながら嫌味を吐いた。
彼を人質に機関車を走らせているのは、ハンチング帽のよく似合う中年の男。
足が悪いのか、その男は扉にもたれかかるように腰掛けている。
列車の中には大勢のエルディア人の姿が__彼らの中には、『ブラウンさん』や『フィンガーさん』と呼ばれている者の姿もあった。
その会話から、彼らはエレンの宣言を聞いてすぐ、暴動を起こしたらしい。
そして、地鳴らしから逃れるため当てにしたのが、スラトア要塞に眠る飛行船だったというわけだ。
しかし…
「オイ!あれ…!!」
突然、彼らの希望の船が次々と、大地を蹴り上げて飛び立っていった。
絶望の淵に立たされながらも、ハンチング帽の男は1機でも残っていればと言って操縦士を急かす。
だが、不運の波は時に、幾重にも重なって押し寄せるものだ。
「何だ……あの、煙…?」
エルディア人の一人が、彼らがやってきた方角を見つめながら悲壮感を露わに声を震わせた。
地平線の先に見えたのは、津波のように大地を飲み込む
その正体は考えるまでもない__“地鳴らし”だ。
隊列の中央には、巨人より何十倍も大きな骨の怪物もいる。
悪魔に追いつかれたと、誰もが死を覚悟しただろう。
しかし、そんな彼らの嘆きに呼応するかの如く、飛行船の進路は地獄へと真っ直ぐ向けられていたのだった。
=====
「おぎゃー!…おぎゃー!」
島の中心で、小さな命が芽吹く__多くの民の希望を背負って。
「おぎゃー!…おぎゃー!」
身包みの中で、小さな命が喚く__意味もなく託された希望に溺れて。
「「 おぎゃー!…おぎゃー!…おぎゃー!…おぎゃー! 」」
逃げ場など、どこにもない__それでも人々は未来を夢見る。
終わらぬ地獄から抜け出すか、仮初の楽園を打ち砕くか。
踏み均された大地が問いかける。
ズウゥン……ズウゥン……
『選べ』
ズウゥン……ズウゥン……
『道は、一つ』
ズウゥン……ズウゥン……!!
『選べ!!』
***
___数分後。
___【スラトア要塞:飛行戦鎚基地】にて。
「ダメだ……1機も残っていない」
スラトア要塞の崖の上に到着し機関車から降りたエルディア人たちは、力なく遠くの空を眺めていた。
飛行船の進路は地鳴らしの正面__おそらく、巨人の手が届かない上空から爆撃でもしかけるつもりだろう。
隊列を組み、懸命に尾を振り回す飛行船の群れ。
人類の命運を背負った巨大な飛行物体へ最後の望みを託していると、管制塔からアナウンスが流れ始めた。
「飛行船部隊と、この要塞にいるすべての兵士に告ぐ」
声の主は、この要塞で長官を務めるマーレ軍人の一人。
彼こそ、飛行船総動員で一斉攻撃をしかけんと作戦の指揮を執っている人物だ。
“憎しみの連鎖”を断ち切れなかったすべての大人たちに責任がある__彼のスピーチは、これまで犯してきた過ちへの懺悔だった。
「憎しみ合う時代との決別を__互いを思いやる世界の幕開けを…」
そうこうしていると、飛行船の群れが地鳴らしと共に進撃する始祖の巨人の頭上へと到達した。
いよいよ爆撃の号令をかけんと意気込んだ、次の瞬間…
ピカッ!!
………
…
**
「追いついた!地鳴らしだ!!」
飛行艇の操縦席でオニャンコポンが叫ぶ。
窓から見えたのは砂埃を巻き込みながら吹き上がる赤い蒸気の帯。
その密度の高い煙の中に、細かく粉砕された
(『誰かに終わらせてほしい』……さっき、ライナーが言ってた通りなのかもしれない)
人類史上最も残虐な大殺戮が今、目と鼻の先で行われている。
こんな悪逆非道を誰が思いつくだろうか? いや、彼ならもしかすると__
(これはエレンの“意志”だ。『こうしたくて堪らなかった』……そう、訴えかけているような…)
人間の尺度では計り知れないほどの“目的意識”__彼には最初からそれがあった。
絶えずうごめく始祖の巨人の背に、カイネはエレンの姿を重ねる。
(エレンはフロックに、『私を生かしておくように』と言った……
エレンは、
「避けて!オニャンコポン!!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!……バキッ!!
唐突に飛来してきた石礫が、飛行艇の腹をかすめる。
ぐらつく船体がカイネの思考を遮った。
この攻撃は間違いない__第一の目標である『
これを好機と捉えたアルミンが叫ぶ。
「探す手間が省けた…!!」
場は整った__オニャンコポンは全神経を研ぎ澄ませると、飛行艇の高度を一気に下げた。
「うっ…」
纏わりつく気圧に、内臓が悲鳴を上げる。
今にも吐き出しそうだ__それでもカイネは下腹部にぐっと力を入れる。
そして、
「今だ!飛べ!!」
ッキーーーン!!
今度は鼓膜を突き破るような衝撃に、意識が飛びかけた。
扉からなだれ込む空気に押し返されながらも、カイネは震える足で必死に前へと進む。
そして…
パシッ…
気が付くと、カイネの体は宙へ頬り出されていた。
まるで、誰かに
―“『先に行って、見てるから…』”―
幻聴かもしれない。
だがそれは、確かにカイネの耳に残った。
「見ていてください……ハンジさん!!」
………
…
英雄への第一歩を、
彼らの“最後の戦い”が__今、始まる。
―【 続く 】―
〜後書き〜
『ハンジ、あなたは最初からずっと……カッコよかったよ』
…どうも、著者です(´-ω-`)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
ハンジがとうとう旅立ちました。
著者Xの固定ポストにありますが、ハンジに対する主人公の役割は『友であり良き理解者』です。
第14代団長に任命されてからの日々は、とにかくのしかかる責任との闘いだったと思います。
そんな彼女を支える双翼として、リヴァイともう一人の立ち位置に本作の主人公を置きました。
ハンジ、カイネの友でいてくれてありがとう__
◼︎次回予告:『#52 最後の命令』 ※完結まで、残り4話!
■おまけ
◎ドイツ語の詩について
さすがに雰囲気で察したかと思いますが、この詩はアニメの挿入歌『Bauklötze』をイメージしました。
ハンジの最期を彩る、名曲ですよね…!
(※最後の一分はまんま冒頭の歌詞になります)
◎赤ん坊の泣き声について
言わずもがなと思いますが、このシーンはヒストリアの出産と赤ちゃんリレーを対比させてみました。